パワハラ事件では証拠の確保が重要です

労働施策総合推進法の改正によって,

法律にパワハラの定義が規定されたり,

会社に対するパワハラ防止措置義務が明記されました。

 

 

また,ILOにおいて,仕事の世界における

暴力やハラスメントを撤廃するための条約が採択されました。

 

 

このように,パワハラを防止していこうという

機運がいまだかつてないくらいに高まっています。

 

 

 

しかし,実際にパワハラで裁判をするには,

まだまだハードルが高いのが現状です。

 

 

パワハラの裁判のハードルが高いのには3つの理由があります。

 

 

1つ目は,パワハラを立証できるのかというハードルです。

 

 

問題となるパワハラのほとんどが,

言葉による暴力なのですが,言葉の暴力は,

録音をしておかないと,言った言わないの問題となり,

パワハラの被害者が,言葉の暴力があったことを証明できないと,

裁判では負けてしまいます。

 

 

2つ目は,違法なパワハラといえるのかというハードルです。

 

 

パワハラの定義は,①優越的な関係に基づく,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により,

③労働者の就業環境を害すること,とされています。

 

 

このうち,適法な業務指導か違法なパワハラかについて,

②の要件にあてはまるかが問題となります。

 

 

3つ目は,慰謝料の金額というハードルです。

 

 

パワハラの慰謝料は,そこまで高くはなく,

費用対効果を考えると,パワハラで損害賠償請求をすることに

二の足を踏んでしまいます。

 

 

 

実際に,労働者のパワハラの損害賠償請求が否定された

裁判例を見てみましょう。

 

 

コンチネンタル・オートモーティブ事件の

東京高裁平成29年11月15日判決と

横浜地裁平成29年6月6日判決です

(労働判例1196号63頁)。

 

 

この事件では,上司の原告労働者に対する言動が

違法なパワハラにあたるかが問題となりました。

 

 

原告労働者は,上司から

「人事を巻き込んで何かと思えば,プロジェクトの話か。

プロジェクトの失敗で責任を取らせることはないが,

パフォーマンスが出ていないので,それで首にすることはあり得る」,

「お前,今すぐちゃんとやるかどうか決めろ」,

「お前の期待値は20パーセントだ」

と言われたと主張しました。

 

 

これに対して,上司は,原告労働者に対して,

プロジェクトがうまくいかなかっただけで解雇にならないと説明し,

原告労働者のパフォーマンスが悪く,

期待値の20パーセント程度しか発揮できていない

として注意,指導したと主張しました。

 

 

裁判所は,上司の主張を採用し,この上司の言動は,

業務上の注意指導の範囲を逸脱していないとして,

違法なパワハラではないと判断しました。

 

 

パワハラの定義の②の要件を満たさないと判断されたわけです。

 

 

パワハラの損害賠償請求の裁判では,

損害賠償請求をする人に,パワハラの事実が存在したことを

証明する責任があるので,裁判所は,

原告労働者と上司の主張を対比して,

概ね合致しているところで,

事実を認定したのだと考えられます。

 

 

パワハラの被害者の主張と,加害者の主張が

真っ向から対立する場合,録音などの証拠がないと,

パワハラ被害者の主張が認められるのは困難だと言えます。

 

 

 

パワハラ事件では,やはり,

パワハラの言動を録音するなどして,

証拠化しておくことが重要なのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

妻からブログをやめるように言われてしまい・・・~365日ブログセミナー再受講~

最近,妻から,毎日ブログを更新することを

やめるように迫られています。

 

 

妻の言い分は,ただでさえ弁護士の仕事が忙しいのに,

ブログを書いていると,その分,家族のための時間が

減らされるのが許せない,というものです。

 

 

 

妻の言い分もよくわかります。

 

 

弁護士の仕事は忙しく,そのような中で,

毎日ブログを更新していくことは本当にしんどいことで,

何度も挫折しかけてきました。

 

 

また,妻から,ブログを書いていないで,

家族の時間をつくりなさいと厳しく言われる中,

なんとか時間をやりくりして,今日まで毎日更新してきました。

 

 

ただ,妻からここまで反対されると,

さすがにへこんでしまいました。

 

 

 

ここまで,がんばってきて,更新をとめるのは,あまりにもおしい。

 

 

このように,最近毎日更新が危機的状況になってきたことから,

なんとかこの状況を打開しなければと思い,

私のブログの師匠である板坂裕治郎師匠の

ブログセミナーに参加してきました。

 

 

私が365日ブログを更新することになったあのセミナーです。

 

 

今回は,福井で受講しました。

 

 

1年前の5月に,一度受講しているのですが,

365日継続した後に改めて受講すると,

新しい発見がありました。

 

