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未払残業代を請求するタイミングとは

1 残業代をいつ請求するべきなのか

 

 

松山大学の教授3人が深夜、休日労働の残業代が

適切に支払われていないとして、松山大学に対して、

未払残業代請求の訴訟を提起しました。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/119638243cf76d37bb786096ec12dd6aaaf72f32

 

 

報道を見ている限りですと、3人の教授は、

松山大学に勤務を続けながら、

未払残業代請求の提訴に踏み切ったようです。

 

 

勤務先に対して、在職中に未払残業代請求をするのは勇気がいるので、

珍しいことだと思います。

 

 

それでは、未払残業代請求をするのは

どのタイミングがいいのでしょうか。

 

 

 

2 在職中に未払残業代請求をする場合

 

 

1つ目のタイミングは、松山大学の事件のように在職中に、

未払残業代請求をすることです。

 

 

ただし、在職中に未払残業代請求をすると、

会社との関係が気まずくなるので、

在職中に未払残業代請求をすることはほとんどありません。

 

 

すなわち、日本では、残業代が適切に支払われていなくても

許容される風潮があり、在職中に未払残業代請求をすると、

会社から、めんどうなやつというレッテルをはられて、

煙たがられますし、最悪の場合、

会社から嫌がらせを受けることがあるのです。

 

 

さらに、弁護士を代理人にして、

未払残業代請求の裁判まで起こすとなると、

会社に対してけんかを売るようなもので、

長く会社にいることが困難になります。

 

 

そのため、在職中に未払残業代の相談を会社にすることはあっても、

本格的に未払残業代請求をすることは、あまりないと思います。

 

 

私も、これまで何件も未払残業代請求事件を担当してきましたが、

在職中に未払残業代請求をしたのは1件だけでした。

 

 

その事件は、裁判となり、和解で終了したのですが、

クライアントは、裁判が終了した後に退職しました。

 

 

ただ、在職中に未払残業代請求をするメリットは、

会社内にあるタイムカードなどの証拠を容易に確保できる点にあります。

 

 

会社を退職した後ですと、証拠を確保するのが困難なことがあります。

 

 

3 退職後に未払残業代請求をする場合

 

 

2つ目のタイミングは、退職後に未払残業代請求をすることです。

 

 

未払残業代請求事件のほとんどが退職後に請求するものです。

 

 

 

会社を退職した後であれば、会社との関係がなくなりますので、

後腐れなく、会社に対して未払残業代請求ができるわけです。

 

 

会社が残業代を支払わないでいると、ペナルティとして、

残業代の元金に対して、遅延損害金が発生します。

 

 

会社は、残業代を支払わないと、

遅延損害金も支払わないといけないので、遅延損害金は、

残業代を支払わせるためのインセンティブになるのです。

 

 

この未払残業代の遅延損害金は、在職中の部分は、

年3%なのですが、退職後ですと、

賃金の支払の確保等に関する法律6条1項により、

年14.6%になります。

 

 

銀行の定期預金の金利が0.002~0.03%の時代に、

年14.6%の遅延損害金は大きいです。

 

 

退職後に未払残業代請求をする場合、

証拠を確保しにくい問題はあるのですが、

タイムカードや就業規則などの証拠については、

弁護士が代理人として、開示を求めれば、

会社は、概ね開示してくれます。

 

 

タイムカードがなく、パソコンのログデータで

労働時間を立証する場合には、できる限り、

在職中に自分が使用していたパソコンのログデータを

確保しておくのがいいです。

 

 

4 不当解雇やパワハラを争うのと同時に未払残業代請求をする

 

 

3つ目のタイミングは、不当解雇やパワハラにあって

弁護士に相談したときです。

 

 

クライアント自身は気づいていないのですが、

不当解雇やパワハラの相談の際に、

残業代が支払われているか聞いてみると、

支払われていないことが多いです。

 

 

これは、不当解雇やパワハラをする会社は、

労働基準法を遵守していないことが多く、

かなりの確率で、残業代を支払っていないのです。

 

 

このような場合、不当解雇やパワハラを争うと共に、

未払残業代請求をします。

 

 

不当解雇の場合、在職中の賃金の1年分から3ヶ月分の範囲で

会社から解決金を支払ってもらうことが多いのですが、

解雇された労働者の賃金が低ければ、解決金の金額は低くなります。

 

 

また、パワハラの場合、慰謝料の金額はそこまで高くなく、

10万円~100万円の範囲になることがほとんどです。

 

 

ところが、未払残業代請求が加わることで、

請求金額が一気に高くなり、

裁判での解決金の金額も高くなる傾向にあります。

 

 

