職務手当が固定残業代の対価性の要件を満たさず無効とされた事件

1 未払残業代請求事件で固定残業代が争点になる理由

 

 

未払残業代請求事件では、会社がある手当を支払っていて、

その手当が残業代になるので、

未払の残業代はないと反論してくることがよくあります。

 

 

ある手当が定額の残業代として支払われていることを

固定残業代といいます。

 

 

 

残業代の計算は、時間単価×残業時間×割増率で計算されます。

 

 

時間単価は、基礎賃金÷月平均所定労働時間で計算されます。

 

 

この基礎賃金には、基本給や皆勤手当などが含まれるのですが、

固定残業代である手当も含まれるかが争点になります。

 

 

固定残業代である手当が残業代の支払として無効となれば、

固定残業代である手当が基礎賃金に含まれるので、

時間単価の金額が多くなり、結果として、残業代の金額も多くなります。

 

 

また、固定残業代である手当が残業代の支払として無効となれば、

会社は、一円も残業代を支払っていなかったことになりますので、

固定残業代として支払っていた手当とは別に

残業代を支払わなければならなくなります。

 

 

このように、固定残業代が有効になるか否かによって、

請求できる未払残業代の金額が大きく変わるので、

会社は、固定残業代について、激しく抵抗してくるのです。

 

 

2 固定残業代の対価性の要件

 

 

この固定残業代について、

労働者に有利に使える裁判例をみつけましたので紹介します。

 

 

サン・サービス事件の名古屋高裁令和2年2月27日判決です

(労働判例1224号42頁)。

 

 

この事件では、ホテルで働く調理師である原告が、

被告の会社に対して未払残業代を請求しました。

 

 

原告は被告から、深夜・残業手当とみなす職務手当13万円

の支給を受けていたところ、

この職務手当が固定残業代として有効かが争われました。

 

 

固定残業代が有効となるための要件として、

固定残業代とされている手当が、

時間外労働に対する対価として支払われるもの

とされていなければならないという、対価性の要件があります。

 

 

この対価性の要件を満たしているかについては、

日本ケミカル事件の平成30年7月19日最高裁判決において、

労働契約書の記載内容、

会社の労働者に対する当該手当や割増賃金の説明内容、

労働者の実際の労働時間などの勤務状況など

を考慮して判断することが明らかになりました。

 

 

本件事件では、以下の事実から、

職務手当は時間外労働の対価としては認められないと判断されました。

 

 

会社は、勤務時間管理を適切に行っていなかったこと。

 

 

職務手当は80時間の残業代に相当するのですが、

原告は、毎月120時間を超える時間外労働をしており、

実際の時間外労働と大きく乖離していること。

 

 

 

被告会社では36協定が締結されておらず、

時間外労働を命ずる根拠を欠いていること。

 

 

職務手当は、対価性の要件を満たさず、

固定残業代として無効となるので、

職務手当は基礎賃金に含まれることになりました。

 

 

被告会社は、36協定を締結していなかったので、

適法な時間外労働が観念できないことになるので、

職務手当を時間外労働の対価とするには無理があります。

 

 

職務手当が80時間の残業代に相当するとされていたのですが、

過労死ラインに設定されており、この点で無効になるとも考えられます。

 

 

3 通勤手当は基礎賃金に含まれるのか

 

 

また、この事件では、通勤手当が基礎賃金に含まれると判断されました。

 

 

通勤手当は、労働基準法37条5条において、

基礎賃金に含まれないと規定されているのですが、

ここで言う通勤手当とは、

労働者の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて

算定される手当をいいます。

 

 

労働基準法37条5項の通勤手当は、

原則として実際距離に応じて算定されるものをいい、

一定額まで距離にかかわらず一律に支給する場合には、

実際の通勤距離や通勤に要する実際費用に

応じて定められたものとはいえず、

労働基準法37条5項の通勤手当に該当しないこととなり、

残業代を計算するにあたっての基礎賃金に含まれることになります。

 

 

通勤手当という名目にとらわれることなく、

実質的に検討する必要があるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ANAホールディングスの賃金減額案に対して労働者はどう対処するべきか

1 ANAホールディングスの人件費削減案

 

 

ANAホールディングスが5000億円前後の

赤字になるとの報道がありました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASNBP7H68NBPULFA021.html

 

 

新型コロナウイルスの影響で、海外旅行をする人がいなくなり、

国際線での売上がほとんどなくなり、

経費を支払うのが苦しくなっているようです。

 

 

 

そのため、ANAホールディングスは、

人件費を削減するために、労働組合に対して、

基本給などを一律5%減額すること、

厚生年金保険料の従業員負担を3割から5割に引き上げること、

退職金を加算する希望退職を募集すること、

理由を問わない休業・休職制度を活用すること、

などを提案したようです。

 

 

既に、冬のボーナスの支給は見送られることが決まっているようで、

基本給の削減などを合わせると、年収ベースで平均3割減となるようです。

 

 

このように、会社の業績が悪化した時に、

会社から労働条件の引き下げを提案された場合に

どう対処するべきかについて検討したいと思います。

 

 

2 整理解雇の前段階

 

 

まず、このままANAホールディングスの業績が悪化し続けると、

どうなるかといいますと、おそらく、

どこかのタイミングで、人件費を削減するために、

整理解雇、いわゆるリストラが実施されるでしょう。

 

