なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか

先日,嬉しいことがありました。

 

 

ブログに,高草木陽光先生の

「4タイプでわかる 心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK」

の書評を記載したところ,なんと,著書である高草木先生から,

私のフェイスブックに友達リクエストが届き,

高草木先生とフェイスブックでつながることができました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/shohyou/201907068281.html

 

 

書評を書いて,著書ご本人からダイレクトに

ご連絡をいただけたことがとても嬉しかったのです。

 

 

高草木先生からご連絡をいただいたことがきっかけで,

以前読んだ高草木先生の

なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか

という本をもう一度読み直してみました。

 

 

 

すると,今の私の夫婦関係における,

自分の至らない点に気付かされました。

 

 

最初に読んだときにも思いましたが,

夫婦関係を改善するための様々なヒントが詰まった

名著だと改めて思いましたので,ご紹介します。

 

 

この本のすごいところは,1つのテーマごとの

タイトルが秀逸なところです。

 

 

例えば,「家庭に求めるもの 夫は居場所と居心地を求める

 妻は安心と安定を求める」,「幸せの感じ方 

夫は必要とされている実感で幸せを感じる 

妻は愛されている実感で幸せを感じる」,

「仕事 夫は,家族のために働く 妻は自分のために働く」

というように,夫と妻とでは,考え方や感じ方が

異なっていることがよくわかるように記載されています。

 

 

夫と妻とは,互いに考え方や感じ方が異なっていることが原因で,

夫婦間に争いが生じてしまうのです。

 

 

 

これらのタイトルから,夫は,家族から必要とされていると

感じることで,家族のために仕事をがんばることがわかり,

自分にあてはめてもそのとおりだなあと思います。

 

 

他方,妻は,夫とは異なる考え方をもっており,

家庭に安心や安定を求め,愛されたいと考えているようです。

 

 

そして,この本には,異なる立場の配偶者に対する

効果的なアプローチが記載されていて,例えば,

妻の安心感を与えるために,夫は妻に対して,

仕事の話しや職場での話しをした方がよいですとか,

妻の愛されている感を満たすために,

妻のよいところをみつけてほめる,

スキンシップを増やすといった

具体的な目標行動が記載されています。

 

 

私は,家庭では仕事の話しをあまりしないのですが,

妻に仕事の話しをすると,割りとくいついてくるので,

妻を安心させるために,妻に仕事の話しをしていこうと思います。

 

 

また,「妊娠・出産 夫は,時速10キロで父親になる 

妻は,時速100キロで母親になる」,

「育児 夫は,ときどき育児に参加したい 

妻は,ときどき育児を休みたい」というテーマが,

子育て真っ最中の私にとって,とても参考になりました。

 

 

 

私は,仕事が忙しく,妻は,育休中なので,

ついつい妻に育児を押し付けてしまっていましたが,

育児をしていると自分のやりたいことが

やりたいタイミングで全くできず,

強いストレスがかかっているので,

妻が1人になる時間を確保させてあげる必要があります。

 

 

そのため,最低でも1日10分,妻の話しに耳を傾け,

休みの日に妻が一人になれる時間を作っていこうと思います。

 

 

再度読んで気づいたことは,妻に対して,

労いと感謝の気持ちを伝えていくことが

重要であることを学びました。

 

 

仕事が忙しくて余裕がないと,ついつい,

妻に対して労いと感謝の気持ちを伝えるのを怠ってしまうので,

この点を改めていきます。

 

 

夫婦関係の維持改善に役立つ素晴らしい名著ですので,

多くの夫婦に読んでもらいたい一冊です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

七塚中央公園の魅力

久しぶりに育児の記録を記載します。

 

 

先週の日曜日,丸一日休みがとれ,天気もよかったことから,

子供と外で遊ぼうと思い立ち,以前から気になっていた

七塚中央公園へいってきました。

 

 

七塚中央公園については,クラビズムという雑誌か

ハッピーママというフリーペーパーのどちらかで紹介されていたので,

天気のいい休日に子供を連れていきたいと思っていました。

 

 

七塚中央公園は,石川県かほく市の旧七塚町にあり,

山側環状道路から能登里山海道へつながる途中の白尾のあたりから,

県道へぬけてしばらくすすむと到着します。

 

 

金沢市内からおおむね40分ほどで到着します。

 

