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教員の過労自殺事件から教員の労働問題を考える

1 教員の過労自殺事件

 

 

私は、石川県内の高校の学校評議委員をしています。

 

 

公立学校では、教員の働き方改革を実施するために、

様々な取り組みが行わています。

 

 

 

ただ一方で、教員の長時間労働の問題は依然として残っており、

報道を見ていますと、教員が働き過ぎで

過労死や過労自殺する事件が後をたちません。

 

 

教員の過労死や過労自殺の問題で、

画期的な判決がありますので、紹介します。

 

 

福井県・若狭町(町立中学校教員)事件の

福井地裁令和元年7月10日判決です

(労働判例1216号21頁)。

 

 

この事件は、27歳だった新任教員が半年後に

練炭自殺をしたという痛ましい事件でした。

 

 

自殺した新任教員が使用していたパソコンのログ、

学校のセキュリティ記録、時間外業務承認書といった証拠から、

1ヶ月の時間外労働が、161時間から128時間もの

長時間労働に及んでいることがわかりました。

 

 

過労死ラインが1ヶ月に80~100時間の時間外労働

とされていることからしても、

過酷な長時間労働をしていたことがわかります。

 

 

さらに、自殺した新任教員は、生徒の問題行動や保護者への対応や、

研修の準備などで、余裕のない、過重な労働をしていました。

 

 

そのため、自殺した新任教員は、何らかの精神障害を発症して、

自殺したとして、公務災害の認定を受けました。

 

 

その後、ご遺族が真実解明と謝罪を求めて、

損害賠償請求の裁判を起こしたのです。

 

 

2 残業は自主的な活動か

 

 

まず、裁判では、自殺した新任教員の残業が、

校長の指揮命令下の業務か、

自主的な活動だったかが争点となりました。

 

 

労働者が仕事をした時間が労働時間といえるためには、

使用者の指揮命令下で仕事をしていたと言えなければなりません。

 

 

 

公立学校の教員の場合、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等

に関する特別措置法(給特法といいます)で、

本棒の4%の手当が支給されていることから、残業代は発生せず、

校長が修学旅行や職員会議などで時間外労働を命令する以外には、

残業とは認められず、教員の自主的な研鑽であると解釈されています。

 

 

そのため、被告は、自殺した教員の残業は、

校長の職務命令に基づいた時間外労働ではなく、

自主的な研鑽であり、労働時間ではないと主張しました。

 

 

しかし、裁判所は、授業の準備、部活動の指導、

保護者対応などを所定労働時間外に行うことについて

明示的な命令はないものの、自殺した教員の経験年数からすれば、

所定労働時間外に行わざるをえなかったものであり、

自主的に行ったものではなく、事実上、

校長の指揮命令下で行っていたと判断されました。

 

 

民間の労働者では、争点にならないのですが、

公立学校の教員の場合は、給特法があるばかりに、

このような争点となるのです。

 

 

給特法は、教員の働き方改革に逆行している法律ですので、

早急に廃止する必要があると考えます。

 

 

3 安全配慮義務違反における予見可能性の対象

 

 

次に、もう一つの争点が、使用者は、

長時間労働などの過重な業務の認識を有していれば責任を負うのか、

それとも、外部から認識しうる労働者の具体的な健康被害まで必要なのか、

というものです。

 

 

使用者の予見可能性の対象は何かという問題です。

 

 

被告は、教員が明らかに精神的に変調をきたしているなどの

事情がない限り、勤務時間削減などの措置をとることは

義務付けられないと主張していました。

 

 

しかし、裁判所は、自殺した教員の勤務時間や業務内容を把握すれば、

勤務時間や業務内容が労働者にとって過重であり、

心身の健康状態を悪化させるものであると認識できたにもかかわらず、

早期帰宅を促すなどの口頭指導をしただけで、

業務内容の変更をしなかったとして、

校長の安全配慮義務違反を認めました。

 

 

使用者は、労働者の生命や健康の安全を確保しつつ

働くことができるように、必要な配慮をする義務を負っているのですが、

この安全配慮義務に違反したことが認められたのです。

 

 

ようするに、仕事内容を軽減させるといった

具体的なことをしていないと、安全配慮義務違反となるのです。

 

 

教員の働き過ぎの問題にメスを入れる画期的な判決と言えます。

 

 

教員の働き方改革をすすめていく上で、

参考になる裁判例ですので、紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

令和元年度の過労死等の労災補償状況の解説

1 令和元年度の過労死等の労災補償状況が公表されました

 

 

6月の下旬に,厚生労働省から,

働き過ぎなどが原因で,脳や心臓の疾患を発症したり,

精神障害を発症した場合の労災補償の状況が公表されました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11975.html

 

 