 

会社の業績悪化を理由に労働者を解雇することを整理解雇といい、

整理解雇の場合、労働者側に落ち度がないのに解雇されることになるので、

①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性、

という4つの要件(要素)を総合考慮しなければ、

整理解雇は有効になりません。

 

 

ようするに、いきなり、整理解雇をすることはできず、

会社が、整理解雇を避けるために、

いろいろな手段を尽くしたけれど、

どうしても会社の業績悪化が止まらないから、

やむを得ず、会社の存続のために、

整理解雇を実施して、はじめて整理解雇が有効になるのです。

 

 

そのため、整理解雇の前に、②解雇回避努力として、

賞与の減額・不支給、賃金減額、

希望退職の募集などが実施されるのです。

 

 

会社が、解雇回避努力をしたことで、業績が回復すれば、

整理解雇を実施する必要はなくなるのですが、

解雇回避努力を尽くしても、業績の悪化が止まらなければ、

整理解雇もやむなしとなり、有効になりやすくなります。

 

 

 

3 賃金減額には原則として労働者の同意が必要

 

 

次に、会社からの賃金減額について、

応じるべきかについては、悩ましい問題です。

 

 

賞与については、会社の業績に連動しているところが多いので、

会社の業績が悪化すれば、賞与が支給されないことは

しかたがないことですが、毎月の基本給などが削減されると、

生活費が足りなくなり、生活が苦しくなるので、

労働者にとっても死活問題となります。

 

 

基本給などの賃金については、

労働基準法24条に賃金全額払の原則が規定されており、

保護が手厚く、会社が、労働者の同意なく、

一方的に賃金を減額することは原則としてできません。

 

 

そのため、会社が基本給などの賃金を減額したい場合には、

会社が労働者に対して、賃金減額について説明して、

労働者に賃金減額に合意してもらう必要があるのです。

 

 

労働者としては、賃金減額に合意しなければ、

基本的には、賃金減額はされないのです。

 

 

4 労働協約

 

 

また、労働組合が会社と交渉して合意したことについて、

労働協約を締結すれば、労働組合の組合員である労働者には、

労働協約が適用されるので、賃金減額についての労働協約が締結されれば、

組合員である労働者の賃金が減額されます(労働組合法16条)。

 

 

労働組合の組合員の労働者は、

労働組合が会社との間で賃金減額に合意するのかについて、

積極的に意見を述べて、

自分の意見が反映されるように行動すべきと考えます。

 

 

おそらく、ANAホールディングスは、

労働者との個別の合意や、労働組合との労働協約をもとに、

基本給などの賃金減額を実施しようとしていると考えられます。

 

 

労働者としては、無理に賃金減額に応じる必要はないものの、

ANAホールディングスの危機的状況は明らかであり、

新型コロナウイルスが終息すれば、業績が回復する可能性があるので、

ここは、労使が痛みを分け合うことも必要かと思います。

 

 

労働組合には、賃金減額に応じる代わりに、

業績が回復した場合には、すぐに元の賃金に復活させるなどの

条件を勝ち取ってもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社に対する未払残業代請求事件で会社から損害賠償請求の反訴をされたものの400万円を回収した事例

1 暴行のパワハラ事件から始まった

 

 

本日は、未払残業代請求事件で、

400万円を回収した解決事例を紹介します。

 

 

クライアントは、建築会社に勤務していたところ、

社長から外壁材のサンプルで頭部を殴られて、負傷しました。

 

 

 

クライアントは、この暴行事件で、社長に対する恐怖心が強くなり、

会社を退職して、私のところへご相談にこられました。

 

 

クライアントの話を聞いていますと、社長は、

暴行事件以外にも普段から、パワハラを繰り返していたようですが、

パワハラを立証するための録音などの証拠はありませんでした。

 

 

他方で、クライアントは、長時間労働をしているのに、

残業代が支払われていないということがわかりました。

 

 

そこで、暴行事件について、治療費や慰謝料の損害賠償請求をして、

あわせて、未払残業代を請求することにしました。

 

 

このように、パワハラの実態のある会社は、高い確率で、

残業代が未払いとなっていることが多いので、

私は、パワハラの法律相談を受けた際には、

残業代の未払いがないかを確認しています。

 

 

2 タイムカードがなくてもパソコンのログデータで労働時間を立証する

 

 

この事件では、タイムカードで労働時間の管理は

されていなかったのですが、幸いなことに、

クライアントが会社で使っていたパソコンのログデータが

1年半ほど保存されており、それを入手することができたので、

労働時間を証明することができました。

 

 

暴行事件については、相手方の会社も非を認め、

早期に示談が成立しましたが、未払残業代請求については、

激しく抵抗してきましたので、労働審判を申し立てました。

 

 

相手方の会社は、パソコンのログデータでは、

労働時間を認定できないと主張してきました。

 

 

しかし、会社は、タイムカードなどで

労働時間を管理しなければならない義務を怠っていたので、

パソコンのログデータをもとに、

クライアントが手帳に時間をメモしていた記録で補正して、

労働時間を立証しました。

 

 

 