 

https://ishikawa.fun/19946.html

(こちらのサイトにも七塚中央公園のことが

わかりやすく掲載されています)

 

 

公園は,日本海の近くにあり,

公園の芝生から日本海を眺められて,

非常に景色がいいです。

 

 

公園には,巨大な滑り台があります。

 

 

 

巨大なやぐらを登っていると,3つの滑り台があります。

 

 

3つの滑り台の中で一番長い滑り台にのると,

巨大な遊具のあるエリアへたどり着けます。

 

 

滑り台からは,広大な日本海の眺望を満喫できます。

 

 

ただ,滑り台が本当に長く,かつ,ローラーなので,

そのまま滑り台に乗っていると,

ローラーの摩擦でお尻が痛くて熱くなります。

 

 

滑り台とお尻の間になにか敷物を敷いて

滑っていくことをおすすめします。

 

 

巨大な遊具は,海底未来都市遊具といい,

子供たちが遊具の中で冒険できます。

 

 

 

2歳8ヶ月の長女は,最近,遊具のネットに

つかまって登り降りができるようになったので,

大きなネットを一生懸命に登っていきました。

 

 

海底未来都市遊具の中央には,トランポリンのように,

子供たちが安全に飛んだり跳ねたりできるスペースがあります。

 

 

このトランポリンのスペースが一番人気で,

たくさんの子供たちが,走り回ったり,

ジャンプして遊んでいました。

 

 

 

このトランポリンのスペースには,小さい子供だけでなく,

中学生も遊んでおり,人口密度も高く,

ぶつかると大変なことになるので,大人は,

子供が他の子供とぶつからないように

監視しておくことが重要です。

 

 

子供たちが思いっきり体を動かせる遊具のある公園は,

子育て中の親には,本当に貴重ですので,

大切にしていきたいですね。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ドトールコーヒーの休日を減少させる就業規則の不利益変更

朝日新聞の報道によりますと,ドトールコーヒーが,

就業規則を変更し,会社の休日を暦の土日祝日などに関わらず,

年間119日に固定し,これ以上休む場合には,

有給休暇を使うように労働者に奨励しているようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASMB445ZSM9XULFA00F.html

 

 

これまでは,暦の土日祝日,年末年始(12月31日~1月3日)が

会社の休日で,年間126~127日ほどの休日があったのですが,

休日が年間119日に固定される結果,

年間7~8日ほど休日が減少してしまうようです。

 

 

 

今年は,ゴールデンウィークで暦の祝日が多かったり,

即位の儀式の日が祝日になったりと,休日が多かったことから,

ドトールコーヒーとしては,祝日が多い年であっても,

業務遂行上,例年並みの日数を労働者に働いてもらいたくて,

このように休日を固定したようです。

 

 

本日は,この休日の減少の問題について解説します。

 

 

まず,労働基準法35条1項により,会社は,労働者に対して,

毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています。

 

 

そのため,1週間に1回休日があれば,

とりあえずは労働基準法違反にならないわけです。

 

 

また,労働基準法32条により,会社は,

1週間に40時間以上労働させてはならないことになっており,

1日の労働時間が8時間なので,多くの会社は,

土曜日と日曜日休みとする週休二日制としているのです。

 

 

ようするに,暦どおりの休日にしていれば,

労働基準法違反にならないので,

多くの会社は暦どおりの休日にしているだけであり,

日曜日や祝日を休日としなければならないという

労働基準法の義務はないのです。

 

 

この労働基準法32条と35条に違反しないのであれば,

休日をいつにするかは,会社と労働者の合意で決まります。

 

 

労働基準法89条1号により,就業規則に休日について

記載しなければならないので,

いつが会社の休日になるのかについては,

通常は,就業規則に記載されています。

 

 

 

そして,休日が減少することは,労働者にとって不利益なことですので,

会社は,不利益を被る労働者が休日の減少に合意するか,

労働契約法10条に規定されている

就業規則の不利益変更の要件を満たす必要があります。

 

 

就業規則を変更することで,労働条件を不利益に変更するためには,

①労働者の受ける不利益の程度,

②労働条件の変更の必要性,

③変更後の就業規則の内容の相当性,

④労働組合等との交渉の状況

などの要件が総合考慮されます。

 

 