(板坂裕治郎師匠)

 

なぜ,毎日ブログを更新する必要があるのか。

 

 

まずは,頭の中のアンテナをチューンナップするためです。

 

 

毎日,読者のためになる面白いブログ記事を書こうと考えていると,

頭の中のアンテナの感度がよくなり,

自分にとって必要な情報が飛び込んでくるようになります。

 

 

次に,自分にとって必要な情報が飛び込んできても,

頭の中の容量が満ぱんになっていたら,情報は,

すぐに頭の中から抜けていってしまいます。

 

 

こうならないようにするために,

頭の中の容量を空けておく必要があります。

 

 

頭の中の容量を空けるにはどうすればいいかといいますと,

アウトプットをすればいいのです。

 

 

ブログを書くというアウトプットをすることで,

頭の中の容量が空き,その空いたスペースに,

自分にとって必要な情報が入ってくるのです。

 

 

すなわち,高度なアウトプットすることで,

上質なインプットができるのです。

 

 

これを毎日繰り返すので,圧倒的に自己成長でき,

専門家として飛躍できるのです。

 

 

そして,毎日ブログを更新することで,自尊心が高まります。

 

 

 

世の中を見渡しても,

毎日ブログを更新している人は,

ほとんどいません。

 

 

日本人は,必要以上に自分のことを低く評価してしまう

傾向にあるのですが,毎日ブログを書くことで,

普通の人がしていないことをしているので,

自分はすごいのだと自分で自分を認められるようになります。

 

 

毎日,自分で決めたやるべきことを,

たんたんとこなしていくと,自尊心が高まり,

その姿を見た周囲の人達も,

あの人はすごいと評価してくれるので,

プラスの循環がうまれます。

 

 

だから,ブログは毎日書く必要があるのです。

 

 

読者に役立つブログを書いていると,

やがてファンができて,

頭を下げずに商売をすることができます。

 

 

これは,やった人にしかわからないことなので,

言葉で説明するのは難しく,

妻にうまく説明できませんでした。

 

 

板坂裕治郎師匠は,セミナーの最後に,

次のようにおっしゃりました。

 

 

儲けるということは,そんなに簡単なことじゃない!

人ができないことをやるから秀でてきて,やがてプロになる!

毎日コツコツとやってきたという歴史(時間)は金では買えない!

そこにはどんな大金をつぎ込んでも負けない歴史がある!

 

 

自分の人生を変えるには,

人ができていないことを,

毎日コツコツと継続していくことしかないのです。

 

 

こんなに大変なことを趣味では続けられません。

 

 

仕事として取り組んでいるからこそ,毎日ブログが書けるのです。

 

 

なんとか,妻に,このことを理解してもらいたいのですが・・・。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

能力を磨く4~組織的能力~

本日は,昨日に引き続き,田坂広志先生の最新刊

能力を磨く~AI時代に活躍する人材「3つの能力」~

という本のアウトプットの続きを行います。

 

 

 

AI時代に求められる3つの能力のうちの1つである

組織的能力」について,アウトプットします。

 

 

この組織的能力とは,一つの組織やチームを,

リーダーとして率い,マネジメントしていく能力であり,

マネジメント力とリーダーシップ力という二つの力で構成されています。

 

 

まず,マネジメント力ですが,これは,

心のマネジメントのことであり,AI社会においては,

マネージャーやリーダーにとって最も高度で重要な仕事になります。

 

 

部下やメンバーの視点に立ち,その心が,自然に,

互いの共感力を高めたり,仕事に働き甲斐を感じることが

できるように支援するマネジメントのことです。

 

 

 

心のマネジメントは3つに別れます。

 

 

1つ目は,共感協働のマネジメントであり,

部下やメンバーが,自発性や創造力,

協調性や共感力を遺憾なく発揮し,

互いに協力し合って優れた仕事を

成し遂げられるようにすることです。

 

 

2つ目は,働き甲斐のマネジメントであり,

部下やメンバーが,仕事に意味と意義を見出し,

働き甲斐や生き甲斐を感じられるようにすることです。

 

 

3つ目は,成長支援のマネジメントであり,

部下やメンバーの不満や不安,迷いや悩みに真摯に耳を傾け,

その不満や不安,迷いや悩みを契機として,

部下やメンバーが人間的に成長していくことを支えることです。

 

 

3つ目の成長支援のマネジメントでは,

カウンセリングやコーチングの技法が必要になり,

その中でも,「聞き届ける」ことが重要となります。

 

 

聞き届けるとは,単に表面的に相手の話しを「聞く」のではなく,

相手が語る話しを,深い共感の心を持って,

自身の心の奥底まで届くような思いで「聴く」という技法です。

 

