退職後に労働者が秘密保持義務を負担するのはどのような場合か

1 在職中の秘密保持義務

 

 

労働者は、会社に在職している期間、

労働契約に付随する義務として、

会社の営業上の秘密を守る義務を負っています。

 

 

これを在職中の秘密保持義務または守秘義務といいます。

 

 

このことを明確にするために、入社時に、

労働者が秘密を守ることの誓約書を会社に提出したり、

就業規則に秘密保持義務が明記され、違反した場合には、

懲戒処分をすることが記載されていることが多いです。

 

 

 

労働者がこの秘密保持義務に違反して、

会社に損害が発生した場合には、

損害賠償責任を負うことになります。

 

 

2 退職後の秘密保持義務

 

 

それでは、退職後にも労働者は、

以前の勤務先の会社に対して、

秘密保持義務を負うのでしょうか。

 

 

まず、就業規則に退職後の秘密保持義務についての規定がなく、

退職時に、退職後の秘密保持義務についての誓約書がない場合には、

労働契約が終了することによって、

労働契約の付随義務である秘密保持義務も同時に終了すると考えられます。

 

 

そのため、退職後の秘密保持義務についての

明示の取決めがない場合には、原則として、

退職後に労働者は秘密保持義務を負わないことになります。

 

 

次に、退職後の秘密保持義務を定めた誓約書がある場合に、

無制限に労働者が秘密保持義務を負担しなければならないのか

といいますと、一定の制限があります。

 

 

退職した労働者が、会社の営業秘密を勝手に利用して、

会社の顧客を奪ったりすると、会社にとって不利益となりますので、

会社としては、労働者が退職した後にも

秘密保持義務を負担させたいことには合理的な理由があります。

 

 

 

他方、労働者としては、退職後にも前の勤務先の

秘密保持義務を負担するのでは、

職業選択の自由や営業の自由が制約される

という不利益が生じます。

 

 

このように、会社と労働者の利益を調整する必要があるわけです。

 

 

この点、ダイオーズサービシーズ事件の

東京地裁平成14年8月30日判決(労働判例838号32頁)は、

労働者の退職後の秘密保持義務について、

その秘密の性質・範囲、価値、労働者の退職前の地位から、

合理性が認められるかという判断基準を提示しました。

 

 

この事件では、営業秘密について、

「顧客の名簿及び取引内容に関わる事項」、

「製品の製造過程、価格等に関わる事項」という例示がされていて、

営業秘密の範囲が限定されていました。

 

 

また、上記例示の営業秘密は、経営の根幹にかかわる重要な情報で、

これが自由に利用されると、競業他社の利益になり、

この事件の会社の不利益になると判断されました。

 

 

そして、この事件の労働者は、最前線の営業マンとして、

営業秘密の内容を熟知し、

その利用方法・重要性を十分に認識していたので、

秘密保持義務を負担してもやむを得ない地位にありました。

 

 

その結果、この事件では、退職後の秘密保持義務が有効となり、

この秘密保持義務に違反した労働者に対して、

会社の損害賠償請求が認められました。

 

 

他方、ダンス・ミュージック・レコード事件の

東京地裁平成20年11月26日判決

(判例タイムズ1293号285頁)では、

秘密保持義務の対象となる情報の定義や例示がなく、

労働者が営業秘密として保護されていることを

認識できる状況にしていないことから、

労働者の予測可能性を害するとして、

当該営業秘密について、労働者は、

退職後に秘密保持義務を負担しないと判断されました。

 

 

退職後の秘密保持義務については、

秘密の性質・範囲、価値、保管状況、労働者の地位

などが考慮されますので、労働者は、退職後に、

前職の営業秘密を利用するときには注意が必要です。

 

 

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会社から出向を打診された場合の対処法

1 ANAにおける出向

 

 

新型コロナウイルスの影響で海外に移動する人が激減した影響で、

ANAホールディングスの業績が悪化したことを受けて、

ANAホールディングスは、人件費削減策として、

外部の企業に社員を出向させるようです。

 

 

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20201028-OYT1T50276/

 

 

出向の対象となるのは客室乗務員などで、

高い接客スキルを持った人材であるとして、

大手の企業や地方自治体が出向の受け入れ先として、

手を挙げているようです。

 

 

世界でコロナ禍がおさまるまでは、

業績の回復が難しいANA(出向元)、

出向という形で雇用が保障される労働者、

高い接客スキルを持った人材を受け入れられる出向先、

というように、三方よしの対応策といえそうです。

 

 

 

とはいえ、出向となると労働者は、

勤務先が変わるので、不安が強いかもしれません。

 