ドトールコーヒーの事例の場合,①休日が減少するのですが,

有給休暇を取得することで暦どおりに休めることから,

賃金が減額されるときに比べて労働者の受ける不利益は

そこまで大きくはないと裁判所は判断するかもしれません。

 

 

もっとも,②休日を減少させなければならないほどの

業務上の必要性がどこまであるのか不明ですし,

③休日を減少させる代わりに他の労働条件を改善するなどの

代替措置を導入する必要があり,

④労働組合等に対してしっかりと説明していなければなりません。

 

 

そのため,事情によっては,ドトールコーヒーの休日を減少させる

就業規則の変更は,労働契約法10条の要件を満たしていないとして

無効になる可能性があるかもしれません。

 

 

働き方改革で,1年間に年次有給休暇を5日取得させることが

義務となり,労働者をなるべく休ませる方向に

時代の流れが動いている状況なので,私個人としては,

休日を減少させる就業規則の不利益変更に違和感を覚えています。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

専門的な職種の労働者は職種限定合意で配置転換命令を争える

昨日,「ドクターX 外科医・大門未知子」

のスペシャルドラマが放映されていました。

 

 

「わたし,失敗しないので」という決めゼリフが

有名な天才外科医のドラマは,人気があるためか,

何年にもわけて放映されています。

 

 

さて,大門未知子は,フリーランスなので,病院との間で,

どのような契約を締結しているのかよくわかりませんが,

通常の場合,医師は,病院との間で労働契約を締結し,

病院から賃金の支払を受けて,

患者の治療という労務の提供を行います。

 

 

医師も病院と労働契約を締結するので,労働契約に基づき,

病院から配置転換を命令されることがあります。

 

 

もっとも,医師の専門性から,

病院の配置転換命令が有効となるのかが

問題となることがあります。

 

 

本日は,外科医に対する配置転換・診療禁止命令の有効性が争われた,

地方独立行政法人岡山市立総合医療センター事件の

広島高裁岡山支部平成31年1月10日決定

(労働判例1201号5頁)を紹介します。

 

 

この事件では,消化器外科部長であった外科医に対する,

がん治療サポートセンター長に任命する配置転換命令と,

外科の一切の診療に関与することを禁止する命令が

有効なのかが争われました。

 

 

配置転換とは,同一企業内における労働者の

職種,職務内容,勤務場所のいずれかを

長期間にわたって変更する企業内人事異動の一つです。

 

 

職種,職務内容,勤務場所は,いずれも労働条件なので,

会社と労働者との労働契約において,

これらを限定する合意がされている場合には,

配置転換命令は,限定された範囲内に制約されます。

 

 

職種を限定した合意をしていた場合,会社は,労働者に対して,

限定している職種以外の職種への配置転換命令をだせないのです。

 

 

この職種限定合意については,専門業務をしている

労働者には認められやすい傾向があります。

 

 

本件事件では,外科医と病院との間に,

職種を外科医に限定する明示の合意はありませんでした。

 

 

しかし,外科医は,極めて専門的で

高度の技能・技術・資格を要するものであり,

長年にわたり特定の職務に従事することが必要で,

熟練度や経験が仕事を進めていくうえで重要になります。

 

 

 

そのため,技能・技術・資格を維持するために,

外科医としての臨床に従事することは必要不可欠であり,

その意に反して外科医としての臨床に従事しないという

労務形態は想定できないとして,

黙示の職種限定合意があったとしました。

 

 

そして,医師の同意なく,専門とする診療科での診療を禁止することは,

医師としての高度の技能・技術・資格を一方的に奪うことになるから,

本件の配置転換命令と診療禁止命令は無効と判断されました。

 

 

さらに,本件事件では,民事保全という裁判手続がとられており,

民事保全では,保全の必要性という要件が必要になります。

 

 

本件の配置転換命令と診療禁止命令によって,

外科医としての技能・技術の質を低下させられ,

専門医の資格を失うことにより,

外科医としての専門性が失われるという不利益が大きいことから,

保全の必要性が認められました。

 

 

このように,専門性のある仕事をしている労働者の場合,

黙示の職種限定合意があったとして,

配置転換命令を争う可能性があるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働者の私生活における犯罪行為と懲戒処分

私は,労働事件を得意として,労働事件を多く取り扱っていますが,

労働事件以外の事件も当然に取り扱っています。

 

 

