最近の違法残業のケースと未払残業代などの労働債権の消滅時効の延長
報道によりますと,未払残業代などの労働債権の消滅時効が
2年から延長される方向性になったようです。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14055128.html
本日は,最近の違法残業のケースを紹介した上で,
未払残業代などの労働債権の消滅時効の延長について説明します。
まず,私が最近把握した違法残業のケースは次のとおりです。
1 サザンオールスターズが所属する
大手芸能事務所アミューズについて,
36協定を届け出ずに,従業員に残業させたり,
1ヶ月に1日も休まずに働かせた従業員がいたとして,
渋谷労基署が是正勧告しました。
2 吉本興業と子会社について,
過労死ラインである1ヶ月100時間
を超える残業をした従業員がいたり,
休日勤務の割増賃金が十分に支払われていなかったとして,
新宿労基署が是正勧告しました。
3 LDH JAPANという会社について,
EXILEメンバーのマネージャーを中心とする
複数の従業員の労働時間が1ヶ月400~500時間に及び,
マネージャーの残業時間が36協定で定められた
上限を超えていたとして,品川労基署が是正勧告しました。
4 三重交通が路線バスの運転手に,
休日出勤の割増賃金を支払っていなかったとして,
四日市労基署から是正勧告を受け,
総額3億円の割増賃金を支払ったようです。
5 サマーウォーズなどの作品で知られる
アニメ制作会社マッドハウスが,
労使協定で定められた上限を超える違法な時間外労働と,
割増賃金の未払いがあったとして,
新宿労基署から是正勧告を受けたようです。
6 スポーツ動画配信サービス「DAZN」を運営する
Perform Investment Japanが,
動画編集担当をしていた従業員に対して,
専門業務型裁量労働制と管理監督者を違法に適用したとして,
三田労基署から是正勧告を受けました。
7 武田薬品工業は,36協定の上限を超える長時間労働,
時間外労働の申告漏れ,残業代の未払いなどで
労基署から複数回,是正勧告を受けて,
健康経営優良法人の認定を自主返納したようです。
芸能事務所やアニメ制作会社,動画配信の会社など,
クリエイティブな仕事をする業界での違法残業が多い印象を持ちました。
仕事内容を想像すると,確かに残業が多そうです。
また,三重交通や武田薬品工業などの大企業でも
違法残業で労基署から是正勧告を受けています。
大企業であっても,労働基準法を遵守できていない
実態が明らかとなりました。
このように,違法残業により,残業代の未払いがあれば,
労働者は,未払残業代を請求できるのですが,
現時点では,労働基準法115条により,
未払残業代の消滅時効が2年になっているので,
例えば,会社を退職してから,未払残業代を請求しようとすると,
退職した月から2年前までの未払残業代しか請求できません。
ところが,2020年4月に改正民法が施行されるのですが,
その改正民法において,金銭の請求権の消滅時効が5年に統一されました。
本来,労働基準法は,労働者を保護するため法律なのに,
未払残業代などの労働債権が他の金銭の請求権の消滅時効より短いのでは,
労働者保護にならないということから,
未払残業代などの労働債権の消滅時効を
延長すべきという議論がされてきました。
そして,6月13日に,未払残業代などの労働債権の消滅時効が
2年から延長される方向に決まりました。
未払残業代などの労働債権の消滅時効が延長されれば,
労働者が請求できる未払残業代の金額が大きくなり,
労働者にとって朗報です。
消滅時効の期間が2年からどれだけ延長されるのかは,
今後,労働政策審議会で議論がされていきますが,
改正民法で消滅時効が5年に統一されるのですから,当然,
未払残業代などの労働債権の消滅時効も5年に延長されるべきと考えます。
今後の議論に注目していきたいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。