そのため、不当解雇やパワハラの事件では、

残業代が支払われているかを確認することが大切です。

 

 

まとめますと、未払残業代請求をするタイミングは、

在職中に証拠を確保しておいて、

退職後に請求するのがベストだと考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働時間を過小に自己申告してもパソコンのログデータで労働時間が認定される

1 自己申告の労働時間とパソコンのログデータから導かれる労働時間が異なる問題

 

 

私が現在担当している未払残業代請求の裁判において,

労働者の自己申告によって労働時間

特定してもよいかが争点となっています。

 

 

労働者が会社に対して,業務日報を提出しており,

そこに記載されている労働時間を用いるべき,

と会社側は主張しています。

 

 

 

他方,労働者は,上司から残業の申請を減らして,

調整するように指示を受けていたので,会社に対して,

実際の労働時間よりも少な目に労働時間を申告していました。

 

 

そして,労働者は,自己申告の労働時間ではなく,

労働者が使用していたパソコンのログデータで

労働時間を認定すべきと主張しています。

 

 

おそらく,労働時間を自己申告制にしている会社では,

労働者が過小に労働時間を自己申告しているケースは多いと思います。

 

 

このように,労働者が自己申告した労働時間と,

パソコンのログデータから導かれる労働時間とが異なる場合,

どちらの労働時間が認められるのでしょうか。

 

 

結論は,パソコンのログデータから導かれる労働時間が

認められることになります。

 

 

2 労働時間把握義務

 

 

まず,改正労働安全衛生法66条の8の3において,会社は,

労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと規定されています。

 

 

これを労働時間把握義務といいます。

 

 

労働安全衛生規則52条の7の3において,

会社の具体的な労働時間の把握の方法として,

「タイムカードによる記録,パーソナルコンピュータ等の電子計算機の

使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする」

と規定されています。

 

 

要するに,会社は,原則として,

タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録で,

労働時間を把握しなければならないのです。

 

 

 

3 労働者の自己申告によって労働時間の把握が認められる場合

 

 

次に,タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録ではなく,

労働者の自己申告による労働時間の把握も,例外として認められています。

 

 

しかし,労働者の自己申告による労働時間の把握が認められるためには,

厳しい制限が課されています。

 

 

その厳しい制限については,基発1228第16号平成30年12月28日の

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による

改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」

と題する通達に規定されています。

 

 

具体的には,労働者の自己申告による労働時間の把握が認められるのは,

「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」に限られます。

 

 

そして,会社がパソコンの使用時間などのデータを有する場合に,

自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは,

「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」には当たらず,

認められません。

 

 

また,労働者の自己申告による労働時間の把握が認められるためには,

会社は,自己申告により把握した労働時間の状況が,

実際の労働時間の状況と合致しているか否かについて,

必要に応じて実際調査を実施し,

所要の労働時間の状況の補正をしなければなりません。

 

 

したがって,労働者の自己申告による労働時間の把握が

認められる余地は限定されており,

パソコンの使用時間で労働時間が把握できる場合には,

労働者の自己申告による労働時間の把握は認められないのです。

 

 

そのため,労働時間を過小に自己申告していても,

パソコンのログデータから導かれる労働時間が労働者に有利であれば,

労働者は,パソコンのログデータで労働時間を認定して,

残業代を請求すればいいのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

健康被害がなくても長時間労働が不法行為になる場合と固定残業代制度の有効性

1 健康被害がなくても長時間労働が不法行為とされた裁判例

 

 

昨日のブログで,長時間労働によって

心身の不調をきたしていないものの

慰謝料の損害賠償請求が認められた無州事件を紹介しました。

 

 

無州事件と同じように長時間労働によって

心身の不調をきたしていないものの

慰謝料の損害賠償請求が認められた裁判例として,

狩野ジャパン事件の長崎地裁大村支部令和元年9月26日判決

(労働判例1217号56頁)があります。

 

 

この事件の原告労働者は,2年間のうち,

ほとんどの月で1ヶ月の残業時間が100時間を超えており,

そのうち5ヶ月は1ヶ月の残業時間が150時間を超え,

一番ひどい月ですと,1ヶ月の残業時間が160時間を超えていました。

 

 

 

通常,1ヶ月の残業時間が100時間を超えると,

疲労が蓄積してストレス耐性が弱くなり,

強い心理的負荷によって,精神障害を発症することがあります。

 

 

もっとも,この事件の原告労働者は,

これだけの長時間労働をしていたにもかかわらず,

心身の不調をきたしたことの医学的証拠はなく,

具体的な疾患を発症していませんでした。

 

 

