ILOで仕事の世界における暴力やハラスメントを撤廃するための条約が採択されました

仕事における暴力やハラスメントを禁止する初めての条約が,

6月21日,国際労働機関(ILO)の年次総会で採択されました。

 

 

https://www.ilo.org/tokyo/events-and-meetings/WCMS_700939/lang–ja/index.htm

 

 

仕事の世界における暴力と嫌がらせの撤廃に関する条約

と題する条約で,条約を批准する国に対し,

暴力と嫌がらせから自由な仕事の世界への権利を認め,

法や政策などを通じて仕事の世界における

暴力と嫌がらせの撤廃に向けた包摂的で性差に対応した

総合的な取り組みを行うことを求めています。

 

 

仕事の世界から,暴力やハラスメントを根絶することを

崇高な理念として掲げています。

 

 

 

この条約における「仕事の世界における暴力と嫌がらせ」とは,

「一回限りの出来事か繰り返されるものかを問わず,

心身に対する危害あるいは性的・経済的に

危害を与えることを目的とするか,

そのような危害に帰する,あるいは帰する可能性が高い,

一連の許容できない行動様式及び行為またはその脅威

(性差に基づく暴力と嫌がらせを含む)」と定義されています。

 

 

仕事におけるハラスメントを広く捉えています。

 

 

先日,労働施策総合推進法の改正によって,

パワハラの定義が「職場において行われる優越的な関係を背景とした

言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

その雇用する労働者の就業環境が害されること

と定められていますが,この定義よりも,

ILOの条約の定義の方が,広くハラスメントを捉えており,

より労働者保護を鮮明にしています。

 

 

ハラスメントの保護の対象者について,日本の法律では,

その会社に就職して現に働いている労働者が対象なのですが,

ILOの条約では,実際に働いている労働者に加えて,

ボランティア,求職者,インターンや見習い実習生なども,

保護の対象となっています。

 

 

最近,就活生に対するセクハラが問題となっていることから,

ハラスメントの保護の対象者を,現に今働いている労働者から

就活生なども対象に加えて拡大させることには賛成です。

 

 

ちなみに,参議院の付帯決議において,

フリーランス,就職活動中の学生等に対する

セクハラ等の被害を防止するため,

男女雇用機会均等法に基づく指針等で必要な対策を講じることが,

規定されていますので,今後,日本においても,

ハラスメントの保護の対象者を拡大する方向に

進んでいくものと思われます。

 

 

 

ILOの条約では,具体的な対策として,

仕事の世界における暴力と嫌がらせの禁止する法律の制定,

適切な予防措置の行使,救済を受ける機会の確保,

啓発キャンペーンの実施などが挙げられています。

 

 

このうち,日本の法律には,ハラスメントを直接禁止したり,

ハラスメント行為に対する制裁を規定したものがまだありません,。

 

 

今後は,今回のILOの条約を批准するために,

ハラスメントのない環境で働く労働者の権利を確認し,

損害賠償義務の根拠規定となりうるハラスメント行為禁止規定

の創設が求められます。

 

 

ILOの条約が採択されたことによって,

職場のハラスメントを根絶することは,

もはやグローバルスタンダードとなりました。

 

 

近いうちに,ILOの条約を批准するために

必要な法改正がなされることが予想されます。

 

 

企業は,今のうちからパワハラの根絶に向けた

取り組みをしていくべきと考えます。

 

 

 

というわけで,明日6月26日水曜日14時から

石川県地場産業振興センター本館第2会議室において,

株式会社シェヘラザード様と一緒にパワハラの研修を行います。

 

 

ご興味のある方は,ぜひご参加ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

笑顔相続セミナーを開催します3~遺言書のポイント~

昨日のブログで,私の祖母の遺産分割協議のケースを題材に,

遺言書にはポイントがあることを記載しました。

 

 

本日は,遺言書を作成する際のポイントについて解説します。

 

 

 

 

私が考える遺言書のポイントは,

①遺留分に配慮すること,

②付言事項を活用するの2点です。

 

 

まず,①遺留分に配慮すること,について解説します。

 

 

遺留分とは,遺言書によっても奪うことができない,

相続人に認められた財産を取得できる最低限の権利のことです。

 

 

もともと,人は,自分の財産を自由に処分でき,

遺言書に記載することで,自分が死亡した後の財産の処分を

自由に決められるのですが,他方で,相続制度には,

遺族の生活保障と,遺産の形成に貢献した遺族の潜在的持ち分を

精算するという機能があることから,相続人に対して,

遺言書でも奪うことのできない最低限の取り分を認めたわけです。

 

 

私の祖母の遺言書には,全ての財産を長男である父に

相続させると記載されていました。

 

 

この遺言書を見た,父以外の相続人である父の兄弟姉妹は,

長男だけが母の財産を取得するのは,不公平だと思います。

 

 

人は,不公平だと感じていて,

自分にも何かもらえる権利があれば,

もらいたいと思うものです。

 

 

もらえるものはもらいたい。

 

 

 

 

これは,人間の性としてしかたがないことです。

 

 

また,祖父の遺産分割調停で高等裁判所まで

争った過去があるので,積年の恨みの感情もあります。

 