毎年公表される統計データでして,これを見ると,

脳・心臓疾患や精神障害の労災認定の件数の推移や,

どのような業種や年代で多いのかがわかる貴重な資料です。

 

 

それでは,令和元年度の統計データについて

私が気づいた点を解説します。

 

 

2 脳・心臓疾患の労災補償状況

 

 

まずは,脳・心臓疾患の労災補償状況についてです。

 

 

長時間労働や過酷な業務に従事したり,

業務上の強い過重負荷にさらされることによって,

脳や心臓にある血管へダメージが積み重なって,

脳梗塞や心筋梗塞といった脳・心臓疾患を発症することがあります。

 

 

 

仕事による過重負荷が原因で脳・心臓疾患を発症して

死亡することを過労死といいます。

 

 

そのため,脳・心臓疾患の労災補償状況から,

過労死のことが分かるのです。

 

 

脳・心臓疾患についての労災請求件数は

平成27年度から右肩上がりに増加し,

令和元年度も増加しています。

 

 

他方,労災認定件数は,徐々に減少傾向にあります。

 

 

請求件数は増えているのに,認定件数が減っており,

認定率は31.6%なので,労災と認定されるのは狭き門といえそうです。

 

 

脳・心臓疾患の労災請求の多い業種は,

道路貨物運送業,その他の事業サービス業,総合工事業,

社会保険・社会福祉・介護事業,飲食店がトップ5となっています。

 

 

道路貨物運送業については,長距離トラック運転手の拘束時間が長く,

不規則な勤務で,長時間運転することのストレスなどの影響で,

脳・心臓疾患が発症しやすいのかもしれません。

 

 

脳・心臓疾患の労災請求を年齢別にみると,

30歳代以下は少ないのですが,40歳代以降で多くなります。

 

 

40歳を超えると体力の衰えが顕著になるのかもしれません。

 

 

1ヶ月に概ね80時間以上の時間外労働が認められると,

脳・心臓疾患の労災認定がされやすいところ,

統計データでも80時間以上100時間未満の時間外労働の区分で

最も多く労災認定されています。

 

 

3 精神障害の労災補償状況

 

 

次に,精神障害の労災補償状況についてです。

 

 

長時間労働や厳しいノルマ,いじめやパワハラなどの

業務上の心理的負荷によって,

うつ病などの精神障害を発症することがあります。

 

 

 

業務上の心理的負荷によって,精神障害を発症して,

自殺した場合,過労自殺といいます。

 

 

精神障害の労災請求件数も,平成27年度から右肩上がりに増加し,

令和元年度には2060件と過去最大を更新しました。

 

 

長時間労働やハラスメントといった,

業務上のストレスが職場に蔓延しているということなのでしょう。

 

 

他方,労災認定件数は横ばい傾向にあり,

認定率は32.1%なので,

精神障害の労災認定も狭き門といえそうです。

 

 

精神障害の労災請求件数が多い業種は,

社会保険・社会福祉・介護事業,医療業,

道路貨物運送業,情報サービス業,飲食店がトップ5となっています。

 

 

介護や医療の分野で精神障害の労災請求件数が増加しているのは,

人手不足による長時間労働,

専門職としてのストレスの高さに原因がありそうです。

 

 

この統計は令和元年度なので,コロナ禍の影響は反映されていません。

 

 

コロナ禍によって,介護や医療の分野で働く方々は,

新型コロナウイルスの感染リスクや,

賞与の削減などの待遇悪化などで,

さらに高度なストレスにさらされていますので,

精神障害の件数が増加することが懸念されます。

 

 

精神障害の労災請求を年齢別にみると,

脳・心臓疾患とは異なり,

20歳代と30歳代などの若い世代に多いことがわかります。

 

 

会社に余裕がなく,若手の社員教育に手が回らず,

若手社員に過度なストレスがかかっているのかもしれません。

 

 

精神障害については,労災認定基準の表にある

具体的な出来事にあてはめて,その心理的負荷が強となれば,

労災と認定されます。

 

 

労災と認定された具体的な出来事で多かったのは,

嫌がらせやいじめを受けたや,

上司とのトラブルがあったという

パワーハラスメントが最も多かったです。

 

 

パワーハラスメントの被害の深刻さが浮き彫りになりました。

 

 

脳・心臓疾患も精神障害も,労災請求件数が増加していることから,

今後とも長時間労働やパワーハラスメントの対策を

強化していくことが求められます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナウイルスに関連する過重労働(過労死・過労自殺)

1 ニューヨークの医師の過労自殺

 

 

アメリカのニューヨーク市の病院の緊急救命室で

新型コロナウイルスの患者の治療にあたり,

自らも新型コロナウイルスに感染した女性医師が自殺したようです。

 

 

 https://www.asahi.com/articles/ASN4Y4WQNN4YUHBI00K.html

 

 