長時間労働を強いられたことによる損害賠償請求の事件では,

長時間労働によって労働者に脳・心臓疾患や精神障害が

発症していることが多いのですが,狩野ジャパン事件では,

労働者に健康被害が発生していませんでした。

 

 

裁判所は,被告会社が36協定を締結することなく,

長時間労働をさせていた上,

タイムカードの打刻時刻からうかがわれる

原告労働者の労働状況について注意を払い,

原告労働者の作業を確認し,

改善指導を行うなどの措置を講じなかったとして,

安全配慮義務違反を認めました。

 

 

そして,被告会社は,安全配慮義務を怠り,

2年にわたって,原告労働者を心身の不調をきたす

危険のあるような長時間労働に従事させたので,

原告労働者の人格的利益を侵害したものとして,

慰謝料30万円の支払を認めました。

 

 

慰謝料の金額は少ないのですが,

健康被害が発生していない長時間労働を強いられた場合にも,

損害賠償請求が認められましたので,今後,残業代請求事件で,

あまりにもひどい働き方をさせられていたのであれば,

慰謝料請求をすることも検討したいです。

 

 

2 固定残業代の有効性

 

 

もう一つ,狩野ジャパン事件では,重要な判断が示されました。

 

 

それは,被告会社の賃金規定において,

「職務手当は,固定残業の一部として支給する」と規定されていた,

固定残業代の問題です。

 

 

固定残業代が有効になるためには,

通常の労働時間に当たる部分と

時間外労働の割増賃金に当たる部分とを

判別できなければなりません。

 

 

この事件では,基本給と職務手当は区別されて支給されていましたので,

一見すると,通常の労働時間に当たる部分(基本給)と

時間外労働の割増賃金に当たる部分(職務手当)と

が判別できているようにみえます。

 

 

しかし,職務手当の中には,固定残業代の他に,

能力に対する対価も混在しており,職務手当のうち,

固定残業代部分が何時間分の割増賃金に相当するのかが

明示されていませんでした。

 

 

 

その結果,職務手当について,固定残業代部分と

能力に対する対価部分とが明確に区分されていないとして,

職務手当は固定残業代として無効と判断されました。

 

 

一見すると,基本給と固定残業代が区別されている場合でも,

固定残業代の中に,能力に対する部分が混在している場合には,

固定残業代部分が何時間分の割増賃金に該当するのかがわからない限り,

通常の労働時間に当たる部分と時間外労働の割増賃金に当たる部分とを

判別できないとして,固定残業代が無効になるのです。

 

 

固定残業代を争う場合に参考になる裁判例です。

 

 

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長時間労働をしても心身の不調が発症しない場合に会社に対する損害賠償請求が認められるのか

1 1ヶ月30~50の残業時間でも損害賠償請求が認めれたアクサ生命保険事件

 

 

2020年6月10日,東京地裁において,

アクサ生命保険の労働者が長時間労働を強いられたとして,

損害賠償請求をした事件において,労働者には,

心身の不調が医学的には認められていないにもかかわらず,

1ヶ月の残業時間が30~50時間という水準で,

損害賠償請求が認められました。

 

 

https://www.sankei.com/affairs/news/200610/afr2006100031-n1.html

 

 

通常,長時間労働による損害賠償請求の事件では,

過労死ラインを超える1ヶ月80時間以上の残業などの長時間労働により,

精神障害や脳・心臓疾患を発症したとして,

損害賠償請求をすることが多いです。

 

 

 

アクサ生命保険の事件では,1ヶ月の残業時間が

過労死ライン以下であったこと,労働者には,

心身の病気の発症が立証できなかったこと,

という2つのハードルがあったにもかかわらず,

損害賠償請求が認められた点が画期的です。

 

 

アクサ生命保険の事件を契機に,労働者に,

心身の病気が発症していないにもかかわらず,

長時間労働を強いられたことによる損害賠償請求が認められた

裁判例を調べたところ,2つの裁判例が見つかりました。

 

 

2 過労死ラインを超えているものの心身の不調がない場合に損害賠償請求が認めれた無州事件

 

 

その一つが無州事件の東京地裁平成28年5月30日判決

(労働判例1149号72頁)です。

 

 

この事件では,調理師の原告労働者が,一年間ほど,継続して,

1ヶ月の残業時間が80時間またはそれ以上となっていたものの,

長時間労働により心身の不調をきたしたことの

医学的な証拠がありませんでした。

 

 

まず,労働者が長時間労働を継続すると,

疲労や心理的負荷が過度に蓄積して,

労働者の心身の健康を損なう危険があります。

 

 

ひどい場合には,過労死や過労自殺に至ります。

 

