タイムカードの時刻と実際の労働時間がずれているときの対処法

会社から,閉店直後にタイムカードを

打刻するように指示されており,

タイムカードを打刻した後にも,

掃除などの仕事をしていたとします。

 

 

 

 

この場合,掃除などの仕事を終わった時刻が

終業時刻とならないのでしょうか。

 

 

本来,掃除などの仕事が終わった時刻に

タイムカードを打刻していれば,

何も問題はないのですが,労働者は,

会社から,閉店直後にタイムカードを打刻するように

明確に指示されていたのでは,それに従わないと,

会社から何を言われるのか不安になり,

ついつい会社の言うとおりにしてしまいます。

 

 

本日は,タイムカードを打刻した時刻と

真実の終業時刻がずれていた場合に,

真実の終業時刻で残業代が認められるのは

どのような場合かについて,

ケンタープライズ事件をもとに検討します。

(名古屋高裁平成30年4月18日判決・労働判例1186号20頁)

 

 

この事件は,居酒屋の店長が未払い残業代を請求した事件です。

 

 

 

 

この事件では,タイムカードに打刻された終業時刻は,

真実の終業時刻ではなく,会社から閉店直後に

タイムカードを打刻するように指示を受けて,

そのとおりにしており,タイムカード打刻後も働いていたという,

店長の言い分が信用できるかが争点となりました。

 

 

人の言い分が信用できるかを判断する際には,

当該言い分に合致する証拠があると,

信用できると判断されやすいです。

 

 

まず,原告のタイムカードは,

閉店直後に打刻されているものがほとんどでした。

 

 

次に,閉店前から可能な範囲で掃除などの仕事をしても,

閉店時刻直後に従業員が直ちに退勤することは困難であり,

閉店時刻から1時間働く必要があることを,証人が証言しました。

 

 

飲食店の場合,お客さんがいるときに,

店内の掃除を始めると,お客さんに対して

嫌な思いをさせることがあるので,

お客さんがいなくなった閉店時刻の後に,

店内の掃除などの後片付けの仕事をすることがよくあると思います。

 

 

 

 

そのため,裁判所は,原告の言い分が信用できるとして,

タイムカードに打刻された終業時刻は真実の終業時刻ではなく,

閉店後の仕事は1時間程度で終わらせれることができるとして,

閉店時刻から1時間後を終業時刻としました。

 

 

加えて,会社がタイムカードの打刻について

実際の労働時間より少なめに打刻するように

指示していたことは悪質であるとして,

未払い残業代の他に,ほぼ同じ金額の付加金

の支払いが命じられました。

 

 

付加金とは,残業代などをきちんと

支払っていなかった会社に課される制裁金です。

 

 

基本的に,裁判ではタイムカードの時刻をもとに,

労働時間を認定しますが,このように,

タイムカードの時刻と実際の労働時間がずれていても,

ずれている理由を合理的に説明できれば,

実際の労働時間で認定されることがあります。

 

 

労働者は,正確にタイムカードを打刻するようにすべきですが,

タイムカードの時刻と実際の労働時間がずれていても,

あきらめずに主張と立証を尽くすことが重要ですね。

 

 

また,会社が真実の労働時間と異なる時刻で

タイムカードを打刻するように指示していれば,

場合によっては,付加金の制裁が課される

リスクがありますので,気をつけるべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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