1 日本郵便の労働契約法20条裁判
10月15日に、日本郵便の労働契約法20条の裁判において、
最高裁判決がでました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201015/k10012664601000.html
この事件は、東京地裁、大阪地裁、佐賀地裁で始まり、
同じ日に最高裁判決がでたのです。
先日のブログでは、日本郵便の大阪事件の最高裁判決について
解説したので、本日は、日本郵便の東京事件と佐賀事件の
最高裁判決について解説します。

日本郵便の東京事件と佐賀事件の最高裁判決では、
大阪事件における扶養手当や年末年始勤務手当以外で、
病気休暇や夏期冬期休暇について判断されました。
2 病気休暇
まず、日本郵便では、正社員に対して、
私傷病によって会社を休む場合、
90日間有給の病気休暇が与えられている一方、契約社員に対して、
病気休暇は1年に10日間無給で与えられているなど、
病気休暇について、正社員と契約社員との間に、
日数と有給か無給の相違がありました。
この病気休暇の目的は、正社員が長期にわたり
継続して勤務することが期待されることから、
その生活保障を図り、私傷病の療養に専念させることを通じて、
その継続的な雇用を確保することにあります。
継続的な勤務が見込まれる労働者に対して、
私傷病による有給の病気休暇を与えることは、
会社の経営判断として尊重されるものです。
もっとも、病気休暇のこのような目的に照らせば、
郵便業務をする契約社員についても、
相応に継続的な勤務が見込まれるのであれは、
私傷病による有給の病気休暇を与えるとした
趣旨が妥当することになります。
原告ら契約社員は、有期労働契約を繰り返して更新していることから、
相応に継続的な勤務が見込まれるので、
私傷病による病気休暇の日数につき相違を設けることはともかく、
これを有給とするか無給とするかについての労働条件の相違は
不合理と判断されました。
正社員と契約社員の病気休暇について、
日数に差があるのは許容されますが、正社員を有給として、
契約社員を無給とすることは不合理となるわけです。
3 夏期冬期休暇
次に、日本郵便では、正社員には、
夏期と冬期に各3日まで有給休暇が与えられるのですが、
契約社員には夏期冬期休暇が与えられていませんでした。
この夏期冬期休暇の目的は、
年次有給休暇や病気休暇とは別に、
労働から離れる機会を与えることにより、
心身の回復を図ることにあります。
そして、夏期冬期休暇を取得できるかや、取得できる日数は、
正社員の勤続期間の長さに応じて定まるものとはされていませんでした。
郵便業務を担当する契約社員は、
繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、
業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれるので、
夏期冬期休暇を与える趣旨は、
契約社員にも妥当することになります。
そのため、正社員に対して、夏期冬期休暇を与える一方、
契約社員に対して、夏期冬期休暇を与えないことは、
不合理であると判断されました。
個々の労働条件の目的や趣旨を個別に考慮した結果、
病気休暇と夏期冬期休暇についての相違が不合理と判断されたのです。
先週の一連の労働契約法20条に関する最高裁判決を検討すると、
賞与や退職金については、影響が大きすぎるので、
企業経営が混乱するリスクがあるのですが、
それ以外の手当や労働条件については、影響がそれほどでもなく、
正社員と非正規雇用労働者の格差是正に企業が取り組みやすい、
という価値判断があるのではないかという印象を受けました。

まずは、手当や労働条件についての、
正社員と非正規雇用労働者の格差是正がすすむことに期待したいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。