 

そのため,会社は,労働者に対して,

業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷が過度に蓄積して

労働者の心身の健康を損なうことがないように

注意すべき義務を負っているのです。

 

 

これを,安全配慮義務といいます。

 

 

次に,無州事件の被告会社は,36協定を締結することなく,

原告労働者に残業させていたうえ,

タイムカードの打刻時刻からうかがわれる

原告労働者の労働状況について注意を払い,

事実関係を調査して,改善指導を行う等の措置を講じていないとして,

安全配慮義務違反が認められました。

 

 

 

そして,被告会社は,安全配慮義務を怠り,1年余にわたり,

原告労働者を心身の不調をきたす危険があるような

長時間労働に従事させたとして,原告労働者には,

慰謝料30万円の損害賠償請求が認められました。

 

 

たとえ労働者に心身の不調が生じていなかったとしても,

心身の不調をきたす危険があるような長時間労働をさせた場合には,

会社は,安全配慮義務違反として,

損害賠償請求されるリスクがあるのです。

 

 

無州事件では,1ヶ月の残業時間が80時間以上なので,

過労死ラインを超えていたのですが,アクサ生命保険の事件では,

残業時間が1ヶ月30~50時間と過労死ライン未満でも,

損害賠償請求が認められたので,画期的です。

 

 

長時間労働を抑止すべきという社会の動きに

裁判所が対応したのかもしれません。

 

 

今後の裁判例の動向に注目したいです。

 

 

なお,無州事件では,7万円の手当の固定残業代も争われましたが,

36協定が存在しないので,1日8時間以上の労働時間を定めた

契約部分は無効であること,固定残業代の内訳(単価,時間等)

が明示されていないことから,無効となりました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

高速バスの交代運転手の乗車時間や仮眠時間は労働時間か

1 未払残業代事件では労働時間が争点になることがあります

 

 

未払残業代請求事件では,労働時間か否かが

争われることがよくあります。

 

 

働いているような,休んでいるような労働密度の低い時間があると,

その時間が労働時間なのか,休憩時間なのかが問題になるのです。

 

 

 

労働時間と認められれば,労働時間が長くなり,

その分,未払残業代が認められることになるので,

会社側が激しく争ってくることになります。

 

 

この労働時間について判断した裁判例で,

興味深いものを見つけましたので,紹介します。

 

 

カミコウバス事件の東京高裁平成30年8月29日判決です

(労働判例1213号60頁)。

 

 

この事件では,高速バスの交代運転手が高速バスを運転しておらず,

交代運転手としてバスに乗車している時間が労働時間かが争われました。

 

 

2 労働時間とは

 

 

まず,労働時間とは,労働者が

会社の指揮命令下に置かれている時間をいいます。

 

 

どのような場合に,会社の指揮命令下に置かれているかといいますと,

労働からの解放が保障されていない場合です。

 

 

労働者が労働から解放されて,自由に過ごしていい場合には,

会社の指揮命令下に置かれておらず,労働時間ではないとされます。

 

 

労働からの解放が保障されているかについては,

個々の事件の事実を丁寧に分析する必要があります。

 

 

3 交代運転手の不活動仮眠時間は労働時間か

 

 

この事件の交代運転手の座席は,運転席の真後ろにある客席で,

リクライニングシートを利用することができ,交代運転手は,

運転の際に残った疲れが交通事故の原因になることがないように,

交代運転手として乗車している時間は休憩するように

会社から指導されており,仮眠するなどして休憩していました。

 

 

 

このような仮眠時間を不活動仮眠時間といいます。

 

 

また,交代運転手は,乗客の要望や苦情に対応することや,

運転手の補助をすることはなく,

会社から非常用の携帯電話を支給されていましたが,

会社から着信があることはほとんどありませんでした。

 

 

そのため,交代運転手の不活動仮眠時間については,

労働からの解放が保障されているとして,

労働時間ではなく,休憩時間と判断されました。

 

 

交代運転手は,高速バスの客席という狭い空間に拘束されているので,

交代運転手の身体的負担がある程度存在するものの,会社は,

明確に休憩するように指示していたこと,実際には,

労働といえる作業を何もしていないこと,

携帯電話で会社から指示がないことからすると,

この事件の不活動仮眠時間は,

労働時間ではないと判断されてもやむを得ないと考えます。

 

 

携帯電話に会社からの業務指示が頻繁にあったり,

乗客の対応を頻繁にしていたのであれば,

労働時間と判断される余地がでてきます。

 

 

未払残業代請求事件でよく争点となる労働時間について,

どのような事実を分析すべきかについて参考になりますので,

紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ハイヤー会社の1ヶ月単位の変形労働時間制が無効となり未払残業代約1454万円の支払いが命じられた判決

