正社員と非正規雇用労働者の待遇格差が不合理といえるかの検討手順とパート有期法14条2項の説明義務
1 労働契約法20条についての最高裁判決
10月13日と10月15日に
労働契約法20条に関する最高裁判決がでて、
正社員と非正規雇用労働者の待遇格差が注目を集めています。
賞与と退職金については、待遇格差を不合理とするのは
難しくなる傾向にありますが、
手当や福利厚生などの待遇格差を不合理としやすくなる傾向にあります。
私の個人的見解ですが、賞与や退職金の待遇格差を不合理とすると、
会社が負担しなければならない人件費が増大しすぎて、
影響が大きすぎるのですが、手当や福利厚生であれば、
そこまで人件費が増大することはなく、
待遇格差の是正に取り組みやすい、
という側面が考慮されたのではないかと思います。
労働契約法20条は、現在、パート有期法8条となりました。
2 待遇格差が不合理といえるかの検討手順
ここで、非正規雇用労働者と正社員の待遇の相違が
パート有期法8条違反にあたり
不合理と認められるかどうかの検討手順を説明します。
①非正規雇用労働者の個別の待遇に対応する正社員の待遇を特定し、
どのような労働条件の相違があるのかを明確にします。
②当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的を確定します。
③確定した当該待遇の性質及び当該待遇の目的に照らして、
業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、
当該職務の内容及び配置の変更の範囲、
その他の事情、の3つの考慮要素の中から
適切と認められるものを抽出します。
④比較対象として特定した正社員と非正規雇用労働者との間で
考慮要素に関する事実に違いがあるかを検討します。
⑤考慮要素に関する事実に違いがなければ
均等待遇でなければ当該待遇の相違は不合理となり、
考慮要素に関する事実に違いがあっても
違いに応じた均衡待遇でなければ当該待遇の相違は不合理となります。
3 パート有期法14条2項の説明義務
以上の①から⑤の検討手順をふんで、
待遇の相違が不合理か否かを検討するのですが、
その前提として、非正規雇用労働者は、
正社員との間に待遇の相違があることの情報を
知っている必要があります。
非正規雇用労働者には、正社員との間に待遇格差があるのか、
格差があるとしてもその理由が何なのかが分からなければ、
会社に対して、待遇改善を求めることができないからです。
そこで、パート有期法14条2項において、
非正規雇用労働者と正社員との間の待遇の相違の内容及び理由について、
会社の説明義務が新設されました。
会社は、非正規雇用労働者から、
待遇の相違についての説明を求められた場合には、
比較対象となる正社員の賃金額や賃金の平均額や上限・下限など
を説明しなければならないのです。
また、非正規雇用労働者は、会社に対して、
同一の基準で違いが生じている理由、
基準が異なる場合には、待遇の性質や目的を踏まえ、
基準に違いを設けている理由、
それぞれの基準をどのように適用しているのか、
その適用の結果としてどのように賃金額に相違が生じているか
などについて、説明を求めていきます。
非正規雇用労働者は、会社の説明から得られた情報をもとに、
正社員との待遇格差が不合理と判断できれば、
会社に対して待遇の改善を求めていきます。
もし、会社が、パート有期法14条2項の説明義務に違反した場合には、
非正規雇用労働者と正社員との待遇差が不合理であることを
基礎づける一つの重要な事情になります。
また、会社が、この説明義務に違反する対応をしてきたのであれば、
パート有期法18条をもとに、労働局に相談して、労働局から、
会社に対して、助言、指導、勧告などをしてもらうのがいいです。
最高裁判決がでたことで、
正社員と非正規雇用労働者の待遇格差が注目されていますので、
これを機会に、パート有期法14条2項を活用して、
会社に対して待遇格差の説明を求めて、
待遇格差の改善が実現されることを期待したいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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