会社から休憩時間と言われていても労働時間に該当する場合とは
1 休憩時間とは
現在、私が担当している未払残業代請求事件において、
休憩時間があったかなかったかが争点となっています。
会社の就業規則には、お昼の12時から13時の60分が
休憩時間であると規定されていますが、クライアントの主張では、
人手が足りず、昼ご飯を食べながら仕事をしており、
昼にまともな休憩をとったことがないとのことです。
それでは、どのような場合に、休憩時間があったといえるのでしょうか。
結論から言うと、休憩時間とは、
労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいい、
労働者が会社からの指揮命令を受けており、
労働からの解放が保障されていない場合には、
休憩時間ではなく、労働時間となるのです。
例えば、現実には具体的な作業をしているわけではないのですが、
会社からの指示があれば、直ちに作業にとりかかることができる
態勢で待機している、手待時間については、
労働からの解放が保障されていないので、
休憩時間ではなく、労働時間に該当します。
2 休憩時間が労働時間と認定された事例
具体的な事例で検討してみましょう。
3交代制で24時間営業のガソリンスタンドで勤務していた労働者が、
休憩を現実にとることができず、休憩時間は手待時間であるとして、
残業代請求をした、クアトロ事件の東京地裁平成17年11月11日判決
(労働判例908号37頁)を検討します。
この事件では、3交代制の勤務において、各勤務の勤務者は
始業時と終業時の各1時間の重なりを除いて、原則として1人でした。
会社からは、1時間ごとに10分の休憩を取るように
言われていましたが、休憩していたときに、客が来た場合には、
業務を優先するように指示がされていました。
ガソリンスタンドは、危険物取扱施設であることから、
休憩とされている時間中もガソリンスタンドの敷地から
出ることが許されず、原則として1人体制なので、
持ち場を離れることができず、食事やトイレにも不便をきたしていました。
これらの事実関係からすると、
休息のために労働から完全に解放されることが保障されていないとして、
休憩時間ではなく、手待時間に該当するので、
会社が主張していた休憩時間は全て労働時間とされました。
休憩時間とされていた時間が労働時間と認定されれば、
9時に出勤して、18時に退勤して、
12時から13時が昼休憩の8時間労働の場合、
12時から13時の昼休憩が労働時間になる結果、
9時間労働となり、1時間の残業時間が発生するので、
この1時間分について、残業代を請求できることになります。
休憩時間と言われていても、
電話対応や来客対応をしている場合には、
労働からの解放が保障されておらず、労働時間に該当して、
その分の賃金を請求できるわけです。
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