 

そこで、本日は、出向についての法律関係について解説します。

 

 

2 出向の法律関係

 

 

まず、出向とは、労働者が雇用先の企業(出向元)における

従業員たる地位を維持したままで、別の企業(出向先)で

相当期間にわたって、その別の企業で働くことをいいます。

 

 

銀行では、ある程度の年齢になると出向させられるという話を聞きます。

 

 

次に、会社は、どのような場合に、労働者に対して、

出向を命じることができるのでしょうか。

 

 

会社が労働者に対して、有効に出向命令を出すためには、

出向の対象者となる労働者との間で個別の合意が成立しているか、

就業規則などにおいて、出向先の労働条件・処遇、

出向期間、復帰条件に関する規定が整備され、

その内容も労働者に著しい不利益を被らせるものでないこと

が必要となります。

 

 

すなわち、就業規則で、「出向を命じることがある」

などの包括的な規定があるだけではだめで、

出向の条件について詳細を定めた規定が必要であり、

労働者に不利益にならない配慮が必要になるのです。

 

 

 

出向は、労働者にとって、仕事を提供する相手方である

指揮命令権者の変更を意味するので、同じ会社内で、

職種や勤務場所を変更する配転と比較して、

大きな不利益を労働者に及ぼすことになるので、

出向については、就業規則などで、

詳細に定めなければならないのです。

 

 

そのため、労働者としては、出向に応じる場合には、

出向期間、出向先での労働条件(賃金、賞与、業務内容、就労場所)

などを書面でよく確認する必要があります。

 

 

復帰条件についても、文書で合意しておくのが大切です。

 

 

労働者としては、出向期間中の賃金が気になるところです。

 

 

出向期間中の賃金については、

出向先と出向元の取決め・合意によって、

出向先が支払う場合と、出向元が支払う場合があります。

 

 

例えば、出向先が出向労働者に出向前と同額の賃金を支払い、

出向先での雇用の場合との差額を出向元が出向先に補填する方法と、

出向元が継続して賃金を支払い、

出向先が自らの分担金を出向元へ支払う方法があります。

 

 

出向に際して、賃金が引き下げられないように、労働者は、

出向前の賃金を保障してもらえるように交渉することが大切です。

 

 

労働者としては、出向に応じたくないのであれば、

会社の就業規則に包括的な出向の規定しかない場合には、

出向に同意しないようにすればいいのです。

 

 

出向に応じるのであれば、出向に関する労働条件を文書で明確にして、

出向前の労働条件を保障してもらえるように会社と交渉しましょう。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

始業時刻前の早出残業は労働時間ではないという会社側の主張に対する効果的な反論とは

1 始業時刻前の早出残業は労働時間ではないのか

 

 

未払残業代請求事件では、会社側から、

始業時刻前の早出残業については、

労働時間とは認められないという主張がされることがあります。

 

 

労働契約書や就業規則で決められた始業時刻よりも前に、

早目に出社した場合には、早目に出社して仕事をしていても

残業とはみなさないという主張です。

 

 

 

終業時刻後の残業については、

労働時間と認められることがほとんどですが、

始業時刻前の残業については、

労働時間と認めないと判断した裁判例もあるので、

会社側は、このような主張をしてくることがあります。

 

 

それでは、始業時刻前の早出残業については、

労働時間と認められないのでしょうか。

 

 

結論としては、事情によっては、

始業時刻前の早出残業についても、

労働時間と認められることはあります。

 

 

2 労働時間の定義と黙示の指示

 

 

まず、労働基準法の労働時間とは、

労働者が会社の指揮命令下に置かれている時間をいいます。

 

 

会社の指揮命令下に置かれているとは、

会社から残業を命じられるという明示の指示がある場合が典型です。

 

 

もっとも、明示の指示以外に、

会社からの黙示の指示に基づく場合でも、

会社の指揮命令下に置かれたことになるのです。

 

 

この黙示の指示については、

労働者が規定と異なる出退勤を行って残業をしており、

そのことを認識している会社が異議を述べていない場合や、

業務量が所定労働時間内に処理できないほど多く、

時間外労働が常態化している場合に認められます。

 

 

3 黙示の指示が認められた裁判例

 

 

具体的な事例でみてみましょう。

 

 

京都銀行事件の大阪高裁平成13年6月28日判決

(労働判例811号5頁)では、

始業時刻は8時35分からになっていたのですが、

8時15分から金庫の開扉の準備作業が行われていたこと、

融得会議などの会議が開催されていたことから、

始業時刻前の8時15分から8時35分までが労働時間と認定されました。

 

