公益通報者保護法の改正
日産自動車の前会長のカルロス・ゴーン氏が,
私的な投資の損失を日産自動車に付け替えたなどの
特別背任罪で再逮捕されて,年末に勾留が延長されました。
(日本経済新聞社より)
新聞報道を見ていますと,長年,
カルロス・ゴーン氏の不正が見過ごされていたものの,
内部告発や司法取引によって,不正が明るみにでてきたようですね。
本来,経営者の不正について監視しなければならない取締役会が,
日産自動車では,機能不全に陥っていたようです。
ワンマン経営者の側近がイエスマンで固められると,
企業不祥事が発生してしまうことを物語っています。
日産自動車というグローバル企業ですら,
経営者の不正を見抜けなかったのですから,
他の企業でも,不正は見抜けないのでしょう。
そう考えると,やはり会社とは,
不正を隠したがるものであり,
取締役会だけで不正を見抜くことは難しく,
不正を告発してくれる内部の労働者の存在が不可欠であると,
日産自動車の事件を見ながら思いました。
とはいえ,内部告発者は,会社内で冷遇され,
懲戒処分を受けたり,左遷させられたりすることがほとんどです。
このような現状を改善しなければ,
企業の不祥事を止めることはできません。
そこで,内閣府消費者委員会の専門調査会が,
内部告発者の保護を手厚くするために,
公益通報者保護法の改正について議論しており,
昨年12月26日に報告書をまとめました。
公益通報者保護法の改正のポイントは,以下の3つです。
1つ目は,保護される者を,現役の労働者から,
退職者や役員にも拡大しました。
退職者した人であれば,会社と縁が切れているので,
内部告発しやすく,不正を正すための情報が
得られやすくなることが期待されます。
2つ目は,従業員300人超の企業と行政機関には,
内部通報制度を整備することが義務付けられ,
従業員300人以下の企業には,
内部通報制度を整備することが努力義務となりました。
まだ内部通報制度を整備していない企業も多いので,
法改正を契機に,会社内での通報制度が
整備されることを期待したいです。
3つ目は,内部告発を理由に報復的な人事をした会社には,
是正勧告され,是正勧告に従わない会社は,会社名を公表されます。
是正勧告や会社名の公表でも,
内部告発者を保護しようという気運はある程度高まりますが,
内部告発者をより保護するために,
内部告発者に対する報復的な人事については,
刑事罰を科すか,業務停止命令などの行政処分をするか
などの対策が必要であると考えます。
また,内部通報の窓口担当者に
守秘義務が課されないことも不十分です。
内部通報者は,内部通報をしても秘密が守られることが保障されて,
初めて安心して不正の事実を正直に話してくれるのであり,
窓口担当者に守秘義務が課せられていないと,
効果的な内部通報窓口の整備になりません。
このように,不十分な点もありますが,
内部告発者の保護を拡大するために一歩前進になります。
公益通報者保護法の改正により,
内部告発によって不正があばかれる前に,
会社内部で不正が是正されて,
企業不祥事が減少していくことを期待したいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。