この女性医師が働いていた病院の緊急救命室では,

1日18時間の長時間労働があり,

救急患者を受け付けれないほどに忙しくなっていたようです。

 

 

おそらく日本でも,新型コロナウイルスの患者に対応している病院では,

医療従事者は,新型コロナウイルスに感染する恐怖とたたかいながら,

過酷な労働をしていると考えられます。

 

 

 

本日は,新型コロナウイルスに関連する

過労死や過労自殺について検討します。

 

 

2 過労死

 

 

働き過ぎによる過重な負荷によって

脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡を過労死といいます。

 

 

長時間労働や過酷な仕事をすることで,

自然経過を超えたダメージが脳や心臓にある血管に積み重なり,

脳・心臓疾患を発症して死に至るのです。

 

 

この過労死の労災認定基準では,

発症前の1ヶ月間におおむね100時間を超える時間外労働,または,

発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたっておおむね月80時間を超える

時間外労働,のいずれかの実態が認められれば,労災と認定されます。

 

 

3 過労自殺

 

 

次に,長時間労働やパワハラなどの

業務上の心理的負荷(ストレス)で精神疾患を発症してしてしまい,

最悪の場合には自殺してしまうことがあります。

 

 

これを過労自殺といいます。

 

 

過労自殺の場合でも,被災労働者が仕事が原因で

精神疾患を発症したことが明らかになれば,原則として,

その精神疾患が原因で自殺したものと推定され,労災認定がされます。

 

 

過労自殺が労災と認定されるためには,

精神疾患の発病前おおむね6ヶ月間に業務による

強い心理的負荷が認められる必要があります。

 

 

 

発病前6ヶ月間に1ヶ月100時間程度の時間外労働があり,

「心理的負荷による精神障害の認定基準」の

「業務による心理的負荷評価表」に記載されている出来事を体験し,

その心理的負荷の強度が「中」と評価されれば,労災と認定されます。

 

 

例えば,医療従事者等が,新型コロナウイルス感染症の患者の

対応をして,1ヶ月に100時間の時間外労働をした場合,

長時間労働に加えて,新型コロナウイルスの感染拡大を

防止しなければならないという,

常時緊張を強いられる状態で働くことになりますので,

心理的負荷の強度は,「強」と評価されると思います。

 

 

もともと,医療従事者等の時間外労働は長時間に及んでいた上に,

新型コロナウイルスの対応で,さらに長時間労働となり,

感染拡大の防止という新たな精神的な緊張も加わり,

かなりの過重労働を強いられている可能性があります。

 

 

そのため,医療従事者等が新型コロナウイルス感染症の患者の

対応をして,過重労働に陥っている場合には,

過労死や過労自殺にならないように,

医療機関は配慮することが求められます。

 

 

マスクなどの個人用防護具が十分に支給され,

長時間労働にならない配慮が重要になります。

 

 

4 コロナ労災・過重労働110番を実施します

 

 

過労死弁護団全国連絡会が主催する,

新型コロナウイルスに関連する過重労働や労災補償についての

全国一斉の電話相談が実施されることになりました。

 

 

石川県では,2020年5月8日金曜日10時から15時までの

時間帯で私が対応します。

 

 

この日時に,私が所属している金沢合同法律事務所の

電話076-221-4111にお電話ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

森友学園の公文書改ざん問題から公務員個人に対する損害賠償請求が認められるのかを検討する

1 元財務省理財局長の佐川宣寿氏に対する損害賠償請求

 

 

先日もブログに記載しましたが,

森友学園への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で,

財務省近畿財務局の赤木俊夫さんが自殺したのは,

公文書改ざんに加担させられたからであるとして,

赤木さんの奥様が国と元財務省理財局長の佐川宣寿氏に対して,

損害賠償請求の訴訟を提起しました。

 

https://www.asahi.com/articles/ASN3L4WFBN3LPTIL00H.html

 

 

今回の訴訟で気になったのが,国家公務員の赤木さんを任用していた

国以外に,佐川氏も被告として,提訴したことです。

 

 

国に対する損害賠償請求をする際に,

公務員に対しても損害賠償請求をすることができるのかが,

問題となるからです。

 

 

本日は,公務員個人に対する損害賠償請求について解説します。

 

 

2 不法行為と使用者責任

 

 

ある者が他人の権利や利益を違法に侵害することを不法行為といいます。

 

 

具体的には,AさんがBさんを殴って怪我をさせた場合,

Aさんの殴る行為が不法行為になり,Aさんは民法709条に基づき,

Bさんに対して,損害賠償責任を負います。

 

 

 

そして,労働者が仕事中に不法行為をした場合,

労働者の雇用主である会社も,損害賠償責任を負います。

 

 

これを使用者責任といいます。

 

 

使用者責任については,民法715条に規定されています。

 

 

