懲戒処分の争い方と懲戒処分の公表が名誉毀損になる場合

1 懲戒処分の争い方

 

 

労働事件では、懲戒処分についての相談はけっこう多いです。

 

 

労働者からすると、懲戒処分に納得がいかなかったり、

会社からすると、どのような事実をもとに

どの程度の重さの懲戒処分にすべきかで悩むことがあります。

 

 

 

特に、その懲戒処分が懲戒解雇となれば、

労働者が納得する可能性が減り、

裁判に発展することも多々あります。

 

 

労働者が懲戒処分をされた時、どうすればいいのでしょうか。

 

 

結論としては、労働者は、懲戒処分に該当する行為をしたのかどうか、

また、懲戒処分は重すぎないか、を検討することになります。

 

 

懲戒処分について、興味深い裁判例がありましたので、紹介します。

 

 

ロピア事件の横浜地裁令和元年10月10日判決です

(労働判例1216号5頁)。

 

 

この事件は、スーパーマーケットで働いていた労働者が、

店の商品をレジで精算することなく店外へ持ち帰ったことを理由に

懲戒解雇されてしまい、会社に対して、

懲戒解雇の無効を主張しました。

 

 

被告会社は、故意の窃盗であると主張しましたが、

原告の労働者が他の従業員がいる中で、

人目をはばかることなく、商品を持ち出し、

知人に送る予定であると説明していることから、

原告労働者の持ち帰り行為については、

故意の窃盗とはいえないと判断されました。

 

 

また、被告会社は、従業員が店内で買い物をする際の

ルールに違反したと主張しましたが、原告労働者は、

買い物ルールに一度だけ違反しただけであり、

自らの非を認めて謝罪し、持ち出した商品の価格を弁償したので、

被告会社に与えた実損害はなく、

一度の違反行為が懲戒解雇に相当するとはいえないと判断されました。

 

 

 

そのため、原告労働者の行為は、就業規則に記載された

懲戒事由に該当するか疑問があり、比較的軽微な違反行為に対して、

不相当に重い処分がなされたとして、懲戒解雇は無効と判断されました。

 

 

労働者に問題行動があったとしても、

その行為が本当に就業規則に記載されている

懲戒事由に該当するのかをよく吟味すると、

懲戒事由に該当しないと言える場合があるのです。

 

 

 また、労働者の問題行動が懲戒事由に該当するにしても、

不相当に重い懲戒処分がなされた場合には、

懲戒処分は無効になります。

 

 

2 懲戒処分の公表と名誉毀損

 

もう一つ、この事件では、懲戒処分の会社における公表が

名誉毀損に当たると判断されました。

 

 

被告会社は、原告労働者について、氏名を明らかにした上で、

原告労働者が窃盗をしたこと、計画性が高く、

情状酌量の余地がないため、懲戒解雇したことを記載した文書が、

会社内で2週間ほど掲示されました。

 

 

この掲示については、原告労働者が故意の窃盗行為をしたと

言えないのにもかかわらず、故意の窃盗行為に及んだことを

広く公表されて、原告労働者の社会的評価が低下させられたとして、

名誉毀損が認められました。

 

 

この公表については、原告労働者の氏名を明記したこと、

誤った事実が記載されたことがポイントになったと思います。

 

 

会社としては、懲戒処分について、再発防止のために、

会社内で公表することは、違法ではないのですが、

氏名を公表しないことや、事実を正確に端的に記載する

といった配慮が求められるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働者が会社の破産手続において未払残業代の情報を入手するために使える破産管財人の情報提供努力義務

1 会社の破産手続

 

 

昨日は、会社が破産手続を開始した後には、

未払賃金立替払制度を利用して、未払賃金の8割を確保することと、

債権届出を忘れないことが重要であることについて解説しました。

 

 

会社が破産手続を開始した後に、

労働者がもう一つ活用できるものとして、

破産管財人の情報提供努力義務があります。

 

 

破産管財人とは、会社の破産手続開始決定と同時に、

裁判所から選任される、中立的な立場の弁護士です。

 

 

 

破産管財人は、破産会社の財産を管理し、その財産を換価して、

破産会社の債権者に対して配当を実施する仕事をします。

 

 

2 破産管財人の情報提供努力義務

 

 

破産法86条には、破産管財人は、破産債権である

給料の請求権や退職手当の請求権を有する労働者に対して、

破産手続に参加するのに必要な情報を提供するように

努めなければならない、と規定されています。

 

 

これを破産管財人の情報提供努力義務といいます。

 

 

会社の破産手続では、給料が未払となっている労働者は、

破産債権者として、裁判所に債権届出をして、

破産手続に参加しなければ、配当を受けることができません。

 

 

とはいえ、給料や退職手当の請求権については、

それに関する賃金台帳、タイムカード、退職金規定といった資料が、

破産する会社の手元に存在して、労働者が、

それらの資料を持っていないことが多く、

労働者は、破産会社に対して、

自分がいくらの未払の給料、残業代、退職金

を有しているのか分からないことが多いのです。

 