また、6ヶ月ほどパソコンのログデータが残っていなかったのですが、

会社が労働時間把握義務を怠っている場合には、

ある程度概括的に労働時間を推認できるとして、

パソコンのログデータが残っている期間の平均の残業時間で、

パソコンのログデータが残っていない期間の残業代を計算しました。

 

 

3 固定残業代の対価性の要件

 

 

相手方の会社では、給料明細書上は、

所定時間外賃金という名目で毎月4万円が支給されており、

相手方の会社は、この所定時間外賃金は固定残業代であるとして、

残業代は支払済みと主張しました。

 

 

しかし、相手方の会社は、就業規則もなく、

労働契約書もないので、クライアントは、

所定時間外賃金が何時間分の残業に対して支払われているのかという

説明を受けていませんでした。

 

 

そのため、所定時間外賃金という名目で、

給料明細書上では基本給と分けられて支給されていましたが、

所定時間外賃金は、残業に対する対価として

支払われているとはいえませんでした。

 

 

よって、所定時間外賃金は、残業代の支払として認められないので、

相手方の会社は、クライアントに対して

残業代をこれまで支払っていないことになります。

 

4 会社からの損害賠償請求

 

 

他にも、相手方の会社は、クライアントが

仕事上のミスを繰り返したことを理由に、

損害賠償請求をしてきました。

 

 

しかし、労働者のミスは、もともと会社経営に内在化しており、

会社が決定した業務命令自体に内在するリスクとして、

会社が負担すべき側面があることから、

損害の公平な分担という見地から、

労働者のミスを理由とする、会社の労働者に対する損害賠償請求は、

信義則上相当な限度に制限されます。

 

 

そのため、労働者のミスが重過失と評価できる場合には、

会社の損害賠償請求が一定の範囲で認められ、

労働者のミスが軽過失と評価される場合には、

会社の損害賠償請求が認められません。

 

 

そこで、そもそもクライアントにはミスはない、または、

ミスがあったとしても軽過失であるとして、

会社からの損害賠償請求を争いました。

 

 

労働審判では決着がつかず、訴訟に移行しましたが、

相手方の会社から、400万円の解決金を支払ってもらうことで

和解が成立しました。

 

 

パワハラ事件では、未払残業代請求を組み合わせることで、

労働者が満足する結果に結びつくことがあります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

契約社員に対して病気休暇や夏期冬期休暇を与えないことは不合理な待遇格差といえるのか?~日本郵便東京・佐賀事件最高裁判決~

1 日本郵便の労働契約法20条裁判

 

 

10月15日に、日本郵便の労働契約法20条の裁判において、

最高裁判決がでました。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201015/k10012664601000.html

 

 

この事件は、東京地裁、大阪地裁、佐賀地裁で始まり、

同じ日に最高裁判決がでたのです。

 

 

先日のブログでは、日本郵便の大阪事件の最高裁判決について

解説したので、本日は、日本郵便の東京事件と佐賀事件の

最高裁判決について解説します。

 

 

 

日本郵便の東京事件と佐賀事件の最高裁判決では、

大阪事件における扶養手当や年末年始勤務手当以外で、

病気休暇や夏期冬期休暇について判断されました。

 

 

2 病気休暇

 

 

まず、日本郵便では、正社員に対して、

私傷病によって会社を休む場合、

90日間有給の病気休暇が与えられている一方、契約社員に対して、

病気休暇は1年に10日間無給で与えられているなど、

病気休暇について、正社員と契約社員との間に、

日数と有給か無給の相違がありました。

 

 

この病気休暇の目的は、正社員が長期にわたり

継続して勤務することが期待されることから、

その生活保障を図り、私傷病の療養に専念させることを通じて、

その継続的な雇用を確保することにあります。

 

 

継続的な勤務が見込まれる労働者に対して、

私傷病による有給の病気休暇を与えることは、

会社の経営判断として尊重されるものです。

 

 

もっとも、病気休暇のこのような目的に照らせば、

郵便業務をする契約社員についても、

相応に継続的な勤務が見込まれるのであれは、

私傷病による有給の病気休暇を与えるとした

趣旨が妥当することになります。

 

 

原告ら契約社員は、有期労働契約を繰り返して更新していることから、

相応に継続的な勤務が見込まれるので、

私傷病による病気休暇の日数につき相違を設けることはともかく、

これを有給とするか無給とするかについての労働条件の相違は

不合理と判断されました。

 

 

正社員と契約社員の病気休暇について、

日数に差があるのは許容されますが、正社員を有給として、

契約社員を無給とすることは不合理となるわけです。

 

 

3 夏期冬期休暇

 

 

次に、日本郵便では、正社員には、

夏期と冬期に各3日まで有給休暇が与えられるのですが、

契約社員には夏期冬期休暇が与えられていませんでした。

 

 

この夏期冬期休暇の目的は、

年次有給休暇や病気休暇とは別に、

労働から離れる機会を与えることにより、

心身の回復を図ることにあります。

 

 

そして、夏期冬期休暇を取得できるかや、取得できる日数は、

正社員の勤続期間の長さに応じて定まるものとはされていませんでした。

 

 

郵便業務を担当する契約社員は、

繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、

業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれるので、

夏期冬期休暇を与える趣旨は、

契約社員にも妥当することになります。

 

 

そのため、正社員に対して、夏期冬期休暇を与える一方、

契約社員に対して、夏期冬期休暇を与えないことは、

不合理であると判断されました。

 

