通勤災害と認められるための要件は次のとおりです。
労働者が,①就業に関し,②住居と就業の場所との間の往復の移動を,③合理的な経路及び方法により行い,④移動経路の逸脱又は中断がないことです。
①就業に関し
仕事と関連性があるという意味です。移動行為が仕事に就くため,又は仕事を終えたことにより行われるということです。
例えば,午後から遅番勤務の労働者が,運動部の早朝練習に参加するために朝早くから出勤する場合には,仕事との関連性が否定されています。他方,仕事が終わった後,事業場の施設内でサークル活動や組合活動をした後に帰宅する場合は,仕事との関連性がまだ続いていると認められます。
②住居と就業の場所との間の往復の移動
就業の場所には,会社や工場といった仕事を行う場所のほかにも,物品を得意先に届けて,その得意先から直接帰宅する場合の届け先,出勤扱いとなる研修会の会場も含まれます。
③合理的な経路及び方法
労働者が通勤のために通常利用する経路や方法のことです。
例えば,子供を育てている共働きの労働者が,託児所・保育園・親等に子供を預けるために利用する経路は合理的な経路となります。また,普段使用している経路が工事中のため迂回する場合も合理的な経路となります。他方,特段の合理的理由もなく大きく遠回りする経路をとる場合には,合理的経路とは認められません。
④移動経路の逸脱又は中断がないこと
「逸脱」とは,通勤の途中で仕事や通勤とは関係のない目的で合理的な経路をそれること,「中断」とは,通勤の経路上において通勤とは関係のない行為を行うことです。
例えば,通勤途中でゲームセンターやパチンコ店に入って遊ぶ,映画館に入る,バーなどの飲食店で飲食する場合,逸脱や中断となります。
他方,日用品の購入や病院の受診,介護といった日常生活上必要な行為を必要最低限で行う場合,逸脱又は中断の間を除き,合理的な経路に戻った後は,再び通勤となります