 

破産管財人は、破産会社の手元にある労働債権に関する資料を

引き継ぐので、その資料に基づいて、

破産債権者である労働者に対して、

必要な情報を提供するように努めなければならないのです。

 

 

破産管財人は、破産債権者である労働者に対して、

労働債権の額及び原因に関する情報を提供します。

 

 

具体的には、出勤日数・残業時間・早退時間等の集計、

各種手当の金額、退職金の計算といった情報です。

 

 

3 未払残業代で活用できる

 

 

特に、未払残業代については、労働者側に資料がほとんどなく、

残業代の計算は複雑なので、労働者が、

正確な残業代を自分で計算することは困難なのですが、

破産管財人に対して、自分の未払残業代がいくらあるのかを

問い合わせれば、破産管財人が、タイムカードなどについて、

過去にさかのぼって調査をして、

いくらの未払残業代があるなどの情報を提供してくれるのです。

 

 

労働者は、破産管財人から提供された未払残業代の情報をもとに、

債権届出書を作成して、裁判所に提出すればよいことになります。

 

 

もっとも、破産会社に財産がほとんどなかったり、

破産管財人が破産会社の財産を換価しても、

会社の財産に対して担保を持っている銀行が先に回収したり、

優先権のある租税債権に先に支払われたりして、

労働者に配当が回ってこないこともよくあります。

 

 

 

そのため、破産管財人から未払残業代の情報をもらっても、

未払残業代が全額返済されることはまずないので、

いくらかでも配当があればラッキー

という心境でいるのがいいと思います。

 

 

労働者は、破産手続において、破産管財人の情報提供努力義務

を活用することを検討してみるべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社が破産した後は未払賃金立替払制度を利用する

1 会社が破産した後に未払賃金を確保するためには

 

 

昨日は、会社が倒産する前に、労働者が賃金請求権を

確保するための回収方法について解説しました。

 

 

本日は、会社が倒産した後に、

労働者が未払賃金を確保するための方法について解説します。

 

 

会社の倒産手続には、破産、民事再生、会社更生などがありますが、

実務で最も利用されている破産手続に基づいて解説します。

 

 

 

会社が裁判所に破産の申し立てをして、

裁判所が検討した結果、破産の要件を満たすと判断した場合、

裁判所は、破産手続開始決定を出します。

 

 

裁判所の破産手続開始決定と同時に、裁判所は、

破産管財人という弁護士を選任します。

 

 

破産管財人は、破産会社の財産を管理し、

その財産を売却して、金銭に換えて、

債権者に配当する仕事をします。

 

 

破産会社の財産は、破産管財人が管理するので、

一般の債権者は、破産会社の財産に対して

差し押さえなどができなくなります。

 

 

また、未払賃金債権については、

破産手続開始前3ヶ月間のものについては、

財団債権になります(破産法149条1項)。

 

 

財団債権とは、破産手続によらないで、

支払を受けられる優先的な債権のことです。

 

 

もっとも、未払賃金債権が財団債権になっても、

破産会社の財産がほとんどなければ、実際には回収できません。

 

 

結局のところ、会社の破産手続開始決定がでると、

労働者としては、何もできないのが現実です。

 

 

2 未払賃金立替払制度

 

 

そこで、会社の破産手続が開始した後に、

労働者が未払賃金債権を確保するための方法として、

未払賃金立替払制度があります。

 

 

 

この制度は、会社が破産して、

賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、

その未払賃金の一部を国が、会社に代わって立替払するものです。

 

 

https://www.johas.go.jp/tabid/687/Default.aspx

 

 

立替払の対象となる労働者は、

裁判所への破産の申立日の6ヶ月前から

2年間に破産会社を退職した者です。

 

 

立替払の対象となる未払賃金は、

退職日の6ヶ月前の日から立替払請求の日の前日までの間に

支払期日が到来している定期賃金と退職手当です。

 

 

例えば、賃金の支払日が毎月末日で、

2020年8月31日に退職した場合、

2020年3月から8月までの期間に

未払となっている賃金の立替払を請求できるわけです。

 

 

立替払される金額は、未払賃金総額の8割で、

年齢による上限額が定められています。

 

 

45歳以上の場合、立替払上限額は296万円、

30歳以上45歳未満の場合、立替払上限額は176万円、

30歳未満の場合、立替払上限額は88万円となっています。

 

 

ざっくりと言えば、給料の未払の8割が

国から支払われるということです。

 

 

この立替払の請求には、期限があり、

裁判所の破産開始決定日の翌日から2年以内にする必要があるので、

注意してください。

 

 

この立替払を受けるためには、労働者は、

所定の立替払請求書に、破産管財人の証明をもらって、

その立替払請求書を、独立行政法人労働者健康安全機構に郵送します。

 

 

