残業時間を証明するための証拠をどのようにして集めるのか(証拠保全の活用)

未払残業代請求事件では,労働者が労働時間を1日

ごとに主張立証しなければらならないのが原則です。

 

 

また,過労死や過労自殺で労災申請をする場合も,遺族が

発症前6ヶ月間の残業時間が1ヶ月80~100時間

あったことを裏付ける証拠を労基署に提出する必要があります。

 

 

未払残業代請求事件や過労死・過労自殺事件では,

残業時間を証明するための証拠をどれだけ確保できるかが

勝負の分かれ目になります。

 

 

それでは,労働者は,残業時間を証明するための証拠を

どうやって集めればいいのでしょうか。

 

 

 

 

まずは,労働者が自分で証拠を集める方法があり,

簡単かつ費用もかかりません。

 

 

退職前であれば,タイムカードや日報をコピーする,

パソコンの起動やシャットダウンのログデータを

自分で保存しておけばいいのです。

 

 

次に,退職後であれば,会社に立ち入ることは困難なので,

弁護士が労働者の代理人として,会社に対して,

タイムカードなどの資料の写しを開示するように求めれば,

会社にも弁護士が就いて,資料を開示してくることが多いです。

 

 

私の経験でも,タイムカードなどの資料の開示

を拒まれたことはありません。

 

 

もっとも,会社が証拠を破棄したり,改ざんするような恐れ

がある場合には,会社に任意で証拠の開示を求めるのは

逆効果になります。

 

 

また,パソコンのログなどのデジタルデータは

時間の経過と共に消えていくので,一刻も早く,

証拠を確保する必要があります。

 

 

そのようなときに利用するのが,証拠保全という手続です。

 

 

証拠保全とは,裁判を提起する前に,裁判官らと共に会社へ行き,

会社に証拠を提示してもらい,その場で証拠をコピーしたりして,

証拠の状態を記録に残すという手続です。

 

 

 

 

証拠保全は,手続を実施する約1時間ほど前までは

会社に連絡がいかないので,会社が証拠を

破棄したり改ざんしたりする時間的な余裕がないうちに,

現場で証拠を確保できるので,会社の証拠の破棄や改ざんを

防止することができます。

 

 

もっとも,証拠保全は,時間と手間がかかります。

 

 

まず,弁護士がクライアントから事情を聞いて,

証拠保全の申立書を作成するのにある程度の手間と時間がかかります。

 

 

次に,裁判所が証拠保全の申立書を検討し,

弁護士と裁判官が何を優先的に確保するのかや

当日の段取りを打ち合わせします。

 

 

そして,裁判所と弁護士の日程調整をして,

デジカメやパソコンなどを準備して,

会社へ行って,証拠保全を実施します。

 

 

裁判所の業務が立て込んでいると,

裁判所との調整に時間がかかることがあり,

証拠保全の申立をしてから,

約1ヶ月以上先に証拠保全が実施されることがあります。

 

 

そのため,紙媒体で保存されている資料であれば,

会社に長期間保管されていて,証拠を確保できる確率は高いのですが,

パソコンのログなどのデジタルデータの場合,

パソコンのOSをアップデートした際に消去されたり,

古いデータから自動的に削除されていたりすることがあるので,

証拠保全にいったときには,ログデータが残ってなくて,

空振りに終わってしまうことがあります。

 

 

証拠保全という奥の手があるのですが,

手間と時間がかかるので,やはり,

労働者は,在職中にタイムカードなどの証拠をコピーしたり,

タイムカードがない場合には,GPS機能で残業時間を

記録するアプリを利用して,自分で残業時間を記録するなどして,

自分の手で証拠を確保するべきなのです。

 

 

なお,GPS機能で残業時間を記録するアプリとして,

残業証拠レコーダーhttps://zanreko.com/)や,

残業証明アプリhttp://残業証明アプリ.com/

といったものがありますので,紹介させていただきます。

解雇を争う2つの方法

労働者が解雇された場合,解雇を争う方法

は大きく分けて2つあります。

 

