不活動時間が労働時間といえるには?(24時間シフトのガス配管修理工の残業代請求事件)
ビルの監視業務における深夜労働に関する
裁判例を調査していたところ,
気になる裁判例を見つけましたので,紹介します。
ガスの配管の修理工事の下請けの会社において,
事業所内に設置された社員寮に寄宿して
24時間シフトを含む勤務スケジュールのもとで
働いていた労働者の未払残業代請求事件です
(大道工業事件・東京地裁平成20年3月27日判決・
労働判例964号25頁)。
この会社では,午前9時から翌日午前9時までの24時間シフトがあり,
労働者は,何もなければ社員寮で過ごしていればよく,
ガスの配管の修理の要請があったときに,
現場へ行き,修理工事をします。
修理依頼の回数や頻度はまちまちで,
まったく修理依頼のない日も毎月2~6回ほどあり,
修理工事の実作業がない場合,労働者は,
社員寮の自室で過ごしていました。
このように24時間シフトであるものの,
実際の作業時間はそれほど多くなく,
不活動時間が長いことから,24時間のうち,
実際に働いた時間以外の不活動時間が
労働時間といえるのかが争われたのです。
不活動時間が労働時間に該当すれば,
実労働時間が8時間を超えた時間について,
未払残業代が請求できるのです。
これまでに何回かブログで解説してきましたが,
労働時間とは,会社の指揮命令下に置かれている時間をいい,
労働からの解放が保障されていなければなりません。
本件事件では,①修理工事の依頼があり出動する回数や頻度は
1日に1回程度であり,深夜・早朝の時間帯には少ないこと,
②実労働時間が5時間以内となる日が相当数あり,
24時間シフトのうち,実労働時間が占める割合は小さく,
不活動時間が占める割合が大きいこと,
③不活動時間において,労働者は,自室において私服で,
テレビをみたり,パソコンをしたり,飲酒やマージャンをしたり,
パチンコ店や飲食店に外出するなど自由に過ごしていたことから,
不活動時間は労働時間とは認定されませんでした。
その結果,労働者の残業代請求は認められませんでした。
私個人としては,平均して1日に1回の呼び出しがあるのであれば,
労働からの解放が保障されていたとはいえず,
不活動時間も労働時間と認めるべきだと考えます。
裁判所は,不活動時間について,呼び出しの頻度や回数,
呼び出されて働く時間帯,実際に働く時間の長さ,
呼び出しがない時間帯に自由に過ごせていたのか,拘束されていたのか,
といった事情をもとに,労働からの解放が保障されていたのか
をチェックします。
不活動時間が労働時間であると主張する場合は,
上記の事情を検討していくことが必要になります。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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