 

この事件では、多くの銀行員が8時ころまでに出勤しており、

銀行の業務としては金庫を開きキャビネットを運び出し、

それを各部署が受け取り、業務の準備がなされていたことなどが、

労働時間の認定の際に考慮されました。

 

 

他の労働者の勤務実態や、準備作業と本業との関連性などが、

黙示の指示の判断の際に考慮されるといえそうです。

 

 

 

もう一つ、黙示の指示が認めれた事例として、

東京都多摩教育事務所(超過勤務手当)事件の

東京高裁平成22年7月28日判決

(労働判例1009号14頁)があります。

 

 

この事件では、正規の勤務時間内に完了できない業務を与えられていて、

正規の勤務時間以外の時間や休日に業務を行っていたこと、

時間外勤務が公務の円滑な遂行に必要な行為であったこと、

上司が超過勤務があることを知って容認していたこと、

といった事情が考慮されました。

 

 

決められた勤務時間では終わらない量の仕事を与えられていて、

上司が残業していることを黙認しているような場合には、

黙示の指示が認められやすくなるのです。

 

 

以上まとめますと、始業時刻前の早出残業については、

勤務時間内に処理できないほどの業務量が与えられていたこと、

上司が残業を認識していて異議を述べていないこと、

他の労働者の勤務実態、準備作業が本業と関連していること、

などの事情があれば、黙示の指示に基づく残業として、

労働時間と認定されて、残業代請求が認められることになるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金について、シフトが入らなかったアルバイトなども対象になります

1 労働基準法26条の休業手当

 

 

石川県では新型コロナウイルスの感染は落ち着いていますが、

大都市圏では感染が継続しています。

 

 

また、ヨーロッパでは、都市封鎖が実施されており、

世界では、新型コロナウイルスの感染が抑えられていないので、

また再び、日本でも感染が爆発するリスクがあります。

 

 

 

特にこれから冬が始まるので、

インフルエンザと新型コロナウイルスの同時流行が懸念されます。

 

 

このように、新型コロナウイルスの感染爆発が起きた場合、

会社が休業することがあります。

 

 

 会社が休業する場合、労働基準法26条に基づき、

会社は、休業期間中、労働者に対して、

平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければなりません。

 

 

しかし、新型コロナウイルスの影響で、

会社の売上がなくなり、会社が労働者に対して、

休業手当を支払わない事態が生じます。

 

 

会社の休業期間中に、休業手当が支払われないとなると、

労働者の生活が困窮することになります。

 

 

2 新型コロナウイルス感染症休業支援金・給付金の制度概要

 

 

そこで、このような事態を改善するための制度として、

新型コロナウイルス感染症休業支援金・給付金があります。

 

 

新型コロナウイルス感染症休業支援金・給付金は、

新型コロナウイルスの影響で休業した中小企業に雇用されている労働者が、

休業手当の支給を受けていない場合に、

休業前賃金の8割が支給されるという制度です。

 

 

 

労働者としては、休業手当を支払わない会社を相手に、

交渉や裁判手続をするよりも、

スピーディーに国から直接支給がえられるので、

この制度を利用するのが得策です。

 

 

この制度では、労働者と会社が作成する支給要件確認書などで、

労働局が、休業の事実を確認することになります。

 

 

3 アルバイトのシフト削減の問題

 

 

この休業の事実の確認の際に、シフト制のアルバイトなどであれば、

会社が、もともとシフトを組んでいないとして、休業を認めず、

その結果、シフト制のアルバイトが休業支援金を受給できない

という問題がありました。

 

 

この問題について、厚生労働省は、10月30日、

以下のケースについて、支給要件確認書において

休業の事実が確認できなくても、

休業支援金の対象となる休業として取扱うことにしました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000689989.pdf

 

 

①労働条件通知書に週○日勤務などの具体的な勤務日の記載がある、

申請対象月のシフト表が出ているといった場合であって、

事業主に対して、その内容に誤りがないことが確認できるケース。

 

 

②休業開始前の給料明細等により、6ヶ月以上の間、

原則として月4日以上の勤務がある事実が確認可能で、

かつ、事業主に対して、新型コロナウイルス感染症の影響がなければ

申請対象月において同様の勤務を続けさせていた意向が確認できるケース。

 

 

このように、シフトが入らなかったアルバイトも、

休業支援金の支給対象になると明記されたので、

救済される労働者が拡大されることが期待されます。

 

 

そして、会社が支給要件確認書に、

休業手当を支払っていないことを記載しても、それだけで、

労働基準法26条の休業手当の支払義務の有無の判断に影響しないので、

会社は、労働者から、支給要件確認書の記載を求められたら、

応じるようにしてもらいたいです。

 

 

新型コロナウイルスに関する労働者保護の施策が

よい方向に改善されているのが嬉しいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

60歳定年退職を争い未払残業代を請求して150万円の残業代を回収して職場復帰を果たした事例

1 60歳で定年退職は認められるのか?