機構が、送られてきた立替払請求書を審査をして、

立替払の決定をして、労働者の預金口座に立替払金の振り込みを行います。

 

 

3 債権届出をする

 

 

この未払賃金立替払の請求と同時に、

裁判所へ債権届出をすることを忘れないようにしてください。

 

 

裁判所から、労働者のもとに債権届出書が届きますので、

期限までに忘れずに、必要事項を記載して、送付してください。

 

 

もし、破産会社の財産を換価した結果、

債権者に配当できる場合には、

立替払されなかった2割分の未払賃金のうちのいくらかは、

配当で支払われることがあるかもしれません。

 

 

このように、会社が破産した後は、

未払賃金立替払制度を利用することと

債権届出をすることがポイントになります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社が破産する前に未払賃金請求権を回収する方法

1 コロナ倒産が増えています

 

 

新型コロナウイルス感染拡大の影響で業績悪化を理由とする、

会社の倒産が増えています。

 

 

 

帝国データバンクの情報によりますと、

2020年8月31日付の新型コロナウイルス関連倒産は、

全国で477件にのぼるようです。

 

 

https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html

 

 

会社が倒産する時代に、労働者は、

自分の賃金や退職金といった労働債権を、

会社から回収するにはどうすればいいかを検討する必要があります。

 

 

本日は、会社が倒産する際の労働債権の確保の方法について解説します。

 

 

2 会社の破産手続

 

 

会社が法的に倒産する際には、

破産、民事再生、会社更生といった手続がありますが、

実務上一番多いのは破産手続なので、破産手続を前提に説明します。

 

 

裁判所において、会社の破産手続開始決定がでると、

会社に対する裁判手続は中断し(破産法44条1項)、

会社に対する強制執行手続は効力を失います(破産法42条1項)。

 

 

そして、会社の破産手続開始決定がでると、

労働者は、基本的には、破産手続によらなければ、

未払賃金の請求などはできません(破産法100条1項)。

 

 

また、破産手続開始前の3ヶ月間の未払賃金の請求権は、

破産手続によらなくても、優先的に支払ってもらえる財団債権として、

優遇されますが(破産法149条1項)、

破産する会社に財産が残っていなければ、

未払賃金の請求権が財団債権になっても、

結局、回収できなくなります。

 

 

そのため、会社が破産する前に、会社が危機的な状況に陥り、

給料が支払われなくなったら、迅速に、

未払賃金の請求権の回収に動き出す必要があります。

 

 

3 売掛債権と動産の譲受

 

 

会社が破産する前に、未払賃金の請求権を回収するための方法として、

労働者が会社の売掛債権や動産を譲り受けるという方法があります。

 

 

会社の取引先に対する売掛債権を、労働者が会社から譲り受けて、

労働者が会社の取引先から売掛債権の支払を受けて,

未払賃金の請求権を確保するのです。

 

 

これは、債権譲渡という方法で、会社が取引先に対して、

会社の取引先に対する売掛債権を労働者に譲渡しましたということを、

確定日付のある証書で通知する必要があります(民法467条)。

 

 

また、会社から、機材、貴金属、美術品などの動産を譲り受けて、

その動産を売却して金銭を得るという、回収方法もあります。

 

 

これらの方法は、労働債権よりも優先する、

税金や社会保険料の公租公課の債権に優越できますが、

会社の社長が夜逃げしてしまうと、実行は困難となります。

 

 

4 一般先取特権に基づく差押

 

 

会社が倒産する前の、未払賃金の請求権を回収するための

方法のもう一つが、一般先取特権に基づく差押という方法です。

 

 

 

民法308条で、未払賃金の請求権には、先取特権という、

会社の目的物を強制的に換価して、

優先的な支払を受ける権利が認められているのです。

 

 

一般先取特権の場合、裁判手続を経ることなく、いきなり、

会社の財産に対して、差押をすることができるので、

迅速な債権回収が実現できるのです。

 

 

この一般先取特権による差押をするには、裁判所に対して、

雇用関係の存在と未払賃金債権の額を証明しなければなりません

(民事執行法181条1項4号、193条)。

 

 

この証明のために活用できるのが、未払労働債権確認書です。

 

 

各労働者の未払労働債権の内容・種別と金額を

会社との間で確認する文書のことです。

 

 

会社の代表者印を押した未払労働債権確認書と、

代表者印の印鑑登録証明書を裁判所に提出すれば、

裁判所は、迅速に差押命令を出してくれるのです。

 

 

会社の売掛債権を差し押さえて、

会社に差押命令が送達されてから1週間が経過した後に、

取引先に対して、売掛債権の取立を行って、回収します。

 

 

このように、会社が破産する前に、

未払賃金の請求権を回収する方法がありますので、

会社が危なくなったら、弁護士に相談して、

迅速に,回収に動いてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

懲戒処分の前には弁明の機会を与えることが必要

1 適正な手続

 

 