被害者は,不法行為をした労働者に対して,

民法709条に基づく損害賠償請求をでき,

使用者責任を負う会社に対して,

民法715条に基づく損害賠償請求をできるのです。

 

 

このように,会社と労働者の両方を訴えることができるのです。

 

 

3 国家賠償法1条に基づく損害賠償請求

 

 

これに対して,公務員が不法行為をした場合,

被害者は,国家賠償法1条に基づいて,

国または地方公共団体に対して,損害賠償請求をします。

 

 

国家賠償法1条に基づく損害賠償請求をする場合,

不法行為をした公務員個人の損害賠償責任は否定されます。

 

 

すなわち,国または地方公共団体を訴えることができても,

不法行為をした公務員個人を訴えることができないのです

(公務員個人を訴えても,請求が認められません)。

 

 

その理由は,公務員が負うべき責任を国または地方公共団体が

代位して負担するからなのです。

 

 

そのため,被害者は,国または地方公共団体を被告として訴えて,

勝てば,国または地方公共団体から損害賠償をしてもらい,

その後,国または地方公共団体が不法行為をした公務員個人に対して,

求償していくことになります。

 

 

しかし,不法行為をした公務員個人を訴えれない場合,

被害者としては納得できないことがあります。

 

 

4 公務員個人に対する損害賠償請求が認められた裁判例

 

 

例外的に,公務員個人に対して損害賠償請求ができないのでしょうか。

 

 

この公務員個人に対する損害賠償請求を

例外的に認めた裁判例があります。

 

 

共産党幹部宅盗聴事件の東京地裁平成6年9月6日判決です

(判例タイムズ855号125頁)。

 

 

この事件では,現職の警察官が犯罪にも該当すべき

違法な盗聴行為を行い,自分達の行為が違法であることを

当初より十分認識しつつ,あえて公務として盗聴行為に及んだもので,

警察官個人に対する損害賠償請求が認められました。

 

 

 

そのため,公務としての特段の保護を何ら必要としないほど

明白に違法な公務で,かつ,行為時に行為者自身が

その違法性を認識していたような事案については,

公務員個人に対する損害賠償請求が認められる余地があるのです。

 

 

赤木さんの事件の場合,公文書を改ざんする行為は犯罪であり,

明白に違法な公務になります。

 

 

 

また,佐川氏は,公文書改ざんが違法な公務であることを認識しながら,

指示をしていたはずです。

 

 

そのため,佐川氏個人の不法行為責任が認定される

可能性があると考えます。

 

 

公務員個人に対する損害賠償請求は認められにくいのですが,

赤木さんの事件では,佐川氏に対する損害賠償請求が認められる

可能性がありますので,訴訟の経緯に注目したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

森友学園の公文書改ざんによる財務局職員の自殺の損害賠償請求事件

1 公文書改ざんと財務局職員の自殺

 

 

森友学園への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で,

財務省近畿財務局の赤木俊夫さんが自殺したのは,

公文書改ざんに加担させられたからであるとして,

赤木さんの奥様が国と元財務省理財局長の佐川宣寿氏に対して,

損害賠償請求の訴訟を提起しました。

 

https://www.asahi.com/articles/ASN3L4WFBN3LPTIL00H.html

 

 

報道によりますと,赤木さんが残した手記には,

公文書を改ざんするに至る経緯がなまなましく記載されているようです。

 

 

赤木さんは,公文書の記載のうち,森友学園を優遇した部分の記載を

削除するように上司から指示を受けたようです。

 

 

 

赤木さんは,上司の指示に対して抵抗したようですが,

複数回改ざんを強要されたようです。

 

 

赤木さんは,公文書改ざんを強要されたストレスからうつ病と診断され,

検察庁から事情聴取を受けるころに体調が悪化し,自殺に至ったようです。

 

 

本日は,今回の損害賠償請求について解説します。

 

 

2 安全配慮義務

 

 

まず,国は,国家公務員に対して,

生命と健康を危険から保護するように配慮する義務を負っています。

 

 

これを安全配慮義務といいます。

 

 

国は,この安全配慮義務に違反して,

国家公務員が損害を被った場合に,

損害賠償責任を負います。

 

 

過労自殺事案における安全配慮義務について,

電通事件の最高裁平成12年3月24日判決は,

次のように判断しました。

 

 

「使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めて

これを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が

過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう

注意する義務を負う」

 

 

使用者は,このような安全配慮義務を負っているので,

過労自殺した労働者の業務の量などを適切に調整するための

措置を採ることをしなかった場合には,

安全配慮義務に違反したことになるわけです。

 

 

3 公文書改ざんの業務命令の心理的負荷

 

 

さて,赤木さんの事件の場合,反対したにもかかわらず,

上司から違法行為を複数回強要されたわけですが,これは,

民間の精神障害の労災認定基準の中では,

心理的負荷の強度は「強」と判断されます。

 