 

 

本日は、定年退職と未払残業代請求について、

珍しい解決ができましたので、解決事例を紹介します。

 

 

クライアントは、石川県内のホテルの支配人をしていました。

 

 

 

相手方会社の就業規則には、60歳が定年と規定されていたのですが、

相手方会社の求人票には65歳が定年と記載されており、

クライアントは、相手方会社の定年は65歳だと考えて、

求人に応募して、相手方会社に入社しました。

 

 

クライアントは、満60歳になっても、

相手方会社から定年退職のことは言われず、

そのまま働いていたのですが、ある時、突如として、

相手方会社から、60歳定年を理由に、退職をさせられました。

 

 

相手方会社は、新型コロナウイルスの影響で、

ホテルの売上がなく、人件費を削減したかったことから、

ホテルをリニューアルするための改装工事にとりかかるタイミングで、

クライアントを60歳定年を理由に退職させようとしたのです。

 

 

クライアントは、65歳定年と記載された求人票を見て

相手方会社に就職し、他の労働者も60歳で定年になった方はおらず、

満60歳になっても、相手方会社から定年退職のことを

言われなかったため、65歳まで働ける前提で、

人生設計をしていたので、60歳定年退職に納得できず、

私のもとへ相談にこられました。

 

 

2 高年法の継続雇用と求人票の効力

 

 

60歳定年制については、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

(高年法といいます)9条1項により、

65歳までの安定した雇用を確保するために、会社は、

①当該定年の引上げ、②継続雇用制度の導入、③当該定年の定めの廃止、

のいずれかの措置を講じなければなりません。

 

 

 

相手方会社は、高年法9条に違反していることになります。

 

 

また、求人票と就業規則の労働条件が異なる場合については、

福祉事業者A苑事件の京都地裁平成29年3月30日判決

(労働判例1164号44頁)の裁判例が参考になります。

 

 

この裁判例では、求人票記載の労働条件は、

当事者間においてこれと異なる別段の合意をするなどの

特段の事情がない限り、労働契約の内容になると、判断されています。

 

 

そのため、相手方会社の60歳定年退職は無効となりますので、

クライアントは、相手方会社に対して、

労働契約上の地位の確認を求めました。

 

 

そして、クライアントに確認したところ、

残業代の支払がなかったので、相手方会社に対して、

未払残業代請求をしました。

 

 

3 復職に向けた交渉

 

 

相手方会社は、60歳定年退職としたことについては非を認めて、

復職するように主張してきました。

 

 

通常、会社をむりやり退職させるようなことをされると、

労働者としては、元の会社に復職することに、

強い抵抗があり、実際には復職せずに、

会社に対して金銭請求をすることがほとんどです。

 

 

もっとも、クライアントの場合、

新型コロナウイルスの影響で求人がなく、60歳以上で、

相手方会社よりも条件のよい就職先をみつけるのが困難なため、

相手方が謝罪をし、一定程度の未払残業代を支払うことを条件に

復職することにしました。

 

 

未払残業代請求について、相手方会社は、

クライアントが管理監督者であることを理由に

未払残業代を支払わないと主張してきました。

 

 

しかし、クライアントは、相手方会社の経営に全く関与しておらず、

労働時間はタイムカードで管理されていて、

労働時間についての裁量はなく、クライアントの年収は、

同年代の平均賃金よりも大幅に安いことから、

管理監督者ではありませんでした。

 

 

そこで、相手方会社の弁護士と交渉して、

相手方会社から150万円の未払残業代を支払ってもらい、

60歳定年退職としたことについて謝罪してもらい、

従前と同じ労働条件で復職するという内容で示談が成立しました。

 

 

相手方会社と一時は対立しましたが、なんとか無事に復職できて、

クライアントは、特に問題なく、今までどおりに働いています。

 

 

双方に弁護士がついていますので、相手方会社も、

クライアントに対して、不当な仕打ちを

することができないのだと思います。

 

 

元の会社に復職するかたちで事件が解決することは珍しいので、

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

正社員の労働条件を引き下げることで正社員と非正規雇用労働者の待遇差を是正すべきではない

1 正社員の労働条件の引き下げが懸念される

 