 

個々の労働条件の目的や趣旨を個別に考慮した結果、

病気休暇と夏期冬期休暇についての相違が不合理と判断されたのです。

 

 

先週の一連の労働契約法20条に関する最高裁判決を検討すると、

賞与や退職金については、影響が大きすぎるので、

企業経営が混乱するリスクがあるのですが、

それ以外の手当や労働条件については、影響がそれほどでもなく、

正社員と非正規雇用労働者の格差是正に企業が取り組みやすい、

という価値判断があるのではないかという印象を受けました。

 

 

 

まずは、手当や労働条件についての、

正社員と非正規雇用労働者の格差是正がすすむことに期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

契約社員に対して扶養手当や年末年始勤務手当を支給しないことは不合理な待遇格差といえるのか?~日本郵便大阪事件最高裁判決~

1 日本郵便の労働契約法20条裁判

 

 

10月13日のメトロコマース事件と大阪医科薬科大学事件に続いて、

10月15日、労働契約法20条をめぐる裁判で最高裁判決がでました。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201015/k10012664601000.html

 

 

日本郵便における労働契約法20条の裁判で、

東京地裁、大阪地裁、佐賀地裁から始まった3つの事件について、

昨日、最高裁が原告勝訴の画期的判決をだしました。

 

 

メトロコマース事件と大阪医科薬科大学事件で、

原告が敗訴していただけに、日本郵便事件では、

原告が勝訴してよかったです。

 

 

本日は、日本郵便事件の大阪訴訟の判決について解説します。

 

 

この事件は、日本郵便で契約社員として働いてる原告らが、

正社員との間における年末年始勤務手当、祝日給、扶養手当、

夏季休暇・冬季休暇の相違は不合理であり、

労働契約法20条に違反するとして、損害賠償請求をしたものです。

 

 

 

労働契約法20条は、現在、パート有期法8条になり、

正社員と非正規雇用労働者との間の待遇について、

業務の内容と責任の程度、

当該職務の内容及び配置の変更の範囲、

その他の事情のうち、

当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして

適切と認められるものを考慮して、

不合理であってはならないと規定されています。

 

 

ようするに、正社員と非正規雇用労働者との間の

前提条件が違う場合には、その違いに応じて

待遇も均衡して取り扱わなければならず、

前提条件が同じ場合には、

正社員と非正規雇用労働者の待遇を同一に取り扱わなければならない、

というわけです。

 

 

最高裁は、各手当などの労働条件の性質・趣旨・目的をもとに、

不合理か否かを判断しました。

 

 

2 年末年始勤務手当

 

 

まず、年末年始勤務手当について、郵便局の職員は、

年賀状の配達があるので、

毎年12月29日から翌年1月3日までが最繁忙期であり、

通常の労働者が休日として過ごしている時期に

働くことに対する勤務の特殊性から、

基本給に加えて支給される性質を有します。

 

 

年末年始勤務手当は、正社員が行った仕事の内容や難しさに関係なく、

年末年始の期間に実際に働いたこと自体を支給要件とするのもので、

支給金額は、実際に働いた時期と時間に応じて一律でした。

 

 

このような年末年始勤務手当の性質・支給要件・支給金額からすれば、

年末年始勤務手当を支給することとした趣旨が契約社員にも妥当するので、

年末年始勤務手当を正社員には支給するが、

契約社員に支給しないことは、不合理と判断されました。

 

 

3 年始期間の勤務に対する祝日給

 

 

次に、年始期間の勤務に対する祝日給について、

日本郵便の正社員には、年始期間に特別休暇が与えられているものの、

最繁忙期なので年始期間に働いたの代償として、

通常の勤務に対する賃金に割増したものが支給されていましたが、

契約社員には特別休暇が与えらていないので、

年始期間の勤務に対する祝日給は支給されていませんでした。

 

 

年始勤務における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨は、

契約社員にも妥当するので、

年始期間の勤務に対する祝日給を正社員には支給するものの、

契約社員には支給しないことは、不合理と判断されました。

 

4 扶養手当

 

 

そして、扶養手当について、

正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されるので、

その生活保障や福利厚生を図り、

扶養親族のある者の生活設計を容易にさせることを通じて、

継続的な雇用を確保する目的があるので、

継続的な勤務が見込まれる労働者に対して扶養手当を支給することは、

会社の経営判断として尊重できると判断されました。

 

 

もっとも、契約社員にも、扶養親族があり、

相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、

扶養手当を支給することとした趣旨は契約社員にも妥当しますし、

原告らのように、有期労働契約の更新を繰り返して、

相応に継続的な勤務をしている契約社員がいます。

 

 

そのため、扶養手当を正社員には支給するものの、

契約社員には支給しないことは、不合理と判断されました。

 

 

今回の判決では、正社員と契約社員との間における職務の内容や

職務の内容及び配置の変更の範囲に相応の相違があると

判断しているにもかかわらず、

手当などの労働条件の性質・趣旨・目的が重視されています。

 

 

 

賞与や退職金と比較して、手当などの労働条件であれば、

金額もそれほど大きくなく、

最高裁も思い切った判断をしやすかったのかもしれません。

 

 