現在、私が担当している、懲戒処分を争う事件で、

相手方の会社は、懲戒処分をくだす前に、労働者に対して、

言い分を聞く機会を与えないまま、懲戒処分をくだしました。

 

 

会社が懲戒処分をくだすにあたり、懲戒処分の前に、

労働者に弁明の機会を与える必要があるのかが問題となります。

 

 

労働者の立場からすれば、

弁明の機会が与えられずになされた

懲戒処分は無効であるとして、

弁明の機会が与えられていなかったことを

有利に主張していくことになります。

 

 

懲戒処分は、刑罰に類似する制裁罰としての性格があります。

 

 

 

刑罰を科すには、刑事裁判で、裁判官が、

被告人の言い分を聞き、証拠を取り調べて、判決をくだします。

 

 

仮に、有罪になるにしても、自分の言い分を何も言わないまま、

処罰されるよりも、自分の言い分を述べて処罰された方が、納得できます。

 

 

また、ごくまれにですが、被告人の言い分にも

一理あるということで、無罪になることもあります。

 

 

このように、刑事事件では、被告人の言い分を聞くという、

適正な手続が保障されていることから、国家は、被告人に対して、

懲役などの刑罰を科すことができるのです。

 

 

2 弁明の機会の付与

 

 

この刑罰の考え方を、懲戒処分にもパラレルに適用すれば、

会社が懲戒処分を行うにあたっては、

適正な手続を踏むことが必要となります。

 

 

就業規則に、労働組合との協議や懲戒委員会の開催

などの手続を経ることが規定されている場合に、

その手続を経ずになされた懲戒処分は原則として無効となります。

 

 

また、就業規則に労働者に弁明の機会を与えることが

明記されていなかったとしても、会社が懲戒処分の前に、

労働者に対して、弁明の機会を与えなかった場合、

懲戒処分が無効になることがあります。

 

 

会社が、労働者の言い分に真摯に耳を傾ければ、

労働者の言い分が正しかったことが判明して、そもそも、

労働者が懲戒処分に該当する行為をしていなかった、

という結論に至る可能性もありますので、

たとえ、就業規則に、弁明の機会を与えることが明記されていなくても、

会社は、懲戒処分の前に、労働者に対して、

弁明の機会を与えるべきです。

 

 

 

労働者としては、懲戒処分をされたにもかかわらず、

弁明の機会が与えられていなかった場合には、

そのことを理由に、懲戒処分は無効であると主張して、

懲戒処分の効力を争うことを検討すべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

整理解雇の事件で労働審判前に解決金302万円を支払ってもらうことで示談が成立したケース

1 不倫を理由に解雇?

 

 

最近、私が担当した事件で、

うまく解決できたケースがありますので、紹介します。

 

 

そのケースは、整理解雇の事案だったので、

今、新型コロナウイルスの感染拡大による

業績悪化を理由とする整理解雇が増えている状況において、

参考になると思います。

 

 

私のクライアントは、石川県内の葬儀会社に勤務していたところ、

代表者から、あらぬ疑いをかけられて、突然解雇させられてしまいました。

 

 

あらぬ疑いとは、クライアントが不倫をしているというものでした。

 

 

 

クライアントは、不倫をしておらず、抗議しましたが、

代表者は、クライアントの言い分に耳を傾けることなく、

解雇を断行したのでした。

 

 

この解雇に納得のいかないクライアントは、会社に対して、

解雇理由を明らかにするために、解雇理由証明書の交付を求めました。

 

 

2 解雇理由証明書の交付を求める

 

 

会社は、労働者から、解雇理由証明書の交付を求められた場合、

遅滞なくこれを交付しなければならず(労働基準法22条1項)、

往々にして、会社は解雇理由を明らかにしていないことが多いので、

労働者が解雇された場合には、会社に対して、

解雇理由証明書の交付を求めていきます。

 

 

解雇の裁判では、会社が主張している解雇理由について、

労働者が、一つ一つ反論していくことになり、

反論の対象を限定されるためにも、

解雇理由証明書を交付させることは重要です。

 

 

相手方の会社から交付された解雇理由証明書には、

「会社業績不振のため、人件費削減の措置のため」と記載されており、

クライアントが会社から口頭で聞かされた、

不倫をしているという解雇理由とは異なるものでした。

 

 

会社から、口頭で聞いていたのとは異なる解雇理由が主張され、

クライアントは、ますます納得がいかなくなり、

私に法律相談をされました。

 

 

このように、会社の真の解雇理由と、

実際に解雇理由証明書に記載される解雇理由が異なることは、

実務上よくあります。

 

 

すなわち、会社が真の解雇理由を正直に記載すれば、

解雇が無効になるケースでは、会社は真の解雇理由を隠して、

もっともらしい解雇理由をとりつくろうとするのです。

 

 

このようなケースでは、会社が主張する解雇理由が争点になるのですが、

労働者としては、会社が主張する解雇理由が無効であると主張しつつ、

真の解雇理由についても主張していきます。

 

