正社員とアルバイト職員の労働条件の相違は不合理か?~学校法人大阪医科薬科大学事件その2~

8月2日金曜日に石川県女性センターで開催される,

「トラブルのない明るい職場を目指す労働判例・政策セミナーin金沢」

で講師をさせていただくことになりましたので,

セミナーで解説する裁判例の勉強をしています。

 

 

 

セミナーで解説する裁判例の中に,

学校法人大阪医科薬科大学事件の

大阪高裁平成31年2月15日判決があります

(労働判例1199号5頁)。

 

 

この裁判例については,今年の2月22日のブログで,

非正規雇用労働者と正社員の賞与の相違が不合理であり,

労働契約法20条に違反すると判断した画期的な判決であるとして,

紹介しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201902227581.html

 

 

改めて,この裁判例を読むと,他にも気づきがありましたので,

本日は,そのアウトプットをします。

 

 

この事件では,アルバイト職員と正社員の労働条件の相違が,

労働契約法20条に違反するかが争われた事件です。

 

 

 

労働契約法20条は,正社員と非正規雇用労働者の

労働条件に相違がある場合,業務の内容,業務に伴う責任の程度,

職務の内容及び配置の変更の範囲,その他の事情を考慮して,

その相違が不合理であってはならないと定められています。

 

 

正社員と非正規雇用労働者の労働条件に相違がある場合に,

その相違が均衡のとれたものでなければならず,

均衡がとれていないのであれば,

会社は,労働者から損害賠償請求される可能性があります。

 

 

まず,原告となる非正規雇用労働者と

比較すべき正社員は誰かが問題となります。

 

 

原告と同じような仕事をしている正社員と比較すれば,

同じような仕事をしているのに労働条件の相違があるのは

不合理と判断される傾向になりますが,

正社員全体と比較すれば,違う仕事をしているのだから

労働条件の相違があっても不合理ではないと判断される傾向になります。

 

 

この点について,大阪医科薬科大学事件の高裁判決では,

「比較対象者は客観的に定まるものであって,

有期契約労働者側が選択できる性質のものではない。」と判断され,

労働者全体と比較することとなりました。

 

 

以前ブログで紹介したメトロコマース事件の東京高裁の判決では,

原告の非正規雇用労働者が選択した正社員と比較すればよいとされたので,

比較対象労働者の判断がわかれました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201906298250.html

 

 

同じような仕事をしてるなら,

労働条件も同じようにすべきという

同一労働同一賃金の考え方からすれば,

比較対象労働者は,正社員全体ではなく,

原告の非正規雇用労働者と同じような仕事をしている

正社員とすべきと考えます。

 

 

次に,この事件では,賞与以外の労働条件についても

不合理と判断されました。

 

 

夏期特別休暇について,正社員には夏期に5日間の

夏期特別休暇が付与されていましたが,

アルバイト職員には夏期特別休暇が付与されていませんでした。

 

 

この点,日本の蒸し暑い夏に仕事をすると体力的に負担が大きく,

休暇を与えて,心身をリフレッシュさせること,

お盆の行事で多くの国民が帰省し,

子供の夏休みに家族旅行にでかけることから,

夏期特別休暇が付与されている趣旨からすれば,

アルバイト職員に対して,夏期特別休暇を付与しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

 

また,大阪医科薬科大学では,正社員は,

仕事以外の原因で負傷し,欠勤した場合,

6ヶ月間は賃金が全額支払われ,

6ヶ月経過後は休職が命じられて

賃金の2割の休職給が支給されますが,

アルバイト職員には,これらの制度が適用されていませんでした。

 

 

この制度の趣旨は,継続して就労する正社員の

生活の保障を図る点にあるところ,

アルバイト職員も契約期間が更新されて,

継続した就労をして,大学に対する貢献もあり,

そのようなアルバイト職員に対する

生活の保障の必要性があることから,

この制度をアルバイト職員に一律に適用しないのは

不合理であると判断されました。

 

 

そして,アルバイト職員が仕事以外の原因で負傷し,

欠勤した場合に賃金の1ヶ月分,

休職した場合に賃金の2ヶ月分を支給しないことは,

不合理と判断されました。

 

 

当該労働条件の趣旨や目的,労働実態をもとに,

不合理か否かが判断されています。

 

 

非正規雇用労働者の格差是正に役立つ裁判例ですので,

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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