今回の判決では、扶養手当について、

継続的な雇用確保という会社の主観的な要素が重視されず、

有期労働契約が更新されて長期雇用されている契約社員にも、

扶養手当が支給されるべきとした点が画期的です。

 

 

非正規雇用労働者の格差是正がすすむことを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

契約社員に対して退職金を支給しないことは不合理な待遇格差といえるのか?~メトロコマース事件最高裁判決~

1 労働契約法20条をめぐる裁判

 

 

本日は、10月13日にあった、

労働契約法20条をめぐる裁判の最高裁判決のうちの1つである

メトロコマース事件について解説します。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASNBF265ZNB2UTIL050.html

 

 

この事件は、東京メトロの駅構内の売店で

販売員をしていた契約社員であった原告らが、

正社員には退職金が支給されるにもかかわらず、

契約社員には退職金が支給されないのは、

労働契約法20条の不合理な待遇の相違に該当するとして、

損害賠償請求をしたのです。

 

 

 

労働契約法20条は、現在、パート有期法8条になり、

正社員と非正規雇用労働者との間の待遇について、

業務の内容と責任の程度、

当該職務の内容及び配置の変更の範囲、

その他の事情のうち、

当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして

適切と認められるものを考慮して、

不合理であってはならないと規定されています。

 

 

ようするに、正社員と非正規雇用労働者との間の

前提条件が違う場合には、その違いに応じて

待遇も均衡して取り扱わなければならず、

前提条件が同じ場合には、

正社員と非正規雇用労働者の待遇を同一に取り扱わなければならない、

というわけです。

 

 

2 メトロコマース事件の東京高裁判決

 

 

メトロコマース事件の東京高裁平成31年2月20日判決は、

次の事情を考慮して、契約社員に対して、

正社員の退職金の4分の1に相当する額を支給しないことは

不合理であると判断しました。

 

 

メトロコマースでは、契約社員は原則として契約が更新され、

定年が65歳と定められており、

実際に原告らは定年で契約が終了するまで

10年前後の長期間にわたって勤務をしていました。

 

 

また、メトロコマースの契約社員の一部は、

平成28年4月に無期契約労働者となるとともに

退職金制度が設けられました。

 

 

そのため、退職金には、継続的な勤務に対する功労報償

という性質があり、この性質は、

長期間メトロコマースで働いてきた契約社員にもあてはまるとして、

契約社員に対して全く退職金を支払わないことは

不合理と判断されたのです。

 

 

 

しかし、この東京高裁の判断は、最高裁で覆されました。

 

 

3 メトロコマース事件の最高裁判決

 

 

最高裁は、メトロコマースの退職金について、

職務遂行能力や責任の程度を踏まえた労務の対価の後払いや

継続的な勤務に対する功労報償の複合的な性質があり、

メトロコマースでは、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保や

その定着を図る目的があると判断しました。

 

 

この退職金の性質や目的に照らせば、

メトロコマースにおける正社員と契約社員の

業務の内容と業務に伴う責任の程度を検討すると、

売店における業務の内容はほぼ同じなのですが、

正社員は、販売員に欠員が生じたときに代替として業務を行い、

複数の店舗を統括して、売店業務のサポートやトラブル処理をしており、

契約社員の職務とは一定の相違があったと判断されました。

 

 

また、職務の内容及び配置の変更の範囲について、

正社員には、配置転換を命ぜられる現実の可能性があり、

正当な理由なく、これを拒否することができなかったのに対し、

契約社員には、業務の内容に変更はなく、

配置転換を命じられることはなかったと判断されました。

 

 

そして、契約社員には、正社員に登用される試験制度があることが、

その他の事情として考慮されました。

 

 

このように、メトロコマースの退職金の

複合的な性質や支給目的を踏まえて、

正社員と契約社員との職務の内容等を考慮すれば、

正社員にだけ退職金を支給して、

契約社員には退職金を支給しないという、

労働条件の相違は不合理とはいえないと判断されました。

 

 

最高裁は、退職金は、その原資を長期間にわたって

積み立てるなどして用意する必要があるので、

社会経済情勢や会社の経営状況の動向に左右されるので、

退職金について、会社の裁量判断を尊重したのです。

 

 

もっとも、有為な人材の確保という会社の主観的な事情を考慮すると、

会社の恣意的な判断で待遇の相違を認めてしまうことにつながるので

不当な結果になると思います。

 

 

また、配置転換については、実際に正社員にはどの範囲で

配置転換が実施されていたのかという

客観的な実態を検討する必要があったと考えます。

 

 

私としては、契約社員の原告らは、

10年以上もメトロコマースで勤務していたので、

功労報償としての退職金として一定の金額を支給すべきと考えますので、

東京高裁の判断が妥当だと考えます。

 

 

画期的な東京高裁の判断が覆されたのは残念ですし、

退職金の格差を争うのは難しくなりそうです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

アルバイト職員に対して賞与を支給しないことは不合理な待遇格差といえるのか?~大阪医科薬科大学事件最高裁判決~

1 労働契約法20条裁判の最高裁判決

 

 

昨日、最高裁で重要な判決がくだされました。

 

 

大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件において、

最高裁判決がでたのです。

 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64929970T11C20A0000000/

 

 

この2つの事件については、高裁段階で、

正社員と非正規雇用労働者の労働条件の格差を縮める

画期的な判断がなされたので、過去にブログで紹介して、

注目していました。

 