3 整理解雇の4要件(要素)を検討する

 

 

さて、クライアントが不倫をしていたことを理由とする解雇は

当然に無効になりますが、会社が主張してきた、

業績不振を理由とする解雇は、

簡単に無効になるとは限りません。

 

 

業績不振を理由とする解雇は、整理解雇といい、

整理解雇は、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、

③人選の合理性、④手続の相当性の4つの要件(要素)を総合考慮して、

無効となるかが判断されます。

 

 

クライアントが解雇された時期が、ちょうど、

新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期なので、

三密を避けるために葬儀が減り、

葬儀会社の売上が減少していることが予想されました。

 

 

 

また、会社から開示された決算書を見ると、

新型コロナウイルスの感染拡大の前から、

会社の売上が落ちており、さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が、

売上の減少に追い打ちをかける状況でした。

 

 

そのため、①人員削減の必要性は認められそうでした。

 

 

もっとも、相手方の会社の決算書を税理士に分析してもらったところ、

外注費と接待交際費を削減できる余地があることがわかりました。

 

 

また、相手方の会社では、希望退職の募集がされておらず、

雇用調整助成金を利用していませんでした。

 

 

これまでのブログに記載していますが、

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、

雇用調整助成金が拡充されており、業績が悪化しても、

会社は、労働者を解雇するのではなく、休業手当を支払って、

休業させて、雇用を維持することが求められているのです。

 

 

そのため、相手方の会社は、

②解雇回避努力を尽くしていなかったのです。

 

 

また、クライアントは、相手方の会社が資金繰りに苦しんでいた時に、

一時的に自分の預金をおろして、会社に貸付をして、

会社の資金ショートを防ぐなどの貢献をしており、

クライアントを人員削減の対象とすることに

合理な理由はありませんでした(③の要件を満たさない)。

 

 

そして、解雇理由が途中で変わるなど、相手方会社は、

解雇の理由について、充分な説明をしていませんでした

(④の要件を満たさない)。

 

 

そのため、相手方の会社は、①の要件を満たすものの、

②~④の要件を満たさないので、整理解雇は無効になると考えました。

 

 

そこで、労働審判を申し立てたところ、相手方は、

期日の1週間前に解決金を支払うので、

裁判を終わりにしたいと白旗を挙げてきました。

 

 

クライアントの1年分の賃金から、退職金と解雇予告手当をひいた、

302万円を相手方会社に支払ってもらうことで示談が成立しました。

 

 

整理解雇の事案では、会社の決算書をていねいに分析して、

労働者に有利に使えるところを

ピックアップしていくことが重要になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

コロナ解雇を争うときは会社が雇用調整助成金を活用したかをチェックする

1 コロナ解雇が無効と判断された仙台地裁の決定

 

 

昨日のブログで紹介した、整理解雇の仮処分の続きを記載します。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化を理由に

整理解雇されたタクシー会社の運転手が、

労働者としての仮の地位の確認と賃金の仮払いを請求した、

仮処分の手続において、仙台地裁は、2020年8月21日、

整理解雇は無効であるとして、

休業手当相当額の一部の支払いを会社に命じる決定をだしました。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/771b4ea2d7714f4ab2fd38067732d7d67ab05a13

 

 

整理解雇が無効となった理由の一つに、会社は、

雇用調整助成金を申請すれば、タクシー運転手を

休ませた際に支払う休業手当の大半を補填できたと指摘して、

解雇回避努力を尽くしていなかったということが挙げられます。

 

 

すなわち、新型コロナウイルスの感染拡大による

業績悪化を理由とする整理解雇では、

雇用調整助成金を活用して、休業手当を支払って休業させて

雇用を維持したかが重要なポイントになるのです。

 

 

 

本日は、整理解雇の4要件(4要素)の1つである

解雇回避努力について解説します。

 

 

2 整理解雇の4要件(4要素)

 

 

まず、整理解雇とは、会社の業績悪化を理由とする解雇のことで、

いわゆるリストラのことです。

 

 

会社の業績が悪化するのは、経営者の経営手法に問題があったり、

新型コロナウイルスのように会社の外部要因に原因があったりするもので、

労働者に会社の業績悪化の責任があることは、基本的にありません。

 

 

労働者に責任がないのに、解雇されるわけですから、

整理解雇は、厳格に審査される必要があり、

以下の4つの要件(要素)を満たす必要があるのです。

 

 

①人員削減の必要性

 

 

 ②解雇回避努力

 

 

 ③人選の合理性

 

 

 ④手続の相当性

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化を理由とする

整理解雇の場合、会社の売上が減り、

利益も減少していることがほとんどですので、

①の人員削減の必要性が認められることが多く、

労働者は、この点は争いにくいです。

 

 

 

3 解雇回避努力

 

 

次に、会社は、解雇を回避するための努力を

尽くさなければならないところ、具体的な措置としては、

以下のものがあります。

 

 

・広告費,交通費、交際費等の経費削減

 