例えば,労働事件以外の事件ですと,

当番弁護士や被疑者国選が順番で回ってきて,

逮捕や勾留された被疑者の刑事弁護をする

刑事事件も担当しています。

 

 

労働者が勤務時間外に会社とは関係のない犯罪をした場合,

労働者は,勤務先から懲戒解雇をされるのではないかと不安になります。

 

 

 

本日は,労働者の私生活における犯罪行為と

懲戒処分について解説します。

 

 

まず,会社は,経営目的を達成するために,

労働者に効率的に働いてもらう必要があり,

職場のルールを定めます。

 

 

この職場のルールに違反して,

労働者が不祥事を起こした場合に,会社は,

労働者に対して制裁を科すことができるのです。

 

 

このように,経営目的を遂行する組織体としての会社が

必要として実施する,労働者に対する統制の全般を企業秩序といい,

企業秩序を維持するための会社のルールに違反したときに

科される制裁が懲戒処分なのです。

 

 

 

次に,職場内で労働者が同僚に暴力を奮ったり,

会社の金銭を横領したような犯罪の場合,会社は,

企業秩序を維持するために,当該労働者に対して

懲戒処分を科すことができます。

 

 

他方,労働者が職場外の私生活において犯罪をした場合,

企業秩序とは無関係であるとして,

企業秩序を維持するための懲戒処分を

科すことができないように考えられます。

 

 

しかし,労働者の職場外における仕事とは無関係の犯罪行為であっても,

会社の企業秩序に直接の関連を有する場合や,

会社の社会的評価の毀損をもたらす場合には,

企業秩序維持のために,懲戒処分を科すことができるのです。

 

 

そして,労働者が職場外の私生活において犯罪をした場合に,

懲戒処分を科すことができるかについては,

当該犯罪行為の性質,情状,会社の事業の種類・態様・規模,

会社の経営方針,労働者の会社における地位や役職

などの事情を総合考慮して判断されます。

 

 

例えば,労働者が深夜に他人の家に侵入して,

住居侵入罪で罰金2,500円を科せられたことについて,

「不正不義の行為を犯し,会社の体面を著しく汚した者」

という懲戒解雇事由にあたるかが争われた,

横浜ゴム事件の最高裁昭和45年7月28日判決

(判例タイムズ252号163頁)があります。

 

 

 

この事件では,罰金2,500円という軽微な刑罰ですんでいること,

労働者の地位が工員であって指導的なものではなかったことから,

会社とは関係のない私生活の中で行なわれた

本件犯罪行為を理由とする懲戒解雇は無効となりました。

 

 

刑罰が重かったり,管理職などの地位にあった場合には,

私生活における犯罪行為であっても,

懲戒解雇が有効になる可能性はあります。

 

 

もっとも,私生活で犯罪行為をしたことを理由とする懲戒解雇ではなく,

警察に捕まって無断欠勤が続いたことを理由に

懲戒解雇されることがあります。

 

 

犯罪をして警察に逮捕されていまうと,逮捕段階で最大3日間,

勾留されてしまうと,10日間,

さらに勾留が延長されると,さらに最大10日間,

警察署の留置施設に身体を拘束されてしまいます。

 

 

ようするに,最大23日間も身体を拘束されてしまうのです。

 

 

23日間も無断欠勤が続けば,勤怠不良ということで,

懲戒解雇されてしまう恐れがあるのです。

 

 

正直,この懲戒解雇を争うのは難しいと思います。

 

 

逮捕勾留されても,懲戒解雇はせずに,

軽微な懲戒処分とした上で,雇用が維持されたり,

懲戒解雇をしない代わりに,自己都合退職を促さたりと,

会社の態様は様々です。

 

 

刑事弁護人の立場からは,犯罪行為をした労働者の更生のために,

会社にはなるべく恩情をかけてもらいたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労災保険法が適用される労働者とは

先日,ブログ記事において,会社との間で

業務委託契約を締結していた労働者の労災申請について,

特別加入制度を利用することで,労災保険に準ずる

補償を受けられることについて解説しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/rousai/201909248569.html

 

 

労働者との間で業務委託契約を締結する動きについて,

最近では,体脂肪計のタニタにおいて,

労働者と業務委託契約を締結して,

労働者を個人事業主としていることがあげられます。

 

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190812-00009998-bengocom-soci

 

 