 

具体的には,部下やメンバーの主張や言い分が,

どのようなものであろうとも,一度,

その主張や言い分を「その人にとっての真実

という視点から受け止め,そうした思いに苦しんでいる

部下やメンバーの姿に,一人の人間として「共感」することです。

 

 

人は,「自分にとっての真実」で判断して,

相手を裁きながら聞いてしまいがちです。

 

 

そうではなく,相手である「その人にとっての真実」という視点で,

まずは話しを聞き届けることが重要なのです。

 

 

次に,リーダーシップについては,次の3つの力が求められます。

 

 

 

 

1つ目は,信念を持って魅力的なビジョンと志を語る力です。

 

 

メンバーの力を合わせて,いかなる仕事を成し遂げ,

いかなる変革をもたらすかを,魅力的に語る力と,

その仕事と変革を通じて,世の中にいかなる貢献をするかを,

信念を持って語る力のことです。

 

 

2つ目は,誰よりも強く成長への意欲を持つ力です。

 

 

リーダー自身が,誰よりも強く成長への意欲を抱き,

日々の仕事を通じて成長していけば,そこには,

自ずと成長の場が生まれ,周りのメンバーも,

自然に,成長への歩みを始めていくのです。

 

 

3つ目は,メンバーの持つ可能性を深く信じる力です。

 

 

一人一人のメンバーが,いかなる成長の壁に突き当たっても,

そのメンバーの人間としての可能性を信じ,彼もしくは彼女が,

必ず,その壁を越えて成長していけると

信じる力を持っていなければならないのです。

 

 

確かに,これら3つのリーダーシップを発揮できれば,

AI時代に素晴らしい活躍ができると思います。

 

 

最後に,田坂先生は,AI革命について,

その本質は「人間が,機械やコンピュータでは代替できない,

より高度な仕事に取り組めるようになる革命であり,

人間の能力をさらに大きく開花させる革命

に他ならないと締めくくっています。

 

 

職業的能力,対人的能力,組織的能力の3つの能力を磨いていけば,

AI社会においても,より高度な仕事に取り組め,

自分の能力をさらに開花させて,成長していけるのだと思います。

 

 

来るべきAI社会に備えるための必読の書だと思いましたので,

4回にわたって紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

能力を磨く3~対人的能力~

本日は,昨日に引き続き,田坂広志先生の最新刊

能力を磨く~AI時代に活躍する人材「3つの能力」~

という本のアウトプットの続きを行います。

 

 

 

AI時代に求められる3つの能力のうちの1つである

対人的能力」について,アウトプットします。

 

 

対人的能力とは,顧客の気持ちを細やかに感じ取り,

顧客に対して温かいもてなしの心でサービスを

提供できるホスピタリティ力や,

相手の考えや気持ちを深く理解する力と

相手に自分の考えや気持ちを円滑に伝える

コミュニケーション力のことです。

 

 

このコミュニケーション力の最も重要な部分は,

ノンバーバル(非言語的)コミュニケーションなのです。

 

 

私達のコミュニケーションの80%は,言葉によるものではなく,

眼差しや目つき,表情や面構え,仕草や身振り,姿勢やポーズなど,

言葉以外のノンバーバルなものなのです。

 

 

一流のプロフェッショナルは,

このノンバーバルコミュニケーション力が優れているところ,

この能力を身につけるためには,相手の表情の奥を推察する力や,

相手の気持ちを想像する力が求められます。

 

 

そして,この人間の心に対する推察力や想像力は,

日々の仕事を通じて,意識的に,真剣で濃密な

対人関係の経験を積むことによってしか身につかない能力であり,

AIが代替できない能力なのです。

 

 

AI時代には,顧客の心を,その表情や仕草などから

敏感に感じ取ったり,心のこもった笑顔で,

顧客に安心感と信頼感を与えることのできる,

言葉を使わないコミュニケーション力が求められるのです。

 

 

 

言葉を使わないコミュニケーション力を磨くためには,

会議や交渉の後に,参加者や顧客の表情,眼差し,仕草,姿勢から

無言のメッセージを推察し,自分の表情,眼差し,仕草,姿勢から,

どのような無言のメッセージが伝わったのかを想像する必要があります。

 

 

田坂先生は,ノンバーバルコミュニケーション力の他に

大切なことがあるとおっしゃっています。

 

 

それは,共感力です。

 

 

共感とは,人間の持つ,喜びや悲しみ,楽しさや苦しさ,

安心や不安,友情や孤独,愛情や増悪,といった

生身の感情を共有することであり,

感情のないAIにはないものなのです。

 

 

 

共感力を身につけるためには,相手に深く共感する必要があります。

 