 

・役員報酬の削減

 

 

・残業の削減

 

 

・中途採用、再雇用の停止

 

 

・新規採用の停止、縮小

 

 

・配転、出向、転籍の実施

 

 

・非正規雇用労働者との労働契約の解消

 

 

・希望退職の募集

 

 

新型コロナウイルス感染拡大の前であれば、これらの中で、

希望退職の募集が、解雇回避努力として重視されていました。

 

 

新型コロナウイルス感染拡大の後では、

仙台地裁の決定でも指摘されているように、

解雇回避努力として、雇用調整助成金を活用して、

労働者を休業させて休業手当を支払って雇用を維持したかが、

重視されます。

 

 

現時点において、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、

人の動きが鈍くなっている関係で、仕事がないため、

休業する場合、雇用調整助成金を活用すれば、

労働者に支払う休業手当の大半が国から支給されます。

 

 

政府は、雇用を守ることを最優先に考えており、

雇用調整助成金を拡充して、会社が労働者を解雇せずに、

休業しても、休業手当を支払って雇用を維持させようとしています。

 

 

雇用調整助成金は、やや手続が煩雑な点は否めませんが、

厚生労働省のホームページを参考にして申請すれば、国から支給されます。

 

 

このように、国が解雇回避のための政策を実施していて、

それが活用できるのに、雇用調整助成金を活用せすに、

解雇した場合には、解雇回避努力を尽くしていないと判断されるわけです。

 

 

そのため、コロナ解雇された労働者は、

会社が雇用調整助成金を活用したのかを

チェックするようにしてください。

 

 

なお、仙台地裁の決定では、休業手当相当額の一部を支払う形で

賃金の仮払いを認めたようですが、これは、

会社の業績が悪化しているので、

会社の支払能力が考慮されたのかもしれません。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

コロナ解雇で活用される賃金仮払いの仮処分の手続とは

1 コロナ解雇で賃金仮払いの仮処分が認められる

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で

業績が悪化したことを理由に解雇されたタクシー運転手が、

会社に対して、労働者としての仮の地位の確認と、

賃金の仮払いを求めた仮処分手続において、8月21日、

仙台地裁は、解雇を無効として、

休業手当相当額の一部を支払うように決定をしたようです。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/771b4ea2d7714f4ab2fd38067732d7d67ab05a13

 

 

もっとも、労働者としての仮の地位の確認の請求は

認められなかったようです。

 

 

報道によりますと、裁判所は、雇用調整助成金を利用すれば、

運転手を休ませた際に支払う休業手当の大半が補填できたとして、

解雇回避努力を尽くしていないことから、

解雇は無効と判断したようです。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化により、

労働者が解雇されるケースが増えてくることが予想される中、

解雇が無効と判断されてよかったです。

 

 

 

本日は、仮処分の手続について解説します。

 

 

2 仮処分とは

 

 

まず、仙台地裁の事件では、仮処分という手続が利用されました。

 

 

通常の裁判は、提訴してから判決まで至るのに、

1年以上の時間がかかります。

 

 

1年以上時間をかけて、勝訴判決がでれば、

金銭の支払いを受けられますが、判決がでるまでは、

何の支払いもありません。

 

 

特に、解雇事件では、労働者は、仕事を失い、

収入が絶たれるので、再就職ができなければ、

勝訴判決がでるまで、生活できなくなります。

 

 

そうなれば、裁判を続けることができずに、

泣き寝入りをさせられる労働者が増えてしまいます。

 

 

このような事態を避けるために、判決が出るまでの期間、

会社から、労働者に対して、仮に賃金を支払わせれば、

労働者は、日々の生活をやりくりできて、

裁判を続けることができます。

 

 

そのため、通常の裁判手続で判決がでるまでの期間、暫定的に、

会社に賃金を支払わせるのが、賃金仮払いの仮処分という手続なのです。

 

 

この仮処分の手続ですが、仮とはいいながらも、

実際には、事件が最終的に解決するインパクトがあります。

 

 

基本的に、仮処分手続でくだされた決定は、

通常の裁判手続の判決でも同じような結論になることが多く、

裁判所のくだした決定に従って、事件が解決することがあります。

 

 

また、仮処分手続の中で、和解が試みられて、

事件が解決することもあります。

 

 

そして、仮処分の手続は、申し立てをしてから、

最初の裁判期日が指定されるのが早く、

手続が早く進行しますので、事件が迅速に解決します。

 

 

そのため、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で裁判所が、

なかなか裁判期日を指定しない場合でも、

比較的早くに手続が進むので、

新型コロナウイルスの感染拡大の状況において、

仮処分の手続は利用されました。

 

 

3 保全の必要性

 

 

もっとも、仮処分の手続で、賃金の仮払いが認められれて、

会社から労働者に賃金が支払われた場合、

労働者は、その賃金を生活費として使ってしまうので、

もし、仮処分の手続の後の通常の裁判手続で、

労働者が敗訴してしまったら、労働者は、

会社から支払いを受けた賃金を返還しなければならないのですが、

賃金を使ってしまっているので、返還できません。

 