 

しかし、昨日の最高裁判決では、原告側が敗訴してしまい、

残念な結果となってしまいました。

 

 

本日は、昨日の最高裁判決のうち、

大阪医科薬科大学事件について解説します。

 

 

2 大阪医科大学事件高裁判決

 

 

大阪医科薬科大学事件の大阪高裁平成31年2月15日判決は、

正社員とアルバイト職員との賞与の格差について、

初めて不合理と判断しました。

 

 

 

この事件では、正社員には、賞与が支給されているにもかかわらず、

アルバイト職員には、賞与が支給されていないことが、

不合理であるとして、アルバイト職員の原告が、

労働契約法20条違反を理由に、損害賠償請求をしたのです。

 

 

労働契約法20条は、現在、パート有期法8条になり、

正社員と非正規雇用労働者との間の待遇について、

業務の内容と責任の程度、

当該職務の内容及び配置の変更の範囲、

その他の事情のうち、

当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして

適切と認められるものを考慮して、

不合理であってはならないと規定されています。

 

 

ようするに、正社員と非正規雇用労働者との間の

前提条件が違う場合には、その違いに応じて

待遇も均衡して取り扱わなければならず、

前提条件が同じ場合には、

正社員と非正規雇用労働者の待遇を同一に取り扱わなければならない、

というわけです。

 

 

大阪医科薬科大学事件の大阪高裁の判決では、

大阪医科薬科大学における賞与の性質に注目して、

この大学の賞与は、基本給のみに連動しており、

正社員の年齢や成績、大学の業績には連動していないので、

賞与の算定期間に在籍し、

働いていたことの対価としての性質を有するので、

このことは、アルバイト職員にも妥当するものと判断されました。

 

 

そして、非正規雇用労働者のうち契約社員には

正社員の約8割の賞与が支給されていたのに、

アルバイト職員には賞与がゼロということも

不合理と判断する要素となりました。

 

 

その結果、大阪高裁は、正社員の賞与の60%を

下回る支給しかしない場合には、不合理になると判断しました。

 

 

3 大阪医科薬科大学事件最高裁判決

 

 

しかし、最高裁は、この大阪高裁の判断を否定しました。

 

 

最高裁は、大阪医科薬科大学の賞与について、

通年で基本給の4.6ヶ月分が一応の支給基準となっていて、

正社員の基本給は、勤続年数に伴う職務遂行能力の向上に応じた

職能給の性格を有するので、正社員の賃金体系や

求められる職務遂行能力や責任の程度に照らして、

正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図る目的から、

正社員に対して賞与を支給していると判断しました。

 

 

このように、賞与の性質や目的の判断が、

高裁と最高裁とで分かれたのです。

 

 

そして、アルバイト職員の職務内容は相当に軽易であるのに対して、

正社員の職務は、学内の英文学術誌の編集事務、

病理解剖に関する遺族への対応などの業務をするなどもあり,

正社員とアルバイト職員との職務の内容に

一定の相違があると判断されました。

 

 

さらに、アルバイト職員には、

契約社員や正社員への登用試験の制度があり、

格差是正のための一応の対応もあるとして、

「その他の事情」として考慮されました。

 

 

その結果、賞与の性質や支給目的を踏まえて、

正社員とアルバイト職員の職務内容を考慮すれば、

正社員には賞与を支給して、アルバイト職員には賞与を支給しない

という相違は不合理ではないと判断されたのです。

 

 

最高裁は、大阪医科薬科大学の賞与を、

正社員としての職務を遂行し得る人材の確保や

その定着を図るなどの目的から支給しているというように、

会社の主観的な事情をもとに判断しているのですが、

このような判断をするのであれば、

およそ全ての待遇について相違の不合理が

否定されてしまうおそれがあります。

 

 

 

待遇の性質や目的については、支給要件や内容、

支給実態などの客観的な事情をもとに判断すべきと考えます。

 

 

高裁段階で、賞与の格差が不合理と画期的な判断が出されて

期待していたのに、最高裁で賞与の格差が不合理ではないと

ひっくり返ってしまい、とても残念です。

 

 

賞与の格差が不合理となるのは難しいと言えそうです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

複数の職場で働く労働者の労災について複数の職場の給付基礎日額が合算され、労働時間も通算されます

1 複数の職場で働く労働者の労災における給付基礎日額の合算

 

 

昨日のブログでは、今年9月に公表された

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、

副業の労働時間が長すぎて本業に支障がでたり、

副業の勤務先が本業と競業するライバル会社であったり、

といった場合以外には、原則として副業が認められることを記載しました。

 

 

この副業の原則解禁にあわせて、労災保険の分野においても

重要な改正がなされましたので、本日は、

複数の職場で働く労働者の労災保険給付について解説します。

 

 

 

まず、雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)

において、労災保険における給付を計算する際に用いる

給付基礎日額については、複数事業で働く労働者を使用している事業

ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を

合算した額を基礎とすることになりました。

 

 

給付基礎日額とは、労災事故が発生した日の直前3ヶ月間の

賃金の総支給額を日割り計算したものをいいます。

 

 

労災事故にあい、治療のために会社を休んでいる期間に

支給される休業補償給付や、

労災事故による負傷のために後遺障害が残った場合に

支給される障害補償給付については、

給付基礎日額をもとに支給額が計算されるのです。

 