 

相手に深く共感するとは,相手の姿が,

自分の姿のように思えることです。

 

 

マネージャーやリーダーが部下を預かるとき,

「かつて自分も,こんな壁に突き当たって苦しんだ」という感覚が

「相手の姿が自分の姿のように思える」ということです。

 

 

そして,田坂先生は,この共感力を身につけるためには,

苦労の経験が必要であるとおっしゃっています。

 

 

「その相手と同じ経験を持っていなくとも,自分自身にも,

苦しい思いをしたり,辛い思いをした色々な苦労の経験があるならば,

多少なりとも,その相手の気持ちを推察し,

想像することができるだろう。」

 

 

このような体験的共感力を身につけるために,

苦労の経験が必要になるので,私達は,

「人生や仕事において与えられる色々な苦労を,

厭うことなく,受け入れ,その苦労から学ぶべきことを,

深く学び,その体験を積み重ねていくこと」

という心構えを大切にすべきなのです。

 

 

そうであるなら,私達は,次のような人生観を持つべきなのです。

 

 

人生や仕事において我々に与えられる苦労や困難は,

自分という人間を成長させるために与えられたものであり,

その苦労や困難は,すべて,深い意味がある。

それゆえ,その意味を考えて歩むとき,

我々は,大きく成長できる。

 

 

素晴らしい人生観だと思います。

 

 

まさに,苦難は幸福への門。

 

 

苦労や困難は,私達を成長させてくれるので,

この心構えを本当の意味で身につけることができれば,

逆境を恐れる必要はなくなると思いました。

 

 

長くなりましたので,続きは明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

能力を磨く2~職業的能力~

本日は,昨日に引き続き,田坂広志先生の最新刊

能力を磨く~AI時代に活躍する人材「3つの能力」~

という本のアウトプットの続きを行います。

 

 

 

AI時代に求められる3つの能力のうちの1つである

職業的能力」について,アウトプットします。

 

 

田坂先生は,職業的能力の本質を

経験や体験を通じてしか掴めない「体験的智恵」であり,

この能力は「文献的知識」とは異なり,

AIによって容易に置き換えられない能力である。

とおっしゃっています。

 

 

この職業的能力とは,「技術」と「心得」という

2つの能力が組み合わせれたものです。

 

 

この職業的能力を身につけていくためには,まずは,

スキルやテクニックといった「技術」を学ぶことから始めて,

それを高度なレベルに高めていくためには,

マインドやハートといった「心得」を

併せて身につけていく必要があります。

 

 

では,職業的能力をどのようにして身につけていくのでしょうか

 

 

この職業的能力を身につけていくためには,

書物から知識を学ぶのではなく,

経験から智恵を掴むことが必要になります。

 

 

すなわち,知識は言葉で表せるのですが,

智恵は言葉では表わせないものであり,

経験や体験を通じてしか掴めないのです。

 

 

 

 

では,経験から智恵を掴むには,

具体的にはどうすればいいのでしょうか。

 

 

田坂先生は,2つの方法を提唱されています。

 

 

それが,「反省」と「私淑」という方法です。

 

 

「反省」とは,後悔や懺悔とは異なり,

仕事の「経験」を,そのまま放置せず,

心の中で,その経験を思い起こし,「追体験」し,

そこでいかなる「智恵」を掴んだか,

いかなる「技術」や「心得」を身につけたかを振り返ることです。

 

 

具体的には,技術の振り返りから始めて,

次に心得の振り返りへと深めていくことを,

会議や交渉の直後にその場に同席した先輩や同僚,部下と

振り返りを行うという方法です。

 

 

もう一つは,1日の仕事を終えた夜に,

1人になったときに,その日に経験した様々な仕事の場面を,

心の中で追体験し,その場面での自分の技術や心得を振り返り,

その反省を言葉で記していくという方法です。

 

 

 

 

私は,ちょうど今,司法修習生の指導担当をしているので,

法律相談や接見の後に,司法修習生と振り返りを行っていこうと思います。

 

 

次に,「私淑」とは,優れた能力を持っている人物を,

心の中で「師匠」と思い定め,その人の仕事をする姿から,

言葉を超えて,直接,その技術や心得を学ぶことです。

 

 

仕事場にいる優秀な先輩の仕事ぶりをみて,技術や心得をぬすみ,

自分のものにしてしまうということなのだと思います。

 

 

まさに,司法修習生から見た,指導担当弁護士の関係は,

まさに私淑なのだと思います。

 

 

そして,反省や私淑によって,智恵の体得法を掴んだのであれば,

自分が預かる部下やメンバーに,

その体験的智恵や智恵の体得法を伝えるという,

智恵の伝承法を身につけていく必要があります。

 