 

 

 

1つは,解雇が無効であるとして,

労働者が会社との労働契約上の権利を有する地位にあることの

確認を求め(地位確認といいます),

解雇期間中の賃金(バックペイといいます)を請求する方法です。

 

 

この地位確認とバックペイを請求する方法は,

解雇が無効なので,労働者は,解雇した会社で

働き続けますという就労請求が前提となっています。

 

 

もう1つの方法は,権利を濫用した違法な解雇によって,

労働者が損害を被ったとして,

不法行為(違法に他人に損害を与える行為のことです)を理由に,

会社に対して,損害賠償請求する方法です。

 

 

この損害賠償請求は,解雇した会社で

就労することは前提になっていません。

 

 

一般論として,地位確認とバックペイを請求する方法の方が,

労働者にとってより多くの金銭が会社から支払われることが多いです。

 

 

もっとも,地位確認とバックペイを請求する方法の場合,

解雇した会社へ復職して就労することが前提となっているため,

会社から復職を求められたときに,

解雇した会社に戻りたくない労働者は対応に困ります。

 

 

自分を解雇した会社に復職しても,会社でうまくやっていけるのか,

また,会社から仕返しをされるのではないかと不安に思うからです。

 

 

 

 

会社には戻りたくはないけど,解雇には納得できないので,

会社に対して金銭請求したいと考える労働者がほとんどだと思います。

 

 

そこで,どうしても会社に戻りたくない場合に,

損害賠償請求の方法をとることがあります。

 

 

労働契約法16条で,権利を濫用した解雇は無効とされます。

 

 

そして,民法1条3項には,「権利の濫用は,これを許さない

と規定されており,権利の行使が濫用になるときは,

不法行為として損害賠償の責任を免れることはできないのです。

 

 

そのため,権利を濫用した無効な解雇によって,

不法行為が成立するのです。

 

 

それでは,解雇で損害賠償請求する場合,

どのような損害が賠償の対象となるのでしょうか。

 

 

1つは,賃金相当額の逸失利益です(本来得られていたはずのに,

不法行為によって得られなくなった利益のことです)。

 

 

解雇がなければ,解雇した会社で勤務し続けて

賃金をもらえていたはずなのに,解雇によって

賃金が得られなくなったので,本来もらえていたはずの

賃金相当額を損害として請求します。

 

 

裁判では,解雇後,再就職に必要な期間の賃金相当額が

逸失利益として認められることがあるですが,

1年分,8ヶ月分,6ヶ月分,3ヶ月分などと幅があります。

 

 

もう1つは,慰謝料です。

 

 

解雇された労働者は,一方的に職場から排除されて

仕事をする社会人としての生活ができなくなり,

毎月の賃金も途絶えて生活できなくなる不安を抱えるので,

多大な精神的苦痛を被るのが通常です。

 

 

しかし,裁判では,財産的損害が満たされるだけでは

慰藉できないような違法性の強い解雇でなければ

慰謝料が認められない傾向にあります。

 

 

解雇で慰謝料を請求するには,

解雇の経緯,手続,解雇理由,不当な動機の有無などの点から

解雇の違法性が強いことを主張していくことが必要になります。

 

 

なお,解雇の損害賠償請求で会社から,

雇用保険の失業給付を受けている場合に,

失業給付の受給額を損害額から差し引くように

主張してくることがあります。

 

 

 

 

しかし,雇用保険の失業給付は,

離職の理由を問わず社会政策上認められるものであり,

労働者も雇用保険料を労使折半で負担していることから,

損害額から失業給付の受給額を差し引くことはできないと考えられます。

 

 

損害賠償請求の場合,労働者に支払われる金額が

いくらになるのかが見通せないことがあり,

労働者の満足いく解決にならない可能性もあります。

 

 

