移動時間は労働時間なのか

未払残業代請求の事件では,ある時間が労働時間か否か

が争われることがよくあります。

 

 

ある時間が労働時間に該当すれば,会社は,その時間分の賃金を,

労働者に支払わなければならなくなります。

 

 

また,会社が労働時間ではないと主張していた時間が

労働時間になれば,労働者は,会社が想定していたよりも

長く働いていたことになり,残業していたことになるので,

未払残業代が発生するのです。

 

 

そこで,本日は,労働時間か否かが争いになる

移動時間について解説します。

 

 

まず,通勤時間について検討します。

 

 

 

 

そもそも,労働時間とは,労働契約に基づき,

労働者が会社に対して,労働を提供している時間です。

 

 

これに対し,通勤とは,労働者が会社に労働を提供する

前の準備行為と位置づけられています。

 

 

また,電車やバスの通勤であれば,通勤時間中は寝ていても,

本を読んでいても,スマホをしていても,労働者の自由です。

 

 

そのため,通勤時間は労働時間とはいえません。

 

 

会社へ通勤するのではなく,会社の外の仕事現場へ

直行直帰する場合の移動時間も,

通勤時間と同じで労働時間とはいえません。

 

 

次に,外回りの営業マンが営業先から営業先へ

移動する時間について検討します。

 

 

通常,営業マンは,営業先から営業先へ寄り道をせず,

まっすぐに移動するように指示されております。

 

 

そのため,営業先から営業先への移動は,

会社からの指揮命令下に置かれている時間

といえますので,労働時間となります。

 

 

最後に,出張中の移動時間について検討します。

 

 

 

 

出張中の移動時間も,就労場所へ移動するという,

労働を提供するための準備時間といえます。

 

 

また,電車で長距離移動しても,電車の中で,

寝ていようが,スマホをしていようが,

労働者の自由であることがほとんどです。

 

 

そのため,原則として,出張の移動時間も労働時間にはなりません

 

 

もっとも,移動時間中に,出張先の会議で使用する資料を

パソコンで作成していたり,出張の目的が物品を運ぶことであり,

移動中その物品を監視しなければならない場合には,

出張の移動時間であっても労働時間といえることがあります。

 

 

なお,出張先への移動が休日に行われたとしても,

休日労働として取り扱われないことになります。

 

 

このように,通勤時間や出張先への移動時間は

労働時間とはいえませんので,未払残業代を計算するときに,

何時から何時まで働いたのかを算出する際,注意する必要があります。

パワハラ事件における3つのハードル

パワハラの法律相談を受けていると,次の3点が問題となります。

 

 

①パワハラを証明する証拠があるか

(ボイスレコーダーなどでやりとりを録音していれば,

この問題はクリアできる可能性があります)。

 

 

②損害賠償請求が認められるほど酷いパワハラと判断されるのか

(どのような言動であれば,違法なパワハラといえるのか)。

 

 

③損害額が小さい(パワハラでうつ病になった場合ですと,

治療費,休業損害,慰謝料が損害となりますが,

損害賠償額があまり多くなりません)。

 

 

この3つのハードルがあるため,パワハラの法律相談を受けても,

「会社や上司に対して,損害賠償請求をしたほうがいいですよ」

とアドバイスしにくいのが現状です。

 

 

 

 

また,パワハラでうつ病になった場合,

労災申請をすることも検討しますが,損害賠償請求と同様に,

①パワハラを証明する証拠があるのかが問題となりますし,

労災と認定される件数が少ないのが現状です。

 

 

このようにパワハラの案件では,損害賠償請求まで行き着くのに

ハードルがありますが,パワハラの損害賠償請求が認められた

裁判例がありましたので,紹介します。

 

 

建築会社で働いていた労働者が上司からパワハラを受け,

うつ病を発症して働けなくなったとして,

パワハラをした上司と会社を訴えました

(名古屋地裁平成29年12月5日・判例時報2371号121頁)。

 

 

なお,この原告の労働者は,裁判を起こす前に,

労災の申請をして,うつ病発症前6ヶ月の間に,

「ひどい嫌がらせやいじめ,又は暴力を受けた」,

「達成困難なノルマを課された」という出来事があり,

心理的強度の負荷が「強」と判断されて,労災認定されました。

 

 

労災の認定があると,裁判でも,

パワハラがあったと認定されやすくなります。

 

 