 

私の祖母のケースでは,遺留分は1/10が認められていたので,

当然,他の兄弟姉妹は,1/10の遺留分に相当する金銭の

請求を父にしてくるわけです。

 

 

さらに,請求された遺留分を支払えるだけの預貯金が

遺産として残っていればいいのですが,

遺産のほとんどが不動産の場合,不動産が売れないと,

遺留分に相当する金銭を支払うことができません。

 

 

このように,①人間の欲,②相続人の感情,③遺産の性質

などが原因で,遺留分でもめることはよくあります。

 

 

遺留分でもめないようにするには,最初から,

遺言書で,全ての相続人に対して,

遺留分に相当する財産を確保させておけばいいのです。

 

 

そのためには,自分の財産として何があるのかを把握し,

いくらの評価なのかを調査し,遺留分を計算して,

遺留分相当の財産を相続人に配分しておけばいいのです。

 

 

次に,②付言事項の活用です。

 

 

例えば,母が亡くなり,長男と二男が母の遺産

(自宅5000万円,預金1000万円)

を相続するケースを考えてみます。

 

 

母の遺言書には,自宅を長男に相続させる,

預金を二男に相続させると記載されていました。

 

 

この場合,二男には1/4の遺留分が認められているので,

遺留分は,遺産全額6000万円の1/4である1500万円となります。

 

 

二男は,預金1000万円を相続できるで,

あと500万円足りません。

 

 

そのため,二男は,長男に対して,

遺留分として500万円を請求できます。

 

 

 

 

ただ,母の遺言書に,次の文言が記載されていたら,どうでしょうか。

 

 

「自宅は,先祖代々の土地です。

近所付き合いやお墓と一緒に長男に守ってほしい。

亡くなったお父さんとコツコツ貯めた1000万円は,

二男に大切に使って欲しい。いつまでも,

兄弟仲良く,助け合ってください。」

 

 

このようなメッセージが残されていたら,

二男は,母の思いを汲み取り,長男に対して,

500万円の遺留分の請求を控える可能性があります。

 

 

この亡くなった人の最後のメッセージを付言事項といいます。

 

 

付言事項は,亡くなった人の想いを記載したもので,

法的には何の意味もないものなのですが,

事実上,紛争を予防する効果が期待されます。

 

 

子供は,親の遺志があれば,それに従いますが,

親の遺志がないのであれば,自分の権利を主張するものです。

 

 

以上より,私は,遺言書のポイントは,

①遺留分に配慮すること,②付言事項を活用する

の2点にあると考えます。

 

 

この3日間,ブログで記載したことを,

もっと具体的な事例に即して,

わかりやすく解説する笑顔相続セミナーを開催します。

 

 

6月30日日曜日と7月7日日曜日の午前10時から

中能登町にあるラピア鹿島第2会議室において,

株式会社ソニックジャパン金沢支社の平田嘉宏さんと一緒に

「笑顔相続セミナー」を開催しますので,

遺言や相続に関心のある方は,ぜひご参加ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

笑顔相続セミナーを開催します2~祖母のときの相続~

昨日は,私の祖父の遺産をめぐり,

私の父が泥沼の法廷闘争へ巻き込まれていったことについて,

ブログに記載しました。

 

 

この話には続きがあります。

 

 

私の祖母が亡くなったときに,

今後は祖母の遺産をめぐり再び紛争が勃発したのです。

 

 

 

ただ,祖父の遺産分割のときと違うのは,

私が弁護士になっていたという点です。

 

 

弁護士の私が間に入って,なんとか遺産分割協議をまとめました。

 

 

本日は,私の祖母の遺産分割協議のことをお話します。

 

 

弁護士になって4年目くらいに祖母がなくなり,

祖母が残した遺産を5人の兄弟姉妹で

どうやって分割するかが問題となりました。

 

 

祖父の遺産分割で裁判闘争までした祖母と父でしたが,

裁判から10年以上経過すると,次第に関係は改善し,

祖母と父は仲良くなっていきました。

 

 

そのためか,祖母は,父のために遺言書を残してくれました。

 

 

遺言書には,遺産の全てを父に相続させる

ということだけが書かれていました。

 

 

 

祖父の遺産分割をめぐって激しく対立した祖母と父でしたが,

その後も,同じ屋根の下で生活し続け,体力が衰えてきてから,

祖母が父を頼るようになって,仲が改善し,

過去の裁判闘争の懺悔のためか,祖母は,

父に全ての遺産を取得してもらいたかったのかもしれません。

 

 

しかし,この遺言書では,母の遺産をめぐって,

5人の子供が,再び泥沼の争いをする危険がありました。

 

 

それの原因は遺留分です。

 

 

遺留分とは,遺言書によっても奪うことができない,

相続人に認められた財産を取得できる最低限の権利のことです。

 

 

祖母の相続の場合,相続人は5人なので,

父以外の兄弟姉妹には1/10の遺留分が認められます。

 

 

祖母の遺産は,土地が4筆と預金が数百万円でした。

 

 

たしか,1人あたりの遺留分の金額は

500~600万円くらいになったと記憶しています。

 

 

