コロナ禍で見直される労働組合の役割
1 ユニオンの活躍
朝日新聞の報道によりますと,カフェベローチェの店員が
個人で加入できる労働組合である飲食店ユニオンに入って,
運営会社に対して,新型コロナウイルス感染防止のために
テイクアウトのみの営業や,全額の給与補償を求めて
団体交渉をしたようです。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14496361.html
テイクアウトのみの営業は認められなかったのですが,
会計カウンターへの透明シートの設置,お客の座席使用60分制の導入,
シフト削減への休業補償が実施されたようです。
また,コナミスポーツでは,非正規雇用のジムのインストラクターが,
個人でも加入できる総合サポートユニオンに入り,
休業手当の請求を求めて,団体交渉を行い,
非正規雇用のインストラクターにも
休業手当が支払われるようになったようです。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14496122.html
このように,コロナ禍において,アルバイトなどの
非正規雇用労働者に休業手当が支払われない,
新型コロナウイルス感染防止対策がないまま働かされるなど,
労働基準法が守られない状況に歯止めをかける存在として,
個人でも加入できる労働組合であるユニオンが注目されています。
とくに,新型コロナウイルスの感染対策などの安全衛生の分野や,
休業手当の請求の場面において,ユニオンが力を発揮しています。
2 安全衛生
まず,新型コロナウイルスの感染対策などの安全衛生について,
会社は,労働者に対して,労働災害を防止し,
快適な職場環境を実現するために努力する義務を負っています。
また,会社は,労働者に対して,生命や身体の安全を確保しつつ
働けるように必要な配慮をする義務を負っています。
これらの義務から,会社は,労働者が職場で
新型コロナウイルスに感染しないように,
マスクや消毒液を準備したり,換気を徹底するなどの
感染防止対策を実施しなければなりません。
これらの感染防止対策は,どのような職場なのかによって,
具体的な内容が異なります。
飲食店であれば,客との接触を減らす工夫が必要ですし,
都会のオフィスであれば,通勤での感染を減らすための
時差出勤や在宅勤務の導入が考えられます。
このように労働の現場の事情をもとに,
感染防止対策をしなければいけないので,
現場の労働者が声をあげる必要があります。
とはいえ,一人で声をあげると,
会社は一個人の意見であるとしてとりあげてくれなかったりしますが,
職場の労働者の総意であるとすれば,会社は無視できません。
そのため,労働者が団結して,会社に対して,
新型コロナウイルス感染防止対策などの安全衛生を
しっかりするように伝えることが重要になります。
さらに,これが団体交渉という形式で申し入れれば,
会社は,団体交渉に応じなければならないので,
より労働者の主張がとおりやくすなるのです。
3 休業手当の請求
次に,休業手当の請求ですが,
休業手当は平均賃金の6割以上を補償するものなので,
非正規雇用労働者が休業手当を請求するとなると,
もともと低賃金なので,請求する金額が少ないのが現実です。
労働基準法26条で,会社が労働者を休業させる場合には,
休業手当を支払わなければならないと定められているので,
裁判手続で休業手当を請求すれば,
強制的に支払わせることができます。
しかし,裁判手続では,時間と手間がかかり,
生活のためにすぐに休業手当が必要なのに,
実際に強制的に会社に休業手当を支払わせるのは
だいぶ先になってしまいます。
また,自分で裁判をするのは大変なので,
弁護士に依頼しようとしても,弁護士費用がかかります。
請求できる休業手当の金額が少ないと,
弁護士費用の方が高くなり,
費用対効果がとても悪く,
弁護士に依頼すると結果的に損をすることになる場合もあります。
そのようなときには,職場で休業手当をもらっていない
労働者同士で協力したり,ユニオンに加入して,
団体交渉で休業手当を請求することで,
会社が休業手当を支払うことがあります。
休業手当が支払われないことを諦めていると,会社は,
休業手当を支払わなくても労働者が何も言ってこないとして,
休業手当の未払を継続する可能性があります。
労働者が団結して声をあげることで,
休業手当が支払われることがあるのです。
新型コロナウイルス感染防止対策や休業手当については,
職場の労働者全員の利益になるので,団結しやすいですし,
会社もこれらの労働者の要望を無視できません。
ユニオンに加入して団体交渉して,
感染防止対策や休業手当を勝ち取ったケースがでてきますので,
今こそ,ユニオンや労働組合の力が発揮されるときだと思います。
本日もお読みいただきありがとうございます。