労働者が会社の破産手続において未払残業代の情報を入手するために使える破産管財人の情報提供努力義務

1 会社の破産手続

 

 

昨日は、会社が破産手続を開始した後には、

未払賃金立替払制度を利用して、未払賃金の8割を確保することと、

債権届出を忘れないことが重要であることについて解説しました。

 

 

会社が破産手続を開始した後に、

労働者がもう一つ活用できるものとして、

破産管財人の情報提供努力義務があります。

 

 

破産管財人とは、会社の破産手続開始決定と同時に、

裁判所から選任される、中立的な立場の弁護士です。

 

 

 

破産管財人は、破産会社の財産を管理し、その財産を換価して、

破産会社の債権者に対して配当を実施する仕事をします。

 

 

2 破産管財人の情報提供努力義務

 

 

破産法86条には、破産管財人は、破産債権である

給料の請求権や退職手当の請求権を有する労働者に対して、

破産手続に参加するのに必要な情報を提供するように

努めなければならない、と規定されています。

 

 

これを破産管財人の情報提供努力義務といいます。

 

 

会社の破産手続では、給料が未払となっている労働者は、

破産債権者として、裁判所に債権届出をして、

破産手続に参加しなければ、配当を受けることができません。

 

 

とはいえ、給料や退職手当の請求権については、

それに関する賃金台帳、タイムカード、退職金規定といった資料が、

破産する会社の手元に存在して、労働者が、

それらの資料を持っていないことが多く、

労働者は、破産会社に対して、

自分がいくらの未払の給料、残業代、退職金

を有しているのか分からないことが多いのです。

 

 

破産管財人は、破産会社の手元にある労働債権に関する資料を

引き継ぐので、その資料に基づいて、

破産債権者である労働者に対して、

必要な情報を提供するように努めなければならないのです。

 

 

破産管財人は、破産債権者である労働者に対して、

労働債権の額及び原因に関する情報を提供します。

 

 

具体的には、出勤日数・残業時間・早退時間等の集計、

各種手当の金額、退職金の計算といった情報です。

 

 

3 未払残業代で活用できる

 

 

特に、未払残業代については、労働者側に資料がほとんどなく、

残業代の計算は複雑なので、労働者が、

正確な残業代を自分で計算することは困難なのですが、

破産管財人に対して、自分の未払残業代がいくらあるのかを

問い合わせれば、破産管財人が、タイムカードなどについて、

過去にさかのぼって調査をして、

いくらの未払残業代があるなどの情報を提供してくれるのです。

 

 

労働者は、破産管財人から提供された未払残業代の情報をもとに、

債権届出書を作成して、裁判所に提出すればよいことになります。

 

 

もっとも、破産会社に財産がほとんどなかったり、

破産管財人が破産会社の財産を換価しても、

会社の財産に対して担保を持っている銀行が先に回収したり、

優先権のある租税債権に先に支払われたりして、

労働者に配当が回ってこないこともよくあります。

 

 

 

そのため、破産管財人から未払残業代の情報をもらっても、

未払残業代が全額返済されることはまずないので、

いくらかでも配当があればラッキー

という心境でいるのがいいと思います。

 

 

労働者は、破産手続において、破産管財人の情報提供努力義務

を活用することを検討してみるべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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