裁判所が認定した上司のパワハラは次のとおりです。

 

 

 

 

・上司は原告に対し,社内の雰囲気が緩むとして,

他の社員と接触しないように定時よりも早く帰社して

タイムカードに打刻した上で夜の営業にいくように指示しましたが,

この指示に従った原告に対して,「なんでこんなに早く帰ってきたのか。

他の社員がまだがんばって外回りしているのに,何を考えているのだ」

と叱責しました。

 

 

・「お前は営業センスがないから退職を考えたほうがいい」

と言って退職勧奨しました。

 

 

・上司は,病気休暇あけの原告に対し,

「これだけ休んでおいて,新規顧客はないのか。

一度ケツをわった人間がのこのこ帰ってこられると思うなよ。

新規顧客をそろえなかった場合には,今度こそ引導を渡すからな」,

「支店長もおまえはガンだと言っている」と言って,

過酷なノルマをかして,侮辱しました。

 

 

・上司は,原告に対し,「支社に顔を出すな。

おまえみたいながんウイルスがいると会社の雰囲気が悪くなるし,

みんなにうつるから直行直帰で仕事をするように」

と言って,侮辱しました。

 

 

・上司は,原告に対し,「会社にいる必要はない。辞めてほしい。

使えない社員がいると分母が広がって目標達成できない」,

「お前,キモいねん。もういいからお願いだから辞めてくれ」

と言って,退職勧奨をしました。

 

 

判決文からは,原告が上司の言動をどうやって証明したのかは

よくわかりませんが,さすがにこんな酷いことを言われたのであれば,

違法なパワハラと認定されます。

 

 

さらに,会社は,パワハラの研修をしたり,

パワハラの抜き打ち調査をするなど一定の措置をとっていましたが,

それが奏功していなかったとして,

上司の選任や監督について相当の注意をしていないとして,

会社に対する責任が認められました。

 

 

上司のパワハラが認定されて,上司と会社に責任が認められたのですが,

慰謝料は100万円となりました。

 

 

パワハラの事件では,慰謝料100万円は高い方ですが,

交通事故の慰謝料は,後遺障害が一番低い14級でも

慰謝料110万円なので,交通事故と比較すると

慰謝料の金額が低いことがわかります。

 

 

パワハラの慰謝料の金額が高くなれば,

そんなに高額な慰謝料を支払いたくないから

パワハラをしないように気をつけようと考える人が多くなって,

パワハラの予防になるのではないかと思います。

 

 

今後は,パワハラ事件の慰謝料の金額が

増額されていくことを期待したいです。

外回りの営業マンの残業代請求

外回りの営業マンの場合,会社の外で仕事をしているので,

会社は,営業マンが外回りをしているときの

労働時間を算定することが難しいときがあります。

 

 

そのような場合,会社が,事業場外労働のみなし時間制という制度

を利用して,会社の外で行った仕事について,

一定の労働時間仕事したものとみなして,

残業代を支払わないようにしていることがあります。

 

 

例えば,営業マンが会社の外で9時間働いたとします。

 

 

 

 

通常であれば,この営業マンは,1日8時間を超えた

1時間分の残業代を会社に対して請求できます。

 

 

ところが,事業場外労働のみなし時間制が適用されれば,

営業マンが会社の外で働いた時間が9時間であっても,

所定労働時間(労働契約で定められている勤務時間)である

7時間45分働いたとみなされてしまい,

1日8時間以内の労働となり,

残業代を請求することができなくなります。

 

 

会社から,事業場外労働のみなし時間制だから,

残業代は一切支払う必要がないと言われた場合,

労働者は,残業代請求をあきらめなければならないのでしょうか。

 

 

結論をいうと,事業場外労働のみなし時間制が有効に適用される

ことは少なく,労働者は,残業代請求をあきらめなくてもよいのです。

 

 

事業場外労働のみなし時間制を適用するための要件の一つに,

労働時間を算定し難いとき

というものがあります(労働基準法38条の2第1項)。

 

 

会社の外で働いている労働者の労働時間を会社が把握・算定できる

のであれば,事業場外労働のみなし時間制は適用されないのです。

 

 

そして,「労働時間を算定し難いとき」とは,

「就労実態等の具体的事情をふまえ,社会通念に従い,

客観的にみて労働時間を把握することが困難であり,

使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価される場合

とされています(東京高裁平成23年9月14日判決・

阪急トラベルサポート事件・労働判例1036号14頁)。

 

