フレックスタイム制の精算期間の延長

昨日は,フレックスタイム制の概要について説明しましたので,

本日は,働き方改革でフレックスタイム制が

どのように改正されたのかについて解説します。

 

 

 

今回の働き方改革によって,フレックスタイム制の精算期間が

1ヶ月以内から3ヶ月以内に延長されました。

 

 

精算期間とは,フレックスタイム制の適用の単位となる期間であり,

この期間に対して,労働者が労働すべき時間(総労働時間)

を定めることになります。

 

 

改正前であれば,精算期間が1ヶ月以内だったので,

使用者は,1ヶ月ごとに,実労働時間が総労働時間を超過した場合には,

超過時間分に応じた残業代を支払う必要があり,

実労働時間が総労働時間よりも少ない時間ですんだ場合には,

賃金控除される可能性がありました。

 

 

今回の改正によって,精算期間が3ヶ月以内に延長されたことで,

例えば6月から8月に精算期間が設定された場合,

6月に長く働いた分,総労働時間を満たす限り,

8月に短く働くことができるようになります。

 

 

6月に長く働いた時間と8月に短く働いた時間とを相殺して,

6月に残業代が支払われない代わりに,

8月に賃金控除をしないという調整が可能となります。

 

 

もっとも,実労働時間は,仕事の量に左右され,

労働者には,仕事量を調整する権限が与えられていないことが多く,

労働者が6月に長く働き,8月に短く働こうとしても,

8月の仕事量の軽減がなければ,

結局,8月も長く働かなければならなくなります。

 

 

その結果,全体として長時間労働なり,

フレックスタイム制の目的である

仕事と生活の調和が実現できないことになります。

 

 

 

さて,1ヶ月を超える精算期間を設定した場合,

所轄の労働基準監督署に労使協定の届出が必要となり,

1ヶ月あたりの実労働時間が週平均50時間を超えた場合には,

総労働時間にかかわらず,時間外労働に該当し,

36協定の締結と届出が必要となり,

精算期間の途中であっても,

各月の賃金支払日に残業代を支払うことが,

会社に義務付けられています。

 

 

例えば,精算期間を6月から8月とし,

総労働時間を525時間として,

6月に250時間,7月に200時間,8月に75時間

働いた場合,3ヶ月間の実労働時間は525時間であり,

総労働時間の枠内におさまっています。

 

 

しかし,6月の週平均労働時間は,

250時間÷30日×7日=58.33時間となり,

週平均50時間を超えています。

 

 

6月の法定労働時間の総枠は,

50時間×30日÷7日=214.2時間であり,

6月の実労働時間は,250時間であり,

250時間-214.2時間=35.8時間について,

6月分の給料の支給日に残業代が支払われなければなりません。

 

 

おそらく,精算期間を3ヶ月に延長した場合,

残業代の計算が複雑になります。

 

 

労働者は,フレックスタイム制が適用されても,

長時間労働であれば,残業代が請求できることを覚えておいてください。

 

 

今回の改正で,精算期間が

1ヶ月以内から3ヶ月以内に延長されましたが,

労働者は,始業時刻と終業時刻をコントロールできても,

仕事量をコントロールできないので,

長時間労働に陥る危険があります。

 

 

 

そのため,労働者としては,会社から

フレックスタイム制の精算期間の延長を提案されても,

無理に応じないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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