残業代が請求できない監視又は断続的労働に従事する者とは?
先日,ビルの防災センターにつめて,
監視モニターでビルを管理し,ビルを巡回警備する仕事をしている
労働者の残業代請求の相談を受けた際に,
労働基準法41条3号の「監視又は断続的労働に従事する者」
に該当するかが気になったので,調べてみました。
当該労働者が労働基準法41条3号の
「監視又は断続的労働に従事する者」に該当すれば,
労働基準監督署の許可を受ければ,
労働基準法で定められている労働時間規制の適用が受けられなくなり,
どれだけ残業しても,残業代を請求できなくなります。
名ばかり管理職と同じように,
どんなに長時間労働をしても,
残業代はゼロになってしまうのです。
なぜ,このような適用除外が認められているのかといいますと,
「監視又は断続的労働に従事する者」は,
通常の労働者と比較して労働密度が低く,
労働基準法に定められている労働時間,休憩,休日の規定を
適用しなくても必ずしも労働者保護に
欠けるところがないからということのようです。
それでは,「監視又は断続的労働に従事する者」とは,
どのような労働者なのでしょうか。
まず,「監視に従事する者」とは,原則として
一定部署にあって監視をするのを本来の業務とし,
常態として身体の疲労又は精神的緊張の少ない者をいいます。
次の労働者は,「監視に従事する者」ではないと解されています。
①交通関係の監視,車両誘導を行う駐車場等
の監視等精神的緊張の高い業務
②プラント等における計器類を常態として監視する業務
③危険又は有害な場所における業務
監視の業務であっても,ある程度ぼーっとしていても
つとまるような場合が,これにあたると考えられます。
次に,「断続的労働」とは,作業自体が本来一定の間隔をおいて
行われるもので,作業時間が長く継続することなく中断し,
しばらくして再び同じような態様の作業が行われ,
また中断するというように繰り返されるものをいいます。
具体的には,次のような仕事があてはまります。
①修繕係等通常は業務閑散であるが,事故発生に備えて待機するもの
②寄宿舎の賄人等については,その者の勤務時間を基礎にして
作業時間と手待ち時間折半程度まで。
ただし,実労働時間の合計が8時間を超えるときはこの限りではない。
③鉄道踏切番等については,一日の交通量10往復まで。
工場労働のように継続的に作業するものであるにもかかわらず,
労働の途中に休憩時間を何回も入れるなど人為的に
断続的な労働形態を採用しても,「断続的労働」にはあたりません。
また,ある一日は断続的労働であっても,
他の日に通常の勤務に就くというようなかたちを繰り返す勤務については,
休日に関する規定を排除しても労働者保護上差し支えなし
ということにはならないので,シフト制を導入している仕事の場合,
「断続的労働」には該当しないことになります。
そして,「監視又は断続的労働に従事する者」であるとして,
労働基準法41条3号の適用除外を認めてもらうためには,
労働基準監督署から許可を受ける必要があり,
この許可がない場合には,無効となります。
こちらのサイトに労働基準監督署への許可の書式があります。
「監視又は断続的労働に従事する者」に該当すれば,
どれだけ長時間労働をしても残業代は0円となり,
働き過ぎによる過労死・過労自殺を助長する危険がありますので,
「監視又は断続的労働に従事する者」に該当するか否かについては,
厳格に判断される必要があります。
本日もお読みいただきありがとうございます。
返信を残す
Want to join the discussion?Feel free to contribute!