 

もうすこし具体的に検討すると,

会社の事前の具体的指示があったり,

労働者が日報を提出して,

事前または事後に業務予定の報告を会社にしていたり,

携帯電話や電子メールを利用して業務指示や

業務報告が行われていたならば,

労働時間を把握することが可能であり,

会社の具体的な指揮監督が及んでいるといえます。

 

 

このように,会社から,事業場外労働のみなし時間制を主張されても,

これらの事情があれば,事業場外労働のみなし制は適用されなくなり,

実際に働いた時間で残業代を計算して

会社に請求すれば,認められることになります。

 

 

また,仮に,事業場外労働のみなし時間制が適用されたとしても,

外回りの営業マンが仕事をするために必要とされる時間が

平均的に7時間45分ではなく,9時間であれば,

みなし労働時間は7時間45分ではなく9時間となり,

1日8時間を超える1時間分の残業代を請求できます。

 

 

さらに,事業場外労働のみなし時間制が適用されたとしても,

休日労働と深夜労働については,通常どおり残業代を請求できます

 

 

現在では,通信技術が発達しており,会社は,

労働者が今どこにいるのかをリアルタイムに把握することができ,

思い立ったときに,指示を与え,報告を求めることができますので,

「労働時間を算定し難いとき」は少なくなっています。

 

 

 

そのため,会社から事業場外労働のみなし時間制を主張されても,

認められることはあまりないと考えられますので,

労働者,あきらめずに残業代請求を検討してみてください。

タイムカードがなくても未払残業代請求をあきらめない

未払残業代の法律相談を受けていると,

タイムカードなどで労働時間の把握をしていない中小企業があり,

労働者も自分で労働時間の記録をつけておらず,

労働時間をどうやって証明するべきかについて悩む場面が多々あります。

 

 

 

 

厚生労働省は,

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準

を定めており,会社は,労働時間を適正に管理するため,

労働者の労働日ごとの始業時刻・終業時刻を確認し,

これを記録することが義務付けられています

 

 

しかし,この労働時間把握義務が守られていないのが現状です。

 

 

また,自分の労働時間を,残業代計算アプリなどを利用して,

自分自身で記録している労働者も少ないのが現状です。

 

 

他方で,裁判では労働時間を証明する責任は労働者にあるので,

労働者は,労働日ごとに,何時から何時まで働いたのかを

特定して主張しなければならないので,

労働時間を証明するための証拠がない場合には,

どう対応すべきか頭を悩ませます。

 

 

この労働時間の証明において,

労働者に有利な判断をした裁判例を見つけたので,

紹介させていただきます。

 

 

その裁判例とは,大阪高裁平成17年12月1日判決・

ゴムノイナキ事件・労働判例933号69頁です。

 

 

この事件では,被告会社では,タイムカードなどを

用いた出退勤管理は行われていませんでした。

 

 

原告の妻は,原告の帰宅が遅いことから,

その体調を心配して,7ヶ月間ほど,

原告の帰宅時間を30分単位でノートに記載していました。

 

 

 

 

原告が退社後に飲み会に参加するなどの寄り道をした可能性があり,

また,原告が帰宅したときに妻が寝ていたときには,翌朝,

原告が妻に帰宅時間を伝えたのですが,それでは正確な記録とはいえず,

妻のノートの帰宅時間だけでは,

退社時刻を確定することはできませんでした。

 

 

ようするに,妻のノートは,

証拠としての価値は低いと判断されたのです。

 

 

自宅と会社の距離が近く,

退社時刻と帰宅時間との時間差が短いのであれば,

帰宅時間で退社時刻を確定することも可能だったのかもしれません。

 

 

しかし,裁判所は,タイムカードなどによる

出退勤管理をしていなかったのは被告会社の責任によるものであり,

これを原告に不利益に扱うべきではないと判断しました。

 

 

また,被告会社は,休日出勤や残業の許可願を提出せずに

残業している従業員がいたことをわかっていながら,

これを放置していました。

 

 

 

そのため,裁判所は,原告の具体的な終業時刻や

残業時間に行った仕事内容が明らかではないことをもって,

時間外労働の証明が全くされていないとして扱うべきではなく

全ての証拠を総合考慮して,ある程度概括的に時間外労働を推認し

原告は,平均して午後9時まで残業していたと判断して,

原告の未払残業代請求を認めたのです。

 