もっとも,形式的に業務委託契約を締結していても,

具体的な契約内容や就労実態からすれば,

労働基準法や労災保険法の労働者と認められて,

労働基準法が適用されたり,

通常の労災保険が適用される可能性があります。

 

 

本日は,形式的に業務委託契約を締結していても,

実質的に労働基準法や労災保険法の労働者といえるのは

どのような場合かについて,解説します。

 

 

 

労働基準法や労災保険法の労働者といえるかの

判断基準としては大きく2つあります。

 

 

1つは,指揮監督下の労働という労務提供の形態,

もう1つは,賃金支払という報酬の労務に対する対償性です。

 

 

指揮監督下の労働については,

①仕事の依頼,業務従事の指示に対する諾否の自由があったか,

②業務遂行上の指揮監督があったか,

③時間的場所的な拘束があったか,

④作業時従事者の判断で代役を立てたり応援を呼んだりするという

代替性があったか,をもとに判断します。

 

 

具体的な事例で検討してみます。

 

 

運転代行業務の会社に勤務していた

代行運転手の労働者性が問題となった

ミヤイチ本舗事件の東京高裁平成30年10月17日判決

(労働判例1202号121頁)をみてみましょう。

 

 

 

この事件では,原告らは,仕事開始時間,待機の場所について

具体的に指示されるなど,被告会社の包括的な指揮監督に服していたと

判断され,上記②と③の基準にあてはまります。

 

 

また,原告らの勤務シフトは,被告会社が一方的に作成していたので,

原告らには,業務指示に対する諾否の自由はなかったと判断され,

上記①の基準にあてはまります。

 

 

そして,原告らの報酬は,歩合給だけではなく,

職務手当や役職手当の名目で支払がなされており,

被告会社の決算書上原告らに対する支払を給料として

計上していたことから,報酬の労務に対する対償性も認められました。

 

 

以上より,上記事件の代行運転手は,労働者と認められたのです。

 

 

このように,形式的に業務委託契約が締結されていたとしても,

契約内容や労働実態を実質的に検討すれば,

労働契約であると判断されるケースは

わりと多いのではないかと思います。

 

 

そのため,会社から,あなたは労働者ではないので

労災保険は使えませんと言われても,自分は労働者であるとして,

労災保険の適用が受けられないのかを検討すべきです。

 

 

形式的に業務委託契約を締結して,

労働基準法や労災保険法の適用を免れようとする

会社が少なくなることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

過労死の労災認定基準以外の疾病で労災の認定を受けられるのか

先日,栃木県那須町で開催された過労死弁護団の総会で,

貴重な裁判例の報告がありましたので,アウトプットします。

 

 

極端な長時間労働によってウイルス性劇症型心筋炎に

罹患して死亡した労働者に対して,過労死の労災認定が認められた,

国・大阪中央労基署長(La Tortuga)事件の

大阪地裁令和元年5月15日判決(労働判例1203号5頁)です。

 

 

この事件では,労働者が,過労死の労災認定基準の対象疾病ではない

ウイルス性心筋炎に罹患したことから,

長時間労働との間に因果関係が認められるのかが争点となりました。

 

 

 

以前,エコノミークラス症候群と過労死について

ブログに記載しましたが,過労死の労災認定基準の対象疾病以外の疾病

に罹患した場合,労災認定のハードルが一気に高くなります。

 

 

 https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201909268573.html

 

 

過労死の労災認定基準の対象疾病は,

脳内出血・脳梗塞などの脳血管疾患と,

心筋梗塞や心停止などの心疾患です。

 

 

これらの脳・心臓疾患は,仕事の過労やストレスによって,

脳や心臓の血管がダメージを受けて発症することが

医学的に裏付けられていることから,対象疾病となっています。

 

 

他方,対象疾病以外の疾病については,

仕事による過労と疾病の発症とのメカニズムが

医学的に解明されていないとして,

労働基準監督署の労災認定の手続では,

労災と認定されることはほとんどないのです。

 

 

本件事件では,フレンチレストランの調理師が,

1ヶ月250時間もの極端な時間外労働をしており,

1ヶ月80~100時間の時間外労働という過労死ラインの

2倍以上の過酷な労働をしていたのですが,

対象疾病以外の疾病であることを根拠に,

労災認定手続では,労災と認定されなかったのです。

 

 

 