1 変形労働時間制とは

 

 

未払残業代請求の事件を担当していると,会社側から,

よくでてくる反論が変形労働時間制についての主張です。

 

 

変形労働時間制とは,一定の期間につき,

1週間当たりの平均所定労働時間が法定労働時間を超えない範囲内で,

1週または1日の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

 

 

所定労働時間とは,労働契約で定められた労働時間のことで,

例えば,午前9時に出社し,午前12時から午後1時までが昼休憩,

午後6時に退社することが会社から決められている労働時間をいいます。

 

 

 

法定労働時間とは,労働基準法32条に定められている

労働時間のことで,1日8時間,1週間40時間を超えて

労働させてはならないとされています。

 

 

例えば,1ヶ月単位の変形労働時間制では,

30日の月の場合,総所定労働時間が

40時間×30日÷7日≒171時間25分

の範囲内に収まっている必要がありますが,

その範囲内に収まっていれば,

ある日の所定労働時間を8時間ではなくて,

10時間としても許されることになるのです。

 

 

通常であれば,8時間を超えて10時間働かされたら,

労働者は,2時間分の残業代を請求できるのですが,

1ヶ月単位の変形労働時間制が適法に運用されていれば,

ある日に10時間労働しても,

2時間分の残業代を請求できなくなるのです。

 

 

そのため,変形労働時間制が適法に運用されていれば,

労働者に認められる残業代は少なくなるのです。

 

 

とはいえ,変形労働時間制が有効になるためには,

労働基準法に定められている要件を全て満たす必要があり,

この要件を満たしていない会社は,けっこう多いです。

 

 

特に,変形労働時間制では,変形期間とその起算日,

期間中の全日について,労働日と所定労働時間を

特定する必要があるのですが,

この特定ができていない会社が多いです。

 

 

2 イースタンエアポートモータース事件の東京地裁令和2年6月25日判決

 

 

例えば,つい最近でたイースタンエアポートモータース事件の

東京地裁令和2年6月25日判決では,

1ヶ月単位の変形労働時間制が労働基準法32条の2の要件を

満たしていないとして無効とされ,会社に対して,

総額1453万8323円の未払残業代を支払うよう命じました。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/4f7b61ee17d5eeb822eff76c8f1e6c034699b530

 

 

この事件は,ハイヤー会社の配車業務を担当していた労働者が,

会社に対して,未払残業代を請求した事件で,

就業規則に1ヶ月単位の変形労働時間制の記載があり,

勤務割表で労働時間が決められていました。

 

 

判決では,「月ごとに勤務割表を作成する必要がある場合には,

労働者に対し,労働契約に基づく労働日,

労働時間数及び時間帯を予測可能なものとするべく,

就業規則において,少なくとも,

各直勤務の始業終業時刻及び休憩時間,

各直勤務の組み合わせの考え方,

勤務割表の作成手続及び周知の方法を記載する必要がある

と判断されました。

 

 

 

そして,この事件では,就業規則に,

「配車職員の労働時間は毎月16日を起算日とする

1ヶ月単位の変形労働時間制による。」とだけ記載されているだけで,

各直勤務の始業終業時刻及び休憩時間,

各直勤務の組み合わせの考え方,

勤務割表の作成手続及び周知き方法の記載がないため,

労働基準法32条の2の要件を満たさず,

1ヶ月単位の変形労働時間制は無効とされました。

 

 

その結果,1日8時間を超える労働時間について,

残業代が支払われていないとして,

1.25倍の未払残業代請求が認められたのです。

 

 

タクシーやトラックの運転手,

医療機関や介護施設でシフトで働く労働者は,

変形労働時間制が適用されていることが多いのですが,

変形労働時間制が無効とされることも多く,

残業代請求が認められることも多いのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

残業を許可制とする就業規則がある場合に残業代請求が認められるか

1 残業の許可制

 

 

未払残業代請求の事件を担当していると,たまにですが,

残業を許可制としている就業規則を見ることがあります。

 

 

具体的には,「従業員が時間外労働を行う場合には,

原則として所属長に事前の承認を得なければならない」

などという就業規則の条項があります。

 

 

 

労働者が未払残業代請求をすると,会社から,

うちは残業をする場合は,事前に会社の許可をとる必要があるところ,

当該労働者は,事前に会社の許可をとらずに

勝手に残業をしていたのであるから,残業代を支払わない,

という反論がされることがあるのです。

 

 

それでは,このような残業を許可制としている

就業規則の条項がある場合,残業代請求は認められないのでしょうか。

 