 

10月13日と10月15日に、

正社員と非正規雇用労働者の待遇差に関する最高裁判決がでて、

正社員と非正規雇用の待遇差に注目が集まっています。

 

 

退職金と賞与については、待遇差は不合理ではないとされましたが、

手当や休暇については、待遇差は不合理と判断されました。

 

 

この最高裁判決を受けて、企業は、手当や休暇における、

正社員と非正規雇用労働者の待遇差を見直す可能性があります。

 

 

ここで、気をつけるべき点があります。

 

 

それは、正社員の労働条件を引き下げて、

正社員と非正規雇用労働者の待遇差を是正することです。

 

 

 

すなわち、正社員に対してだけ

扶養手当や特別な休暇が与えられている場合に、

正社員の扶養手当を削除し、特別な休暇を廃止して、

正社員の労働条件を引き下げて、

非正規雇用労働者の労働条件に合わせるということです。

 

 

これでは、正社員の労働条件が引き下げられることで、

モチベーションが下がりますし、非正規雇用労働者にとっては、

何も労働条件が改善されないままとなり、

全ての労働者に不満が残る結果になります。

 

 

もともと、正社員と非正規雇用労働者の待遇差を解消することによって、

非正規雇用労働者の処遇を改善し、賃金の上昇、需要の拡大を通じて、

経済成長を図ることが目的とされていたので、

非正規雇用労働者の低い労働条件に合わせるように、

正社員の労働条件を引き下げたのでは、

この目的の意味がなくなってしまいます。

 

 

そのため、会社は、不利益を受けている非正規雇用労働者の

待遇を引き上げることで、待遇差を改善すべきなのです。

 

 

2 労働条件の引き下げについて同意しない

 

 

とはいえ、会社の経営が厳しい場合には、会社は、

正社員にだけ支給している手当などを廃止して、

正社員の労働条件を非正規雇用労働者の低い水準に

引き下げてくることが考えられます。

 

 

この場合、正社員としては、手当の廃止などの

労働条件の不利益な変更に同意してはいけません。

 

 

労働者の個別の合意がない限り、原則として、

労働条件を不利益に変更することはできないのです。

 

 

仮に、労働者が不利益な労働条件の変更に同意してしまった場合、

その同意が、労働者の自由な意思に基づくものでない場合には、

その同意が無効になる可能性があります。

 

3 就業規則の不利益変更

 

 

次に、正社員が手当の廃止などの労働条件の不利益な変更に同意せずに、

反対していると、会社は、賃金規程などの就業規則を変更して、

手当を廃止するなどの対応をしてくる可能性があります。

 

 

 

このように、会社が労働者にとって不利益となる

就業規則の変更を行う場合には、労働契約法10条に規定されている、

以下の事情が総合判断されます。

 

 

①労働者の受ける不利益の程度

 

 

②労働条件の変更の必要性

 

 

③変更後の就業規則の内容の相当性

 

 

④労働組合等との交渉の状況

 

 

⑤その他の就業規則の変更に係る事情

 

 

正社員と非正規雇用労働者の待遇差を是正するために、

正社員の労働条件を就業規則の不利益変更で引き下げることは、

③や⑤の事情として、マイナスに考慮されます。

 

 

さらに、正社員に支給されている手当を廃止する場合、

正社員の賃金が減額されますので、

②労働条件の変更の必要性については、

高度のものが求められます。

 

 

そのため、正社員と非正規雇用労働者の待遇差を是正するために、

正社員の手当などを廃止することを、

就業規則の変更で実施する場合には、

労働契約法10条の事情に照らして、不合理であるとして、

無効になる可能性があります。

 

 

今後、正社員の労働条件の引き下げによって、

正社員と非正規雇用労働者の待遇差の是正がなされる

動きがでてくるかもしれませんが、労働者としては、

断固反対して、非正規雇用労働者の処遇の改善を求めていくべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

カンタンに売れるのになぜYou Tubeをやらないんですか?

