睡眠不足による乗務禁止
国土交通省が,バス・タクシー・トラック事業者に対し,乗車前に必ず運転手の睡眠状態のチェックし,運転手が睡眠不足の場合には乗車させないように義務付ける内容に,旅客自動車運送事業運輸規則及び貨物自動車運送事業輸送安全規則を改正し,今年の6月1日から施行されることになりました。
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha02_hh_000341.html
https://www.asahi.com/articles/ASL4W5FTML4WUTIL02J.html
近年,インターネット通販で商品を購入する消費者が増加した関係で,宅配が急増し,配送の運転手の人手不足が深刻化しています。運転手の人手を増やそうにも,長距離運転という労働内容の過酷さと賃金がそれほど高くないことから,運転手を確保することが困難で,時間外労働で対応せざるをえない状況のようです。
また,トラック運転手だけでなく,訪日外国人観光客の増加で,バスの運転手も不足しているようです。
運転手の人手不足が原因で,現場の運転手が長時間労働を強いられているようです。長時間労働が続けば,睡眠時間を確保することができず,疲労が蓄積し,居眠り運転による交通事故や過労死が発生するリスクが高まります。
国土交通省が昨年6月30日に実施たバス運転手の労働時間のアンケート調査の結果によれば,約25%の運転手が1日の睡眠時間が5時間未満であると回答しました。
1日の睡眠時間が5時間未満の場合,1日の残業時間が4.5時間くらいとなり,1ヶ月の残業時間に換算すると,1ヶ月100時間の残業時間になります。1ヶ月100時間の残業時間とは,いわゆる過労死ラインです。
そのため,1日の睡眠時間が5時間未満ですと,過労死するリスクが高くなるのです。
睡眠には個人差がありますので,日中活動していて眠気により支障がないようであれば,睡眠時間に問題はないと言われています。何時間眠ればいいのかとは一概にいえませんが,健康的な睡眠時間は7~8時間くらいと言われています。
なぜ,これほどまでに睡眠が重要なのかといいますと,睡眠をとらなければ,人間は,疲労を回復することができず,また,精神的ストレスを解消できないからなのです。睡眠をしっかりとらなければ,最悪,人間は死んでしまうのです。
なお,睡眠についての分かりやすい本として,精神科医の樺沢紫苑先生の「精神科医が教えるぐっすり眠れる12の法則~日本で一番わかりやすい睡眠マニュアル~」がおすすめです。
睡眠が重要であるからこそ,運転手が睡眠不足で運転することを禁止する必要があります。今回の改正によって,バス・タクシー・トラック事業者は,乗車前の点呼の際に,運転手に報告を求めて,運転手が睡眠不足かどうかを確認して,記録を残します。
今回の改正によって,バス・タクシー・トラックの運転手がしっかりと睡眠時間を確保して,睡眠不足のまま運転を強いられてきた運転手がいなくなり,バス・タクシー・トラックによる悲惨な事故がなくなることを願います。