 

特に,財務局という公的な職場で,

公文書を改ざんするという犯罪行為を強要されれば,

良心のある公務員であれば,

多大なストレスを感じたはずです。

 

 

 

そのため,公文書を改ざんする業務命令は,

それだけで労働者の心身の健康を損なう危険のあるものといえます。

 

 

また,報道によると,赤木さんは,公文書の改ざんの指示を受けて

長時間労働をしたとされています。

 

 

長時間労働による睡眠不足などで疲労が回復せず,

うつ病などを発症してしまうことがあるので,国は,

赤木さんが長時間労働をしないように

業務量を調整する義務を負っていたのです。

 

 

50代中ころの財務局の職員が自殺したのは

よほどのことがあったからといえますし,何よりも,

残された手記の証拠としての価値は高いといえるでしょう。

 

 

そのため,赤木さんの事件では,

国の安全配慮義務違反が認められる可能性があると考えます。

 

 

また,公務災害の認定も出ていますので,

国の安全配慮義務違反と赤木さんの自殺との

因果関係も認められやすいと考えます。

 

 

赤木さんの奥様の「夫が自殺したことの真実を知りたい」という思いが,

この訴訟の証人尋問などで実現されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

トラックドライバーの過労死事件~連続勤務が続くと過労死のリスクが高まる~

1 武漢の医師が過労死

 

 

中国の武漢で新型コロナウイルスが拡大している問題で,

現場の医療機関が人手不足のために疲弊しているようです。

 

 

そのような状況において,中国の医師が働きすぎによって

過労死するという痛ましい事件が発生してしまいました。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200205/k10012272911000.html

 

 

過労死したのは27歳の男性医師で,報道によると

1月25日から2月3日まで連続勤務していたようです。

 

 

 

休日をとらないことによって,体が休まることがなく,

疲労が蓄積したものと考えられます。

 

 

新型コロナウイルスの感染者が拡大していることから,

武漢の医療機関で働く方々の過労死予防が必要になってきています。

 

 

2 ヤマト運輸のセールスドライバーの過労死事件

 

 

さて,本日は,最近の過労死についての裁判例を紹介します。

 

 

国・熊本労基署長(ヤマト運輸)事件の

熊本地裁令和元年6月26日判決です

(労働判例1210号19頁)。

 

 

この事件では,ヤマト運輸のセールスドライバーが

長時間労働が原因でくも膜下出血を発症して

死亡したのかが争われました。

 

3 過労死の労災認定基準

 

 

働き過ぎると脳や心臓にある血管へのダメージが積み重なって,

脳血管疾患や虚血性心疾患などの病気が発症して,

死亡するのが過労死と言われています。

 

 

過労死については,厚生労働省が労災認定基準を定めており,

脳血管疾患や虚血性心疾患などの対象疾病を

発症する前の1ヶ月間におおむね100時間を超える時間外労働,

または,対象疾病を発症する前の2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって

おおむね月80時間を超える時間外労働をしていた場合に,

労災と認定されます。

 

 

 

この労災認定基準は,厚生労働省の通達なのですが,

裁判所においても,判断基準として,

十分に考慮される傾向にあります。

 

 

本件事件においては,セールスドライバーの始業時刻は

午前8時だったのですが,荷物の積込作業をしたり,

釣銭準備金を用意するために被災労働者は早目に出勤していました。

 

 

また,お昼の休憩時間は1時間とされていましたが,

セールスドライバーは,お昼の休憩時間に,

荷物の積込作業をしたり,伝票確認の仕事を行っていたので,

お昼の休憩時間のうち,44分は労働時間と認定されました。

 

 

さらに,終業時刻は午後9時だったのですが,

セールスドライバーは支店に戻った後も,

集荷物や配達できなかった荷物をトラックから降ろして,

常温や冷凍の別にボックスに戻したり,

集荷代金を入金したりしていました。

 

 

そのため,被災労働者の発症前1ヶ月間の時間外労働は

102時間となり,6日連続の勤務があり,

発症前1週間の時間外労働が41時間と長時間労働になっていることから,

長時間労働とくも膜下出血の発症の関連性は強いと判断されました。

 

 

その結果,長時間労働によってくも膜下出血が発症したと認定されて,

労災と認められたのです。

 

 

トラックドライバーは,長時間の運転業務を伴う

配達・集荷作業といった肉体的・精神的負担が多い業務なので,

過労死にはくれぐれも注意する必要があります。

 

 

この裁判例でも指摘されているように,

休みなく連続で働き続けると過労死するリスクが高まるので,

意識して休みをとることが重要です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

残業代請求事件や過労死事件において会社からすすめられた研修に参加した時間は労働時間になるのか

1 研修に参加するために年次有給休暇を消化しないといけないのか

 

 