1 私が鴨頭嘉人氏を知ったきっかけ

 

 

鴨頭嘉人氏の「カンタンに売れるのになぜYou Tubeをやらないんですか?」

という本を読みましたので、アウトプットします。

 

 

 

私は、神田昌典氏の「実学MBA」の会員でして、

実学MBAで、神田氏と鴨頭氏の対談を聞き、

鴨頭氏のファンになり、よしYou Tubeを始めようと思い立ち、

鴨頭氏のYou Tubeを何本か視聴して、

この本にたどり着きました。

 

 

もうすぐ5Gの時代が始まり、

動画コンテンツが重要視される時期になってきましたので、

そろそろYou Tubeを始めようと考えていた時期でしたので、

この本はとても勉強になりました。

 

 

2 ビジネスYouTuberとして信用を蓄積する

 

 

まず、鴨頭氏は、YouTuberを目指すのではなく、

ビジネスYouTuberを目指すことを提唱しています。

 

 

ビジネスYouTuberとは、広告収入を主たる目的とせずに、

You Tubeで情報を発信して、

そこからビジネスにおける本命商品を販売する人物のことをいいます。

 

 

ビジネスYouTuberは、

You Tubeを信用を蓄積するためのツールとして利用します。

 

 

You Tubeで視聴者にとって有益な情報を発信すれば、

情報発信者に対する信用が高まります。

 

 

この信用を高めることが、

今後のビジネスで重要なポイントになるのです。

 

 

情報が溢れかえっている今の時代、消費者は、

信用できる情報をもとに、商品の購入を決定します。

 

 

まずは、インターネットで商品について検索して、その後に、

実際に利用したことのある人の口コミなどを参考にして、

商品を購入するかを決定するのです。

 

 

インターネットの世界に信用できる情報があれば、

消費者は、その情報をもとに商品の購入を決定します。

 

 

売る側からすれば、消費者に対して、

信用できる情報を提供し続けることができれば、

売ることが容易になるといえそうです。

 

 

そして、情報は、テキストや画像よりも、

動画の方が圧倒的に多くの情報を伝えることができますし、

信用を獲得する上で、動画はますます重要になるのです。

 

 

You Tubeで、消費者にとって有益な情報を発信すれば、

信用が蓄積されて、物が売れるようになるのです。

 

 

 

3 1週間に2本以上の動画を投稿する

 

 

信用を蓄積するために重要なツールとなるYou Tubeですが、

なかなか継続することは難しそうです。

 

 

しかし、You Tubeは、継続する人がわずか5%しかいないので、

継続できる人は、それだけで強力な武器を手に入れることができるのです。

 

 

鴨頭氏は、1週間に2本以上の動画を投稿すること

重要であると説明されています。

 

 

私は、ブログをなんとか継続できてきましたので、

これからは、You Tubeに取り組み、

1週間に2本以上の動画を投稿することを目標にしたいです。

 

 

You Tubeは、質よりも量が重要なので、

花開く日を信じて、動画の投稿をしていきたいと思います。

 

 

私がブログで発信している、

労働者が解雇や労災、残業などのトラブルに巻き込まれたときの対処法を、

動画で解説すれば、よりわかりやすいコンテンツとなって、

有益な情報になると信じて、動画を作成してみたいと思います。

 

 

You Tubeについて情報収集した後に、動画を投稿しましたら、

ブログで報告しますので、見ていただければ幸いです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

 

会社から実際の終業時間よりも早くタイムカードを打刻するように指示された場合の対処法

1 実際の終業時間よりも早い時間にタイムカードを打刻せよという業務指示

 

 

未払残業代請求の依頼を受けているクライアントから、

次のような質問を受けました。

 

 

会社に対して、未払残業代を請求したところ、

会社から、今後は、残業をする場合には、

終業時間である17時30分に一旦タイムカードを打刻してから、

残業をするように指示されたのですが、

どうすればよいですか、という質問です。

 

 

この会社の始業時間は8時30分、

終業時間は17時30分、休憩時間1時間で、

1日の所定労働時間が8時間に設定されていましたので、

17時30分にタイムカードを打刻して残業したのでは、

残業をしていたことの証明が困難になります。

 

 

会社は、残業代の支払を免れたいために、労働者に対して、

労働時間を過小に申告するように圧力をかけてくることがよくあるのです。

 

 

このように、会社から、真実の労働時間とは異なり、

所定労働時間でタイムカードを打刻するように指示された場合、

どのように対処すればよいのでしょうか。

 

 

 

結論は簡単で、会社は、違法な指示をしているので、

そのような指示に従う必要はなく、

実際に出社した時刻にタイムカードを打刻し、

実際に退社した時刻にタイムカードを打刻すればいいのです。

 

 

2 労働時間把握義務

 

 

まず、会社は、労働時間を正確に把握する義務を負っています。

 

 

労働安全衛生法66条の8の3で、会社は、

労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと規定されています。

 

 

また、厚生労働省が公表している、

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

においても、会社は、労働時間を適正に把握するなど

労働時間を適切に管理する責務を有していると規定されています。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf

 

 

このガイドラインには、会社は、

タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の

客観的な記録を基礎として確認して、

適正に記録することが記載されています。

 