 

このように,タイムカードなどの労働時間を客観的に

記録した証拠がなかったとしても,

手持ちの証拠を総合考慮することで,

平均的な残業時間を計算すれば,

未払残業代請求が認められる可能性があります。

 

 

未払残業代請求事件では,諦めずに,知恵を絞って,

証拠をなんとか探し出して,

せめて平均的な残業時間を計算できるところまでもっていけば,

道が開けるかもしれません。

解雇を仮処分で解決するのはどういう場合か

会社から解雇されてしまった労働者は,

収入を確保する道を絶たれてしまい,生活が苦しくなります。

 

 

 

 

一刻も早く,解雇の問題を解決して,

収入を確保したいと考えるのが通常です。

 

 

そのようなときに考えられるのが,仮処分という裁判手続です。

 

 

解雇を裁判手続で解決する場合,大きく分けて3つの手続があります。

 

 

①通常の裁判,②労働審判,③仮処分の3つです。

 

 

本日は,このうちの③仮処分について説明します。

 

 

解雇を通常の裁判で解決しようとすると,

第一審の判決がでるまでに約1年くらいかかります。

 

 

判決がでるまで約1年も待っていたのでは,労働者の生活が困窮します。

 

 

そこで,第一審の判決がでるまで,会社に対して,

仮に賃金を支払えということを強制させる

賃金仮払の仮処分を申し立てることがあります。

 

 

賃金の仮払が認められれば,会社は,解雇した労働者に対して,

毎月一定額の賃金を支払わなければならなくなります。

 

 

 

 

この仮処分の手続は,申立から2~3カ月から6カ月程度で

結論を得られることが多く,通常の裁判に比べて手続が早く進みます。

 

 

また,仮処分手続の中で和解が成立することも多く,

仮の手続とはいえ,最終的な紛争解決も可能です。

 

 

もっとも,この仮処分では,通常の裁判と同じように,

解雇が無効であることのほかに,

保全の必要性という別のハードルを超えなければなりません。

 

 

保全の必要性とは,賃金が仮に支払われなければ,

労働者の生活が困窮する事情のことです。

 

 

通常,労働者は,賃金の仮払いを受ければ,

生活費につかってしまうので,最終的に,会社が裁判で勝っても,

仮払いした賃金が返還されることは困難になります。

 

 

そのため,賃金仮払の仮処分では,

この保全の必要性は厳格に審査されます。

 

 

保全の必要性については,

解雇された労働者が資産を保有しているか,

副業などの他の収入源があるか,

解雇後に他の会社に再就職したか,

配偶者が働いているか,

同居の親の年金収入はいくらか

などの事情が考慮されます。

 

 

預貯金が十分あったり,

解雇後に他の会社に就職していたり,

配偶者が働いていて十分な収入がある場合には,

保全の必要性がないと判断される可能性があります。

 

 

 

 

また,賃金の仮払いが認められたとしても,

解雇前の賃金全額が認められるとは限りません。

 

 

認められる仮払いの賃金の金額は,

標準生計費の範囲内に抑えられる傾向にあります。

 

 

ちなみに,人事院が発表した平成29年4月の

世帯人員4人の全国標準生計費は,21万9620円でした。

 

 

なお,仮処分には,賃金仮払以外にも,

労働契約上の地位を有することを仮に定める地位保全の仮処分

という手段もありますが,賃金の仮払いが認められれば,

それで足りるとして,なかなか認められないのが現状です。

 

 

このように,仮処分の場合,

保全の必要性というハードルがあり,解雇された労働者は,

別の会社に再就職することが多く,私は,

あまりこの手続を利用したことがありません。

 

 

よほど,緊急に賃金の仮払いをさせる必要がある場合や

迅速に解雇された会社に復帰したい場合

には仮処分を検討しますが,そうでないなら,

通常の裁判か労働審判を選ぶことが多いです。

アウトプット大全

精神科医の樺沢紫苑先生の最新作

学びを結果に変えるアウトプット大全

を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

樺沢紫苑先生は,毎日You Tube,メルマガ,

ブログ,Facebookを更新し続ける,

まさにアウトプットの神のような存在です。

 

 

そんなアウトプットの神である樺沢紫苑先生が,

これまでの人生で習得されたアウトプットの全てを,

惜しげもなく公開している素晴らしい一冊です。

 