預金が多くあれば,他の兄弟姉妹に遺留分に相当する預金を渡して,

それで解決するのですが,区画整理の後に評価が上がった土地があるため,

遺留分の金額が高くなり,祖母が残した預金では

遺留分に相当する金額をまかなえませんでした。

 

 

田舎育ちの父は,先祖代々残してきた土地を

手放したくないという考えを持っていたので,

土地を売って遺留分に相当するお金を支払う

という方法はとりたくなったのです。

 

 

かといって,父は,自腹を切ってまで,

祖父の遺産分割でもめた兄弟姉妹に遺留分を

支払うことに難色を示していました。

 

 

そのため,祖母の遺言書はなかったことにして,

祖母の遺言書に従わずに,5人の兄弟姉妹で

協議して遺産分割をすることにしました。

 

 

父は,一度は疎遠になっていた,

私の伯母(長女)と私の叔父(二男)との関係を改善させ,

伯母と叔父が父の味方になってくれました。

 

 

また,祖父の遺産分割調停では相手方になっていた私の叔父(三男)も,

父の話に耳を傾けてくれて,父の味方になってくれました。

 

 

しかし,私の叔母(二女)は,祖父の遺産分割での

積年の恨みが消えず,対立は続きました。

 

 

その結果,長女・長男・二男・三男VS二女

という対立の構図となりました。

 

 

 

祖父の遺産分割協議から,15年以上の歳月が過ぎていましたが,

やはり,裁判闘争で激しく対立した過去の恨みがあったからか,

なかなか話し合いはまとまりませんでした。

 

 

やむなく再び裁判闘争に発展するかという危険もありましたが,

私が粘り強く交渉した結果,なんとか無事に,話し合いで解決しました。

 

 

祖父の遺産分割のときみたいに泥沼化を阻止できて,

本当によかったと思います。

 

 

結局,祖母が残した遺言書はお蔵入りとなってしまい,

祖母の生前の思いは実現しませんでした。

 

 

このように,遺言書は,ポイントをおさえて作成しないと,

遺留分をめぐる紛争を引き起こしてしまいます。

 

 

この遺言書のポイントを,笑顔相続セミナーでお伝えします。

 

 

6月30日日曜日と7月7日日曜日の午前10時から

中能登町にあるラピア鹿島第2会議室において,

株式会社ソニックジャパン金沢支社の平田嘉宏さんと一緒に

「笑顔相続セミナー」を開催しますので,

遺言や相続に関心のある方は,ぜひご参加ください。

 

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

笑顔相続セミナーを開催します

私は,労働者側の労働事件を主として取り扱っていますが,

それ以外の分野も取り扱っています。

 

 

離婚,相続,交通事故,破産,刑事事件などなど,

様々な分野にも取り組んでいます。

 

 

この度,6月30日日曜日と7月7日日曜日の午前10時から

中能登町にあるラピア鹿島第2会議室において,

株式会社ソニックジャパン金沢支社の平田嘉宏さんと一緒に

笑顔相続セミナー」を開催することになりました。

 

 

 

この相続セミナーでは,私が実際に体験した争族の現場から,

遺族が笑顔で相続できるために準備すべきことを語ります。

 

 

争族とは,被相続人(死亡した人)が残した財産(遺産)の取得を巡り,

相続人(被相続人の残した財産を承継できる人)がケンカをすること

をいうと私は理解しております。

 

 

親が残した財産が原因で,

子どもたちがケンカをして,

裁判に発展してくのです。

 

 

 

このような出来事が実は私の家でも起きたのです。

 

 

それは,私の父が,私の祖父の遺産をめぐって,

私の祖母と私の叔父叔母と対立し,法廷闘争へ突入する,

骨肉の争いが勃発したのです。

 

 

私が生まれたときには,既に私の祖父は亡くなっていたのですが,

どういうわけか,私が小学校高学年になるころまで,

遺産分割協議がなされていませんでした。

 

 

祖父と祖母の間には,5人の子供がおり,

長女,長男(父),二男,三男,二女という兄弟姉妹でした。

 

 

私が小学校高学年のころ,父と祖母はとても仲が悪く,

いつも家の中でけんかをしていました。

 

 

私は当時小さかったのでよく分かりませんが,

父が祖母をないがしろにしていると感じた三男と二女が祖母の味方となり,

長男の父には長女と二男が味方について,

家庭裁判所で祖父の遺産分割調停が始まりました。

 

 

実の母(私の祖母)が,長女,長男(私の父),二男を相手方として,

調停の申立てをしたのです。

 

 

 

父は,実の母親から裁判をかけられたことに,

強いショックを怒りを覚えたのだと思います。

 

 

一方で,父は,長男として,家を継ぐので,

他の兄弟姉妹よりも多くの遺産を取得したい

と考えていたのかもしれません。

 

 

裁判をしている当事者が同じ屋根の下で暮らしているので,

父と祖母のけんかはさらにエスカレートしました。

 

 

さらに,相手方となった三男(私の叔父)は,

私の家の器物を破損していったことがあったり,

二女(私の叔母)は,近所に父の悪口を言いふらすなど,

憎しみが憎しみを呼ぶ,泥沼の争いとなりました。

 

 