 

智恵の伝承法とは,プロフェッショナルの技術や心得

を身につけているのであれば,仕事を通じて,

それを部下やメンバーの前で披露することです。

 

 

そうすることで,部下やメンバーが自己成長を遂げていくのです。

 

 

AI時代には,技術や心得がAIに置換えられて陳腐化しても,

新たな分野でのプロフェッショナルの技術と心得を

速やかに身につけることができれば,AIに淘汰されず,

AI時代に活躍できる人材になれるのです。

 

 

私は,今指導している司法修習生に対して,

弁護士としての技術や心得を披露して,

伝承していきたいと思います。

 

 

日々の仕事でどのようなことを掴むことが重要となるかについて,

わかりやすく解説されていますので,ぜひ一読をおすすめします。

 

 

長くなりましたので,続きは明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

能力を磨く~AI時代に活躍する人材「3つの能力」~

田坂広志先生の最新刊

能力を磨く~AI時代に活躍する人材「3つの能力」~

という本を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

2年ほど前からだと思いますが,

AIによって仕事がなくなる職種の特集

がよくされるようになりました。

 

 

https://diamond.jp/articles/-/76895?page=2

 

 

AIが進化すれば,人間以上の能力を発揮するので,

AIに仕事を任せた方が効率的であり,

人間の仕事を代替していくのは,目に見えています。

 

 

ご多分に漏れず,私の仕事である弁護士業務といった,

「サムライ業」もAIが代替していく可能性が大いにあります。

 

 

サムライ業の多くは,専門的知識と論理的思考で

仕事をしているのですが,専門的知識と論理的思考は,

AIが最も得意とする能力であり,AIが進化していけば,

サムライ業は,AIに淘汰されてしまうのでしょう。

 

 

例えば,弁護士は,法律相談をする際に,

クライアントの話す会話の中から,

法律的に意味のある事実を取り出し,

それを過去の裁判例や法律にあてはめて,

問題解決のための見通しをクライアントに説明します。

 

 

 

将来,AI弁護士という機械ができた場合,クライアントは,

AI弁護士が尋ねてくる事実を入力すると,AI弁護士は,

膨大な過去の裁判例やあらゆる法律を瞬時に検討した上,

あなたの場合,このような結果になる可能性が何%くらいですよと

アドバイスできるようになるかもしれません。

 

 

とくに,慰謝料の金額や,犯罪をしたときに

どれくらいの刑が科されるのかといったことについては,

過去のデータベースがあれば,AI弁護士は,瞬時に,

見通しを回答できるようになるでしょう。

 

 

そうなれば,事件の見通しは,人間の弁護士よりも,

AI弁護士の方が断然,正確になると思います。

 

 

このままいくと,弁護士業務はAIに代替され,

弁護士が大量に失業する時代が到来するかもしれません。

 

 

このような時代に淘汰される人材の共通の特徴は,

持つべきときに,持つべき危機感を,持たない」ことであると,

田坂先生は,おっしゃっています。

 

 

「こうした変化の中で淘汰される企業や人材は,

そもそも,その変化を脅威と感じておらず,

持つべき危機感を持たない企業や人材である。

そして,その危機を乗り越えるための

必要な対策を怠ってきた企業や人材である。」

 

 

逆にいえば,持つべき危機を持った上で,対策をとれば,

AIに淘汰されない可能性があるというわけです。

 

 

では,どのような対策をとればいいのか。

 

 

不思議なことに,そのことは明確に議論されていません。

 

 

田坂先生は,「誰もが,AI失業を語る。

しかし,誰も,その対処法を教えてくれない。

とおっしゃっています。

 

 

 

確かに,そのとおりで,AI失業については,

やたら目に飛び込んできますが,

ではどうすればいいかについては,

ほとんど議論がされていないのが現状です。

 

 

このような議論状況の中,田坂先生は,

高度知識社会における知的労働の現場で

仕事をするために必要とされる人間の5つの能力のうち,

3つの能力を磨く必要があると,おっしゃっています。

 

 

5つの能力とは,①基礎的能力(知的集中力と知的持続力),

②学歴的能力(論理的思考力と知識の修得力),

③職業的能力(直感的判断力と智恵の体得力),

④対人的能力(コミュニケーション力とホスピタリティ力),

⑤組織的能力(マネジメント力とリーダーシップ力)です。

 

 

このうち,AIには,無制限の集中力と持続力,

超高速の論理的思考力,膨大な記憶力と検索力,

分析力と直感力が備わっているので,

①基礎的能力と②学歴的能力では,

人間は,AIには勝てません。

 

 