 

そもそも,なぜアウトプットする必要があるのでしょうか。

 

 

それは,アウトプットしないと,

インプットは記憶に残らないため,

自己成長できないからです。

 

 

人間は,インプットした情報を2週間で3回以上

アウトプットしないと長期間記憶することができないのです。

 

 

人間の脳にインプットされた情報は,

海馬というところに仮保存されますが,

その情報が何度か使われると,

脳はその情報を重要な情報と判断して

側頭葉で長期間記憶します。

 

 

 

 

私の経験上,アウトプットした情報は記憶に残っていますが,

アウトプットしなかった情報は,ことごとく忘れてしまいます。

 

 

アウトプットすることで情報が記憶に残り,

知識として定着し,自己成長していくのです。

 

 

アウトプットすることで,自己成長が加速し,

圧倒的な結果が出て,人生が楽しくなります。

 

 

この本では,話す,書く,行動するの3分野で合計80

ものアウトプットのノウハウが紹介されていますが,

その中から私が気づきを得た3つを紹介させていただきます。

 

 

まずは,「質問する」です。

 

 

自分自身に質問をすることで,脳は活性化し,

必要な情報を集めてくれます。

 

 

脳に対して,事前に単語登録をしておくと,

世の中にある膨大な情報の洪水の中から,

単語登録した情報を選択的に拾ってくれるのです。

 

 

これを,「選択的注意」といいます。

 

 

この選択的注意を発動させるための事前の

単語登録が「質問する」ということです。

 

 

本を読む前に,自分はこの本から何を学びたいのかを質問して,

紙に書いてから本を読むと,脳は,本の中から

質問に対する回答をみつけてくれるのです。

 

 

また,セミナーを聞く際にも,質問を考えながら

セミナーを聞くことで,セミナーに集中できまし,理解も深まります。

 

 

そして,セミナー終了後の質問タイムで,

講師が話したそうなこと,話したりなかったこと,

講師の話のテーマを深めることを質問をすれば,

講師も周囲の参加者も喜び,みんなから感謝されます。

 

 

次に,「ぼーっとする」です。

 

 

特になんの作業もしていないぼーっとした状態のとき,

脳内では,「デフォルトモード・ネットワーク」が活発に稼働しています。

 

 

デフォルトモード・ネットワークとは,

脳のスタンバイ状態のことで,脳内で,

自分のこれからをよりよいものにしていくための

準備を整えているのです。

 

 

あえてぼーっとすることで脳が活性化して,

ひらめきである「アハ!体験」が生まれるのです。

 

 

私は,いつもあくせくしながら仕事をしていることが多いので,

今後は意識してぼーっとして,脳を活性化していこうと思います。

 

 

最後は,「始める」です。

 

 

セミナーの資料を作成しなければならないのに,

作業量が膨大なため,おっくうになって,

なかなか作業に着手できないことがあります。

 

 

そんなときは,「まず作業を始める」ことです。

 

 

作業を始めてみると,だんだん気分が盛り上がってきて

やる気がでてきます。

 

 

脳には「側坐核」という部位があり,

この側坐核の神経細胞が活動すると,

海馬と側頭前野に信号を送り,やる気がでて,

脳の調子が上がってくるのです。

 

 

側坐核の神経細胞は,5分作業することで活動を始めます。

 

 

5分やってみればやる気スイッチが入るのです。

 

 

そして,最初から100点を目指して作業を始めるのではなく,

まずは30点を目指して作業を完成させて,

その後に訂正を加えて100点に近づけていきます。

 

 

そうすることで,作業が終わったという達成感と安心感がえられて,

訂正の過程でよりよいものが完成していくのです。

 

 

脳の仕組みを知ることで,自分が成長するためのスキルが学べます。

 

 

 

今後,私は,①インプットする際に自分自身に質問をし,

②意識してぼーっとする時間を作り,

③まずは30点を目指して5分作業を始めて,

自己成長していきます。

 

 

自己成長して,よりよい人生を歩みたいことを願う方にとって

必読の書だと思いましたので,紹介させていただきました。

懲戒解雇が有効になる要件とは

会社の携帯電話を利用して,従業員同士で上司のぐちや悪口を

ラインなどでやりとりしていたところ,会社に発覚し,

職場の秩序を乱しているとして普通解雇されてしまいました。

 

 

 

 