父と祖母と一緒に暮らしていた私も,

家族のけんかに嫌気がさして,

何か鬱屈したものをかかえていました。

 

 

ちょうど,多感な思春期だったこともあり,

いろいろモヤモヤした気持ちをかかえながら,

なんとか乗り切りました。

 

 

あのとき,グレなくて本当によかったなぁと思います。

 

 

2~3年裁判闘争が続き,

名古屋高裁金沢支部の決定がくだされ,

結果として父達が勝ったようです。

 

 

裁判には勝ったものの,今度は,

父と味方になってくれた長女(私の伯母)と

二男(私の叔父)がけんかをして,結局,

兄弟姉妹はバラバラになってしまいました。

 

 

この父の争いを間近にみて,私は,

親が財産を残したら子供がもめるということ,

兄弟姉妹は他人の始まりであるということを,

しみじみと感じました。

 

 

こういう不幸は他の家でも起きる可能性が十分あります。

 

 

でも,それを回避する方法はあります。

 

 

争族を回避して笑顔相続にするポイントを

今回の相続セミナーでお伝えしたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

勤務態度や仕事上のミス等を理由とする解雇を争うポイント

勤務態度が悪い,仕事上のミスが多い

などの理由で解雇されることがあります。

 

 

しかし,労働者としては,会社からの指示にきちんと従っていたし,

ミスがないように自分の仕事を改善していたので,

解雇に納得できないことがあると思います。

 

 

 

このような場合,労働者は,勤務態度・業務上のミス等を

理由とする解雇をどのように争っていけばいいのでしょうか。

 

 

まずは,会社に対して,解雇理由証明書の交付を請求します。

 

 

解雇が無効になるかどうかを判断するためには,

会社が主張している解雇理由を知る必要があるからです。

 

 

労働基準法22条1項により,会社は,労働者から,

解雇の理由についての証明書を請求された場合,

遅滞なくこれを交付しなければならないと規定されています。

 

 

この解雇理由証明書には,単に「勤務態度不良」や「規律違反」と

記載するだけでは不十分であり,

就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係

を具体的に記載しなければならず,

「勤務態度不良」や「規律違反」の内容である

具体的事実を記載しなければなりません。

 

 

また,この解雇理由証明書には,

労働者の請求していない事項を記入してはならないのです

(労働基準法22条3項)。

 

 

そして,この解雇理由証明書の交付を拒む会社には,

30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条1号)。

 

 

 

 

このように,攻撃対象とすべき解雇理由を具体的に明らかにさせます。

 

 

次に,明らかになった解雇理由に対する反論を検討します。

 

 

解雇は,客観的合理的理由を欠き,

社会通念上相当でない場合に無効となります(労働契約法16条)。

 

 

この客観的合理的理由の有無を検討する際には,

①労働者の労務提供が労働契約で期待された水準に至っていないと

評価される状態が将来に渡って継続すると予測されるか(将来予測の原則),

②会社が教育,訓練,指導などの解雇回避措置をつくしてもなお

雇用を継続できない場合に解雇が許容されること(最後手段性の原則)

の2点をチェックします。

 

 

社会通念上相当か否かについては,

解雇という手段を選択することが労働者にとって

過酷すぎないかをチェックするもので,

労働者の情状,他の労働者に対する処分との均衡,反省の有無

等の事情を総合的に考慮して判断されます。

 

 

勤務態度や業務上のミスを理由とする解雇の場合,

労働者の勤務態度や業務上のミスが,

会社の指示や教育によって,改善傾向にあるなら,

客観的合理的理由を欠き,解雇は無効となります。

 

 

 

 

また,会社が指示や教育を施していないのに,

いきなり解雇をしても無効となります。

 

 

このように,勤務態度不良や業務上のミスは,

通常一度だけでは有効な解雇理由とならず,

会社が注意,指導したにもかからず,

勤務態度や業務上のミスが改まらないなど

勤務態度の不良が繰り返された場合に

はじめて解雇が有効になります。

 

 

もっとも,高待遇・専門性を有する労働者に対する

注意指導等の改善努力については,

会社の負担が軽減される傾向にあります。

 

 

労働者としては,勤務態度不良や業務上のミスを理由に解雇された場合,

会社からどのような指示や教育を受けていたのかを思い返し,

指示や教育がないまま解雇されたり,

指示や教育があったものの,

自分の仕事が改善できていたのであれば,

解雇は無効になる可能性がありますので,

早目に弁護士にご相談ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

「#KuToo」運動から労災とパワハラを考える

職場でヒールやパンプスを履くことを強制する風習を見直し,

ヒールやパンプスを履く履かないを選べるようにする

#KuToo」運動が盛り上がりをみせています。

 

 

男である私は,ヒールやパンプスを履いたことがないので

分からないのですが,ヒールやパンプスは見ているだけで,

きっと足が疲れるのだろうなと感じています。

 

 

 

男の感覚としては,つま先立ちで歩いているような気がして,

ふくらはぎの筋肉が疲労するのではないかと思います。

 

 

この「#KuToo」運動が盛り上がりをみせている中,

朝日新聞が,制服での接客がある業界の主たる企業に取材したところ,

服装規定やガイドラインなどの社内ルールでヒールの高さなどを

推奨している企業が多いようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASM6F6Q4MM6FULFA044.html