解雇を争う場合,クライアントの意向を聞きながら,

地位確認とバックペイの請求でいくのか,

損害賠償請求でいくのかを吟味していきます。

会社が違法な配転命令を撤回してきたときの対処法

会社が違法な配転命令をして,労働者がこの配転命令が

違法であると争いだしたら,会社がその配転命令を形式的に撤回して,

就労を命じてきた場合,労働者は,

就労命令に従わなければならないのでしょうか。

 

 

会社がこのような違法な配転命令を発令したことによって

破壊された労働契約上の信頼関係が回復したとは

認められない場合には,労働者は,就労命令に従わなくても,

会社に対して賃金請求できると判断された裁判例を紹介します

(ナカヤマ事件・福井地裁平成28年1月15日・

労働判例1132号5頁)。

 

 

原告の労働者は,被告である住宅リフォーム会社

の福井支店の営業マンでした。

 

 

被告会社は,賞罰規定を定めました。

 

 

賞罰規定には,月間受注ノルマを200万円とし,

ノルマを達成できなかった労働者に対しては,

被告会社が決定する支店へ異動させるか,

固定給を10万円下げる降格をすると定めれていました。

 

 

原告の労働者は,このノルマ200万円を達成できませんでした。

 

 

 

もっとも,福井支店では,受注100万円

を達成できた人すらいませんでした。

 

 

被告会社は,原告の労働者に対して,

ノルマ200万円を達成できなかったことから,

固定給を10万円下げる降格か,

自主退職をするかのどちらしかないと主張して,

労働契約の内容を変更する書面にサインすることを求めてきました。

 

 

原告の労働者がサインを拒んでいたところ,被告会社は,

原告の労働者に対して,福井支店から長野支店への配転を命じ,

これに応じられないのであれば,自主退職するしかないと主張しました。

 

 

原告の労働者が,この配転命令に応じられないと回答したところ,

被告会社の福井支店に原告の労働者の席がなくなり,

長野支店への転勤か自主退職かの選択を迫られたことから,

原告の労働者は,被告会社に出勤しなくなりました。

 

 

 

 

原告の労働者が,被告会社に対して,裁判を起こして,

争っている途中に,被告会社は,長野支店への配転命令を撤回して,

福井支店での就労を命じてきました。

 

 

これに対して,原告の労働者は,

被告会社が本件配転命令の違法性を争っており,

被告会社との労働契約における信頼関係が確立されていないことから,

一度福井支店に配属されたとしても,再び不当に配転されないという

保証がないとして,この就労命令に応じませんでした。

 

 

判決では,被告会社の賞罰規定は,地域的特性を考慮することなく,

困難な売上高の達成を求める一方,達成できなかった場合には,

直ちに,固定給を10万円減額するか,

他の支店に異動させる制裁を課すものであり,

著しく過酷に過ぎ,不合理であると判断されました。。

 

 

さらに,原告の労働者は,50年以上福井市内で暮らし,

配転命令当時は妻子と同居していたので,

内示もないまま突如として長野支店へ異動を命じられることは,

原告の家族にとっても生活上著しい不利益となると判断されました。

 

 

その結果,長野支店への配転命令は違法無効となりました。

 

 

また,被告会社が配転命令を撤回しても,

本件配転命令で破壊された原告の労働者と被告会社の

労働契約上の信頼関係は回復しておらず,

原告の労働者が配転命令撤回後も出勤していないのは,

被告会社の責任であることから,原告の労働者は,

被告会社に対して,本件配転命令撤回後も

賃金請求ができると判断されました。

 

 

労働者と会社の力関係の差を考えれば,

会社が形式的に配転命令を撤回しただけでは,

復職後の不利益な取扱の可能性が残ったままとなり,

労働者は,安心して復職できません。

 

 

本判決は,このことを適切にとらえて,

違法無効は配転命令をおこなった会社が労働契約上の

信頼関係を回復しない限り,就労していない期間についても

賃金請求ができることを明確にした点で画期的です。

 

 

