早く労働事件が解決できる労働審判の手続
1 労働事件における裁判手続
労働者側の弁護士が労働事件を受任した場合,
まずは,会社側と交渉を行います。
会社側に弁護士が就くことも多く,会社側の弁護士と交渉して,
話し合いで事件が解決することもよくあります。
もっとも,交渉では話し合いがまとまらないときには,
裁判手続に移行します。
労働事件以外の民事事件では,
訴訟や民事調停という手続を選択することになりますが,
労働事件では,労働審判という手続を選択することが可能です。
そして,労働審判には,訴訟にはないメリットがあり,
私は,労働事件を解決するに当たり,労働審判をよく利用します。
本日は,労働審判のメリットについて解説します。
2 労働審判とは
労働審判とは,①個別労働関係民事紛争について,
②裁判官と労使の専門委員で構成される労働審判委員会が,
③事件の審理(争点整理,証拠調べ等)を行うとともに,
④調停(話し合いによる紛争解決)を試み,
⑤調停が成立しない場合には,労働審判委員会が「労働審判」
(通常の訴訟における判決に相当するもの)を出す裁判手続です。
訴訟では,裁判官が審理しますが,労働審判では,裁判官の他に,
労働者側から選任された労働審判員と
使用者側から選任された労働審判員が
審理に加わる点に大きな特徴があります。
裁判官ではない労使から選任された労働審判員が手続に関与するのは,
労使関係や労働現場の実情について十分な知識,経験を有する者を
審理に参加させることで,紛争の実情に即した適正な解決を図るためです。
私がこれまで経験した労働審判では,
労働審判員の方々は,真摯に事件に取り組み,
事件を解決しようという熱意を持って,担当していました。
私の個人的な印象ですが,
労働者側の労働審判員の方は,労働者にやや厳しく,
使用者側の労働審判員の方は,使用者にやや厳しい気がします。
3 労働審判では早く事件が解決する
労働審判の最大のメリットは,早く事件が解決することです。
労働審判は,申し立てをしてから概ね40日以内に
第1回の期日が指定され,申し立てから概ね3ヶ月程度の間に
3回の期日が設けられます。
労働審判は,3回以内の期日で審理を
終結させなければならないので,手続が迅速に進みます。
第1回の期日までに,必要な証拠は概ね提出され,
第1回の期日で,労働審判委員会は,
労働者側と使用者側に事実の聴取を行い,
おおよその心証を固めます。
そして,第2回以降に調停が試みられて,
どのような条件であれば,調停がまとまるかについて,
交渉が実施されます。
調停については,会社から労働者に対して,
いくらの金銭を支払えば,調停がまとまるかが大きなポイントになり,
金額の交渉が中心となります。
最近,私が担当した2つの労働審判の手続の状況について紹介します。
1つの事件は,5月中旬に申し立てをして,
第1回期日が6月下旬,第2回期日が7月上旬,
第3回期日が7月下旬に実施されて,
第3回期日で調停が成立しました。
申し立てから約2ヶ月で解決しました。
もう1つの事件は,4月下旬に申し立てをして,
第1回期日が6月中旬,第2回期日が7月中旬,
第3回期日が8月中旬に実施されて,
第3回期日で調停が成立しました。
申し立てから約4ヶ月で解決しました。
この2つの事件では,会社が労働者に対して,
労働者が納得できる水準の解決金を支払うことで解決しました。
通常の訴訟ですと,提訴してから解決までに
1年以上かかることが多いことを考えると,
早く解決できる労働審判には,大きなメリットがあります。
労働者としては,以前の会社との揉め事を
いつまでも引きずりたくないので,労働事件では,
早く決着を付けたいというニーズが強く,
このニーズに応えることのできる労働審判は,
使い勝手がいい手続なのです。
解雇や未払残業代請求の事件で,労働審判を活用することが多いです。
労働審判を利用したい場合には,弁護士にご相談ください。
本日もお読みいただきありがとうございます。