コロナ解雇で活用される賃金仮払いの仮処分の手続とは

1 コロナ解雇で賃金仮払いの仮処分が認められる

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で

業績が悪化したことを理由に解雇されたタクシー運転手が、

会社に対して、労働者としての仮の地位の確認と、

賃金の仮払いを求めた仮処分手続において、8月21日、

仙台地裁は、解雇を無効として、

休業手当相当額の一部を支払うように決定をしたようです。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/771b4ea2d7714f4ab2fd38067732d7d67ab05a13

 

 

もっとも、労働者としての仮の地位の確認の請求は

認められなかったようです。

 

 

報道によりますと、裁判所は、雇用調整助成金を利用すれば、

運転手を休ませた際に支払う休業手当の大半が補填できたとして、

解雇回避努力を尽くしていないことから、

解雇は無効と判断したようです。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化により、

労働者が解雇されるケースが増えてくることが予想される中、

解雇が無効と判断されてよかったです。

 

 

 

本日は、仮処分の手続について解説します。

 

 

2 仮処分とは

 

 

まず、仙台地裁の事件では、仮処分という手続が利用されました。

 

 

通常の裁判は、提訴してから判決まで至るのに、

1年以上の時間がかかります。

 

 

1年以上時間をかけて、勝訴判決がでれば、

金銭の支払いを受けられますが、判決がでるまでは、

何の支払いもありません。

 

 

特に、解雇事件では、労働者は、仕事を失い、

収入が絶たれるので、再就職ができなければ、

勝訴判決がでるまで、生活できなくなります。

 

 

そうなれば、裁判を続けることができずに、

泣き寝入りをさせられる労働者が増えてしまいます。

 

 

このような事態を避けるために、判決が出るまでの期間、

会社から、労働者に対して、仮に賃金を支払わせれば、

労働者は、日々の生活をやりくりできて、

裁判を続けることができます。

 

 

そのため、通常の裁判手続で判決がでるまでの期間、暫定的に、

会社に賃金を支払わせるのが、賃金仮払いの仮処分という手続なのです。

 

 

この仮処分の手続ですが、仮とはいいながらも、

実際には、事件が最終的に解決するインパクトがあります。

 

 

基本的に、仮処分手続でくだされた決定は、

通常の裁判手続の判決でも同じような結論になることが多く、

裁判所のくだした決定に従って、事件が解決することがあります。

 

 

また、仮処分手続の中で、和解が試みられて、

事件が解決することもあります。

 

 

そして、仮処分の手続は、申し立てをしてから、

最初の裁判期日が指定されるのが早く、

手続が早く進行しますので、事件が迅速に解決します。

 

 

そのため、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で裁判所が、

なかなか裁判期日を指定しない場合でも、

比較的早くに手続が進むので、

新型コロナウイルスの感染拡大の状況において、

仮処分の手続は利用されました。

 

 

3 保全の必要性

 

 

もっとも、仮処分の手続で、賃金の仮払いが認められれて、

会社から労働者に賃金が支払われた場合、

労働者は、その賃金を生活費として使ってしまうので、

もし、仮処分の手続の後の通常の裁判手続で、

労働者が敗訴してしまったら、労働者は、

会社から支払いを受けた賃金を返還しなければならないのですが、

賃金を使ってしまっているので、返還できません。

 

 

このような観点から、仮処分の手続では、

保全の必要性という要件を満たす必要があるのです。

 

 

法律上は、保全の必要性について、

労働者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため、

と規定されています。

 

 

具体的には、仮処分がないまま

通常の裁判手続の判決を待っていたのでは、

労働者やその家族の生活が危機におちいることを言います。

 

 

 

労働者は、この保全の必要性について、

労働者に貯金などの資産があるか、

同居家族の収入があるか、

家計の状況などをもとに、

疎明しなければならないのです。

 

 

疎明とは、裁判官に対して、

一応確からしいという推測を得させる程度の証拠をあげることを言います。

 

 

この保全の必要性の疎明のハードルが高く、

貯金がたくさんあったり、

夫婦で共働きをしていたりしていた場合には、

保全の必要性は認められにくいです。

 

 

保全の必要性のハードルが高いので、

労働事件において仮処分手続は、

あまり多く利用されてはいませんでした。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化を原因とする、

タクシー会社の整理解雇の場合、タクシー運転手は高齢で、

貯蓄もなく、賃金仮払いがないと、

生活が困窮する方が多いことが予想され、

保全の必要性を疎明できる可能性があったため、

仮処分の手続が利用されたと考えられます。

 

 

そして、仙台地裁で実際に、一部ではありますが、

賃金の仮払いの仮処分が認められてよたったです。

 

 

長くなりましたので、続きは明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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