会社が,解雇や配転命令を形式的に撤回したとしても,

信頼関係の回復がないのであれば,労働者は,

無理に就労する必要はなく,賃金請求ができるのです。

過労死防止大綱の改訂

7月24日に,厚生労働省が過労死防止大綱を3年ぶりに改訂しました。

 

 

過労死防止大綱を読むと,現代社会の労働の現状と課題,

過労死を防止するには,どのような対策を行えばいいのかが

分かりますので,本日は,労働者の方々に

知っておいていただきたい点をアウトプットします。

 

 

まず,現状と課題ですが,月末1週間の労働時間が

60時間以上の労働者の割合は,平成26年から平成29年の間

に0.8ポイント(32万人)減少し,平成29年は

7.7%(432万人)となっており,

長時間労働している労働者がなかなか減少していない現状があります。

 

 

 

 

1つの勤務と1つの勤務の間に連続した休息時間をもうける

勤務間インターバルの導入状況は,「導入している」企業が1.4%,

「導入を予定又は検討している」企業が5.1%,

「導入の予定はなく,検討もしていない」企業が92.9%であり,

まだまだ勤務間インターバルについての理解が広がっていません。

 

 

年休の取得日数は横ばいで推移しており,

取得率は直近2年間で微増しているものの,

平成28年で49.4%と近年5割を下回る水準で推移しています。

 

 

過労死を発生させる一つの原因は長時間労働ですので,

長時間労働する労働者に着目して,労働時間の短縮,

年休の取得の促進,労働時間の把握を客観的に行う

ことが課題となっています。

 

 

この現状と課題を踏まえて,過労死防止大綱では,

数値目標が設定されています。

 

 

労働時間については,2020年までに

週労働時間60時間以上の労働者の割合を5%以下とする。

 

 

勤務間インターバルについて,2020年までに

勤務間インターバルを知らなかった企業の割合を20%未満とし,

勤務間インターバルを導入している企業の割合を10%以上とする。

 

 

年休について,2020年までに年休の取得率を70%以上とし,

年休の取得日数が0の労働者を解消する。

 

 

現状の労働実態からすると野心的な目標ですが,

過労死防止大綱ができてからも,過労死や過労自殺がなくならず,

事件も大きく報道されていることから,

過労死や過労自殺をなくすために,

国民が一丸となって達成すべき目標なのです。

 

 

また,働きすぎが多いとして特別に調査する対象業種として,

自動車運転者,教職員,IT産業,外食産業,医療,建設業,メディア

の7業種が選ばれました。

 

 

最近,過労死や過労自殺がマスコミで大きく報道されたり,

労働判例の過労死や過労自殺で紹介されている

業種と一致しているので,まずはこれらの業種の

長時間労働対策をいかにしていくのかが重要になります。

 

 

 

今後,国は,過重労働の疑いのある会社への監督指導の徹底,

過労死を発生させた会社に対する原因究明と再発防止の指導,

違法な長時間労働が認められた企業の公表,

36協定を締結していない会社に対する監督指導など,

長時間労働を削減する取り組みを実施していきます。

 

 

過労死をなくしていくためには,

労働者が自分の労働時間や健康状態を把握し,

周囲の人も働き過ぎを警戒するなど,

国民一人ひとりの小さな実践が不可欠だと考えます。

 

過労死防止大綱が,少しでも多くの国民に,

過労死の実態を知ってもらい,過労死をなくすために

どうすればいいのかを真剣に考えるきっかけになることを願います。

トラック運転手の待機時間は労働時間か

未払残業代請求の裁判では,会社の指示があれば

直ちに作業にとりかからなければならない状態にある

手待ち時間が労働時間なのか,休憩時間なのかで

争われることがあります。

 

 

本日は,トラック運転手の出荷場や配送先における

待機時間が労働時間なのか,休憩時間なのかが争われた田口運送事件

(平成26年4月24日横浜地裁相模原支部判決

・労働判例1178号86頁)を紹介します。

 

 

この事件のトラック運転手は,集荷場で乳製品や冷凍食品を

トラックに積み込み,運送して,配送先で荷物をおろす

という仕事をしていました。

 

