労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
8月2日金曜日に石川県女性センターで開催される,
「トラブルのない明るい職場を目指す労働判例・政策セミナーin金沢」
で講師をさせていただくことになりましたので,
2018年6月に成立し,2019年4月から逐次施行されている,
働き方改革関連法について,今一度勉強をしております。
ようやく,当日配布のレジュメが完成し,
最終の調整をしております。
当日は,正社員と非正規雇用労働者の
均等均衡待遇について解説します。
その関係で,本日は,パートタイム・有期雇用労働法14条
に規定された待遇に関する説明義務について解説します。
パートタイム勤務の労働者や契約社員のように
雇用期間が区切られている有期雇用労働者などの
非正規雇用労働者は,正社員に比べて
労働時間や職務の内容が多様であり,
その労働条件が不明確になりやすいことから,
正社員との待遇の違いを生じさせている理由がわからず,
不満を抱くことがあります。
このような非正規雇用労働者の不満を解消するために,
まずは労使間での対話を行い,
不合理な待遇差の是正につなげていくために,
会社に待遇差についての説明義務を課したのです。
パートタイム・有期雇用労働法14条1項において,
会社は,パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れるときに,
次のことを説明しなければならなくなりました。
①パートタイム・有期雇用労働者の待遇について,
正社員との間で不合理な相違を設けていないこと
②正社員と差別的な取扱いをしないこと
③職務の内容,職務の成果等のうち
どの要素を勘案した賃金制度なのかということ
④パートタイム・有期雇用労働者に対して
どのような教育訓練が実施されているのかということ
⑤パートタイム・有期雇用労働者が
どのような福利厚生施設を利用できるのかということ
⑥パートタイム・有期雇用労働者が
どのような正社員への転換推進措置を
実施しているのかということ
会社は,パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れるたびごとに,
上記①~⑥について,資料を活用して口頭で説明することになります。
次に,パートタイム・有期雇用労働法14条2項において,
会社は,パートタイム・有期雇用労働者からの求めがあった場合,
パートタイム・有期雇用労働者と正社員との待遇の相違の内容,
理由などを説明しなければなりません。
このとき,パートタイム・有期雇用労働者と
比較の対象となる正社員については,
会社が選定することができます。
会社は,比較対象として選定した正社員の賃金の額や,
賃金規程や等級表の支給基準などについて説明しなければならず,
「賃金は,各人の能力,経験等を考慮して総合的に決定する」
といった説明では不十分となります。
パートタイム・有期雇用労働者と正社員との間で
待遇に関する基準が同一の場合には,
同一の基準のもとで違いが生じている理由(成果,能力,経験の違い)
の説明が必要になります。
また,パートタイム・有期雇用労働者と正社員との間で
待遇に関する基準が異なる場合,待遇の性質・目的を踏まえ,
待遇に関する基準に違いを設けている理由
(職務の内容,職務の内容及び配置の変更の範囲の違い,
労使交渉の経緯など),及びそれぞれの基準を
正社員及びパートタイム・有期雇用労働者に
どのように適用しているのかについて,
説明が必要になります。
そして,パートタイム・有期雇用労働法14条3項により,
会社は,パートタイム・有期雇用労働者が
待遇の相違の説明を求めたことを理由として,
解雇などの不利益な取扱いをしてはなりません。
このように,会社は,パートタイム・有期雇用労働者から
待遇の相違について説明を求められれば,
説明しなければならない義務を負うことになりますので,
パートタイム・有期雇用労働者は,正社員との待遇に格差を感じ,
その根拠を知りたいときには,
積極的に説明を求めていくべきだと思います。
会社としては,パートタイム・有期雇用労働者から
説明を求められたときに,きちんと説明できるように
準備をしておく必要があります。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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