しかし,③職業的能力,④対人的能力,⑤組織的能力

の3つの能力を自分で磨いていけば,AI社会で淘汰されず,

ますます活躍できる人材になれるのです。

 

 

この3つの能力については,明日以降,アウトプットしていきます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

 

労働契約法20条違反を争うときに比較対象となる正社員をどう決めるのか

2019年3月10日のブログで,

メトロコマース事件の東京高裁平成31年2月20日判決を紹介しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201903107683.html

 

 

メトロコマース事件の東京高裁判決は,

正社員と非正規雇用労働者の退職金の格差について,

不合理であり,労働契約法20条に違反すると

初めて判断した画期的な判決であります。

 

 

 

退職金の法的性格については,長年の勤務に対する

功労報奨としての性格があり,原告の契約社員らは,

10年前後の長期間にわたって勤務していたこと,

原告の契約社員らと同じ売店業務の仕事をしていた契約社員が

職種限定社員に名称変更された際に退職金制度が導入されたことから,

正社員の退職金の4分の1相当を原告ら契約社員に対して

支給していないことは,不合理と判断されたのです。

 

 

なぜ,退職金全額ではなく,4分の1としたのか,

根拠は不明ですが,退職金の格差を不合理とした点で,

労働者にとって有利です。

 

 

さて,私は,8月2日に,公益社団法人全国労働基準関係団体連合会

からの依頼を受けて,最近の労働事件の裁判例の解説をする

セミナーの講師をさせていただくことになりまして,

労働契約法20条に関する裁判例の勉強をしています。

 

 

そこで,もう一度,メトロコマース事件の東京高裁を読み直したところ,

3月10日のブログで記載していなかった重要な点がありましたので,

そのことについて,記載します。

 

 

どういうことかといいますと,正社員と非正規雇用労働者の

労働条件に格差があった場合,どの正社員と比較するのかという点です。

 

 

 

例えば,同じ仕事をしている正社員と非正規雇用労働者を比較すれば,

同じ仕事をしているのに,労働条件に格差があるのは

不合理であるといいやすくなります。

 

 

逆に,違う仕事をしている正社員と非正規雇用労働者を比較すれば,

違う仕事をしているのだから,労働条件に格差があっても,

それはしかたのないことであり,労働条件に格差があるのは

不合理ではないという判断に傾きます。

 

 

このように,非正規雇用労働者が,労働契約法20条違反を

主張する際には,どの正社員と比較するのかは大事なことだと思います。

 

 

メトロコマース事件の場合,原告ら契約社員は,

売店業務をしていたので,売店業務をしている正社員と比較すれば,

同じ仕事をしているのに,労働条件に格差があるのは不合理である

という判断に傾き,他方,売店業務以外の地下鉄の車両の運転業務や

整備業務をしている正社員と比較すれば,違う仕事をしているので,

労働条件に格差があっても不合理ではないという判断に傾きます。

 

 

メトロコマース事件の一審判決は,原告ら契約社員と正社員全体を

比較したため,原告らが主張した労働条件の格差について

不合理ではないと判断しました。

 

 

他方,メトロコマース事件の控訴審判決は,

比較対象となる正社員の範囲について,

原告らの主張している売店業務に従事している正社員としたので,

原告らが主張した労働条件の格差について,

不合理と判断しやすかったのだと考えられます。

 

 

メトロコマース事件の東京高裁判決は,

比較対象となる正社員については,原告となる

非正規雇用労働者が特定して主張すれば,裁判所は,

その主張に沿って不合理といえるかを判断するとしました

 

 

比較対象となる正社員を,原告となる非正規雇用労働者が

設定できると判断した点は,今後の労働契約法20条違反を争う裁判で,

労働者が有利に活用できると考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラ予防セミナーを開催しました

6月26日,厚生労働省は,

平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000521619.pdf

 

 

都道府県労働局や各労働基準監督署には,

労働問題に関する相談にワンストップで対応するための,

総合労働相談コーナーがあり,そこに様々な労働相談が舞い込んできます。

 

 

 

 

この総合労働相談件数のうち,会社と労働者の労働トラブルが,

民事上の個別労働紛争相談件数としてカウントされていると考えられ,

民事上の個別労働紛争相談件数266,535件のうち,

いじめ・嫌がらせの相談件数が82,797件で最も多かったのです。

 

 

平成24年度から,いじめ・嫌がらせの労働相談が

最も多い労働相談となり,その後も増加の一途をたどり,

平成30年度は,対前年比で14.9%も増加しています。

 

 

職場におけるいじめ・嫌がらせが,

未だに深刻な問題となっていることが浮き彫りとなりました。

 

 