 

このような観点から、仮処分の手続では、

保全の必要性という要件を満たす必要があるのです。

 

 

法律上は、保全の必要性について、

労働者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため、

と規定されています。

 

 

具体的には、仮処分がないまま

通常の裁判手続の判決を待っていたのでは、

労働者やその家族の生活が危機におちいることを言います。

 

 

 

労働者は、この保全の必要性について、

労働者に貯金などの資産があるか、

同居家族の収入があるか、

家計の状況などをもとに、

疎明しなければならないのです。

 

 

疎明とは、裁判官に対して、

一応確からしいという推測を得させる程度の証拠をあげることを言います。

 

 

この保全の必要性の疎明のハードルが高く、

貯金がたくさんあったり、

夫婦で共働きをしていたりしていた場合には、

保全の必要性は認められにくいです。

 

 

保全の必要性のハードルが高いので、

労働事件において仮処分手続は、

あまり多く利用されてはいませんでした。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化を原因とする、

タクシー会社の整理解雇の場合、タクシー運転手は高齢で、

貯蓄もなく、賃金仮払いがないと、

生活が困窮する方が多いことが予想され、

保全の必要性を疎明できる可能性があったため、

仮処分の手続が利用されたと考えられます。

 

 

そして、仙台地裁で実際に、一部ではありますが、

賃金の仮払いの仮処分が認められてよたったです。

 

 

長くなりましたので、続きは明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

人事考課による賃金の減額を争うポイント

1 人事考課による賃金の減額

 

 

現在、私が担当している未払残業代請求事件において、

人事考課による賃金の減額が有効になるかが争点となっています。

 

 

私のクライアントは、人事考課について何も説明を受けておらず、

短期間に基本給を約半分にまで減額されているため、

賃金の減額は無効であると主張しています。

 

 

人事考課による賃金の減額が無効になれば、

減額前の賃金で残業代を計算できるので、

クライアントが請求できる残業代がアップするのです。

 

 

また、会社からの人事考課がどのようになされて、

どうしてこの金額の賃金になるのか

不満に思っている労働者の方々もいるでしょう。

 

 

 

それでは、会社から人事考課を理由に賃金を減額されたら、

どのような場合に、賃金の減額が無効になるのでしょうか。

 

 

結論から言うと、人事考課が公正な評価に基づかない場合に、

会社の人事考課権の濫用として、

人事考課による賃金減額が無効になります。

 

 

2 人事考課とは

 

 

まず、人事考課とは、労働者の能力や成果を評価して

賃金や処遇を決定する制度です。

 

 

おおむね、年度のはじめに、会社と労働者との間で、

評価基準と達成目標を設定し、中間レビューや賞与評価を経て、

年度末に評価が行われます。

 

 

評価項目は、①成果(職務の達成度)、

②能力(知識・技能、理解・判断力など)、

③意欲・職務行動(能力を成果に向けてどのように発揮したか)、

④情意(勤務態度、協調性など)に分かれ、

これらが基本給や賞与の決定や処遇に反映されます。

 

 

3 公正な評価

 

 

次に、人事考課が公正であることが、

人事権行使の必須の要件となります。

 

 

賃金は、労働者にとって重要な生活原資であり、

人事考課はその先行手続なので、人事考課を公正に行うことは、

会社の賃金支払義務に内在する責務なのです。

 

 

すなわち、会社が恣意的に人事考課を行い、

不当に低い評価となって、賃金が減額されたのでは、

労働者は、生活原資を不当に減額されて、

生活が困窮するリスクがあるので、会社は、

労働者の納得が得られるように

公正に評価をする責務を負っているわけです。

 

 

そして、人事考課における、公正な評価の具体的な内容としては、

①会社は、公正・透明な評価制度を設計し、

②それに基づいて公正な評価を行い、

③評価結果を労働者に対して開示して説明することです。

 

 

人事考課の制度や手続の公正さ(①と③)が重要でして、

実際の評価(②)の命運を握っています。

 

 

そのため、人事考課の制度や手続(①と③)が

十分に整備されていない場合には、

実際の評価(②)の不公正さが推定されて、

人事権を濫用したとされます。

 

 

 

実際の評価の部分(②)については、

会社の裁量が認められやすくて争いにくいですが、

問題となっている人事考課の制度や手続(①と③)については、

就業規則を検討したり、

実際に会社からどのような説明を受けたかなどによって、

人事権の濫用であると主張しやすいです。

 

 

問題となっている人事考課の制度や手続(①と③)が

十分に整備されているかについては、

具体的には、次の観点から検討します。

 

 

ⓐ透明性・具体性のある評価項目・基準の整備があるか。

 

 

ⓑ評価の納得性を確保するための評価方法が導入されているか。

 

 