 

 

会社でヒールの高さの推奨例が定められていれば,

それに従わなければならないという同調圧力が生じて,

推奨例のヒールやパンプスを着用することが

事実上義務付けられているように感じます。

 

 

 

また,スニーカーやサンダルを履く場合には,

「異装届」を提出する必要がある会社もあるようです。

 

 

さて,本日は,ヒールやパンプスの着用を強制された場合の

労災やパワハラの問題について検討してみます。

 

 

まずは,ヒールやパンプスの着用を義務付けられている職場において,

ヒールやパンプスを着用して仕事をしていた女性労働者が

転倒してけがを負った場合に労災と認定されるかを検討してみましょう。

 

 

労災保険の適用を受けるためには,

「業務上の負傷」に該当する必要があり,

「業務上」とは,業務遂行性が認められることを前提に

業務起因性が認められることをいいます。

 

 

業務遂行性とは,労働者が労働契約に基づき

事業主の支配下にある状態をいいます。

 

 

職場でヒールやパンプスを着用して仕事をしていたときに

転倒したのであれば,労働契約に基づき会社の支配下にある状態で

けがをしたといえるので,業務遂行性が認められます。

 

 

次に,業務起因性とは,業務が原因となって

当該傷病が発生したことをいい,

業務に内在する危険が現実化したものによると

認められることともいいます。

 

 

職場においてヒールやパンプスの着用が義務付けられており,

床が滑りやすいにもかかわらず,会社が靴を履き替えさせないで,

女性労働者が転倒したのであれば,

業務に内在する危険が現実化したといえ,

業務起因性が認められます。

 

 

 

このように,ヒールやパンプスの着用が義務付けられている職場で,

ヒールやパンプスを着用して働いていた女性労働者が

転倒してけがをした場合には,労災と認められる可能性が高いと思います。

 

 

次に,ヒールやパンプスの着用を義務付けられて仕事をしていたところ,

外反母趾となった場合に,労災と認定されるかを検討してみましょう。

 

 

外反母趾になると,足の親指の先が人差し指のほうにくの字に曲がり,

付け根の関節の内側の突き出したところが痛くなります。

 

 

ハイヒールを履いていると外反母趾になりやすいようです。

 

 

http://www.yoshino-seikei.jp/hallux.html

 

 

外反母趾の原因の一つにハイヒールの着用があるようですが,

他にも先天的な足の形状などの原因があったり,

仕事以外のプライベートな時間においても

ハイヒールを頻繁に着用していたのであれば,

業務起因性が否定される可能性があります。

 

 

他方,仕事でのみハイヒールを着用していて,

他に先天的な足の形状に問題がないなどの場合には,

業務起因性が認められる可能性があります。

 

 

外反母趾の場合に労災を申請する場合には,

慎重に検討する必要があります。

 

 

最後に,健康上の理由などでヒールやパンプスを着用するのを

嫌がっている女性労働者に対して,

ヒールやパンプスの着用を義務付けることは

パワハラに該当するかについて検討してみましょう。

 

 

先日,法改正によって,パワハラが次のように定義付けられました。

 

 

職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって,

業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

その雇用する労働者の就業環境が害されること

 

 

上司が,健康上の理由などでヒールやパンプスを着用するのを

嫌がっている女性労働者に対して,

ヒールやパンプスの着用を義務付けることは,

業務上必要かつ相当な範囲を超えた指導となり,

当該女性労働者の就業環境を害することになりますので,

パワハラに該当すると考えられます。

 

 

このように,ヒールやパンプスの着用を義務付けることは,

労災やパワハラの問題につながる可能性があります。

 

 

ヒールやパンプスについては,履きたい人は履けばいい,

履きたくない人は履かなくていい

というようになればいいのではないかと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

専門業務型裁量労働制におけるプロデューサーやディレクターの仕事とは?

いきものがかりが所属する芸能事務所キューブにおいて,

裁量労働制が適用されていたのですが,

業務遂行に裁量が認められておらず,

裁量労働制は無効であるとして,

渋谷労働基準監督署が是正勧告をしました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASM2G5QBMM2GULFA021.html

 

 

マスコミの報道によりますと,20代男性労働者は,

音楽アーティストのアシスタントマネージャーとして,

ライブやラジオ収録に同行し,

打ち合わせの同席やSNSでの情報発信,

衣装の用意や買い出しなどの補助業務をしていたものの,

アーティストの活動方針やスケジュールは上司が決定し,

集合や解散の時間,業務の進め方も上司の指示に従っていたようです。

 

 

芸能事務所は,この20代男性労働者が

専門業務型裁量労働制の「プロデューサー」,「ディレクター」

の対象業務に従事しているとして,裁量労働制を適用していました。

 

 

 

また,6月16日のブログで紹介しましたが,

スポーツ動画配信サービス「DAZN」を運営する

Perform Investment Japanが,

動画編集担当をしていた従業員に対して,

専門業務型裁量労働制を違法に適用したとして,

三田労働基準監督署から是正勧告を受けました。

 

 

https://mainichi.jp/articles/20190604/k00/00m/040/225000c

 

