労働時間把握義務と医師の面接指導
先日,労働安全衛生法が改正されて,
労働時間把握義務が法律で明記されたことについて記載しました。
本日は,具体的な労働時間の把握の方法について,記載します。
会社は,「タイムカードによる記録,
パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の
客観的な方法その他の方法」により,
労働時間を把握しなければなりません。
原則として,タイムカードの打刻時間,
パソコンの使用時間(ログインからログオフまでの時間)などの
機械的に記録されるもので労働時間を把握しなければなりません。
これ以外の労働時間の把握方法として,
「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」に,
「その他の方法」として,
労働者の自己申告制による方法があげられています。
ここで,「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」とは,
通達では,労働者が事業場外において行う業務に直行または直帰する場合
が例示としてあげられています。
しかし,通信機器が発達した現代において,
パソコンやスマートフォンを用いた業務遂行がほぼ不可欠であり,
客観的な方法により労働時間が把握できないことは考えにくく,
自己申告制が認められるのは極めて例外的な場合に限られると考えられます。
通達では,直行直帰が例示であげられていますが,
事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり,
客観的な方法で労働時間を把握できる場合には,
直行直帰であることのみを理由として,
自己申告制にすることはできません。
また,自己申告制の場合であっても,会社は,
自己申告の労働時間と実際の労働時間が合致しているかについて,
必要に応じて実態調査をすることなどの措置を講ずる必要があります。
以上の労働時間把握義務を会社が実施したとして,
休憩時間を除き,1週間あたり40時間を超えて
労働させた場合におけるその超えた時間が
1ヶ月80時間を超え,かつ,疲労の蓄積が認められる労働者に対して,
会社は,労働者の申出があれば,
医師による面接指導を行わなければなりません
(労働安全衛生法66条の8)。
会社は,1週間あたり40時間を超えた時間の算定を,
毎月1回以上,一定の期日を定めて行わなければならず,
時間外労働が1ヶ月80時間を超えた労働者に対し,
その超えた時間の情報を通知しなければならないのです。
労働者に時間外労働に関する情報を提供して,
労働者の医師との面接指導の申出がされやすくなるようにしたのです。
会社が,医師による面接指導を怠ったり,
労働者に対して,時間外労働に関する情報提供を行わず,
労働者に面接指導を受ける機会を失わせたりした場合には,
会社には,安全配慮義務違反が認められる可能性が高くなります。
このように,労働時間把握義務が法律で明記されましたので,
労働者としては,会社が労働時間を把握していないなら,
労働時間を把握すべきと主張すべきですし,
長時間労働が継続して疲労が蓄積したならば,
医師の面接指導を受けるようにしてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。