 

結論を先に言えば,残業を許可制としている

就業規則の条項があったとしても,

残業代請求が認められる可能性は十分にあります。

 

 

2 労働時間とは

 

 

労働者が,会社に対して,残業代を請求するには,

残業をしている時間が,労働時間といえなければなりません。

 

 

では,労働時間とはどのような時間でしょうか。

 

 

労働時間とは,労働者が会社の指揮監督下にある時間です。

 

 

会社の指揮監督下にある時間なので,会社から,労働者に対して,

この仕事をしなさいと明示の指示があり,

会社から指示された仕事をしていた時間は,

当然に労働時間になります。

 

 

加えて,会社の指揮監督下にある時間には,

会社の明示の指示がある場合だけでなく,

会社の黙示の指示がある場合も含まれます。

 

 

3 黙示の指示とは

 

 

黙示の指示とは,労働者が残業していることを会社が黙認していて,

残業していることについて異議を述べていなかった場合や,

労働者の仕事量が多くて,とても所定労働時間内には処理できず,

残業が常態化している場合に認められます。

 

 

ようするに,会社が明示的に残業を指示していなくても,

残業を知ってて放置していたり,残業しなければ終わらないような

仕事量を与えていたのであれば,黙示の指示が認められて,

会社は,残業代を支払われなければならないのです。

 

 

 

そのため,会社が,就業規則に残業の許可制があり,

残業を許可していなかったと主張しても,

黙示の指示が認められる場合には,

労働者の残業代請求が認められるのです。

 

 

そして,黙示の指示が認められることは多いと実感しています。

 

 

ちなみに,昭和観光事件の大阪地裁平成18年10月6日判決

(労働判例930号43頁)では,

残業を許可制とする就業規則の条項について,

不当な残業代の支払いがなされないようにするための工夫を定めただけで,

事前に残業の許可を受けていなくても

残業代の請求権が失われる規定ではないと判断されました。

 

 

残業の許可制があって,実際に残業代の請求が認められないのは,

会社から残業禁止命令が出されて,

残業がある場合には役職者に引き継ぐことを命じて,

これが徹底されていたような場合です

(神代学園ミューズ音楽院事件の東京高裁平成17年3月30日判決・

労働判例905号72頁参照)。

 

 

ようするに,残業を許可制とする就業規則の条項があるだけではだめで,

実際に残業の禁止が徹底されていない限り,

労働者の残業代請求は認められることになります。

 

 

そのため,残業を許可制とする就業規則の条項があっても,

労働者は,ひるむことなく,会社に対して,

未払残業代を請求すべきなのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

テレワークに事業場外みなし労働時間制を適用できるか

1 テレワークが普及しています

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大が一旦は収束し,

日常生活が復活しつつありますが,

テレワークで引き続き働きたい労働者が一定数存在するようです。

 

 

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO5879473006052020000000/

 

 

都会における通勤のストレスから解放されることが

理由なのかもしれません。

 

 

自宅でテレワークをする場合,

労働者が何時から何時まで働いたのかを会社が把握しにくくなります。

 

 

 

そのため,会社かテレワークを導入する際に,

事業場外みなし労働時間制を導入することがあります。

 

 

本日は,テレワークと事業場外みなし労働時間制について解説します。

 

 

2 事業場外みなし労働時間制とは

 

 

まず,事業場外みなし労働時間制とは,

会社は労働者の労働時間の把握・算定義務を負っていますが,

会社の外で行われる労働については

使用者の指揮監督の及ばない労働もあり,

その場合には会社が当該業務を行う

労働者の労働時間を把握することが困難なため,

その限りで,会社の労働時間の把握・算定義務を免除するための制度です。

 

 

具体的には,みなし労働時間が8時間の場合,

実際には11時間労働したとしても,

8時間だけ労働したものとみなされますので,

8時間を超える3時間分の残業代を請求できなくなります。

 

 

会社が残業代の支払を免れる制度ですので,

労働者にとっては基本的には不利益であり,

事業場外みなし労働時間制が適用されるための要件は

厳格に判断される傾向にあります。

 

 

3 労働時間を算定し難いときとは

 

 

すなわち,事業場外みなし労働時間制の要件の一つに

労働時間を算定し難いとき」があるのですが,

テレワークだからという理由だけで,

この要件を満たすことにはなりません。

 

 

具体的には,①その業務に用いる情報通信機器が,

会社の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと,

②その業務が,随時会社の具体的な指示に基づいて行われないこと,

という要件を満たす必要があるのです。

 

 

①の「会社の指示により常時」とは,

労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断すること

が会社から認めれていない状態をいいます。

 