その後,会社から送られてきた離職票には,

懲戒解雇と記載されていました。

 

 

会社の就業規則には,懲戒解雇の規定はなく,

職場の秩序を乱した場合には普通解雇とする旨の記載があります。

 

 

このような場合,懲戒解雇は有効なのでしょうか。

 

 

結論からいうと,就業規則に懲戒解雇の規定がないのであれば,

懲戒解雇は無効となります

 

 

会社は,懲戒解雇された労働者を雇いたくないので,

労働者は,次の就職先を探すのは困難になります。

 

 

また,懲戒解雇の場合には,退職金を不支給にする,

または,減額することが就業規則で規定されていることが多く,

退職金を満額で取得することが困難になります。

 

 

このように,懲戒解雇は,最も重たい処分であるため,

懲戒解雇が有効か無効かは厳格に審査されます

 

 

 

 

そして,懲戒解雇が有効になるための要件として,

懲戒事由と懲戒の種類が就業規則に明記されており,

その就業規則が労働者に周知されていることがあげられます。

 

 

懲戒事由と懲戒の種類が就業規則に明記されていないと,

懲戒処分が労働契約の内容になっていないことになり,

会社は,労働者に対して,懲戒処分ができないのです。

 

 

また,就業規則に懲戒事由と懲戒の種類を明記しただけでは足りず,

その就業規則を,労働者がいつでも見られる場所に置いておいたり,

会社のサイトからダウンロードできる状態にしておくなどして,

労働者に周知しなければなりません(労働契約法7条)。

 

 

加えて,労働者が過去に懲戒処分されたことがないのに,

上司のぐちや悪口を言っただけで,

いきなり懲戒解雇されたのであれば,

懲戒解雇は処分として重すぎるので,

無効となる可能性があります。

 

 

懲戒解雇は,最も重い処分ですので,

労働者の非難されるべき行為が懲戒解雇に値する行為なのかが

厳格に審査されなければならないのです。

 

 

労働者の行為からすると,

停職や降格といった懲戒処分が相当で,

懲戒解雇が重すぎる場合は,懲戒解雇は無効になります。

 

 

懲戒解雇を争う場合,処分として重すぎるという理由で

懲戒解雇が無効になることが多く,労働者としては,

この点を裁判で強調して主張していくポイントになります。

 

 

さらに,他の人も同じように上司のぐちや悪口を言っていたのに,

自分だけ懲戒解雇されたのであれば,

平等取扱の原則に違反して,懲戒解雇が無効になる可能性があります。

 

 

このように,懲戒解雇は,厳格に審査されますので,

無効になる可能性もあります。

 

 

万が一,懲戒解雇されてしまったら,

一度,弁護士に相談することをおすすめします。

郵便局における正社員と非正規雇用労働者の労働条件の格差は不合理か

最近,正社員と非正規雇用労働者との労働条件の格差

が不合理であるとして,労働契約法20条違反

が争われるケースが増えています。

 

 

本日は,日本郵便において,正社員と非正規雇用労働者の労働条件

の相違が不合理か否かが争われた大阪地裁平成30年2月21日判決

(労働判例1180号・26頁)について解説します。

 

 

一般的に,正社員と非正規雇用労働者との仕事内容や責任,

配置の変更が同じであれば,手当等の労働条件は

同じにしないと不合理と考えられます。

 

 

他方,正社員と非正規雇用労働者との仕事内容や責任,

配置の変更について,正社員の方が負担が重く,

その見返りの意味も含めて,正社員に,

手厚い手当等が支給されることは,不合理とはいえないと考えられます。

 

 

 

 

 

日本郵便では,正社員は,郵便物の集荷や配達といった仕事以外に,

郵便局内部の事務作業も行い,昇任によってシフト管理や企画立案,

労務管理といった管理業務を行い,異動や配置転換が実施されています。

 

 

他方,非正規雇用労働者は,郵便物の集荷や配達

といった仕事に限定され,昇任はなく,異動や配置転換はありません。

 

 

このように,正社員と非正規雇用労働者との間に,

仕事内容や責任,配置の変更について,違いが存在します。

 

 

そうなると,正社員と非正規雇用労働者との

手当などの労働条件について違いがあっても,

不合理とはいえないと判断されそうです。

 

 

しかし,本件では,年末年始勤務手当,住居手当,扶養手当について,

正社員に支給されているのに,非正規雇用労働者に

支給されていないのは不合理と判断されました。

 

