加賀温泉郷の旅館やホテルの解雇から整理解雇の人員削減の必要性を検討する

1 加賀温泉郷の旅館やホテルで解雇が多発しています

 

 

石川県の加賀温泉郷の旅館やホテルにおける解雇が増えてきています。

 

 

小松市の粟津温泉の老舗旅館の辻のや花乃庄は,

全従業員約50人を6月末で解雇するようです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kanazawa/20200603/3020005059.html

 

 

また,加賀市片山津温泉のホテル北陸古賀乃井と,

山代温泉のホテル大のやにおいても,

両旅館の全従業員約70人が,

施設の老朽化により改修を検討する必要があり,

長期休館することから,解雇通告を受けたようです。

 

 

https://www.chunichi.co.jp/article/68748

 

 

新型コロナウイルス感染拡大の影響で,

休館を余儀なくされている旅館やホテルが多く,

宿泊業における解雇や雇止めが業種別の中で最も多いようです。

 

 

 

2 整理解雇

 

 

このような経営悪化を理由とする解雇を整理解雇といいます。

 

 

整理解雇は,経営側の事情で解雇をするのであり,

労働者には落ち度がないため,厳格に判断されます。

 

 

具体的には,①人員削減の必要性,

②解雇回避努力義務,

③人選の合理性,

④手続の相当性(労働者に対して説明を尽くしたか),

という整理解雇の4要件(要素)を総合考慮して,

整理解雇が無効となるかが判断されます。

 

 

本日は,このうちの①人員削減の必要性について解説します。

 

3 人員削減の必要性

 

 

①人員削減の必要性については,

⑴企業が倒産の危機にある場合,

⑵企業が客観的に高度の経営危機下にある場合,

⑶企業の合理的運営上やむを得ない必要性がある場合,

⑷経営方針の変更等により余剰人員が生じた場合,

など様々な程度があります。

 

 

このように,どの程度の人員削減の必要性があればいいのかについては,

会社の経営判断にかかることですので,なかなか判断が難しいです。

 

 

そこで,人員削減の要否という経営判断の前提となる

事実認識の過程において,どの程度の情報を収集し,

どのような視点からその分析・検討をしたか,及び,

その事実認識に基づき,人員削減の必要性があるとの

経営判断に至った意思決定の推論過程及び内容に,

どの程度の合理性を認めることができるか

という判断基準を設定して検討します。

 

 

すなわち,会社がどういった情報を集めて,

どのような事実を認識し,その認識した事実に基づいて

人員削減が必要との判断に至ったのか,

その具体的プロセスの内容を会社に主張させて,

証明させることがポイントになります。

 

 

 

人員削減の必要性の判断材料になる事情には,

収支や借入金の状態,

取引先との取引量の動向,

資産状況,

人件費や役員報酬の動向,

社員の採用動向,

業務量,

株式配当

などがあげられます。

 

 

例えば,希望退職や退職勧奨が行われて,

既に自己都合退職した労働者がいる場合,

人員削減がある程度達成されていれば,

会社がさらに人員削減をする必要があったのかという

判断のプロセスが厳格に判断されることになります。

 

 

あくまで,人員削減の対象は,その必要性に見合った

適正な範囲であることが要請されますので,

その範囲を超える人員削減は許されないのです。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響による整理解雇の場合でも,

上記の観点から,人員削減の必要性は検討されるべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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