 

①の「通信可能な状態」とは,会社が労働者に対して,

情報通信機器を用いて随時具体的な指示を行うことが可能であり,

かつ,会社から具体的指示があった場合に

労働者がそれに即応しなければならない状態をいいます。

 

 

労働者が自由に情報通信機器から離れることが認められていて,

会社からの指示に即応する必要がない場合であればよいことになります。

 

 

②の「具体的な指示に基づいて行われる」には,

例えば,業務の目的,目標,期限などの基本的事項を指示することや,

これらの基本的事項について変更の指示をすることは含まれません。

 

 

細かい指示はしないけど,大枠の指示は認められるということです。

 

 

情報通信機器が発達した現代においては,

「労働時間を算定し難いとき」というのは

なかなか考えにくいのかもしれません。

 

 

 

こう考えますと,テレワークに事業場外みなし労働時間制を

適用するのは案外ハードルが高いといえそうです。

 

 

事業場外みなし労働時間制が適用されないとなると,

テレワークをしていて1日8時間を超えれば

会社に対して,残業代を請求できることになります。

 

 

会社に納得してもらって残業代を支払ってもらえるためにも,

労働者はテレワークをする場合,パソコンのログなどを活用して,

自分の労働時間を記録しておくことが重要になります。

 

 

なお,事業場外みなし労働時間制が適用されても,会社は,

休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払義務を

免れることはできないことには注意が必要です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

タクシー運転手の未払残業代請求事件で重要な判決がでました~国際自動車事件最高裁判決~

1 国際自動車事件最高裁判決

 

 

2020年3月30日,最高裁において

残業代請求事件で重要な判決がくだされました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN3Z6STHN3ZUTIL014.html

 

 

国際自動車事件と呼ばれる,

タクシー運転手による未払残業代請求事件です。

 

 

 

国際自動車というタクシー会社では,

複雑な賃金体系が採用されていて,

弁護士の私が見ても,よくわからないものになっています。

 

 

複雑な賃金体系の中で,問題になったのは

タクシーの売上高に応じて支給される歩合給の計算において,

残業代相当額が歩合給の計算の過程で

差し引かれることになっていた点です。

 

 

基本給と残業代が支給されていても,別に支給される歩合給から,

残業代が引かれて,歩合給が減額されるのでは,

実質的には残業代がゼロと評価される余地があります。

 

 

そのため,通常の労働時間の賃金に当たる部分と

労働基準法37条の割増賃金に当たる部分とを

判別することができるのかが争点となりました。

 

 

2 労働基準法37条の趣旨から判別可能性を検討する

 

 

まず,最高裁は,労働基準法37条で会社に対して,

時間外労働について割増賃金を支払うことを義務付けている趣旨は,

会社に割増賃金を支払わせることによって,時間外労働を抑制して,

労働基準法に定められている労働時間規制を守らせて,

労働者への補償を行うことにあるとしました。

 

 

次に,会社が労働者に対して,労働基準法37条の定める

割増賃金を支払ったかを判断するためには,

労働契約における賃金の定めにつき,

通常の労働時間の賃金に当たる部分と

労働基準法37条の割増賃金に当たる部分とを

判別できることが必要になります。

 

 

そして,この判別できるというためには,

会社が割増賃金であると主張する手当が,

時間外労働に対する対価として支払われるものである必要があり,

労働契約書の記載内容のほかに,当該手当の名称や算定方法だけでなく,

労働基準法37条の趣旨をふまえて,

労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置づけなど

にも留意して検討しなければなりません。

 

 

3 国際自動車事件では判別可能性なしと判断されました

 

 

国際自動車事件では,会社は,深夜手当,残業手当,公出手当を

労働基準法37条の割増賃金として支払ったと主張しました。

 

 

 

しかし,これらの手当が歩合給の計算にあたり控除されて,

歩合給が減額される仕組みは,タクシー運転手が

売上高を得るために生じる割増賃金をその経費とみた上で,

その全額をタクシー運転手に負担させているに等しく,

労働基準法37条の趣旨に沿わないと判断されました。

 

 

また,割増賃金が多くなり,歩合給がゼロになれば,

出来高払制の賃金部分について,割増賃金のみが支払われることになり,

出来高払制の賃金部分につき通常の労働時間の賃金にあたる部分はなく,

全てが割増賃金となるのですが,これは,

労働基準法37条の割増賃金の本質から逸脱しています。

 

 

そのため,国際自動車事件の賃金の仕組みは,実質において,

出来高払制のもとで歩合給として支払う賃金を,

時間外労働がある場合に,その一部につき名目のみを

割増賃金に置き換えて支払っているものとされました。

 

