宮迫博之氏の記者会見から芸能人の労働組合の必要性を考える2~芸能人労働組合を結成すれば団体交渉ができる~
昨日のブログで記載した,吉本興業の芸能人が,
労働組合法の「労働者」に該当するかについて,
基本的判断要素である
①事業組織への組入,
②契約内容の一方的・定型的決定,
③報酬の労務対価性,
補充的判断要素である
④業務の依頼に応ずべき関係,
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供,一定の時間的場所的拘束,
消極的判断要素である
⑥顕著な事業者性
に当てはめて検討してみます。
https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201907248343.html
①事業組織への組入について,吉本興業は,
所属している芸能人を,テレビ番組などに出演させて,
収益を得ていると考えられますので,芸能人は,
吉本興業の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として,
組織内に確保されているといえそうです。
②契約内容の一方的・定型的決定について,驚くことに,
吉本興業は,芸能人との間で,契約書を締結していないようです。
通常,会社側が定型的な契約様式を用いていると,
この要素を満たすことになるので,吉本興業の場合は,
この要素は満たさないとも思えます。
他方,契約書の締結がないことによって,
吉本興業と芸能人との間の権利関係が不明確となり,
仕事が欲しい芸能人は,吉本興業の指定してくる
条件に従わざるをえないため,労働条件が一方的に決定されて,
芸能人には,事実上,個別交渉の余地がないと考えられます。
そのため,②の要素も満たす可能性があると考えます。
③報酬の労務対価性については,芸能人は,
吉本興業から指示された仕事をして,
興行先から吉本興業に支払われた金銭のうちの何割かを
報酬として受け取っていると思われるので,芸能人の報酬は,
労務提供に対する対価と評価されると思います。
④業務の依頼に応ずべき関係については,芸能人は,
吉本興業から指示のあった業務を拒否すれば,収入がなく,
食べていけなくなるので,事実上,
業務の依頼に応じなければならないと思います。
また,吉本興業からの業務の依頼を拒否すれば,
次から仕事をまわしてもらえなくなるという不利益が予想されますので,
吉本興業からの業務の依頼については,
基本的に応ずべき関係にあったといえると考えられます。
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供,
一定の時間的場所的拘束について,大物芸能人であれば,
ある程度の裁量を与えられている可能性がありますが,
下っ端の芸能人であれば,吉本興業から指示される業務量や
業務の日時や場所について裁量はないと考えられます。
そのため,広い意味では,芸能人は,
吉本興業の指揮監督下で仕事をして,
ある程度,時間的場所的に拘束されているといえそうです。
⑥顕著な事業者性については,
芸能人が常に自分の才能で利益を得て,
リスクを引き受けているとはいえず,やはり,
芸能事務所のマネジメントに従って仕事をしているといえ,
芸能人には,顕著な事業者性は認めにくいと考えられます。
以上を総合考慮すれば,吉本興業の芸能人は,
吉本興業との交渉力に格差が生じており,
労働組合を組織して集団的な交渉による保護が図れる必要があるので,
労働組合法の「労働者」と判断される余地は十分にあると考えます。
ちなみに,宮迫博之氏の記者会見によると,
吉本興業の岡本社長から,記者会見するならクビにすると言われたようで,
これが事実であれば,クビ=解雇なので,
岡本社長は,芸能人を労働者として扱っていたと推認できます。
芸能人が,労働組合法の「労働者」に該当すれば,
労働組合を結成して,芸能事務所に対して,
団体交渉を要求できます。
芸能人が1人で芸能事務所と交渉しても弱いですが,
芸能人が団体で交渉すれば,交渉力は強くなり,
実質的に芸能事務所と対等な立場にたてます。
さらに,労働組合法7条2号により,使用者は,
正当な団体交渉要求を拒否できないので,
芸能事務所は,芸能人労働組合の要求を無視できなくなります。
団体交渉によって,芸能人の報酬をどのように設定するかなどについて,
芸能人労働組合と芸能事務所が協議し,
合意内容を労働協約という書面にまとめれば,
労働協約で定められた内容が,
個々の芸能人組合員の労働条件となります。
宮迫博之氏の記者会見を機に,芸能人の不満が爆発し,
芸能人の権利を守る機運が高まっているので,
ぜひ芸能人労働組合が結成されることを期待したいです。
そうすると,芸能人の権利が保障される結果,
よりよいエンターテイメントが生まれるような気がします。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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