コンビニ店主は労働組合法の労働者か2~中央労働委員会命令~
セブンイレブン東大阪上小阪店の店主が,
24時間営業を辞めて,セブンイレブンの本部と対立していた問題で,
セブンイレブン本部は,店主に対して,
時短営業を理由とする契約解除をしないことを伝えたようです。
とりあえず,現状は時短営業が事実上追認されたのですが,
セブンイレブン本部は,24時間営業を維持する方針に
変わりはないようで,今後,この問題がどのように
進展していくのか見守っていきたいと思います。
さて,コンビニ店主の働き方がクローズアップされている中,
3月15日に中央労働委員会において注目すべき命令をくだしました。
先日,ブログで紹介した,コンビニ店主を
労働組合法の労働者としたセブンイレブンの
岡山県労働委員会の命令と,ファミリーマートの
東京都労働委員会の命令の判断を覆し,
コンビニ店主は,労働組合法上の労働者ではないと判断されたのです。
コンビニ店主にとっては,残念な逆転敗訴でした。
本日は,3月15日の中央労働委員会の命令について説明します。
労働組合法の労働者は,相手方との個別の交渉において
交渉力に格差が生じ,契約自由の原則を貫いたのでは
不当な結果が生じる場合に,労働組合を組織して
集団的な交渉によって保護が図れるべき者が含まれます。
そのため,労働基準法の労働者よりも,
保護される範囲が広いのです。
労働組合法の労働者に該当するかについては,
次の要素を総合考慮して判断されます。
1 基本的判断要素
①事業組織への組み入れ
②契約内容の一方的・定型的決定
③報酬の労務対価性
2 補充的判断要素
④業務の依頼に応ずべき関係
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束
3 消極的判断要素
⑥顕著な事業者性
コンビニのフランチャイズ契約は,
本部が一方的定型的に定めており,
コンビニ店主が個別交渉で変更することは困難です(②)。
コンビニ店主は,本部から経営の助言・指導を受けて,
店舗において長時間働いています(⑤)。
そのため,都道府県労働委員会は,
コンビニ店主を労働組合法の労働者と認めたのでした。
しかし,中央労働委員会は,コンビニ店主は,
自ら資金調達をして事業の費用を負担し,
損失や利益の帰属主体として,
自らの判断で従業員の雇用や人事管理を行うことで
他人の労働力を活用し,自ら選択した場所で
コンビニの経営を行っているので,
経営者として相当の裁量を有する独立の小売事業者であり,
本部の労働力として組織に組み込まれていないと判断されました(①,⑥)。
フランチャイズ契約は,コンビニ店主の労働条件というよりは,
店舗経営という事業活動の態様について規定しており,
本部がその内容を一方的に決定していても,
労働組合法の労働者性を根拠付けることにはならず(②),
コンビニ店主が本部から受け取る金員については,
コンビニ店主の労務供給に対する報酬とはいえない(③),
と判断されました。
結論として,コンビニ店主は,
独立した小売事業者であって,
労働組合法の労働者に当たらず,
本部が,コンビニ店主が加盟する
コンビニ加盟店ユニオンからの
団体交渉申入に応じなかったとしても,
不当労働行為に当たらないと判断されたのです。
コンビニ店主は,コンビニの店舗を経営しているので,
「労働者」と捉えるのは多少違和感があるものの,
本部との間で,交渉力,資金,情報において,
圧倒的に格差があり,事実上長時間労働をしていることから,
コンビニ店主を保護すべき必要性があり,
現行法では,コンビニ店主を保護する仕組みは,
労働組合法以外にはないのです。
コンビニ店主個人では力がないのですが,
労働組合法の労働者と認められれば,
コンビニ店主が団体で交渉できて,本部は,
交渉に応じなければならず,対等に交渉でき,
本部に対して,自分達の要望を受け入れてもらえる
可能性がでてくるのです。
コンビニ店主の現状を見ると,
労働組合法の労働者として保護するか,
本部とコンビニ店主の法律関係を規律する
フランチャイズ法などを制定するか,
のどちらかが必要だと考えます。
コンビニ加盟店ユニオンは,
中央労働委員会の命令を不服として,
行政訴訟を提起するようですので,
裁判所において,コンビニ店主が労働組合法の労働者
として認められるのか,注目していきたいと思います。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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