建築設計事務所における過酷な長時間労働
5月27日の朝日新聞に「裁量労働制 定額働かせ放題の闇」
という大変興味深い記事がありましたので紹介します。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14031264.html
この記事によると,大学と大学院で建築を学んだ20代女性が
東京都内の建築設計事務所に入社したところ,
過酷な長時間労働を強いられて,
適応障害を発症して労災と認定されたようです。
過酷な長時間労働とは,記事によると次のようなものでした。
①26日間連続勤務
②1日22時間30分勤務(休憩2時間)
③9ヶ月連続で1ヶ月の残業が100時間超
④1ヶ月の残業が180時間
⑤帰宅なしで2日間で30時間勤務
精神障害の労災認定基準である「心理的負荷による精神障害の認定基準」
の別表1の「業務による心理的負荷評価表」には,
具体的な出来事ごとに労働者が受けるであろう
心理的負荷の強度が記載されており,
上記①~⑤をあてはめると次のようになります。
①26日間連続勤務→
2週間以上にわたって連続勤務を行ったに該当し,
心理的負荷の強度は「中」となります。
連続勤務が1ヶ月以上になると心理的負荷の強度は「強」となります。
そもそも,労働基準法35条において,会社は,労働者に対して,
1週間に1回休日を与えなければならないので,
①26日間連続勤務は,明らかに労働基準法違反となります。
②1日22時間30分勤務(休憩2時間),
⑤帰宅なしで2日間で30時間勤務→
労災認定基準は,1ヶ月の労働時間で評価するので,
これだけで心理的負荷の強度は判断されませんが,
1日8時間労働が原則であり,それを大幅に超えるものであり,
過酷な長時間労働を物語っています。
③9ヶ月連続で1ヶ月の残業が100時間超→
発症直前の連続した3ヶ月間に,
1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行い,
その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであれば,
心理的負荷の強度は「強」となります。
④1ヶ月の残業が180時間→
発症直前の1ヶ月におおむね160時間を超えるような
時間外労働を行った場合,「極度の長時間労働」
として心理的負荷の強度は「強」となります。
このように,①~⑤の労働実態であれば,労災と認定されるのです。
では,なぜ,このような過酷な長時間労働が
許されてしまったのでしょうか。
それは,この女性労働者に
専門業務型裁量労働制が適用されていたからです。
長くなりますので,専門業務型裁量労働制
についての解説は,明日以降に記載します。
本日もお読みいただきありがとうございます。