 

 

集荷場や配送先で,トラック内で待機する時間があり,

その待機時間に具体的な作業をしていなかったと推測されます。

 

 

もっとも,集荷場では,荷物の積み込みを待つトラックの列に

並ばなければならず,行列が前に進むたびに

トラックを前進させなければなりません。

 

 

乳製品や冷凍食品を積み込むので,

トラックの冷凍庫の保冷器を稼働させてままに

しておかなければなりませんし,温度管理を

厳格に行うことが要求されていました。

 

 

集荷場では,荷物が五月雨式にでてくる上,

他の並んでいるトラックの迷惑にならないように,

原告らトラック運転手は,でてきた荷物をすぐにトラックに運び,

他の運転手の積み込みを手伝っていました。

 

 

 

また,配送先にトラックを駐車させるスペースがないこともあり,

配送先から連絡があるまで,トラックの中で荷物を

継続的に保管しなければなりませんでした。

 

 

このように,原告らトラック運転手は,

トラックから離れることができませんでした。

 

 

このような原告らトラック運転手の手待ち時間は

労働時間なのでしょうか,それとも休憩時間なのでしょうか。

 

 

そもそも,労働時間とは,

労働者が会社の指揮命令下に置かれている時間をいいます。

 

 

そして,当該時間において労働契約上の役務の提供が

義務付けられていると評価される場合には,

労働からの解放が保障されているとはいえず

労働者は会社の指揮命令下におかれていると判断されます。

 

 

本件では,原告らトラック運転手の労働実態をみれば,

集荷場や配送先における待機時間は,いずれも

待ち時間が実作業時間にあたり,会社の指揮命令下に

置かれていたと評価できるので,労働時間とされました。

 

 

待機時間に,原告らトラック運転手がトイレにいったり,

コンビニに買い物にいくなどトラックを離れる時間があったとしても,

休憩時間とは評価できないと判断されました。

 

 

会社が手待ち時間は,労働時間ではないとして,

その分の残業代を支払っていなくても,

実際の労働の状況を具体的に明らかにして,

会社の指揮命令下に置かれていたことを積極的に主張することで,

手待ち時間が労働時間と判断されて,

未払残業代請求が認められることがあります。

 

 

手待ち時間に対する給料が支払われていない場合,

自分の労働実態からして,手待ち時間が労働時間といえないか

を検討することをおすすめします。

夫婦脳4~離婚における脳の性差~

黒川伊保子先生の

夫婦脳~夫心と妻心は,なぜこうも相容れないのか~

の本のアウトプットの続きです。

 

 

 

 

離婚事件を担当していると,クライアントが

男性と女性とで異なる点があることに気づきます。

 

 

それは,離婚が決まったときに明らかとなります。

 

 

離婚は,人生最大のストレスと言われているように,

離婚に至るプロセスにおいて,男性も女性も同じように

苦労するのですが,離婚が決まれば,

女性のクライアントは,晴れ晴れと明るくなるのですが,

男性のクライアントは,しょんぼりと落ち込んだまま

であることが多いです。

 

 

なぜ夫は何もしないのか,なぜ妻は理由もなく怒るのか

の著者である夫婦問題カウンセラーの高草木陽光氏は,

離婚の男女差を次のように表現しています。

 

 

 

 

夫は離婚で白髪になる,妻は離婚で茶髪になる

 

 

夫は,離婚で弱くなり,妻は,離婚してもたくましく生きていくのです。

 

 

この離婚の性差について,「夫婦脳」の本にヒントが記載されていました。

 

 

 

 

男性は,真摯な向上心か,与えられた責務を遂行する責任感

のどちらかに導かれて,人生の長い道を歩むので,

「自分がいい思いをしたい」という快感欲求が弱いようです。

 

 

そのため,男性は,「自分のため」というよりは,

「家族のため」に厳しい仕事に耐えて生きているのです。

 

 