 

今回の改正では、給付基礎日額を計算するにあたり、

複数の職場における給付基礎日額が合算されることになりましたので、

給付基礎日額の金額が増加することになりますので、

労災事故にあった労働者に支給される

労災保険からの給付が増加することになります。

 

 

この改正は労働者にとって有利です。

 

 

今後は、複数の職場で働いている労働者が労災事故にあった場合には、

労働基準監督署に対して、複数の職場で働いていることを申告して、

複数の職場における給付基礎日額を合算して

計算してもらうようにしてください。

 

 

2 精神障害の労災認定基準において複数の職場における労働時間が通算されます

 

 

次に、今年の8月21日に、精神障害の労災認定基準である

「心理的負荷による精神障害の認定基準について」が改正され、

複数の職場における心理的負荷の強度について、

労働者に有利に改正されました。

 

 

仕事が原因でうつ病を発症して労災申請をする場合、

労働者が体験した出来事の心理的負荷が「強」と判断されれば、

労災と認定されます。

 

 

例えば、1ヶ月に100時間を超える時間外労働をして、

上司から厳しい叱責を受けた場合、総合評価の結果、

心理的負荷は「強」と認定されます。

 

 

精神障害の労災認定基準では、

1ヶ月100時間を超える時間外労働が認められれば、

労災と認定されやすくなります。

 

 

この1ヶ月100時間の時間外労働を判断するにあたり、

異なる事業における労働時間や労働日数は通算することが、

精神障害の労災認定基準に明記されました。

 

 

 

例えば、A社で1ヶ月70時間の時間外労働を行い、

B社で1ヶ月30時間の時間外労働を行った場合、

A社とB社の労働時間が通算されるので、

時間外労働は合計100時間となり、

労災認定されやすくなります。

 

 

今後、長時間労働が原因で、精神障害を発症した場合、

複数の職場で働いていたのであれば、労働基準監督署に対して、

複数の職場の労働時間を調査するようにはたらきかけるのがよいでしょう。

 

 

また、複数の職場における労働時間を立証できるように、

複数の職場のタイムカードをしっかり打刻したり、

スマホの労働時間管理アプリで労働時間を記録するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」から副業の原則解禁を解説します

1 パラレルキャリア実践における労働者の悩み

 

 

先日、片付けパパこと大村信夫氏の

「仕事の生産性向上とパラレルキャリア実践術」

というオンラインのセミナーを受講しました。

 

 

私は、事務所のデスクを整理整頓するノウハウを学びたいと思い、

受講しました。

 

 

物の住所を決める、帰宅時に片付けをするリセットタイムを設ける、

1週間に1回書類の廃棄をする、デスクには必要なもの以外出さない、

など具体的なノウハウを学ぶことができました。

 

 

 

さて、講師の大村氏は、大手家電メーカーの社員をしながら、

整理収納アドバイザーとしても活躍されており、

本業を持ちながら第二のキャリアを築く

パラレルキャリアを実践しております。

 

 

このパラレルキャリアの実践における質疑応答の中で、

会社が副業を禁止している中で、

どのようにしてパラレルキャリアを実践していくかが議論されました。

 

 

この質疑応答を聞いていて、副業が原則解禁になることの

情報が知れ渡っていないことを感じました。

 

 

そこで、本日は、副業の原則解禁について解説します。

 

 2 副業・兼業の促進に関するガイドライン

 

 

今年9月に、厚生労働省は、

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改訂しました。

 

 

 https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000665413.pdf

 

 

まず、このガイドラインでは、会社は、就業規則において、

原則として、労働者が副業を行うことができることとし、

例外的に次の①~④の場合には、副業を禁止または制限することができる、

とするように明示しています。

 

 

①労務提供上の支障がある場合

 

 

 ②業務上の秘密が漏洩する場合

 

 

 ③競業により自社の利益が害される場合

 

 

 ④自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

 

 

①の具体例としては、本業の仕事をした後に、

副業の仕事をして、副業の労働時間が長時間となり、

睡眠不足によって、本業の仕事のパファーマンスが低下する場合です。

 

 

②~④については、本業の勤務先の業務と競業となる

ライバル会社で副業をすると、

本業の会社の秘密情報がライバル会社に漏れたり、

本業の会社の顧客をライバル会社にとられたりすることから、

制限されるのです。

 

 

そのため、本業の仕事に支障がでない範囲で、

競業以外の会社や事業主のもとで副業する分には、

問題ないことになります。

 

 

 

また、仮に、会社の就業規則では、以前として、

副業が禁止になっていても、

労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、

労働者の自由なので、上記①~④の場合に該当しない限り、

職場秩序を乱したことにならず、形式的に、

就業規則に違反するとしても、

懲戒処分は認められないことになります。

 

 

さらに、労働者が、会社に対して、

副業に関する相談をしことによって、

不利益な取扱いをすることも許されません。

 

 

3 労働時間の通算

 

 

会社が副業を原則解禁するにあたり、

気をつけるべきポイントとしては、

本業における労働時間と副業における労働時間が通算されるので、

残業時間の罰則付き上限規制に抵触しないようにする必要があります。

 

 