会社からスキルアップのための外部の研修に参加するように

言われたものの,その研修に参加するためには

年次有給休暇を取得しなければならないと言われたとします。

 

 

 

会社としては,その研修に参加する時間を労働時間と捉えておらず,

平日に年次有給休暇を取得して参加するか,

休日に残業代なしに参加するしかないようです。

 

 

このように,会社から参加するように言われた

研修に参加した時間は労働時間になるのでしょうか。

 

 

2 研修に参加した時間は労働時間か

 

 

まず,労働時間と認められるためには,

会社の指揮命令下に置かれている必要があります。

 

 

会社から研修に参加するように指示があれば,

その研修は会社の指揮命令下に置かれた時間といえ,

労働時間となります。

 

 

そのため,会社から研修に参加するように

指示があったのにもかかわらず,研修に参加するのに

年次有給休暇を取得しなければならないのは違法となりますし,

休日に研修に参加させたのであれば,会社は,

休日に働いた分の給料や残業代を支払わなければなりません。

 

 

次に,研修に参加することについて,

就業規則上の制裁などの不利益取扱による出席の強制がなく,

自由参加のものであれば,労働時間とはいえません。

 

 

他方,業務との関連性が認められる企業外研修や小集団活動は,

会社の明示または黙示の指示に基づくものであり,

その参加が事実上強制されている場合には,労働時間と認められます。

 

 

3 会社の小集団活動の時間が労働時間に該当するかが争われた事件

 

 

ここで,会社における小集団活動の時間が

労働時間に該当するかが争われた

国・豊田労基署長(トヨタ自動車)事件の

名古屋地裁平成19年11月30日判決を紹介します

(労働判例951号11頁)。

 

 

この事件では,トヨタ自動車に勤務していた

30歳の労働者が過労死した事件で,

次のような小集団活動が労働時間に該当するかが争われました。

 

 

 

①創意くふう提案活動(所定の用紙に業務に関する

改善策とその効果などを記入する活動)

 

 

②QualityControlサークル活動

(職場の改善に関するテーマについて話合いをおこない,

話合いで決められた目標に向けた活動をすること)

 

 

③エキスパート会(技術及び知識の向上を図るための研修会,後援会,

他会社の見学会,各種の懇親会,親睦と慰安のための行事,

会員相互の慶弔扶助などの事業を行う)

 

 

④交通安全活動(自動車運転中に事故にあいそうになった経験と

今後の予防策の提案を交通安全ヒアリ提案シートに記入して提案する活動)

 

 

裁判所は,これらの小集団活動は人事考課の考慮要素とされ,

その活動内容が業務に反映されて,賞金や研修費の助成金が支払われたり,

一部の時間につき残業代が支払われている状況からして,

小集団活動に従事していた時間は労働時間と判断されました。

 

 

その結果として,1ヶ月の時間外労働が106時間となり,

過労死の労災認定がされました。

 

 

このように,会社がすすめる研修も,

人事考課の考慮要素になっていたり,

研修が業務に関連している場合には,

労働時間になる可能性があり,その場合には,

研修に参加するために年次有給休暇を消化させることは違法になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

接待は過労死事件における労働時間といえるのか

1 接待は労働時間に該当するのか

 

 

年が明けて,明日から仕事始めのところが多いと思います。

 

 

おそらくこれからは新年会が多く開催されることでしょう。

 

 

新年会のほかに,営業の方であれば,接待も多くなるかもしれません。

 

 

くれぐれも飲み過ぎには注意してください。

 

 

さて,接待が多いと,接待も仕事のうちであると考えることがあります。

 

 

 

飲み会の席では,円滑なコミュニケーションが図れて,

仕事が有利に進むこともあります。

 

 

本日は,接待が労働時間と認められた,

国・大阪中央労基署長(ノキア・ジャパン)事件の

大阪地裁平成23年10月26日判決を紹介します

(労働判例1043号67頁)。

 

 

この事件では,居酒屋で会食していた労働者が,

くも膜下出血を発症して死亡したことから,ご遺族が,

過労死であるとして,労災申請したものの,

労災と認定されなかったことから,

労災の不支給決定の取消訴訟を提起しました。

 

 

2 接待の業務起因性

 

 

労災と認定されるためには,仕事が原因で

死亡したといえなければならず,そのためには,

仕事に内在する危険が現実化したと認められる必要があります。

 

 

これを業務起因性といいます。

 

 

一般的には,接待は,仕事との関連性が不明であることが多く,

直ちに業務起因性を肯定することは困難です。

 

 

しかし,本件事件では,次のような事情がありました。

 

 

・接待が顧客との良好な関係を築く手段として行われており,

会社は,その業務性を承認して,被災労働者の裁量に任せていたこと。

 

 

・会社関係者が,技術に詳しい被災労働者から本音で

込み入った技術的な話を聞く場として,会合が位置づけられていたこと。

 