さて,この統計が発表された同じ日,私は,

株式会社シェヘラザード様の

管理職向けスマートマネジメント研修~パワハラ上司と呼ばれないために~

というセミナーで,パワハラ予防の講義をさせていただきました。

 

 

 

 

この研修は,自分がパワハラをしてしまう

傾向があるかを診断してもらい,日々の仕事において,

パワハラをしないように自分を動機づけるというものです。

 

 

企業の管理職が,自分が部下にパワハラをしてしまわないかを,

自分で振り返ってもらう研修です。

 

 

私は,この研修の前座として,

誰もが安心して働ける職場にしていくために,

パワハラにあたる言動をしていないか意識することが

重要であるという内容の講義をさせていただきました。

 

 

パワハラは,被害者の人格を傷つけ,

仕事への意欲や自信を失わせ,心の健康を害して,

休職や退職に追い込むリスクがあります。

 

 

 

 

また,パワハラが発生している職場では,

雰囲気が悪く,労働者の仕事への意欲が低下し,

職場全体の労働生産性が低下し,退職者が増えます。

 

 

パワハラが原因で,会社が訴えられれば,

あの会社はブラック企業だという風評がながれ,

会社のイメージが傷つきます。

 

 

このように,パワハラは,労働者にとっても,

会社にとっても,多大なリスクとなっているのです。

 

 

パワハラが大きなリスクとなっていることから,

ようやく今国会で,労働施策総合推進法の改正によって,

パワハラの定義が法律に明記されて,

会社に対するパワハラ防止措置義務が規定されました。

 

 

パワハラの定義は,①職場の優越的な関係に基づく,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により,

③労働者の就業環境を害すること,とされました。

 

 

この定義では,どこまでいけば違法なパワハラになるのか

わかりにくいのですが,他人の人格を否定する言動が

違法なパワハラになると理解していただければいいと思います。

 

 

 

そして,今回の法改正で導入された,

会社のパワハラ防止措置義務としては,

パワハラに関する相談窓口を設置すること,

研修を実施することが挙げられています。

 

 

今後,会社は,パワハラを予防するために,

研修を実施していく必要があります。

 

 

私は,株式会社シェヘラザード様のパワハラの診断を受けて,

自己肯定感が高すぎるがゆえに,

横柄や傲慢な態度をとりやすい傾向があると気付かされました。

 

 

ちょうど今,司法修習生の指導をしている時期でもありますので,

自分の感情をしっかりとコントロールして,

パワハラにならないように気をつけなければならないと自覚できました。

 

 

自分を知り,パワハラと言われる言動をしていないか

自分を振り返り,パワハラを予防していくという研修ですので,

今回の法改正で求められているパワハラ予防のための研修として,

おすすめです。

 

 

https://www.sahrzad.jp/s-management/

(株式会社シェヘラザード様のパワハラ予防研修のページ)

 

 

多くの企業でパワハラ予防の研修が実施されて,

パワハラが根絶されることを願いたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

基本給の格差が不合理と認められた事件2~学校法人産業医科大学事件~

昨日のブログの続きで,基本給の格差を不合理と判断した

学校法人産業医科大学事件の福岡高裁平成30年11月29日判決

(労働判例1198号63頁)を紹介します。

 

 

臨時職員として30年以上もの長期にわたり

雇用されてきたということが,労働契約法20条の

③その他の事情にあたると判断されたので,次に,

この点を考慮して,基本給の格差が不合理となるかが検討されました。

 

 

まず,正社員には,俸給,賞与のほかに

退職手当が支給されていましたが,

臨時職員に対しては退職手当が支給されていなかったこと,

臨時職員は,人事考課制度の対象ではなく,

給与月額は毎年一律で人事院勧告に従って

引き下げや引上げが行われ,原告の基本給は,

同じ頃に採用された正社員と比較して

2分の1くらいになっていたことが考慮されました。

 

 

 

 

次に,原告と同じ頃に採用された正社員は,

当初は,原告と類似した業務に携わり,

業務に対する習熟度を上げるなどして,

採用から6年ないし10年で主任として

管理業務に携わる地位に昇格していったことが考慮されました。

 

 

以上の事情を総合考慮した上で,次のように判断されました。

 

 

30年以上の長期にわたり雇用を続け,

業務に対する習熟度を上げた原告に対し,

臨時職員であるとして人事院勧告に従った

賃金の引上げのみであって,原告と学歴が同じ

短大卒の正社員が管理業務に携わる地位である

主任に昇格する前の賃金水準すら満たさず,

現在では,同じ頃に採用された正社員との基本給の額に

約2倍の格差が生じているという労働条件の相違は,

同学歴の正社員の主任昇格前の賃金水準を下回る

3万円の限度において不合理であるとされました。

 

 