対象疾病以外の疾病で労災と認定してもらうためには,

行政の手続きではなく,裁判手続きにおいて,

当該疾病と業務の過重性との関連性を立証できれば,

労災と認定される道が開けます。

 

 

本件事件では,極端な長時間労働による疲労の蓄積によって

自然免疫機能の低下や獲得免疫機能の過剰といった

免疫力の異常が発生して,ウイルスに感染しやすく,

感染症の症状が重篤化しやすくなることについて,

相応の医学的な裏付けがあると判断しました。

 

 

そして,平均で1ヶ月250時間の極端な長時間労働による

疲労の著しい蓄積によって,免疫力の著しい異常が生じて,

ウイルス性心筋炎が発症したとして,因果関係が認められたのです。

 

 

過労→免疫力低下→ウイルス感染→増悪→劇症化,

という因果の流れが認められたわけです。

 

 

疲れたら,風邪をひきやすい,

インフルエンザウイルスに感染してインフルエンザになりやすい

という当たり前のことなのですが,労災の手続きにおいては,

対象疾病以外の疾病という理由で,

この当たり前のことが認められないことがあるのです。

 

 

そのため,過労死の対象疾病を見直す必要があると考えます。

 

 

この事件を担当された大阪の弁護士の波多野先生から,

対象疾病以外の疾病で労災を勝ち取ることの苦労話をお聞きし,

クライアントのために諦めずに最善を尽くすことの大切さを学びました。

 

 

また,ご遺族の奥様が,これほどまでに酷い働き方をさせられて

死亡したのに,たまたま発症したのがウイルス性心筋炎だから

という理由で,過労死と認められないのは納得できないという,

素朴な疑問に基づいて,最後まで諦めずにたたかってきたことに,

心をうたれました。

 

 

過労死の対象疾病以外の疾病であっても,

労災と認定される道が開かれた点で,

画期的な判決だと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パタハラから育児休業取得による不利益な取扱の禁止を考える

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の元社員のカナダ国籍の方が,

育児休業を取得した後に,会社から仕事を減らされるなどの

不利益な取扱を受けたとして,東京地裁で訴訟が係属しているようです。

 

https://www.asahi.com/articles/ASM7952C0M79ULFA01N.html

 

 

子育て中の男性が職場で嫌がらせを受けることを

パタニティハラスメント(パタハラ)と言うようで,

最近,パタハラに関する訴訟が注目されています。

 

 

 

男性が育児休業を取得した後に会社から嫌がらせを受けた場合,

育児介護休業法10条の不利益な取扱の禁止

違反していないかが問題となります。

 

 

本日は,育児介護休業法10条の

不利益な取扱の禁止について説明します。

 

 

育児介護休業法10条には,

「事業主は,労働者が育児休業申出をし,

又は育児休業をしたことを理由として,

当該労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはならない」

と規定されています。

 

 

どのようなケースが不利益な取扱いに該当するかについては,

「子の養育又は家族の介護を行い,又は行うこととなる

労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために

事業主が講ずべき措置に関する指針」

(平成21年厚生労働省告示第509号)

に具体的に記載されています。

 

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/3_0701-1s_1.pdf

 

 

例えば,「期間を定めて雇用される者について,契約の更新をしないこと」,

「労働者が希望する期間を超えて,その意に反して

所定外労働の制限,時間外労働の制限,深夜業の制限又は

所定労働時間の短縮措置等を適用すること」,

「昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと」,

「不利益な配置の変更を行うこと」,

「就業環境を害すること」などです。

 

 

育児休業から復帰してすぐに遠い支店への

転勤を命じられたような場合には,

「不利益な配置の変更」に該当するかが問題となり,

配置の変更前後の賃金その他の労働条件,

通勤事情,当人の将来に及ぼす影響など

諸般の事情を総合考慮して判断されます。

 

 

通常の人事異動のルールからは十分に説明できない

職務又は就業の場所の変更を行うことにより,

労働者に相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせる場合には,

「不利益な配置の変更」に該当します。

 

 

そのため,育児休業から復帰してすぐに

遠い支店への転勤を命じられた場合,男性労働者は,

小さい子供と妻を自宅において,単身赴任となれば,

妻に子育ての負担が集中するという精神的な不利益と,

自宅と単身赴任先の生活で二重に生活費がかかり

経済的な不利益も発生するので,

不利益な配置の変更に該当する可能性があります。

 