 

おそらく,動画編集の仕事が,

「プロデューサー」や「ディレクター」に該当するとして,

専門業務型裁量労働制が違法に適用されていたのだと思います。

 

 

本日は,専門業務型裁量労働制における

プロデューサーやディレクターの業務

について説明したいと思います。

 

 

専門業務型裁量労働制とは,

労働基準法38条の3に基づく制度であり,

業務の性質上,業務遂行の方法,時間配分等を大幅に

労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として,

法令等により定められた19業務の中から,

対象となる業務を労使協定で定めて,

労働者を実際にその業務に就かせた場合,

労使協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。

 

 

この専門業務型裁量労働制が適用されると,

労使協定でみなし時間が8時間に設定されていれば,

実際に1日11時間労働したとしても,

8時間だけ労働したものとみなされて,

8時間を超える3時間分の残業代を

請求することができなくなるのです。

 

 

専門業務型裁量労働制が適用される業務は,

労働基準法施行規則24条の2の2第2項に記載されており,

その5号に「放送番組,映画等の制作の事業における

プロデューサー又はディレクターの業務

が対象業務として記載されています。

 

 

 

この条文だけでは,どのような業務が対象となるか分からないので,

行政解釈を見てみると,次のように記載されています。

 

 

「『放送番組,映画等の制作』には,

ビデオ,レコード,音楽テープ等の制作及び

演劇,コンサート,ショー等の興行等が含まれるものであること」

 

 

「『プロデューサーの業務』とは,

制作全般について責任を持ち,

企画の決定,対外折衝,スタッフの選定,

予算の管理等を統括して行うことをいうものであること」

 

 

「『ディレクターの業務』とは,

スタッフを統率し,指揮し,

現場の制作作業の統括を行うことをいうものであること」

 

 

この行政解釈を読むと,テレビ局の放送番組や映画会社の映画の

制作の仕事が対象になることは分かるのですが,

プロデューサーやディレクターが抽象的に記載されているため,

どのような仕事が対象になるのかわかりにくいです。

 

 

 

 

私は,プロデューサーと言われて思い浮かべるのは,

小室哲哉氏や秋元康氏で,当然,

このクラスの方々が会社に勤務していたら,

専門業務型裁量労働制が適用されても納得できるのですが,

他のプロデューサーが専門業務型裁量労働制の対象になるか,

と言われると正直よくわからないです。

 

 

よくわからないということは,制度を悪用されやすいわけです。

 

 

実際に,芸能事務所キューブやDAZNの運営会社でも,

仕事内容は,若手社員が上司から指示されて,

よくやるような雑多な仕事だったにもかかわらず,

プロデューサーやディレクターと称して,

専門業務型裁量労働制を違法に適用していたのだと思います。

 

 

労働者も,会社から「君には専門業務型裁量労働制が適用されるので,

残業代はでないんだよ」と説明されても,

「ふーん,そうなんだ」と言って,

素直に受け入れている可能性があります。

 

 

そもそも,専門業務型裁量労働制は,

適用対象となる労働者に業務の遂行方法について

裁量が認められていなければ,適用できないのですが,

会社が残業代を支払いたくないために,

形式的にプロデューサーやディレクターと称して,

裁量のない仕事をさせている実態がありそうです。

 

 

もし,プロデューサーやディレクターであるとして,

専門業務型裁量労働制が適用されていた場合,

自分の仕事は,本当に裁量があるのかを見直してみて,

残業代を請求できないか検討してみるのもいいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

残業証拠レコーダーで労働時間を認定した事例~派遣型風俗店の店長の未払残業代請求事件~

6月16日のブログで紹介しましたが,

武田薬品工業が残業代の未払いなどで,

労働基準監督署から是正勧告を受け,

健康経営優良法人の認定を自主返納しました。

 

 

https://mainichi.jp/articles/20190608/ddm/041/020/141000c

 

 

このように,武田薬品工業のような大企業であっても,

残業代が労働基準法に従って支払われていないという実態があります。

 

 

地方の中小企業ですと,なおさら,

残業代が未払いなのだと思います。

 

 

とはいえ,労働者は,在職中に,

会社に対して,未払残業代を請求しようとは思いません。

 

 

 

 

なぜならば,在職中に,会社に対して,

本気で未払残業代を請求すると,

会社にケンカをうることになるので,

会社内で居場所がなくなったり,

のけものにされるリスクがあるので,

残業代を請求することは正当な権利行使ではあるものの,

未払残業代を請求しないことがほとんどだからです。

 

 

そのため,労働者が未払残業代を請求するのは,

会社を辞めるときがほとんどです。

 

 

会社を辞めるとき,会社がタイムカードで

労働時間を管理してくれていれば,

代理人の弁護士が会社に対して,

タイムカードの開示を求めれば,会社は,

タイムカードを開示してくれることが多く,

タイムカードをもとに労働時間を証明できます。

 

 

しかし,タイムカードがなく,

ほかに労働時間を証明できる証拠がない場合には,

裁判では労働時間を労働者が証明しなければならないところ,

この証明ができないので,

未払残業代請求を諦めなければならないときがあります。

 

 

