副業を始める際に気をつけるべき在職中の競業避止義務
1 本業と競業する副業には注意が必要
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとして,
副業の活用を検討している企業が増えているようです。
在宅勤務の普及で,外部人材の登用を進めやすくなったようです。
休業中の収入確保のためや,在宅勤務のスキマ時間の活用などで,
労働者の副業ニーズが高まっていることと合致していそうです。
2 在職中の競業避止義務
もっとも,この副業ですが,本業と競業するようなことをすると,
本業の会社から懲戒処分や損害賠償請求されるリスクがありますので
気をつける必要があります。
本業で培ったスキルや人脈を活かすことを考えると,
本業と競業する副業をしてしまいがちですが,
労働者は,会社に在職している期間中,
労働契約における信義誠実の原則に基づく付随義務として,
会社の利益に著しく反する競業行為を差し控える義務があるからなのです。
これを労働者の在職中の競業避止義務といいます。
労働者は,会社から賃金を支払ってもらう代わりに,
会社の指揮命令に従って労務を提供します。
労働者は,会社の指揮命令下で働くので,当然,
会社の利益になる行動をすることが要求され,
会社の不利益になる行動は慎むべきです。
労働者は,在職中に競業避止義務を負っているので,
本業の会社に在職している期間中に,
本業の会社と競業する会社を設立して,自分で設立した会社に,
本業の会社の取引先を紹介して,取引を成立させて,
利益を得させたのであれば,本業の会社は,
得られるべきであった利益を失うことになるのです。
こうなると,在職中の競業避止義務違反となります。
そのため,本業の会社の利益を著しく損ねる悪質な行為をすると,
競業避止義務違反として,本業の会社から,
懲戒処分をされたり,損害賠償請求されたりするのです。
例えば,エープライ事件の東京地裁平成15年4月25日判決
(労働判例853号22頁)は,労働者の次の行為が,
労働契約の忠実義務(競業避止義務)に違反するとして,
損害賠償請求が認められました。
自己または競業会社の利益を図る目的で,
①職務上知り得た使用者が顧客に提示した
販売価格を競業会社に伝えたこと,
②競業会社を顧客に紹介したこと,
③競業会社が使用者の協力会社であるかのように装って
競業会社に発注させたこと,
④上司に競業会社がより安い価格で
顧客と契約する可能性があることを報告しなかったこと,
といった行為です。
これらの労働者の行為が,使用者の営業上の利益を侵害する
違法な行為であるとして,315万円の損害賠償請求が認められました。
他方,労働者に競業避止義務違反が認められても,
本業の会社には,受注機会の喪失などの具体的な損害がなかったとして,
本業の会社からの労働者に対する損害賠償請求が
認められなかった事例もあります。
とはいえ,会社に在職している期間中に副業で,
本業と競業することをすると,懲戒処分や損害賠償請求など,
思わぬ落とし穴に陥るリスクがありますので,副業をする場合には,
本業と競業しない事業をすることをおすすめします。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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