森友学園の公文書改ざんによる財務局職員の自殺の損害賠償請求事件

1 公文書改ざんと財務局職員の自殺

 

 

森友学園への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で,

財務省近畿財務局の赤木俊夫さんが自殺したのは,

公文書改ざんに加担させられたからであるとして,

赤木さんの奥様が国と元財務省理財局長の佐川宣寿氏に対して,

損害賠償請求の訴訟を提起しました。

 

https://www.asahi.com/articles/ASN3L4WFBN3LPTIL00H.html

 

 

報道によりますと,赤木さんが残した手記には,

公文書を改ざんするに至る経緯がなまなましく記載されているようです。

 

 

赤木さんは,公文書の記載のうち,森友学園を優遇した部分の記載を

削除するように上司から指示を受けたようです。

 

 

 

赤木さんは,上司の指示に対して抵抗したようですが,

複数回改ざんを強要されたようです。

 

 

赤木さんは,公文書改ざんを強要されたストレスからうつ病と診断され,

検察庁から事情聴取を受けるころに体調が悪化し,自殺に至ったようです。

 

 

本日は,今回の損害賠償請求について解説します。

 

 

2 安全配慮義務

 

 

まず,国は,国家公務員に対して,

生命と健康を危険から保護するように配慮する義務を負っています。

 

 

これを安全配慮義務といいます。

 

 

国は,この安全配慮義務に違反して,

国家公務員が損害を被った場合に,

損害賠償責任を負います。

 

 

過労自殺事案における安全配慮義務について,

電通事件の最高裁平成12年3月24日判決は,

次のように判断しました。

 

 

「使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めて

これを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が

過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう

注意する義務を負う」

 

 

使用者は,このような安全配慮義務を負っているので,

過労自殺した労働者の業務の量などを適切に調整するための

措置を採ることをしなかった場合には,

安全配慮義務に違反したことになるわけです。

 

 

3 公文書改ざんの業務命令の心理的負荷

 

 

さて,赤木さんの事件の場合,反対したにもかかわらず,

上司から違法行為を複数回強要されたわけですが,これは,

民間の精神障害の労災認定基準の中では,

心理的負荷の強度は「強」と判断されます。

 

 

特に,財務局という公的な職場で,

公文書を改ざんするという犯罪行為を強要されれば,

良心のある公務員であれば,

多大なストレスを感じたはずです。

 

 

 

そのため,公文書を改ざんする業務命令は,

それだけで労働者の心身の健康を損なう危険のあるものといえます。

 

 

また,報道によると,赤木さんは,公文書の改ざんの指示を受けて

長時間労働をしたとされています。

 

 

長時間労働による睡眠不足などで疲労が回復せず,

うつ病などを発症してしまうことがあるので,国は,

赤木さんが長時間労働をしないように

業務量を調整する義務を負っていたのです。

 

 

50代中ころの財務局の職員が自殺したのは

よほどのことがあったからといえますし,何よりも,

残された手記の証拠としての価値は高いといえるでしょう。

 

 

そのため,赤木さんの事件では,

国の安全配慮義務違反が認められる可能性があると考えます。

 

 

また,公務災害の認定も出ていますので,

国の安全配慮義務違反と赤木さんの自殺との

因果関係も認められやすいと考えます。

 

 

赤木さんの奥様の「夫が自殺したことの真実を知りたい」という思いが,

この訴訟の証人尋問などで実現されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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