そうならないためにも,タイムカードがない職場では,

いざというときのために,自分で労働時間を記録しておくといいです。

 

 

そして,労働時間を記録するためのツールとして,

残業証拠レコーダーというアプリがあります。

 

 

 

 

詳細は,こちらのサイトをご覧ください。

 

 

https://zanreko.com/

 

 

本日は,残業証拠レコーダーというアプリを利用して

労働時間を立証した裁判例を発見しましたので,紹介します。

 

 

派遣型風俗店の店長の未払残業代が争われた

令和元年6月7日名古屋地裁判決です。

 

 

この事件では,お店にタイムカードがなく,

雇用主は,店長の労働時間を管理していなかったのですが,

店長は,自身のタブレット端末に,

残業証拠レコーダーのアプリをインストールして,

労働時間を記録していました。

 

 

店長は,タブレット端末を持ち出さずに,

店舗の外に出ることがあったので,

タブレット端末がお店にあったからといって,

店長がお店にいた事実までは認定できないとされました。

 

 

しかし,店舗の営業時間が9時から翌5時までとする広告があり,

店長が電話対応や女性キャストの送迎をしていたこと,

雇用主が店長が主張している各日の労働時間

について個別の積極的反論をしていないこと,

店長が未払残業代を請求する意図を持って,

残業証拠レコーダーによる労働時間の記録をしていたことから,

残業証拠レコーダーに記録された

始業時刻と終業時刻が労働時間と認定されました。

 

 

未払残業代を請求するときの証拠は,次の4つの類型に別れます。

 

 

 

 

①機械的正確性があり,成立に使用者が関与していて

業務関連性も明白な証拠(タイムカード,タコグラフ)

 

 

②成立に使用者が関与して業務関連性は明白であるが,

機械的正確性がないもの(日報など)

 

 

③機械的正確性はあるが業務関連性が明白ではない証拠

(パソコンのログイン・ログアウト時刻,

メールの送受信記録,入退館記録のセキュリティー記録など)

 

 

④機械的正確性がなく,業務関連性も明白でない証拠(メモ,手帳など)

 

 

そして,証拠の証明力の関係は次のようになると考えます。

 

 

 ①>②≒③>④

 

 

①が最も証明力が強く,その次が②と③で

(②と③のどちらが証明力が強いかはよくわからないです),

④が最も証明力が弱いです。

 

 

残業証拠レコーダーの記録は,

③の類型に該当し,機械的正確性が認められるので,

実際の仕事内容などを労働者の証言などで業務関連性を補強すれば,

労働時間と認定されるのではないかと考えます。

 

 

タイムカードがない会社に勤務している労働者は,

残業証拠レコーダーなどで,労働時間を記録しましょう。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ものくろキャンプと立花Beブログ塾レベル1第4講での気付き

昨日午前,ものくろさんこと大東信仁さんが主催する

ものくろキャンプに参加してきました。

 

 

 

昨日のものくろキャンプは,

ワードプレスでブログを書いている人が,

日々疑問に思っていることや悩みをものくろさんに質問して,

解決策を助言してもらうというものでした。

 

 

ものくろさんは,SEO(検索エンジン最適化)について,

SEOをしないでくださいと意味深な回答をされました。

 

 

小手先のSEO対策では意味がなく,

読者のベネフィットを考えたブログ記事を

書くことが重要ということです。

 

 

 

そもそも,読者は,自分の悩みを解決したくて,

検索窓に検索キーワードを入力するのですが,

自分の悩みを言語化できていないことがあります。

 

 

読者は,検索キーワードを的確に入力していなくても,

読者の困ったを解決するサイトが上位に表示されれば,

読者は,そのサイトを閲覧して,自分の悩みを解決できます。

 

 

そのため,SEO対策としては,

世界平和の心で,世の中のことに関心を持ち,

読者の困ったを解決する記事を

ブログに記載することが重要となります。

 

 

また,ものくろさんから,グーグルアナリティクス

の見方を教わりました。

 

 

グーグルアナリティクスは,1ヶ月に1回くらい,

月間のページビュー(PV,アクセス数)や,

自分のブログの中で読まれているブログ記事は何かを

調べる程度でよく,一喜一憂しないのが重要と教わりました。

 

 

私のブログは,月間3万PVを超えていたのですが,

直帰率が高かったので,直帰率を85%くらいに

できるように改善していきたいと思います。

 

 

次に,昨日午後は,立花Beブログ塾レベル1の最終講でした。

 

 

 

シャドウの投影について学びました。

 

 

シャドウの投影とは,あってはいけないと封印している自分の姿が

他人の形をして現れ,その他人であるシャドウが

自分のことを悩ませてくるということです。

 

 

例えば,パワハラにあった人が別の部署に異動しても

再びパワハラにあってしまったり,

だめな男に毎回ひっかかってしまう女性などの場合,

シャドウの投影が影響している可能性があります。

 

 

このシャドウの投影ですが,他人が自分のことを邪魔してくる

と思いがちなのですが,自分の内面を見直しなさいというサインなのです。

 

 

自分の中にある否定的な面が他人の形をして,

自分に何かを問いかけてくるのです。

 

 

シャドウが出てくるときは,自分の中に火種があり,

自分の中に何か許せないものがあるのです。

 