また,労働者の賃金に関する労働条件のあり方については,

基本的には,団体交渉等の労使自治に

委ねられるべき部分が大きいのですが,

臨時職員については,正社員への登用や

採用が中止されてからの期間の経過の中で退職する人がいたりして,

その数が少数になっていたことが認められ,

必ずしも,団体交渉等による労使自治により,

労働条件の改善が図られていたことができていなかったことも,

この判断の背景にはありそうです。

 

 

結果として,基本給の格差が不合理であり,

労働契約法20条違反となり,

合計113万4000円の損害賠償請求が認められました。

 

 

この事件では,本来は長期雇用を予定していなかったはずの

臨時職員が長期にわたって採用されているという雇用状態の変化と,

同学歴で長期間勤務している正社員との格差が大きすぎることから,

基本給の格差が不合理と判断されました。

 

 

 

今までの裁判例では,基本給の格差は不合理とは

認められませんでしたが,この裁判例によって,

基本給であっても,格差が不合理と判断される

余地があることがわかりました。

 

 

非正規雇用労働者にとって画期的な裁判例ですので,

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

基本給の格差が不合理と認められた事件~学校法人産業医科大学事件~

ここ数年,労働契約法20条が問題となる

裁判例が増えてきています。

 

 

特にここ最近では,大阪医科薬科大学事件の

大阪高裁平成31年2月15日判決で

賞与の格差が不合理と判断されたり,

メトロコマース事件の東京高裁平成31年2月20日判決で

退職金の格差が不合理と判断されたりと,

労働者側にとって有利な判断がなされています。

 

 

このような中,基本給の格差について不合理と判断された

珍しい裁判例がありましたので紹介します。

 

 

学校法人産業医科大学事件の

福岡高裁平成30年11月29日判決です

(労働判例1198号63頁)。

 

 

この事件は,任期を1年とする有期労働契約を

30年以上にわたって更新してきた臨時職員の原告労働者が,

正社員との間で基本給について著しい格差が生じていることが,

労働契約法20条に違反するとして,

損害賠償請求をしたというものです。

 

 

 

 

労働契約法20条は,非正規雇用労働者と

正社員との間の労働条件の相違が,

①労働者の業務の内容及び当該乗務に伴う責任の程度,

②当該職務の内容及び配置の変更の範囲,

③その他の事情を考慮して,

不合理と認められるものであってはならないと規定されています。

 

 

まず,この事件では,臨時職員である原告労働者と,

ほぼ同じ勤務年数の正社員とを比較したところ,

①仕事内容が,正社員の方が専門的,技術的な業務をしていたり,

仕事量が,正社員の方が多かったりしており,

②正社員は,全ての部署に配属されたり,

出向を含む異動の可能性があり,

実際に配置転換を命じられていた一方,

臨時職員は,異動や出向,業務内容の変更は

予定されていませんでした。

 

 

ようするに,臨時職員と正社員とでは,

仕事内容が違っており,配置転換の有無でも違いがあるので,

基本給に格差が生じていても,やむを得ないといえそうです。

 

 

そのため,労働契約法20条が規定している

①と②の考慮要素だけでは,

基本給の格差が不合理とはいえなかったのです。

 

 

ところが,労働契約法20条には,

③その他の事情を考慮できると規定されています。

 

 

そして,本件事件では,③その他の事情を考慮した結果,

基本給の格差は不合理であると判断されたのです。

 

 

 

それでは,本件事件で,考慮された③その他の事情

とはなんだったのでしょうか。

 

 

それは,臨時職員として30年以上もの

長期にわたり雇用されてきたということです。

 

 

被告法人では,正社員は,定年制であって,

長期雇用や年功的処遇を前提とするもので,賃金体系も,

正社員を定年退職するまでの長期雇用することを前提にしているのに対し,

臨時職員は,1ヶ月以上1年以内と期間を限定して雇用する職員であり,

大学病院開設当時の人手不足を補う目的で採用を開始し,

間もなく採用を中止したことから,

長期間雇用することを採用当時は予定していませんでした。

 

 

それにもかかわらず,30年以上もの長期にわたり

雇い止めもなく雇用されるという,

その採用当時に予定していなかった雇用状態が生じたという事情は,

労働契約法20条の③その他の事情にあたると判断されました。

 

 

長期間雇用されることが予定されていなかった非正規雇用労働者が,

正社員と同じように長期間雇用されている場合には,

長期間働いて雇用主に対して同じように貢献しているはずなので,

非正規雇用労働者と正社員という違いだけで,

賃金に格差を生じさせるのはおかしいのではないか,

という価値判断がはたらいたのだと推測されます。

 

 

長くなりましたので,この裁判例の解決の続きは,

明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます