こころの処方箋
私の司法研修所時代の民事裁判教官の野田教官が、最終講義の際に、知る人ぞ知る名著として紹介されていた、河合隼雄先生の著書「こころの処方箋」を読みました。
本のタイトルのとおり、毎日あくせくがんばっている現代人がこの本を読むと、心がほっとする不思議な感覚になる、まさに、処方箋のような本です。
人生で迷った時に読むと、壁を乗り越えられるヒントをえられる本です。
今回は、この本を読んで、私が得た気付きを紹介します。
1 ふたつよいことさてないものよ
1つ目は、ふたつよいことさてないものよ、です。
これは、ひとつよいことがあると、ひとつ悪いことがあるとも考えられるということです。
世の中は不思議なもので、人にとって、よいことずくめにならないように仕組まれているものです。
禍福は糾える縄の如しという言葉のように、よいことがあれば悪いこともある。
この言葉を逆に考えれば、何か悪いことや嫌なことがあれば、それに見合うだけのよいことが存在していることがあるということなのです。
そのため、何か悪いことがあっても、絶望せずに、次は良いことがあると前向きに希望を持っていればよいのです。
また、人は、悪いことがあることを前もって分かっていれば、相当にしのぎやすくなると、河合隼雄先生はおっしゃっています。
良いことがあると、次に悪いことがあるかもしれないと事前にわかっていれば、受けるショックを軽減させることができるかもしれません。
この言葉と出会って、良いことがあっても、悪いことがあっても、そんなものだと心をニュートラルにできて、穏やかに過ごすことができるようになりました。
2 ものごとは努力によって解決しない
2つ目は、ものごとは努力によって解決しない、です。
人は、努力するときっとよい結果になると期待してしまいますが、努力しても必ず結果がでるとは限りません。
私は、司法試験の勉強をしていて、努力しても結果がでないことは、よく分かりました。
努力すれば報われるという前提で生きていていた場合、努力が報われなかった時に、深く絶望してしまいます。
河合隼雄先生は、努力によって、ものごとは解決するという考えのために、自分を必要以上に苦しめているので、ものごとは努力によって解決しないと思っていれば、必要以上に自分を苦しめることはなくなるとおっしゃっています。
このような考え方でいれば、努力しても結果がでなかったとしても、心が穏やかになり、楽に生きられると思います。
とはいえ、努力は否定されるものではなく、尊いものだと考えます。
河合隼雄先生は、「努力によってものごとは解決しない、とよくわかっているだけど、私には努力くらいしかすることがないので、やらせていただいている」とおっしゃるとおり、努力して、うまくいったらいいなぁという感じでいるのが、心にとってよいのかもしれません。
努力が実らなくて、嫌になりそうなときに、思い出したい言葉です。
3 家族関係の仕事は大事業である
3つ目は、家族関係の仕事は大事業である、ことです。
社会人になると、つい、仕事を優先してしまい、家族関係のことを疎かにしてしまいがちです。
ここには、職業や社会的なことに関する仕事は大変だが、家族のことなどは簡単にできるはずであるという思い込みがあります。
河合隼雄先生は、家族のことは大変な仕事で、ひょっとすると、職業や社会的な仕事を上回るほどの大事業ではないかとおっしゃっています。
家族は、距離が近いがゆえに、わかってくれるはずという前提でいると、全然理解されておらず、揉め事が起きます。
夫婦関係が悪化すると、仕事に集中できず、悪影響です。
親子関係がうまくいかないと、子供が問題を起こして、これもまた仕事に集中できず、悪影響です。
ようするに、家族関係が整っていないと、仕事に極めて悪影響が及ぶのです。
そうなると、仕事以上に家族関係を整えることに、力を注ぐことも大切です。
河合隼雄先生は、まず、家族関係のことが大事業であるという覚悟があれば、姿勢が違ってくるし、正面から取り組んで事に当たるとき、人間のエネルギーが不思議に新しく開発されるとおっしゃっています。
家族関係は、仕事以上に大事業であるという覚悟をもって、家族と仲良くしていきます。
このように、心が疲れた時に、この本を読むと、ふっと心が楽になる、処方箋のような本です。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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