パワハラを規制する法改正が実現しました!

5月29日,職場でのパワハラを防止するために,

企業に相談窓口の設置などの防止策を義務づける

改正労働施策総合推進法が成立しました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000486035.pdf

(改正法の条文はこちらのURLにアップロードされています)

 

 

ようやく,パワハラを規制する法律が成立し,

今後,パワハラを抑制していく機運が高まっていきそうです。

 

 

本日は,5月29日に成立したパワハラを規制する

法改正について説明します。

 

 

改正労働施策総合推進法の30条の2第1項において,

パワハラの定義が「職場において行われる優越的な関係を背景とした

言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

その雇用する労働者の就業環境が害されること」と定められました。

 

 

 

 

これまでは,仕事上の指導との線引が難しいとして,

パワハラの定義が定められていなかったのですが,ようやく,

パワハラの定義が法律で定められたのです。

 

 

今後は,職場におけるある言動が,

①優越的な関係を背景とするもの,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの,

③就業環境を害すること,

の3つの要件を満たすかについて,

ケースバイケースで判断していくことになります。

 

 

企業は,パワハラについて,労働者からの相談に応じ,

適切に対応するために必要な体制の整備

その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならなくなります。

 

 

また,企業は,パワハラの相談をした労働者に対して,

解雇その他不利益な取扱をしてはならず,

パワハラについての研修をするように努めなければなりません。

 

 

もっとも,企業が講じなければならない措置の具体的な内容については,

法律に詳細は記載されておらず,今後は,労働政策審議会において,

必要な指針がまとめられていく予定です。

 

 

おそらく,相談窓口の設置,

パワハラ加害者に対する懲戒規定の策定,

パワハラ被害が発生した場合の社内調査体制の整備,

当事者のプライバシーの保護対策など

が指針に記載されることが予想されます。

 

 

 

今回の法改正では,企業に対して,

パワハラを防止するための措置義務を定めているものの,

パワハラ行為そのものを罰則などで直接禁止することはされていません。

 

 

この点について,参議院の附帯決議において,

ハラスメントの根絶に向けて,損害賠償請求の根拠となり得る

ハラスメント行為そのものを禁止する規定の法制化の必要性を含め

検討すること」と記載されたので,今後は,

パワハラを直接規制する法改正が実現することを期待したいです。

 

 

その他にも,参議院の附帯決議では,

取引先や顧客からのカスタマーハラスメントや,

就職活動中の学生に対するセクハラなど,

あらゆるハラスメントに対応することが必要であることが

記載されており,参考になります。

 

 

https://www.rengo-news-agency.com/2019/05/17/%E4%BB%98%E5%B8%AF%E6%B1%BA%E8%AD%B0%E3%81%AE%E5%86%85%E5%AE%B9%E3%81%A7%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E3%82%92-%E9%9B%87%E7%94%A8%E5%85%B1%E5%90%8C%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-%E3%83%8F%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E9%96%A2%E9%80%A3%E6%B3%95%E6%A1%88%E3%81%AB%E6%B3%A8%E6%96%87/

 

 

今回法改正で実現した企業に対するパワハラの防止措置義務は,

大企業は2020年4月から,

中小企業は2022年4月から課されますので,

今後は,パワハラ予防のために研修を実施していく企業が増えていきます。

 

 

私も,パワハラ防止に向けて,

パワハラ予防の研修を実施していきたいと思います。

 

 

 

パワハラを規制する法律がようやく成立しましたので,

これを機にパワハラ予防に取り組む企業が

増えていくことを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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3 返信
  1. 磯野賢次
    磯野賢次 says:

    はじめまして。横浜で働く方を対象にカウンセリングを行っている磯野と申します。
    今回先生のこちらの記事を拝見致しまして、質問をさせて頂きたいと存じます。
    これまでも、パワーハラスメントの定義として「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係等の職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは環境を悪化させる行為」と示されておりましたが、今後は記事の定義に一元化されるという事でしょうか。
    また大企業と中小企業では、適用時期に2年の開きがございますが、中小企業において適用前にパワハラに抵触する事案が生じた際の法的措置はどのようになるのでしょうか。
    ご多忙のところ恐縮ですが、ご教示頂けましたら幸いでございます。

    返信
    • 金沢合同
      金沢合同 says:

      磯野様

      金沢の弁護士の徳田です。

      ご連絡いただき,ありがとうございます。

      磯野様ご指摘の,従前の厚労省のパワハラの定義と,今回の改正労働施策総合推進法に規定されたパワハラの定義とは,実質的に同一であり,今後は,法律で規定された定義に一元化されると考えます。

      中小企業に対しては,2022年4月から施行されるのですが,その間は,パワハラ防止措置義務違反を理由に中小企業に対して責任追及はできませんが,会社は,パワハラやいじめを防止すべき義務を負っていますので,これらの義務に違反したことを理由に,中小企業に対して,損害賠償請求ができます。

      パワハラ防止措置義務が施行された方が,中小企業に対して責任追及しやすいのですが,施行されていない期間であっても,中小企業に対して,損害賠償請求することは十分に可能です。

      返信
      • 磯野賢次
        磯野賢次 says:

        徳田先生。大変丁寧で分かりやすいご回答を頂きまして、ありがとうこざいました。

        特に規定の「業務上必要且つ相当範囲を超えるもの」に関しましては、相当範囲か否かで裁判が長期化するケースが増すかと推測致しました。

        パワハラ始めとするハラスメント行為は、個人の気質的要因もしくは企業又は事業所の風土的要因があり、後者である場合は改善に相当の時間を有しそうな気も致します。

        ありがとうございました。

        返信

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