我が師菅野昭夫弁護士~不二越指名解雇事件~
今週の土日は,私が所属している自由法曹団という
弁護士の団体の全国の集まりが石川県和倉温泉であり,
私は,地元の弁護士としてお手伝いをしていました。
この集まりの企画の中で,新人弁護士の学習会というものがあり,
その学習会で,私が所属している弁護士法人金沢合同法律事務所の
所長である菅野昭夫弁護士が,新人弁護士に向けて講義をしました。
(菅野昭夫弁護士)
私は,もともと,菅野弁護士に憧れて,
弁護士法人金沢合同法律事務所に就職したのですが,
普段,菅野弁護士とは同じ事務所で仕事をしているものの,
菅野弁護士の過去のことや弁護士としてのあるべき姿などを,
忙しさにかまけて,あまり尋ねていなかったところがあったので,
既に弁護士9年目に突入していて,新人ではないのですが,
今回の学習会は,大変勉強になりました。
そこで,この学習会の内容をアウトプットします。
菅野弁護士は,労働弁護士としての
不屈の闘いについて熱く語りました。
1960年初めころ,富山にある株式会社不二越という
東証一部上場のベアリングメーカーが,
受注減によって累積赤字に苦しんでいるとして,
希望退職募集後に146名の労働者を,
成績不良を根拠に指名解雇したという事件がありました。
指名解雇された労働者のうち,労働組合に所属していた組合員は,
不況を口実として,労働組合を弱体化させることを狙った
指名解雇であると主張して,32人の組合員が,
労働者の地位にあることの確認を求める仮処分の申立を
富山地裁に起こしました。
菅野弁護士は,富山の弁護士と2人で,この事件を担当しました。
裁判闘争に打って出た組合員達は,
職場の民主化のために闘ってきたが,
自分達は成績不良では断じてない,そのため,
指名解雇は不当労働行為であり,
闘っていけば必ず勝訴すると固く信じていたため,
菅野弁護士は,依頼者の熱い想いに共感して,
この困難な事件に果敢に立ち向かっていきました。
この事件では,合計64人に対する尋問が行われたようです。
通常の解雇事件ですと,尋問はせいぜい原告を含めて
2~3人くらい実施されるというものですが,
64人もの尋問が行われたことからも,
この事件がいかに困難なものだったかわかります。
6年の審理を経てくだされた第一審の判決では,
32名の申立人のうち14名は成績不良ではなかったとして,
解雇は無効になりましたが,
残り18名の申立人に対する解雇は有効と判断されました。
裁判を闘ってきた組合員達は,
18名に対する解雇を有効とする判決に納得できず,
全員の勝訴を目指して,すぐに控訴が提起されました。
組合員達は,裁判を闘うための生活資金を賄うために,
不二越の社宅の廃品回収の仕事をしていたところ,
廃品回収の過程で会社の不当労働行為を
裏付ける内部文書がみつかりました。
また,会社側から,人事考課に関する証拠が提出されないことを
不信に思った菅野弁護士は,控訴審の前に,
証拠保全の申立をして,会社の人事考課の資料を入手しました。
すると,会社の人事考課の資料によれば,
組合員達の勤務成績が優秀であるものの
共産党員などであることを根拠として,
評価を低くしていたという証拠がみつかりました。
さらには,会社が一部の組合員を買収して,
ストライキを断念させたという爆弾証言まででてきました。
そのような経緯もあり,裁判所は,解雇を撤回するように,
和解勧告をし,裁判を闘ってきた組合員全員の解雇が撤回され,
何億もの未払賃金の支払いが実現したのでした。
菅野弁護士は,この事件から,労働事件での勝訴の展望は,
法廷闘争の時間と空間を利用して,
証拠の収集,支援体制,生活の確保などを,
労働者自らが切り開き,団結と職場内外の支持の組織化が
カギとなることを学んだようです。
困難を極める解雇事件を無事解決に導いた
菅野弁護士の手腕に感銘を受けました。
困難な事件を経験することで,
弁護士は成長していくことを教わりました。
長くなりましたので,続きは明日以降に記載します。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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