第32回過労死弁護団全国連絡会議に参加してきました

昨日,栃木県那須町で開催された過労死弁護団全国連絡会議の

第32回総会に参加してきました。

 

 

過労死や過労自殺の分野の第一人者の弁護士の

貴重な事件報告を聞くことができ,大変勉強になりますので,

4年連続で参加させていただいております。

 

 

個人的には,過労死弁護団総会の最大の目玉は,

過労死や過労自殺の分野で数々の勝訴判決や労災認定を勝ち取ってきた,

東京の弁護士の川人博志先生による,前回総会から今回の総会までの,

過労死や過労自殺の労災認定や裁判結果を総括するご報告です。

 

 

 

川人先生のご報告によれば,平成30年度は,

過労死・過労自殺の労災申請数は増加しているにもかかわらず,

労災と認定される数は減少し,

労災申請数に対する労災認定数の割合も減少しており,

厚生労働省は,過労死や過労自殺の労災認定の抑制に

かじを切ったようです。

 

 

本来であれば,労災と認定されるべき事案において,

労災と認定されていない状況にあるようです。

 

 

過労死や過労自殺が労災と認定されるためには,

時間外労働を1ヶ月に何時間していたかが重要であり,

おおむね1ヶ月に80~100時間を超える

時間外労働をしていた場合には労災と認定されます。

 

 

しかし,最近の労働基準監督署は,

移動時間を労働時間と評価せずに,

時間外労働を過小に認定して,

1ヶ月の時間外労働が80~100時間を超えていないとして,

労災認定をしない傾向にあるようです。

 

 

川人先生のご報告による具体的ケースでは,

横浜に住む労働者が,自宅から社用車を運転して静岡へいき,

商談をした後に,社用車で再び移動し,

三重県鈴鹿市のホテルで宿泊して,

夜にホテルで業務報告の仕事をした事案において,

遺族は,移動時間を含めて14時間の労働時間を主張していましたが,

労働基準監督署は,静岡の取引先で商談をした約4時間だけしか

労働時間と認めず,過労死の労災認定をしなかったようです。

 

 

 

確かに,通勤時間は労働時間ではなく,

電車で出張する移動時間も労働時間といえない場合もあります。

 

 

しかし,会社からの業務命令に基づき,

労働者が自分で自動車を運転して移動する時間については,

会社の指揮命令下にある労働時間と評価できると考えます。

 

 

電車の移動と違い,自分で自動車を長時間運転するのは,

かなり疲労がたまります。

 

 

さらに,平成15年3月作成の厚生労働省内実務要領では,

労働者が自ら運転して移動する場合には,

労働時間として認めることにしているようです。

 

 

そのため,労働者が自分で社用車を運転する時間は,

労働時間と認定されるべきです。

 

 

ちなみに,移動時間については,

仕事に必要な荷物などを運搬していると

労働時間と認定されやすくなるようです。

 

 

移動時間以外にも,新入社員の自己研鑽や,

会社の外でパソコン作業をしても成果物がなければ,

労働時間と認定されにくいようです。

 

 

移動時間,自己研鑽,社屋外でのパソコン作業について,

労働時間と認めさせるためには,

会社の指揮命令下におかれていることについて,

主張立証を工夫していく必要があります。

 

 

第一線で活躍されている先輩弁護士から,書籍には載っていない,

裁判や労災認定の知恵を吸収することができましたので,

過労死や過労自殺事件を担当するときに活用していきたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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