 

その結果,深夜手当,残業手当,公出手当には,その一部に

時間外労働に対する対価として支払われているものが

含まれているとしても,通常の労働時間の賃金の部分を

相当程度含んでおり,どの部分が時間外労働に対する対価にあたるかが

明らかではありません。

 

 

よって,通常の労働時間の賃金に当たる部分と

労働基準法37条の割増賃金に当たる部分とを判別できないと判断され,

深夜手当,残業手当,公出手当の支払いにより,

労働基準法37条の割増賃金を支払ったことにはならないとされました。

 

 

会社が残業代と考えて支払った深夜手当,残業手当,公出手当が

残業代の支払いではないと判断されたので,

会社は追加で残業代を支払わなければならなくなりました。

 

 

ある手当が時間外労働の対価として本当に支払われていたのかを,

賃金体系全体における位置付けから検討する手法は,

労働者が固定残業代制度を否定していく上で,有効に活用できそうです。

 

 

今後の固定残業代制度の裁判に影響を与える

重要な判決なので紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

 

新型コロナウイルス感染拡大によるマスク増産に残業規制は及ぶのか

1 マスク増産による残業

 

 

厚生労働省は,新型コロナウイルスの感染拡大で

マスクや消毒液などの緊急増産におわれる企業があることを念頭に,

残業時間規制の例外とする場合があるとして,労働局に通知しました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN3K5T5MN3KULFA00V.html

 

 

一方で,労働組合の相談には,マスクメーカーの工場で

勤務している労働者から,2月から休日がなく,泊まりも多く,

過労死してしまうという悲痛な相談が寄せられているようです。

 

 

 

ちょうど,本日2020年4月1日から,中小企業にも

残業時間の罰則付き上限規制が施行されますので,

マスクの増産などで残業がどこまで許容されるかについて解説します。

 

 

2 36協定と残業時間の罰則付き上限規制

 

 

まず,会社が労働者に残業を命じるためには,36協定を締結して,

労働基準監督署に届け出なければなりません。

 

 

この36協定に,何時間残業させることができるのかを

規定しなければなりません。

 

 

この残業時間の限度時間は,原則として,

1ヶ月45時間,1年間で360時間となっています。

 

 

次に,この限度時間の例外として,当該事業場における

通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い

臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合には,

次の条件を満たす36協定の特別条項を定めることで,

1ヶ月45時間,1年間で360時間を超えて

残業させることが可能となります(労働基準法36条5項)。

 

 

①1ヶ月について,時間外労働と休日労働の合計労働時間数を

100時間未満の範囲で定める。

 

 

②1年間について,時間外労働の合計時間数を,

720時間を超えない範囲で定める。

 

 

③特別条項により1ヶ月45時間を超えて

時間外労働をさせることができる月数を,年6ヶ月以内で定める。

 

 

マスク工場のマスク増産による残業ですが,

労働基準法36条5項の事由に該当すると考えられるので,

36協定で上記の特別条項を定めれば,

1ヶ月45時間以上100時間未満で残業させることが可能となります。

 

 

もっとも,36協定で特別条項を定めたとしても,次の場合には,

労働基準法36条6項に違反したとして,会社は,

懲役6月以下または30万円以下の罰金の刑事罰の対象となります。

 

 

①1ヶ月について,時間外労働及び休日労働の合計時間が

100時間以上となった場合

 

 

 ②直近2ヶ月から6ヶ月の各期間における時間外労働及び休日労働の

合計時間の平均が1ヶ月あたり80時間を超えた場合

 

 

そのため,マスク工場のマスク増産による残業は,基本的には,

1ヶ月100時間以上させることはできません。

 

 

3 労働基準法33条による災害等の場合の残業

 

 

もう一つ,これらの例外として,

労働基準法33条による残業があります。

 

 

災害その他避けることのできない事由によって,

臨時の必要がある場合においては,会社は,

労働基準監督署の許可を受けて,

その必要の限度において残業させることができます。

 

 

 

もっとも,労働基準法33条の規定は,これまで述べてきた

36協定では対応できないような不可抗力の場合に限って認められます。

 

 

そのため,単なる業務の繁忙その他これに準じる経営上の必要の場合

には,労働基準法33条は適用できません。

 

 

新型コロナウイルス感染拡大によるマスク増産については,

36協定の範囲の残業で対応すべきものであり,

労働基準法33条が適用されるされるべきではないと考えます。

 

 

マスク増産も大切ですが,マスク工場で残業する労働者の

健康を守ることも大切ですので,

36協定の範囲内での残業しか認めらないと考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。