 

まず,年末年始勤務手当について,郵便局の労働者は,

普通の会社は休みとしている12月29日から1月3日に

年賀状の集荷と配達をしなければならず,

1年で最も繁忙な時期に働いた場合に,

年末年始勤務手当として一律の金額が支給されています。

 

 

 

 

年末年始勤務手当は,繁忙期である年末年始に働いたことに

注目して支給される性質のものであり,

非正規雇用労働者も正社員と同様に年末年始に働いているので,

非正規雇用労働者にも同じ取扱にする必要があります。

 

 

そのため,年末年始勤務手当の性質から,

正社員にのみ支給して,非正規雇用労働者に支給しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

住居手当については,配転に伴う住宅の費用負担の軽減

という性質があり,配転が予定されている正社員に支給されて,

配転が予定されていない非正規雇用労働者に支給されなくても,

問題がないように思えます。

 

 

しかし,正社員の中にも,配転が予定されていない労働者がいるのに,

正社員全員に住居手当が支給されており,

住居手当の支給があるのとないのとでは,

最大で月額2万7000円の差が生じていることから,住居手当を,

正社員にのみ支給し,非正規雇用労働者に支給しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

これまでの裁判例は,配転が予定されているか否かで,

住居手当の支給に差があっても,不合理とはいえないと

判断される傾向にあったため,

住居手当で不合理と判断されたのは画期的だと思います。

 

 

そして,扶養手当については,労働者が扶養する家族の生活保障

としての性質があり,扶養家族の有無や状況に応じて

一定額が支給されており,扶養家族の状況によっては,

支給額が大きくなることから,扶養手当を正社員にのみ支給し,

非正規雇用労働者に支給しないことは不合理と判断されました。

 

 

本判決は,仕事や内容や責任,配転の可能性で差異があっても,

手当の性質に注目して,手当の差異が不合理であると判断される

余地があること,手当の金額で大きな格差が生じることも

考慮されることが,これまでの裁判例と異なるところであり,

労働者にとって有利に活用できそうです。

経歴詐称による解雇が有効になるには

私立高校の数学の教師が経歴詐称を理由に解雇された事件がありました

(東京高裁平成29年10月18日判決

学校法人D学園事件・労働判例1176号18頁)。

 

 

経歴詐称といえば,数年前に,

報道ステーションのコメンテーターをしていた

ショーン・マクアードル・川上氏の問題が有名です。

 

 

本日は,経歴詐称の解雇がどのような場合に

有効になるのかについて説明します。

 

 

まず,被告の学校法人の就業規則には,解雇事由として,

「採用に関し提出する書類に重大な虚偽の申告があったとき」

と記載されていました。

 

 

 

 

この就業規則の記載をどのように解釈するかが問題となります。

 

 

ここで,解雇とは,労働者の働く機会を一方的に奪うものであり,

労働者は,解雇されると,収入源を失い,生活が苦しくなることから,

解雇は,そう簡単にできず,厳しい要件を満たす必要があります。

 

 

そこで,労働者を解雇できる理由である経歴詐称とは,

今後の雇用契約の継続を不可能とするほどに会社との信頼関係を

大きく破壊するに足る重大な経歴を詐称した場合に限定されます。

 

 

本件においては,原告の数学教師が提出した履歴書に記載されていた

「中学校バレーボールコーチ勤務」という職歴が

虚偽であると問題になりました。

 

 

原告の数学教師は,外部指導者としてバレーボールコーチ

として雇用されていたわけではなく,個人的に依頼されて

コーチ業務のお手伝いをしていただけなので,

「中学校バレーボールコーチ勤務」との記載は,

事実と異なる点がありました。

 

 

しかし,原告がコーチ業務のお手伝いをしていたのは

事実であり,その期間も2ヶ月と短期間でした。

 

 

また,原告は,体育教師ではなく数学教師として採用

されているのであり,数学教師としての能力や適格性を判断するのに,

バレーボールコーチの経歴はあまり重視されるものではなく,

原告を採用する際の重大な要素とはなっていませんでした。

 

 

そのため,「中学校バレーボール勤務」という虚偽の記載が,

今後の雇用契約の継続を不可能とするほどに

信頼関係を破壊するに足る重大な経歴詐称ではないと判断されました。

 

 