 

 

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の事件の場合,

育児休業を取得した後に仕事を減らされたようですので,

「労働者が希望する期間を超えて,その意に反して

所定外労働の制限,時間外労働の制限,深夜業の制限又は

所定労働時間の短縮措置等を適用すること」,若しくは,

業務に従事させない,専ら雑務に従事させるなどの

「就業環境を害すること」に該当する可能性があります。

 

 

もっとも,三菱UFJモルガン・スタンレー証券は,

育児期間中であることを配慮しての措置であったと争っているため,

労働者が育児休業を取得しことと不利益な取扱いとの間に

因果関係が認められるかが問題となります。

 

 

育児休業を取得して不利益な取扱を受けた場合,

人事の必要性があったのか,

因果関係が認められるかを

入念にチェックすることが必要になります。

 

 

私は,現在,0歳と2歳の子供の子育てをしている最中ですので,

パパの育児休業の必要性はよくわかります。

 

 

パパの育児休業が当たり前になって,

パタハラがなくなることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

那須連山登山紀行

私の趣味の一つは登山です。

 

 

これまでに登った百名山は,羅臼岳(北海道),

雨飾山(新潟),赤城山(群馬),浅間山(長野),

筑波山(茨城),白馬岳(長野),立山(富山),

乗鞍岳(長野),富士山(山梨),白山(石川),

伊吹山(滋賀),韓国岳(宮崎),開聞岳(鹿児島)の13座です。

 

 

百名山を全て登ることが目標なのですが,

結婚してからは,登山ができず,目標達成が遠のいていました。

 

 

このままでは,百名山を登ることができないことに

焦りを感じた私は,出張ついでに登山することを考えました。

 

 

今回は,栃木県那須にいきましたので,

百名山の一つ茶臼岳の登山をしてきました。

 

 

 

9月27日,那須塩原駅でレンタカーを借り,

過労死弁護団の総会に参加し,9月28日に登山をしてきました。

 

 

出張ついでに登山をするときは,仕事道具があって荷物が多いこと,

山はバスの便が悪いことから,レンタカーを借りるのがおすすめです。

 

 

那須高原の街道を山の方向へ登っていくと,

那須ロープウェーの山麓駅に着きます。

 

 

那須は,首都圏に近いので,土曜日は,

多くの登山客が殺到しますので,早朝にいかないと

駐車場が満杯になる可能性があります。

 

 

ロープウェーに5分ほど乗れば,

一気に茶臼岳の9合目まで行けます。

 

 

 

ロープウェーの山頂駅から登山道を歩くこと30分,

茶臼岳の山頂へ登頂できました。

 

 

ロープウェーの山頂駅から茶臼岳の山頂までは,

難所はなく,初心者でも楽に登頂できます。

 

 

 

茶臼岳の山頂からは,会津,尾瀬,日光の

山々が見渡せる爽快な景色を満喫できました。

 

 

山頂駅から茶臼岳山頂だけのコースだけですと物足りないので,

隣にそびえ立つ朝日岳も登ってきました。

 

 

茶臼岳の火口縁を歩き,山の稜線を少し下ると,

峰の茶屋避難小屋という休憩スポットがあり,

そこで小休止をとりました。

 

 

 

そこから,朝日岳への登山道はなかなか過酷です。

 

 

登山道の傾斜が急であったり,

鎖をつたいながら崖の真横の細い道を進むなど,

中級レベルの難所があります。

 

 

 

朝日岳を登るときには,きちんとした登山装備が必要だと思います。

 

 

朝日岳の山頂からも素晴らしい景色を満喫でき,

特に,対面にある茶臼岳の勇壮な姿を見て心躍りました。

 

 

 

その後,朝日岳から,茶臼岳を経て,山頂駅へ戻りました。

 

 

 

登山をしているときは,特に考え事をすることなく,

ただただ無心で登っています。

 

 

日常生活で無心になることはないので,

山に登るという一つの行為だけに集中できるのは

貴重な体験のような気がします。

 

 

山に登ると,大自然を体中で受け止めてリラックスできますし,

山頂へ到達したときの達成感がたまらないです。

 

 

日常生活におけるドロドロとしたストレスが,

体の中から自然に抜けていき,体が浄化されたように感じ,

とてもリフレッシュできます。

 

