富士そばの未払残業代請求事件から労働時間の適正把握義務を検討します
1 富士そばの未払残業代請求事件
立ち食いそばチェーンの富士そばを経営する
ダイタングループの労働者16人が
未払残業代など合計約2億4785万円の支払を求める
労働審判の申立てをしました。
https://www.bengo4.com/c_5/n_11999/
報道によりますと、富士そばでは
勤務表の改ざんが行われていたようです。
具体的には、土日出勤や8時間を超えた分の勤務を削除し、
1日の労働時間が8時間、1週間の労働時間が40時間
におさまるようにして、土日出勤はなかったように改ざんされたようです。
また、会社の役員から、タイムカードを押さずに
勤務するよう指示もあったようです。
このような改ざんをされたのは店長のようです。
上記のことが真実であれば、ダイタングループは、
労働時間の適正把握義務に違反したことになります。
本日は、労働時間の適正把握義務について解説します。
2 労働時間の適正把握義務
まず、平成29年1月20日、
「労働時間の適正な把握のために事業者が講ずべき措置に関するガイドライン」
が公表されました。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf
このガイドラインにおいて、会社は、タイムカードなどで、
労働者の労働時間を適正に把握しなければならない義務
を負っていることが明記されました。
もっとも、このガイドラインでは、
労働基準法41条2号の管理監督者や、
みなし労働時間制が適用される労働者は、
適用対象から除外されていました。
次に、平成30年6月29日に労働安全衛生法が改正されて、
労働安全衛生法66条の8の3という条項において、会社は、
労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと規定されました。
労働時間の状況の把握とは、
労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、
労務を提供し得る状態だったかを、
タイムカード等の客観的な記録で把握するということです。
この労働安全衛生法の労働時間把握義務の対象となる労働者には、
労働基準法41条2号の管理監督者や、
みなし労働時間制が適用される労働者も含まれることになります。
そのため、現時点では、管理監督者であっても、
労働時間を適正に把握しなければならないのです。
労働時間を把握するためには、
出社時刻と退社時刻を客観的に正確に記録することが必要でして、
タイムカードや勤務表を後から改ざんすることは、
労働時間の適正把握義務に違反することになります。
そして、会社が労働時間の適正把握義務に違反した場合、
労働者による労働時間の立証がうまくいかなかったとしても、
裁判所は、推計的な手法を用いて、
未払残業代請求を認めてくれる傾向にあります。
また、労働基準法41条2号の管理監督者とは、
経営者と一体的な立場にある者であり、
かなり厳格に判断されます。
そのため、店長だからといって、
労働基準法41条2号の管理監督者と認められるケースは
少ないと考えられます。
以上、まとめますと、そもそも労働基準法41条2号の
管理監督者に該当する者は少なく、
会社は、労働時間の適正把握義務を負っており、
これに違反した場合には、労働者の労働時間の立証が容易になるのです。
富士そばの労働審判において、
労働者の未払残業代請求が認められることを期待したいです。
なお、残業代請求については、
当事務所の次のホームページが参考になります。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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