 

タイムカードは、労働者が残業していたかを証明するための

貴重な記録なので、当然、正確に記録させなければ、

会社は、労働時間の適正把握義務に違反することになります。

 

 

そのため、会社が、労働者に対して、

真実の労働時間とは異なる労働時間でタイムカードを打刻するように

指示することは、労働時間の適正把握義務に違反する、

違法な業務指示となるので、労働者は、

違法な業務指示に従う必要はないのです。

 

 

 

このような違法な業務指示に従ってしまうと、

残業していたことを証明することができず、会社に対して、

未払残業代を請求することができなくなりますので、

勇気をもって、きっぱりと、

違法な業務指示を断るようにしてください。

 

 

3 労働時間を記録しよう

 

 

会社がタイムカードの時刻を改ざんするおそれがある場合には、

タイムカードを打刻するごとに、

タイムカードの記録を写真に残しておくのがいいです。

 

 

また、どうしても、タイムカードを実際の終業時間よりも

早く打刻するようにという、会社からの指示に

従わなければならない状況に追い込まれたときには、

会社からの指示を録音や記録しておき、かつ、

自分で正確な労働時間を記録するようにしてください。

 

 

自分で労働時間を記録するときにおすすめなのが、

残業証拠レコーダー」(通称残レコ)というアプリです。

 

 

https://zanreko.com/

 

 

GPS機能を利用して、

自動で残業時間の証拠を確保することができる便利なツールです。

 

 

会社から、実際の労働時間とは異なる労働時間を記録するように

指示されたとしても、きっぱりと断ることが重要です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

正社員と非正規雇用労働者の待遇格差が不合理といえるかの検討手順とパート有期法14条2項の説明義務

1 労働契約法20条についての最高裁判決

 

 

10月13日と10月15日に

労働契約法20条に関する最高裁判決がでて、

正社員と非正規雇用労働者の待遇格差が注目を集めています。

 

 

賞与と退職金については、待遇格差を不合理とするのは

難しくなる傾向にありますが、

手当や福利厚生などの待遇格差を不合理としやすくなる傾向にあります。

 

 

私の個人的見解ですが、賞与や退職金の待遇格差を不合理とすると、

会社が負担しなければならない人件費が増大しすぎて、

影響が大きすぎるのですが、手当や福利厚生であれば、

そこまで人件費が増大することはなく、

待遇格差の是正に取り組みやすい、

という側面が考慮されたのではないかと思います。

 

 

 

労働契約法20条は、現在、パート有期法8条となりました。

 

 

2 待遇格差が不合理といえるかの検討手順

 

 

ここで、非正規雇用労働者と正社員の待遇の相違が

パート有期法8条違反にあたり

不合理と認められるかどうかの検討手順を説明します。

 

 

①非正規雇用労働者の個別の待遇に対応する正社員の待遇を特定し、

どのような労働条件の相違があるのかを明確にします。

 

 

②当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的を確定します。

 

 

③確定した当該待遇の性質及び当該待遇の目的に照らして、

業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、

当該職務の内容及び配置の変更の範囲、

その他の事情、の3つの考慮要素の中から

適切と認められるものを抽出します。

 

 

④比較対象として特定した正社員と非正規雇用労働者との間で

考慮要素に関する事実に違いがあるかを検討します。

 

 

⑤考慮要素に関する事実に違いがなければ

均等待遇でなければ当該待遇の相違は不合理となり、

考慮要素に関する事実に違いがあっても

違いに応じた均衡待遇でなければ当該待遇の相違は不合理となります。

 

 

3 パート有期法14条2項の説明義務

 

 

以上の①から⑤の検討手順をふんで、

待遇の相違が不合理か否かを検討するのですが、

その前提として、非正規雇用労働者は、

正社員との間に待遇の相違があることの情報を

知っている必要があります。

 

 

非正規雇用労働者には、正社員との間に待遇格差があるのか、

格差があるとしてもその理由が何なのかが分からなければ、

会社に対して、待遇改善を求めることができないからです。

 

 

そこで、パート有期法14条2項において、

非正規雇用労働者と正社員との間の待遇の相違の内容及び理由について、

会社の説明義務が新設されました。

 

 

 

会社は、非正規雇用労働者から、

待遇の相違についての説明を求められた場合には、

比較対象となる正社員の賃金額や賃金の平均額や上限・下限など

を説明しなければならないのです。

 

 

