未払残業代を請求するタイミングとは
1 残業代をいつ請求するべきなのか
松山大学の教授3人が深夜、休日労働の残業代が
適切に支払われていないとして、松山大学に対して、
未払残業代請求の訴訟を提起しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/119638243cf76d37bb786096ec12dd6aaaf72f32
報道を見ている限りですと、3人の教授は、
松山大学に勤務を続けながら、
未払残業代請求の提訴に踏み切ったようです。
勤務先に対して、在職中に未払残業代請求をするのは勇気がいるので、
珍しいことだと思います。
それでは、未払残業代請求をするのは
どのタイミングがいいのでしょうか。
2 在職中に未払残業代請求をする場合
1つ目のタイミングは、松山大学の事件のように在職中に、
未払残業代請求をすることです。
ただし、在職中に未払残業代請求をすると、
会社との関係が気まずくなるので、
在職中に未払残業代請求をすることはほとんどありません。
すなわち、日本では、残業代が適切に支払われていなくても
許容される風潮があり、在職中に未払残業代請求をすると、
会社から、めんどうなやつというレッテルをはられて、
煙たがられますし、最悪の場合、
会社から嫌がらせを受けることがあるのです。
さらに、弁護士を代理人にして、
未払残業代請求の裁判まで起こすとなると、
会社に対してけんかを売るようなもので、
長く会社にいることが困難になります。
そのため、在職中に未払残業代の相談を会社にすることはあっても、
本格的に未払残業代請求をすることは、あまりないと思います。
私も、これまで何件も未払残業代請求事件を担当してきましたが、
在職中に未払残業代請求をしたのは1件だけでした。
その事件は、裁判となり、和解で終了したのですが、
クライアントは、裁判が終了した後に退職しました。
ただ、在職中に未払残業代請求をするメリットは、
会社内にあるタイムカードなどの証拠を容易に確保できる点にあります。
会社を退職した後ですと、証拠を確保するのが困難なことがあります。
3 退職後に未払残業代請求をする場合
2つ目のタイミングは、退職後に未払残業代請求をすることです。
未払残業代請求事件のほとんどが退職後に請求するものです。
会社を退職した後であれば、会社との関係がなくなりますので、
後腐れなく、会社に対して未払残業代請求ができるわけです。
会社が残業代を支払わないでいると、ペナルティとして、
残業代の元金に対して、遅延損害金が発生します。
会社は、残業代を支払わないと、
遅延損害金も支払わないといけないので、遅延損害金は、
残業代を支払わせるためのインセンティブになるのです。
この未払残業代の遅延損害金は、在職中の部分は、
年3%なのですが、退職後ですと、
賃金の支払の確保等に関する法律6条1項により、
年14.6%になります。
銀行の定期預金の金利が0.002~0.03%の時代に、
年14.6%の遅延損害金は大きいです。
退職後に未払残業代請求をする場合、
証拠を確保しにくい問題はあるのですが、
タイムカードや就業規則などの証拠については、
弁護士が代理人として、開示を求めれば、
会社は、概ね開示してくれます。
タイムカードがなく、パソコンのログデータで
労働時間を立証する場合には、できる限り、
在職中に自分が使用していたパソコンのログデータを
確保しておくのがいいです。
4 不当解雇やパワハラを争うのと同時に未払残業代請求をする
3つ目のタイミングは、不当解雇やパワハラにあって
弁護士に相談したときです。
クライアント自身は気づいていないのですが、
不当解雇やパワハラの相談の際に、
残業代が支払われているか聞いてみると、
支払われていないことが多いです。
これは、不当解雇やパワハラをする会社は、
労働基準法を遵守していないことが多く、
かなりの確率で、残業代を支払っていないのです。
このような場合、不当解雇やパワハラを争うと共に、
未払残業代請求をします。
不当解雇の場合、在職中の賃金の1年分から3ヶ月分の範囲で
会社から解決金を支払ってもらうことが多いのですが、
解雇された労働者の賃金が低ければ、解決金の金額は低くなります。
また、パワハラの場合、慰謝料の金額はそこまで高くなく、
10万円~100万円の範囲になることがほとんどです。
ところが、未払残業代請求が加わることで、
請求金額が一気に高くなり、
裁判での解決金の金額も高くなる傾向にあります。
そのため、不当解雇やパワハラの事件では、
残業代が支払われているかを確認することが大切です。
まとめますと、未払残業代請求をするタイミングは、
在職中に証拠を確保しておいて、
退職後に請求するのがベストだと考えます。
本日もお読みいただきありがとうございます。