解雇を争うときに賞与を請求することができるのか
労働者が会社から解雇された場合,解雇に納得できなければ,
解雇を争うために,裁判手続を利用することがあります。
解雇を争う裁判手続において,労働者は,会社に対して,
解雇は無効なので,労働者の地位がまだありますよという
地位確認の請求と,解雇期間中の未払賃金の請求をしていきます。
裁判で争った結果,解雇が無効になれば,
解雇期間中に解雇がなければもらえるはずであった
毎月の給料分の未払賃金は,問題なく認められるのですが,
解雇期間中の賞与の請求については,認められないことが多いです。
それは,どうしてなのでしょうか。
本日は,解雇期間中の賞与の請求について解説します。
解雇期間中の賞与請求が認められるのは,
具体的な権利性が認められる場合に限られています。
すなわち,就業規則や労働協約,労使慣行等において,
賞与の支給基準が具体的に定まっており,その支給基準に従えば,
形式的に賞与額を算定することができる場合に,
具体的な権利性が認められて,
解雇期間中の賞与請求が認められるのです。
例えば,就業規則に,賞与は,給料の2ヶ月分支給する
と定められており,実際に,そのとおりに賞与が支給されていれば,
具体的な権利性が認められて,
解雇期間中の賞与請求が認められるわけです。
他方,賞与の金額を決定するために,
会社の成績査定を経ることが必要な場合,解雇期間中には,
会社の成績査定が実施されていないので,
賞与の金額を算定できないこととなり,
具体的な権利性が認められず,
解雇期間中の賞与請求を認めないとする裁判例は多いです。
そのような中,解雇期間中の賞与請求を認めた
裁判例があるので紹介します。
東京高裁平成30年6月18日判決
(判例時報2398号106頁)では,
大学教授に対する懲戒解雇及び普通解雇が無効とされた上で,
解雇期間中の賞与請求が認められました。
この事件では,給与規定に,賞与の支給について,
実績等を斟酌し,また,勤務の状況により
賞与を増減額することがあると定められていたのですが,
被告の大学教授の賞与は,留学や休職などの事情がない限りは,
教授ごとに個別に成績査定するという運用はされておらず,
給与額に5・25をかけることで機械的に
賞与の額を算定するようになっており,
成績査定を経ずに賞与が支給されていました。
そのため,解雇期間中に,成績査定を受けていないからといって,
解雇された原告が具体的な賞与請求権を取得していないわけではない
と判断されて,解雇期間中の賞与請求が認められたのです。
就業規則の形式面ではなく,
賞与支給の実態をみて判断することになるのです。
そのため,賞与が機械的に算定されているようなケースでは,
諦めずに,解雇期間中の賞与請求をしていく必要があると考えます。
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