ⓒ評価を処遇に反映されるためのルールが整備されているか。

 

 

ⓓ個々の労働者との間の面談・説明・情報提供がなされているか。

 

 

ⓔそれらルールの労働者への説明・情報提供・開示がなされているか

 

 

4 賃金の変動幅にも注意

 

 

加えて、人事考課による賃金の減額については、

減額できる賃金の幅に、一定の制約があると考えられます。

 

 

あまりにも大きな幅の賃金の減額は、

労働者の生活に大きな打撃を与えることになりますし、

制約のない大幅な賃金の減額は、退職強要などの

不当な動機も目的のために用いられることがあるからです。

 

 

まとめますと、人事考課による賃金の減額を争うときには、

人事考課の制度や手続が十分に整備されているか,

大幅な賃金の減額になっていないかを検討することが重要になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社から休業手当が支払われない場合には新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金を申請する

1 新型コロナウイルスの第2波の真っただ中

 

 

日本感染症学会の理事長が明言したように,

多くの方々は,現在の新型コロナウイルスの感染状況について,

「第2波の真っただ中」という認識を抱いていると思います。

 

 

 

多くの都道府県で,新規の感染者数が増えており,

クラスターもあちこちで発生しています。

 

 

一部の繁華街では休業要請がされていました。

 

 

このように新型コロナウイルスの感染が拡大してくると,

勤務先が休業することになり,

休業期間中の賃金がどうなるのかが問題となります。

 

 

2 休業期間中の賃金の支払はどうなるのか

 

 

結論からすると,緊急事態宣言が出ていない現状において,

都道府県知事から休業の要請があり,これに応じたとしても,

会社が自主的に協力しただけであり,

会社側の事情に基づく経営判断に過ぎず,

労働者は,民法536条2項に基づいて,

会社に対して,賃金の全額を請求すべきです。

 

 

場合によっては,会社側が休業に応じざるを得ない状況であれば

労働基準法26条に基づき,最低でも,

平均賃金の6割以上の休業手当を請求できます。

 

 

しかし,新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,

売上が落ちている会社も多く,

休業手当すら支払われていない労働者も多くいます。

 

 

新型コロナウイルスに関する労働問題の電話相談を実施すると,

ほとんどの相談が,休業期間中に賃金が支払われないというものです。

 

 

休業期間中に,賃金が支払われないと

労働者は生活ができなくなるので,大問題です。

 

 

3 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

 

 

そこで,会社が休業期間中に労働者に賃金を支払わない場合に,

国が労働者に対して,直接,

支援金・給付金を支給する制度が始まっています。

 

 

これを「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

といいます。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html

 

 

この制度は,新型コロナウイルス感染症及びその蔓延防止のための

措置の影響により中小事業主に雇用される労働者が

事業主の指示により休業し,

休業中に休業手当を受けることができない場合に

休業前賃金の8割(日額上限11,000円)を支給するものです。

 

 

この制度が始まって約1ヶ月が経過し,

8月19日の厚生労働省の発表によりますと,

約9万2000件の申請があり,

約3万7000件の支給が決定されたようです。

 

 

 

やはり,休業期間中に賃金が支払われずに

困っている労働者が多いことがよくわかりました。

 

 

この制度ができたおかげで,会社から休業手当が支払われなくても,

国に対して,直接,支援金・給付金を請求できて,

安心できますので,画期的だと思います。

 

 

この制度では,労働者が提出しなければならない支給要件確認書に,

事業主が休業手当を支払っていないことを記載する欄があります。

 

 

会社がこの欄に正直に休業手当を支払っていないことを記載すれば,

労働基準法26条に違反していることを自白することになり,

会社の協力を得られにくいことが懸念されました。

 

 

この点については,厚生労働省のQ&Aにおいて,

会社が休業手当を支払っていないことの記述は,

「労働基準法26条の休業手当の支払義務の有無の判断に

影響することはありません。」と記載されているので,

会社としては,ありのままを記載すればいいわけです。

 

 

また,会社が支給要件確認書に記載することを拒否しても,

労働者は,会社が協力してくれないことを記載して,

申請すればいいのです。

 

 

もっとも,このような場合には,労働局が会社に対して,

報告を求めることになり,会社からの報告があるまで,

審査が進まず,支給までに時間がかかることが懸念されています。

 

 

労働者に対する迅速な支給が求められますので,

会社は,労働局に対して,迅速に報告をすべきです。

 

 

厚生労働省の発表を見るに,支給までに

そこまで時間がかかっているとは思われないです。

 

 

他にも,大企業の非正規雇用労働者は

この制度の対象になっていなかったり,

会社から6割の休業手当をもらうと

国から8割の支援金・支給金がもらえなくなるという

不均衡が生じています。

 

 

このような不均衡はあるものの,

休業期間中に賃金が支払われない労働者を救済する制度として,

貴重ですので,会社から休業期間中に賃金が支払われない場合には,

この支援金・支給金の申請をしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。