会社が破産した後は未払賃金立替払制度を利用する
1 会社が破産した後に未払賃金を確保するためには
昨日は、会社が倒産する前に、労働者が賃金請求権を
確保するための回収方法について解説しました。
本日は、会社が倒産した後に、
労働者が未払賃金を確保するための方法について解説します。
会社の倒産手続には、破産、民事再生、会社更生などがありますが、
実務で最も利用されている破産手続に基づいて解説します。
会社が裁判所に破産の申し立てをして、
裁判所が検討した結果、破産の要件を満たすと判断した場合、
裁判所は、破産手続開始決定を出します。
裁判所の破産手続開始決定と同時に、裁判所は、
破産管財人という弁護士を選任します。
破産管財人は、破産会社の財産を管理し、
その財産を売却して、金銭に換えて、
債権者に配当する仕事をします。
破産会社の財産は、破産管財人が管理するので、
一般の債権者は、破産会社の財産に対して
差し押さえなどができなくなります。
また、未払賃金債権については、
破産手続開始前3ヶ月間のものについては、
財団債権になります(破産法149条1項)。
財団債権とは、破産手続によらないで、
支払を受けられる優先的な債権のことです。
もっとも、未払賃金債権が財団債権になっても、
破産会社の財産がほとんどなければ、実際には回収できません。
結局のところ、会社の破産手続開始決定がでると、
労働者としては、何もできないのが現実です。
2 未払賃金立替払制度
そこで、会社の破産手続が開始した後に、
労働者が未払賃金債権を確保するための方法として、
未払賃金立替払制度があります。
この制度は、会社が破産して、
賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、
その未払賃金の一部を国が、会社に代わって立替払するものです。
https://www.johas.go.jp/tabid/687/Default.aspx
立替払の対象となる労働者は、
裁判所への破産の申立日の6ヶ月前から
2年間に破産会社を退職した者です。
立替払の対象となる未払賃金は、
退職日の6ヶ月前の日から立替払請求の日の前日までの間に
支払期日が到来している定期賃金と退職手当です。
例えば、賃金の支払日が毎月末日で、
2020年8月31日に退職した場合、
2020年3月から8月までの期間に
未払となっている賃金の立替払を請求できるわけです。
立替払される金額は、未払賃金総額の8割で、
年齢による上限額が定められています。
45歳以上の場合、立替払上限額は296万円、
30歳以上45歳未満の場合、立替払上限額は176万円、
30歳未満の場合、立替払上限額は88万円となっています。
ざっくりと言えば、給料の未払の8割が
国から支払われるということです。
この立替払の請求には、期限があり、
裁判所の破産開始決定日の翌日から2年以内にする必要があるので、
注意してください。
この立替払を受けるためには、労働者は、
所定の立替払請求書に、破産管財人の証明をもらって、
その立替払請求書を、独立行政法人労働者健康安全機構に郵送します。
機構が、送られてきた立替払請求書を審査をして、
立替払の決定をして、労働者の預金口座に立替払金の振り込みを行います。
3 債権届出をする
この未払賃金立替払の請求と同時に、
裁判所へ債権届出をすることを忘れないようにしてください。
裁判所から、労働者のもとに債権届出書が届きますので、
期限までに忘れずに、必要事項を記載して、送付してください。
もし、破産会社の財産を換価した結果、
債権者に配当できる場合には、
立替払されなかった2割分の未払賃金のうちのいくらかは、
配当で支払われることがあるかもしれません。
このように、会社が破産した後は、
未払賃金立替払制度を利用することと
債権届出をすることがポイントになります。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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