もっとも,原告は,他の教師と連携・協力して仕事を進めていく

姿勢に欠けており,上司の注意に対しても反発を繰り返し,

問題行動が改善されておらず,教師という職種のため,

事務職へ配転することができないため,

勤務態度不良による解雇は有効とされてしまいました。

 

 

 

 

経歴詐称について,その労働者を採用するにあたって重視したポイント

(例えば,数学教師であれば,高卒か大卒か,

大学で数学の研究をしていたか,

他の学校で数学を教えていたか等の学歴や職歴)に詐称がないのであれば,

経歴詐称を根拠に解雇するのは難しいと考えられます。

 

 

経歴詐称で解雇された場合には,

会社との信頼関係を大きく破壊するに足る重大な

経歴を詐称したかを検討する必要があります。

残業時間の上限規制を厳格に

今年の6月下旬に働き方改革関連法が成立し,現在,

厚生労働省において,法律の施行に伴う関係政令

を制定する作業が進められています。

 

 

 

 

つい最近,厚生労働省から,この政令案が発表されました。

 

 

http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000176581

 

 

働き方改革関連法をより詳しく理解するために

重要な政令案ですので,解説します。

 

 

働き方改革関連法では,これまで青天井だった

残業時間について,罰則付きの上限規制がもりこまれました。

 

 

これ以上の時間,残業させた場合,会社に対して刑事罰を科すよ

と規制することで,長時間労働を抑制しようとするものです。

 

 

この残業時間の上限が,原則1ヶ月45時間まで

となっているのですが,36協定で例外をもうければ,

1ヶ月100時間未満まで残業させても合法となり,

1ヶ月の残業が100時間を超えた場合に初めて

罰則が科されるようになっています。

 

 

この1ヶ月100時間の残業時間が,

精神障害の労災基準であることから,

過労死や過労自殺を助長すると批判されています。

 

 

1ヶ月100時間未満までなら残業が許容されるかのような

法律構成になっているので,政令案では,

上限ぎりぎりまではOKというわけではない

と示していくことになっています。

 

 

 

具体的には,36協定(残業できる条件を定める労使協定のことです)

で労働時間を延長するための留意すべき事項として,

次のような指針案が示されました。

 

 

「労働時間の延長をできる限り短くする

よう努めなければならないこととすること」

 

「年720時間までの特例に係る協定を締結するに当たっては,

次の点に留意すること。

・あくまで通常予見することができない業務量の大幅な増加等の

臨時の事態への特例的な対応であるべきこと。

・具体的な事由を挙げず,単に「業務の都合上必要な時」

「業務上やむを得ないとき」といった定め方は認められないこと。

・特例に係る協定を締結する場合にも,

可能な限り原則である月45時間,

年360時間に近い時間外労働とすべきであること。」

 

「使用者は,特例の上限時間内であっても,

労働者への安全配慮義務を負うこと」

 

 

残業時間を原則の1ヶ月45時間までに抑制し,

例外的な1ヶ月100時間未満をなるべく使えないように

しようとしているので,労働者にとっては喜ばしいことです。

 

 

抽象的な「業務の都合上必要な時」「業務上やむを得ないとき」

といった規定で1ヶ月100時間未満の例外が適用されてしまえば,

なし崩し的に1ヶ月100時間未満の残業が

許容されてしまうおそれがあります。

 

 

そこで,このような抽象的な規定では例外は認められないとして,

1ヶ月100時間未満の残業が許容されないように,

規制を強化するべきと考えます。

 

 

また,36協定を締結するには,

労働者の中から過半数を代表する者を選出して,

その過半数代表者が会社と36協定を締結します

 

 

この過半数代表者は,往々にして,

会社の社長の意向や影響が及んだ形で選出されます。

 

 

社長が適当に,社員をつかまえて,

この書面にサインしてと言って,

36協定が締結されているのが現状だと思われます。

 

 

残業時間の上限規制は,労働者の健康を守る重要なものであり,

そのような重要なことを定める36協定を

いい加減な手続で適当に定めては,労働者の保護として不十分です。

 

 

そこで,36協定を締結する過半数代表者の選出にあたって,

会社の意向が及んでいる場合は手続違反であり,

そのような36協定には効力が認められないことを

明確に規定すべきと考えます。

 

 

過労死や過労自殺をなくすためにも,

残業時間の上限規制は,非常に重要ですので,

厚生労働省の動きに注目していきます。