労働基準法38条1項には、

「労働時間は、事業場をことにする場合においても、

労働時間に関する規定の適用については通算する」

と規定されており、会社は、

本業の労働時間と副業の労働時間を通算して管理する必要があるのです。

 

 

今年の4月から全ての会社において、

1ヶ月の残業時間が100時間未満、

2ヶ月から6ヶ月の各平均残業時間が80時間を超えてはならず、

これに違反した場合には、懲役6月以下または30万円以下の罰金

の刑事罰が科せられます。

 

 

そのため、会社は、本業の労働時間と副業の労働時間を把握して、

上記の残業時間の罰則付き上限規制に違反しないように、

労働時間を管理する必要があるのです。

 

 

また、会社は、労働者に対して、

労働者の生命と身体の安全を確保するために

必要な配慮をすべきという安全配慮義務を負っているので、

副業をすることによって、労働者が長時間労働に陥らないように、

労働時間を適切に管理して、

労働者の健康状態に問題が生じた場合には、

適切な措置をとらなければなりません。

 

 

まとめますと、労働者としては、上記①~④に気をつけて、

健康を害しないように、副業での労働時間を調整すれば、

パラレルキャリアを実践するための副業が可能となるわけです。

 

 

くれぐれも、本業と副業とで働き過ぎになって、

健康を害さないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ワタミの残業代未払い問題は管理監督者が原因か?会社から管理監督者と言われても未払残業代請求をあきらめない

1 ワタミの残業代未払い問題

 

 

先日のブログで、ワタミの175時間の時間外労働についての、

労災認定の解説をしました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/rousai/202010079712.html

 

 

本日は、ワタミの残業代未払いの問題をもとに、

残業代請求の解説をします。

 

 

報道によりますと、弁当宅配事業のワタミの宅食の

女性営業所長に対する残業代が未払いであったとして、

高崎労働基準監督署がワタミに対して、是正勧告をしたとのことです。

 

 

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4093105.html

 

 

175時間の時間外労働をしていたのに、

残業代が未払いであったことに、

多くの方は、疑問を抱くと思いますが、

未払残業代請求事件ではよくあることです。

 

 

 

2 労働基準法41条2号の管理監督者とは

 

 

労働基準法41条2号の管理監督者に該当すれば、

残業代を支払わなくてよいことになっているので、

経営者が、労働基準法41条2号の適用を誤り、

営業所長などのように立場が上の労働者に対しては、

役職手当などが定額で支払われていて、

それ以外に残業代を支払わなくてよい

取扱にしていることがよくあります。

 

 

しかし、労働基準法41条2号の管理監督者に該当する労働者は、

ほとんどおらず、多くの会社では、違法に適用されていて、

労働基準法41条2号の管理監督者ではない労働者も、

管理監督者であるとして、違法に残業代が未払いとなっているのです。

 

 

管理監督者ではない労働者に対して、

残業代を支払わないことは違法なので、

労働者が、会社に対して、未払残業代を請求すれば、

会社は、未払残業代を支払わなければならないのです。

 

 

それでは、どのような労働者であれば、

労働基準法41条2号の管理監督者といえるのでしょうか。

 

 

3 管理監督者の判断要素

 

 

労働基準法41条2号の管理監督者に該当するかを判断する際には、

以下の3つの要素を総合考慮します。

 

 

①事業主の経営上の決定に参画し、

労務管理上の決定権限を有していること(経営者との一体性)

 

 

②自己の労働時間についての裁量を有していること(労働時間の裁量)

 

 

③管理監督者にふさわしい賃金等の待遇を得ていること

 

 

①については、当該労働者が会社の経営に関する

決定過程に関与しているか、採用や人事考課などの

人事権限が与えられているか、

現場作業にどれくらい従事していたかが検討されます。

 

 

②については、タイムカード等によって

出退勤の管理がされていたかが検討されます。

 

 

今回のワタミのケースにあてはめますと、

①この営業所長は、ワタミの経営には関与しておらず、

配達員の業務管理以外にも、配達の仕事を多く担当していたことから、

経営者との一体性は認められません。

 

 

 

②この営業所長は、配達員が急に仕事を休んだ時に

代役で配達をすることが多く、休みがとれないことが多かったので、

労働時間の裁量はなかったといえます。

 

 

③この営業所長の月額の賃金は26万円と低額であり、

管理監督者にふさわしい賃金とはいえません。

 

 

よって、この営業所長は、管理監督者ではないので、

ワタミに対して、未払残業代を請求できることになります。

 

 

4 労働時間の適正把握義務

 

 

もう一つ、報道によりますと、この営業所長は、

休日に勤務したはずなのに、エリアマネージャーから、

休日勤務の記録を削除されたようです。

 

 

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき

措置に関するガイドライン」には、会社は、

労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する義務

を負うことが規定されています。

 

 

そのため、会社は、労働者の労働時間を正確に記録しなければならず、

当たり前ですが、勤怠記録を改ざんすることはあってはならないことです。

 

 

ワタミのような大手企業でも、いまだに、

残業代が未払いなどの労働基準法違反がありますので、

地方の中小企業でも、残業代の未払いが多いのが現実です。

 

 

私の経験上、残業代が未払いの会社に対して、

未払残業代を請求すれば認められることが多いので、

未払残業代の請求を思い立った場合には、

弁護士に相談するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。