 

・接待に使う飲食費を会社が負担していたこと。

 

 

これらの事情から,接待のほとんどの部分が

業務の延長であると判断されました。

 

 

接待の目的や内容,費用負担などによっては,

接待の業務性が認められて,労働時間と認定されることがあります。

 

 

3 業務の質的過重性

 

 

また,この事件では,1ヶ月の時間外労働80時間という

過労死ラインを下回る時間外労働だったのですが,

業務の質的過重性が考慮されました。

 

 

すなわち,被災労働者は,24時間携帯電話の電源を

オンにすることが求められており,

24時間いつでも対応しなければならない状態に置かれており,

実際に重大事故が発生したときには出勤して対応していました。

 

 

 

そのため,寝ていたときの電話やメールで中途覚醒を強いられ,

睡眠の質が悪化していたとして,

24時間のオンコール体制の質的過重性が認められました。

 

 

その結果,業務の量的過重性と質的過重性が認められて,

裁判所で,労災の不支給決定が取り消されて,

過労死の労災認定がされたのです。

 

 

このように,過労死ラインに届かなくても,

業務の質的過重性を考慮することで,

過労死と認定されることがあるのです。

 

 

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過労死事件の労災認定において移動時間は労働時間と認められるのか

1 社用車を運転して取引先をまわる営業マンの過労死事件

 

 

今年9月に開催された過労死弁護団の総会で,

川人博先生が痛烈に批判していた,

移動時間が労働時間といえるのかという問題について,

審査請求において,過労死の労災認定がされました。

 

 

https://mainichi.jp/articles/20191129/k00/00m/040/303000c

 

 

審査請求において,労働基準監督署の判断が覆るのは珍しいことであり,

川人博先生をはじめとする弁護団の先生方の

熱心な弁護活動が結実したのだと思います。

 

 

この事件は,外国製の大型クレーン車の販売営業をしていた

20代の男性労働者が,会社の営業車を運転して,横浜から,

山形県や三重県など12の県にある得意先をまわる労働をしていたところ,

出張先の三重県のビジネスホテルで突然心臓死で亡くなりました。

 

 

 

男性労働者のご遺族が,過労死であるとして,

労災申請しましたが,鶴見労働基準監督署は,

過労死ではないとして,労災とは認定しませんでした。

 

 

2 移動時間は労働時間といえるのか

 

 

鶴見労働基準監督署は,男性労働者が横浜の自宅から

静岡の取引先で商談した後,

三重県のビジネスホテルで宿泊した日について,

静岡の取引先での商談のみを労働時間として,

それ以外の移動時間を労働時間ではないとしました。

 

 

また,三重県での取引先から,自宅の横浜へ帰宅する

移動時間も労働時間ではないとしました。

 

 

移動時間が労働時間にカウントされない結果,

時間外労働が1ヶ月約40時間と認定されて,

過労死と認められなかったのです。

 

 

一般的には,自宅から勤務先への通勤は労働時間ではなく,

勤務先から取引先への移動,取引先から別の取引先への移動,

取引先から勤務先への移動は労働時間となります。

 

 

これとパラレルに考えると,自宅から取引先への直行と

取引先から自宅への直帰は,労働時間ではないことになります。

 

 

 

おそらく,鶴見労働基準監督署は,この考え方から,

自宅と取引先の移動時間を労働時間と認めなかったものと思います。

 

 

しかし,長時間車を運転しないといけない移動の場合,

直行直帰だからという理由だけで,

移動時間が労働時間にならないのは,

あまりにも画一的であり,

車の運転による疲労を度外視しており,不当です。

 

 

決定書を入手していないので詳細はわかりませんが,

マスコミ報道によりますと,神奈川労働者災害補償保険審査官は,

男性労働者の担当する営業範囲が広く,

車でないと不便な営業先が多いため,社用車以外の移動は困難であり,

会社も社用車での営業を指示していたとして,

直行直帰の移動時間を労働時間と認めたようです。

 

 

すなわち,社用車の移動が業務に必須であり,

会社の指示も認められるので,直行直帰の移動時間も,

会社の指揮命令下に置かれていたとして,

労働時間と判断されたようです。

 

 

直行直帰の移動時間を労働時間と判断した点において画期的です。

 

 

3 時間外労働以外の業務の過重性を総合判断

 

 

もっとも,移動時間が労働時間として認められましたが,

労働者災害補償保険審査官の認定した時間外労働の時間は,

71時間で,1ヶ月80~100の過労死ラインには

とどいていませんでした。

 

 

時間外労働が1ヶ月80~100時間の

過労死ラインにとどいていなかったとしても,

その他の業務の過重性が認められれば,

総合判断で過労死の労災認定がされる可能性があります。

 

 

