ILOで仕事の世界における暴力やハラスメントを撤廃するための条約が採択されました
仕事における暴力やハラスメントを禁止する初めての条約が,
6月21日,国際労働機関(ILO)の年次総会で採択されました。
https://www.ilo.org/tokyo/events-and-meetings/WCMS_700939/lang–ja/index.htm
「仕事の世界における暴力と嫌がらせの撤廃に関する条約」
と題する条約で,条約を批准する国に対し,
暴力と嫌がらせから自由な仕事の世界への権利を認め,
法や政策などを通じて仕事の世界における
暴力と嫌がらせの撤廃に向けた包摂的で性差に対応した
総合的な取り組みを行うことを求めています。
仕事の世界から,暴力やハラスメントを根絶することを
崇高な理念として掲げています。
この条約における「仕事の世界における暴力と嫌がらせ」とは,
「一回限りの出来事か繰り返されるものかを問わず,
心身に対する危害あるいは性的・経済的に
危害を与えることを目的とするか,
そのような危害に帰する,あるいは帰する可能性が高い,
一連の許容できない行動様式及び行為またはその脅威
(性差に基づく暴力と嫌がらせを含む)」と定義されています。
仕事におけるハラスメントを広く捉えています。
先日,労働施策総合推進法の改正によって,
パワハラの定義が「職場において行われる優越的な関係を背景とした
言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
その雇用する労働者の就業環境が害されること」
と定められていますが,この定義よりも,
ILOの条約の定義の方が,広くハラスメントを捉えており,
より労働者保護を鮮明にしています。
ハラスメントの保護の対象者について,日本の法律では,
その会社に就職して現に働いている労働者が対象なのですが,
ILOの条約では,実際に働いている労働者に加えて,
ボランティア,求職者,インターンや見習い実習生なども,
保護の対象となっています。
最近,就活生に対するセクハラが問題となっていることから,
ハラスメントの保護の対象者を,現に今働いている労働者から
就活生なども対象に加えて拡大させることには賛成です。
ちなみに,参議院の付帯決議において,
フリーランス,就職活動中の学生等に対する
セクハラ等の被害を防止するため,
男女雇用機会均等法に基づく指針等で必要な対策を講じることが,
規定されていますので,今後,日本においても,
ハラスメントの保護の対象者を拡大する方向に
進んでいくものと思われます。
ILOの条約では,具体的な対策として,
仕事の世界における暴力と嫌がらせの禁止する法律の制定,
適切な予防措置の行使,救済を受ける機会の確保,
啓発キャンペーンの実施などが挙げられています。
このうち,日本の法律には,ハラスメントを直接禁止したり,
ハラスメント行為に対する制裁を規定したものがまだありません,。
今後は,今回のILOの条約を批准するために,
ハラスメントのない環境で働く労働者の権利を確認し,
損害賠償義務の根拠規定となりうるハラスメント行為禁止規定
の創設が求められます。
ILOの条約が採択されたことによって,
職場のハラスメントを根絶することは,
もはやグローバルスタンダードとなりました。
近いうちに,ILOの条約を批准するために
必要な法改正がなされることが予想されます。
企業は,今のうちからパワハラの根絶に向けた
取り組みをしていくべきと考えます。
というわけで,明日6月26日水曜日14時から
石川県地場産業振興センター本館第2会議室において,
株式会社シェヘラザード様と一緒にパワハラの研修を行います。
ご興味のある方は,ぜひご参加ください。
本日もお読みいただきありがとうございます。