 

やはり登山はいいですね。

 

 

登山のもう一つの楽しみは温泉です。

 

 

茶臼岳の麓には,那須温泉郷の一つの大丸温泉があり,

大丸温泉旅館で日帰り入浴をしてきました。

 

http://www.omaru.co.jp/

 

 

ここの温泉は,硫黄の感じがすごく,

温泉に入ると体の疲労が解消されていくのを感じます。

 

 

 

広い露天風呂は,川から温泉が流れてくるような

素晴らしいつくりになっていて,

那須の自然を満喫しながら,温泉を楽しめます。

 

 

まさに秘湯という表現がぴったりくる,素敵な旅館でした。

 

 

登山後の温泉は,最高のデトックスになりますね。

 

 

登山と温泉を満喫して,リフレッシュできましたので,

仕事をがんばっていきたいと思います。

 

 

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第32回過労死弁護団全国連絡会議に参加してきました

昨日,栃木県那須町で開催された過労死弁護団全国連絡会議の

第32回総会に参加してきました。

 

 

過労死や過労自殺の分野の第一人者の弁護士の

貴重な事件報告を聞くことができ,大変勉強になりますので,

4年連続で参加させていただいております。

 

 

個人的には,過労死弁護団総会の最大の目玉は,

過労死や過労自殺の分野で数々の勝訴判決や労災認定を勝ち取ってきた,

東京の弁護士の川人博志先生による,前回総会から今回の総会までの,

過労死や過労自殺の労災認定や裁判結果を総括するご報告です。

 

 

 

川人先生のご報告によれば,平成30年度は,

過労死・過労自殺の労災申請数は増加しているにもかかわらず,

労災と認定される数は減少し,

労災申請数に対する労災認定数の割合も減少しており,

厚生労働省は,過労死や過労自殺の労災認定の抑制に

かじを切ったようです。

 

 

本来であれば,労災と認定されるべき事案において,

労災と認定されていない状況にあるようです。

 

 

過労死や過労自殺が労災と認定されるためには,

時間外労働を1ヶ月に何時間していたかが重要であり,

おおむね1ヶ月に80~100時間を超える

時間外労働をしていた場合には労災と認定されます。

 

 

しかし,最近の労働基準監督署は,

移動時間を労働時間と評価せずに,

時間外労働を過小に認定して,

1ヶ月の時間外労働が80~100時間を超えていないとして,

労災認定をしない傾向にあるようです。

 

 

川人先生のご報告による具体的ケースでは,

横浜に住む労働者が,自宅から社用車を運転して静岡へいき,

商談をした後に,社用車で再び移動し,

三重県鈴鹿市のホテルで宿泊して,

夜にホテルで業務報告の仕事をした事案において,

遺族は,移動時間を含めて14時間の労働時間を主張していましたが,

労働基準監督署は,静岡の取引先で商談をした約4時間だけしか

労働時間と認めず,過労死の労災認定をしなかったようです。

 

 

 

確かに,通勤時間は労働時間ではなく,

電車で出張する移動時間も労働時間といえない場合もあります。

 

 

しかし,会社からの業務命令に基づき,

労働者が自分で自動車を運転して移動する時間については,

会社の指揮命令下にある労働時間と評価できると考えます。

 

 

電車の移動と違い,自分で自動車を長時間運転するのは,

かなり疲労がたまります。

 

 

さらに,平成15年3月作成の厚生労働省内実務要領では,

労働者が自ら運転して移動する場合には,

労働時間として認めることにしているようです。

 

 

そのため,労働者が自分で社用車を運転する時間は,

労働時間と認定されるべきです。

 

 

ちなみに,移動時間については,

仕事に必要な荷物などを運搬していると

労働時間と認定されやすくなるようです。

 

 

移動時間以外にも,新入社員の自己研鑽や,

会社の外でパソコン作業をしても成果物がなければ,

労働時間と認定されにくいようです。

 

 

移動時間,自己研鑽,社屋外でのパソコン作業について,

労働時間と認めさせるためには,

会社の指揮命令下におかれていることについて,

主張立証を工夫していく必要があります。

 

 

第一線で活躍されている先輩弁護士から,書籍には載っていない,

裁判や労災認定の知恵を吸収することができましたので,

過労死や過労自殺事件を担当するときに活用していきたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。