本件では,時間外労働以外の業務の過重性として,

出張回数の多さ,運転走行距離の長さ,

海外出張の時差などが考慮されました。

 

 

自分で車を運転して出張する回数が多いと,

疲労が蓄積しますので,時間外労働と出張の疲労の蓄積によって,

突然心臓死したと判断するのは妥当です。

 

 

 

このように,時間外労働が1ヶ月80~100時間に

とどいていなくても,他の業務の過重性を考慮することで,

過労死の労災認定がされる余地があるのです。

 

 

過労死の労災の審査請求において,

労働者に有利な画期的な判断がされましたので,紹介しました。

 

 

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管理監督者や裁量労働制は過労死や過労自殺を助長する

1 三菱電機の子会社における過労自殺事件

 

 

三菱電機の子会社であるセルコセミコンダクタエンジニアリングの

技術職の40代男性労働者が,長時間労働が原因で過労自殺し,

今年の10月に労災認定されていたことが明らかになりました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASMCP53YLMCPULFA025.html

 

 

被災労働者は,三菱電機の別の子会社メルコパワーデバイスに出向し,

豊岡工場で勤務していたときに,管理監督者として扱われ,

時間外労働が1ヶ月100時間を超える長時間労働をさせられたそうです。

 

 

そして,福岡市の事業所へ異動した後に自殺したようです。

 

 

福岡市の事業所へ異動した後には,

裁量労働制が適用されていたようです。

 

 

管理監督者として扱われたり,裁量労働制が適用されると,

労働時間の管理が杜撰になり,長時間労働となって,

過労死や過労自殺が発生するリスクがあることを

物語っているニュースです。

 

 

 

本日は,管理監督者や裁量労働制と

過労死・過労自殺の関係について解説します。

 

 

2 管理監督者

 

 

労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」

に該当すれば,労働者は,会社に対して,残業代を請求できなくなります。

 

 

労働者が会社に対して,残業代を請求できなくなるので,

会社としては,残業代の計算をする必要がなくなり,

労働時間の管理が杜撰になってしまいます。

 

 

しかし,管理監督者として扱われるためには,

次の3つの要件を満たす必要があります。

 

 

 

①会社の経営に関する決定に参画し,

労務管理に関する指揮監督権限を認められていること

 

 

 ②自己の出退勤をはじめとする労働時間について

裁量権を有していること

 

 

 ③一般の労働者と比較して,

その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇が与えられていること

 

 

この3つの要件を満たすのはなかなか難しく,

いわゆる名ばかり管理職として,

残業代が違法に支払われていないことが多いです。

 

 

3 裁量労働制

 

 

次に,裁量労働制とは,仕事の性質上その遂行方法を大幅に

労働者に委ねる必要がある場合に,実労働時間とは関係なしに,

労使協定や労使委員会の決議で定めた時間を労働時間とみなす制度です。

 

 

すなわち,実際には12時間働いたとしても,

みなし労働時間が8時間と定められていた場合,

8時間しか労働していないとみなされて,

4時間分の残業代を請求できないのです。

 

 

裁量労働制には,専門業務型裁量労働制と

企画業務型裁量労働制の2つがあります。

 

 

専門業務型裁量労働制は,法令で定められた

専門的な職種に対してのみ適用される裁量労働制です。

 

 

企画業務型裁量労働制は,事業運営に関する事項についての

企画,立案,調査及び分析の業務に対して適用される裁量労働制です。

 

 

裁量労働制については,みなし労働時間が8時間に設定されていれば,

8時間を超えて労働しても残業代が発生しないので,会社は,

残業代の計算をする必要がなくなり,労働時間の管理が杜撰になるのです。

 

 

4 管理監督者や裁量労働制は長時間労働の温床

 

 

このように管理監督者も裁量労働制も,

労働者に対して残業代を支払わなくてもよくなる制度なので,

会社の労働時間の管理が杜撰になって,長時間労働が蔓延し,

過労死や過労自殺につながるのです。

 

 

三菱電機の子会社の過労自殺については,

管理監督者や裁量労働制が適用されて,

1ヶ月100時間を超える長時間労働があり,かつ,

豊岡から福岡へ転勤した出来事があるので,

心理的負荷が強となり,労災と認定されたのだと考えられます。

 

 

三菱電機では,ここ最近,男性労働者5人が長時間労働が原因で,

精神障害や脳疾患を発症したとして労災認定されています。

 

 

過労死や過労自殺を繰り返さないために,

労働時間を適切に把握して,残業代を支払うようにして,

長時間労働をなくしていくべきです。

 

 

また,企画業務型裁量労働制については,要件を緩和して,

適用される労働者を拡大していく動きがありますが,

三菱電機の事件でもわかるとおり,

裁量労働制は過労死や過労自殺を助長するので,

そのような規制緩和には反対です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。