 

 

 

シャドウが出てきたときには,

自分の中にある否定的な自分を認めて統合していくと,

シャドウは消えていくのです。

 

 

何か問題があったとき,相手が悪いと,

相手を責めるのではなく,相手が悪いのではなく,

自分に原因があると,自分で気づいて改善すればいいのです。

 

 

このシャドウの投影という考え方は,

私が所属している倫理法人会の「万人幸福の栞」の

「人は鏡,万象はわが師」という考え方や,

以前読んだ「自分が源泉」という本の考え方

と同じであると気付きました。

 

 

全ての結果は自分が創り出しているという立場に立てば,

相手に対するマイナスな感情は消え,

自分を改めるために思考が動き出します。

 

 

ただ,相手からマイナスなことをされたときに,

自分に原因があると受け止めるのには,

訓練が必要であると考えます。

 

 

そこで,私は,自分以外の人からマイナスなことをされたときには,

これはシャドウの投影であると自分に言い聞かせて,

自分の内面を見つめ直す機会であると前向きに捉えていきたいです。

 

 

心理学について学ぶことは,

人間関係を円滑にしていくために

重要なことであると強く感じました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

最近の違法残業のケースと未払残業代などの労働債権の消滅時効の延長

報道によりますと,未払残業代などの労働債権の消滅時効が

2年から延長される方向性になったようです。

 

https://www.asahi.com/articles/DA3S14055128.html

 

 

本日は,最近の違法残業のケースを紹介した上で,

未払残業代などの労働債権の消滅時効の延長について説明します。

 

 

まず,私が最近把握した違法残業のケースは次のとおりです。

 

 

 

 

1 サザンオールスターズが所属する

大手芸能事務所アミューズについて,

36協定を届け出ずに,従業員に残業させたり,

1ヶ月に1日も休まずに働かせた従業員がいたとして,

渋谷労基署が是正勧告しました。

 

 

2 吉本興業と子会社について,

過労死ラインである1ヶ月100時間

を超える残業をした従業員がいたり,

休日勤務の割増賃金が十分に支払われていなかったとして,

新宿労基署が是正勧告しました。

 

 

3 LDH JAPANという会社について,

EXILEメンバーのマネージャーを中心とする

複数の従業員の労働時間が1ヶ月400~500時間に及び,

マネージャーの残業時間が36協定で定められた

上限を超えていたとして,品川労基署が是正勧告しました。

 

 

4 三重交通が路線バスの運転手に,

休日出勤の割増賃金を支払っていなかったとして,

四日市労基署から是正勧告を受け,

総額3億円の割増賃金を支払ったようです。

 

 

5 サマーウォーズなどの作品で知られる

アニメ制作会社マッドハウスが,

労使協定で定められた上限を超える違法な時間外労働と,

割増賃金の未払いがあったとして,

新宿労基署から是正勧告を受けたようです。

 

 

6 スポーツ動画配信サービス「DAZN」を運営する

Perform Investment Japanが,

動画編集担当をしていた従業員に対して,

専門業務型裁量労働制と管理監督者を違法に適用したとして,

三田労基署から是正勧告を受けました。

 

 

7 武田薬品工業は,36協定の上限を超える長時間労働,

時間外労働の申告漏れ,残業代の未払いなどで

労基署から複数回,是正勧告を受けて,

健康経営優良法人の認定を自主返納したようです。

 

 

芸能事務所やアニメ制作会社,動画配信の会社など,

クリエイティブな仕事をする業界での違法残業が多い印象を持ちました。

 

 

 

仕事内容を想像すると,確かに残業が多そうです。

 

 

また,三重交通や武田薬品工業などの大企業でも

違法残業で労基署から是正勧告を受けています。

 

 

大企業であっても,労働基準法を遵守できていない

実態が明らかとなりました。

 

 

このように,違法残業により,残業代の未払いがあれば,

労働者は,未払残業代を請求できるのですが,

現時点では,労働基準法115条により,

未払残業代の消滅時効が2年になっているので,

例えば,会社を退職してから,未払残業代を請求しようとすると,

退職した月から2年前までの未払残業代しか請求できません。

 

 

ところが,2020年4月に改正民法が施行されるのですが,

その改正民法において,金銭の請求権の消滅時効が5年に統一されました。

 

 

本来,労働基準法は,労働者を保護するため法律なのに,

未払残業代などの労働債権が他の金銭の請求権の消滅時効より短いのでは,

労働者保護にならないということから,

未払残業代などの労働債権の消滅時効を

延長すべきという議論がされてきました。

 

 

 

そして,6月13日に,残業代などの労働債権の消滅時効が

2年から延長される方向に決まりました。

 

 

未払残業代などの労働債権の消滅時効が延長されれば,

労働者が請求できる未払残業代の金額が大きくなり,

労働者にとって朗報です。

 

 

消滅時効の期間が2年からどれだけ延長されるのかは,

今後,労働政策審議会で議論がされていきますが,

改正民法で消滅時効が5年に統一されるのですから,当然,

未払残業代などの労働債権の消滅時効も5年に延長されるべきと考えます。

 

 

今後の議論に注目していきたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。