タクシーの客待ち時間は労働時間なのか

タクシーの運転手が客待ちをしている時間は

労働時間になるのでしょうか。

 

 

本日は,タクシー運転手の客待ち時間が労働時間にあたるか

否かが争われた中央タクシー事件

(大分地裁平成23年11月30日判決・労働判例1043号54頁)

を紹介します。

 

 

大きな駅にいくと,タクシーが順番に並んで,

お客さんを乗せて,出発していきます。

 

 

 

 

 

大きな駅のタクシーの順番に並んでいると,

お客さんを乗せるまでの待ち時間が長いので,

タクシー運転手の仲間たちとおしゃべりをしている人,

タクシーの中で弁当を食べている人,

タクシーの中でスポーツ新聞を読んでいる人,

タクシーの中で昼寝をしている人

などタクシーの運転手はさまざまな過ごし方をしています。

 

 

一見すると仕事をしていないように見えるので,

労働時間とはいえないようにも思えますが,

タクシーの客待ち時間は労働時間になります。

 

 

そもそも,労働時間とは,会社の明示または黙示の

指揮命令下に置かれている時間をいいます。

 

 

タクシーの運転手は,客待ち時間中にも,

無線で呼び出しがあれば,呼び出しのあった場所へ

お客さんを迎えにいかなくてはならないので,

会社の指揮命令下に置かれていると評価できます。

 

 

また,駅でタクシーの順番に並んでいても,

前に並んでいるタクシーが順番に進んでいくので,

それに続いて進まないと,後がつかえるので,

お客さんを乗せるために運転を継続しているのといえ,

タクシーの客待ち時間は労働時間になるのです。

 

 

 

 

中央タクシー事件では,30分を超える客待ち時間は,

一律に労働時間ではないという取扱がされていましたが,

30分を超える客待ち時間も労働時間にあたると判断されて,

タクシー運転手の未払残業代請求が認められました。

 

 

さらに,中央タクシー事件では,会社は,会社と労働組合との間で,

会社の指定する場所以外の場所で30分を超える客待ち時間は,

労働時間からカットするという内容の労働協約が締結されていた

と主張していました。

 

 

しかし,そのような労働協約があったとしても,

ある時間が労働時間にあたるか否かは当事者の約定にかからわず,

客観的に判断するべきとされ,客観的に判断すれば,

客待ち時間は会社の指揮命令下に置かれている時間であり,

労働時間にあたると判断されました。

 

 

会社の就業規則などで,ある時間が労働時間ではないと

定められていても,客観的にみて,

ある時間が会社の指揮命令下に置かれている時間であれば,

ある時間は労働時間になるのです。

 

 

以前私が担当した,タクシー運転手の賃金が最低賃金を

下回っているとして,支給された賃金と最低賃金との差額

を請求した事件において,客待ち時間が労働時間か否か

が争われましたが,裁判所は,客待ち時間を労働時間として,

最低賃金との差額を認めてくれました。

 

 

タクシー会社によっては,客待ち時間を労働時間に含めずに,

賃金を支払っている場合がありますので,

客待ち時間を労働時間として計算すれば,

タクシー運転手は残業代を請求できる場合があります。

 

 

タクシー運転手は,タコグラフやアルコールの呼気検査,

運転日報などで労働時間を証明できるので,

働いているわりに,賃金が低いと感じるのであれば,

未払残業代の請求を検討してみることをおすすめします。

 

 

本日も,お読みいただき,ありがとうございます。

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