また、非正規雇用労働者は、会社に対して、

同一の基準で違いが生じている理由、

基準が異なる場合には、待遇の性質や目的を踏まえ、

基準に違いを設けている理由、

それぞれの基準をどのように適用しているのか、

その適用の結果としてどのように賃金額に相違が生じているか

などについて、説明を求めていきます。

 

 

非正規雇用労働者は、会社の説明から得られた情報をもとに、

正社員との待遇格差が不合理と判断できれば、

会社に対して待遇の改善を求めていきます。

 

 

もし、会社が、パート有期法14条2項の説明義務に違反した場合には、

非正規雇用労働者と正社員との待遇差が不合理であることを

基礎づける一つの重要な事情になります。

 

 

また、会社が、この説明義務に違反する対応をしてきたのであれば、

パート有期法18条をもとに、労働局に相談して、労働局から、

会社に対して、助言、指導、勧告などをしてもらうのがいいです。

 

 

最高裁判決がでたことで、

正社員と非正規雇用労働者の待遇格差が注目されていますので、

これを機会に、パート有期法14条2項を活用して、

会社に対して待遇格差の説明を求めて、

待遇格差の改善が実現されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

勝間式ネオライフハック100

1 環境を整える

 

 

勝間和代氏の「勝間式ネオライフハック100」という本を読みました。

 

 

 

仕事やプライベートを最適化して、

幸せな人生を送るためのノウハウがたくさん記載されていますので、

多くのビジネスマンにとって参考になると思います。

 

 

本日は、この本を読んで私が気づいたことを3つ、紹介します。

 

 

1つ目は、目標達成をするためには、

努力の9倍の環境整備をすることです。

 

 

何かの目標を達成したいのであれば、

努力以上に環境を整備することの方が重要ということです。

 

 

私達は、ついつい努力の方が重要と思い込んでいるのですが、

目標を達成している人達のいる環境に、

自分の身を置いた方が、目標を達成しやすくなるので、

環境整備の方がむしろ重要なわけです。

 

 

私も含めて人間の意志はどうしても弱いので、

自分の努力だけでは、目標達成するのは困難なことが多いです。

 

 

「人は、周りにいる5人の平均になる」とこの本に記載されていて、

なるほどと思いました。

 

 

人は、知らずしらずのうちに、

周囲の人達から多大な影響を受けているので、

よりよくなりたいのであれば、

自分がなりたいと考える人達と長く過ごす環境を作って、

その人達からよい影響を受ければいいのです。

 

 

自分ができていないことをできている人がいれば、

できている人と一緒にいることができる環境はどこで、

どうすればその環境にいけるのかを自分で考えて実践することが、

目標達成には重要になると、よくわかりました。

 

 

2 運をよくする

 

 

2つ目は、運をよくする4つの法則を知ることです。

 

 

勝間氏が唱える運をよくする4つの法則とは、

①たくさんの人と会って話す、

②予感や直感を大切にして、自分はついていると思う、

③幸運を期待していると、幸運が起きる、

④不幸の中から、次の幸運の種を探す、です。

 

 

 

自分のチャンスを広げるには、なるべくたくさんの人と会って、

話をするのが効果的というわけです。

 

 

私は、初対面の人と話すのをおっくうに感じるところがあるのですが、

今後は、自分の運がよくなるチャンスだと思って、

自分から、話しかけるようにしていきます。

 

 

また、最近、私は、自分は運がいいと思い込んでいます。

 

 

すると不思議なことに、自分の運気がよくなっている気がしてきました。

 

 

普段から幸運を期待していると、

何かいいことはないかとアンテナを張っているので、

自然と視野が広がり、気付きが増えるようですね。

 

 

きっと、自分の潜在意識が幸運をひきよせるように

はたらいているのだと思います。

 

 

3 起きていることはすべて正しい

 

 

3つ目は、起きていることはすべて正しい、ということです。

 

 

このように現実を引き受けることはなかなか難しいのですが、

この引き受けができるようになると、何が起きても怖くはなく、

いかようにでも対処できるのではないかと思います。

 

 

自分にとってマイナスに思える出来事が起きたとしても、

起きていることはある意味正しいと自覚して、

次の行動を考えることで、人は成長していくのでしょう。

 

 

このマイナスな出来事は、

自分を成長させてくれるチャンスであると受け止めれば、

人生はよりよい方向に進んでいきます。

 

 

まだまだ、ここまでの境涯には至っていませんが、

修行を続けていき、「起きていることはすべて正しい」

という考え方の本質をつかみたいものです。

 

 

自分の人生をよりよい方向にすすめていくために

必要なノウハウがたくさん記載されていますので、

多くの人に気付きが得られる本だと思い、紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。