他方,女性は,自分に興味があり,

「自分がいい思いをしたい」という欲求が強いようで,

明日の快感を求める気持ちで,女性たちは,

たくましく生きていけるのです。

 

 

すなわち,女性は,自らの明日の快感を求めて,

生きる意欲を失わないでいられる,

生きる意欲の自家発電型の脳」の持ち主なのです。

 

 

このような脳の性差のため,男性は,離婚によって,

妻はいなくなり,子供もとられてしまい,

「家族のため」にがんばるという生きる意欲の源泉がなくなり,

弱ってしまい,白髪が増えるのでしょう。

 

 

他方,女性は,離婚しても,「自分のため」に生きていけるので,

新しい意欲がわいて,いきいきと次のライフステージへ進み,

気分が明るくなって茶髪になるのでしょう。

 

 

さて,夫婦が離婚にいたらないようにするためには,

まずは,互いの脳の違いから,相手は自分とは全く異なる

感性の持ち主であり,相容れない部分が多々あることを

知識として知っておく必要があります。

 

 

その上で,夫は,「自分のため」にでは生きる意欲がわいてこないので,

妻は,夫を頼りにして,「家族のため」にという

生きる意欲を持たせ続けることが重要であると思います。

 

 

逆に,夫は,妻の話を聞いて,

ひたすら共感することが重要であると思います。

 

 

「夫婦脳」を読み,夫婦は,互いに明日の希望を灯しあうことで,

よりよい関係になっていくことを学びました。

労災担当官削減の悲劇

7月24日の北陸中日新聞の報道によると,

今年6月に成立した働き方改革関連法に基づき,

厚生労働省は,企業の長時間労働を是正するために,

労働基準監督署の労働基準監督官を増やして,

労災担当官を減らすことに決めたようです。

 

 

労働基準監督署には,企業が労働基準法を守っているかを

監督・指導・取締をする監督部署と,

労災申請に対して,労災か否かを認定する労災部署があります。

 

 

 

 

厚生労働省は,違法残業への監督を強化するために,

監督部署の人員を2017年度1929人だったのを

2500人に増やし,一方,労災部署の人員を

2017年1966人だったのを1300人に減らすようです。

 

 

サービス残業やパワハラがまかりとおっている現代社会において,

労働基準法をしっかりと守る企業を増やすために,

監督部署の人員を増加することは重要なことです。

 

 

しかし,労災部署の人員を減らせば,労災認定がでるまでに

時間がかかり,被災した労働者の保護が

手薄になるという不都合が生じます。

 

 

特に,パワハラなどでうつ病などの精神疾患を発症して

働けなくなり,労災申請する件数が

5年連続で右肩上がりに増加しています。

 

 

精神疾患の労災の場合,1ヶ月あたり100時間程度

の残業があったかの認定をしたり,

ノルマが達成できなかったり,

上司とのトラブルやいじめや嫌がらせなど

の出来事があったのかについて,

会社の関係者から事情聴取するなどして調査する必要があり,

高い専門性が求められます。

 

 

労災申請の件数が増加しているのに,

労災担当官の人員が減少すれば,

労災認定業務が滞ることは明らかです。

 

 

転落や転倒などでけがを負った場合の労災は,

申請から1ヶ月程度で認定の判断がされますが,

精神疾患の労災は,申請から8ヶ月程度かかってしまいます。

 

 

ただでさえ,精神疾患の労災の認定がでるまで

申請から8ヶ月程度かかっているのが,

さらに時間がかかってしまうと,

パワハラでうつ病になった労働者の保護が遅くなってしまいます。

 

 

パワハラでうつ病になり,働けなくなったので,

精神科での治療費や休業補償を請求しても,

1年ほど待たないとそれらの費用が支給されないことになれば,

その間の生活費が不足して,困窮することになり,

被災した労働者は,まさに踏んだり蹴ったりです。

 

 

 

 

さらに,労災申請が増えているのに,

労災担当官が減少すれば,労災担当官の業務が過剰になり,

労災担当官が過労死したり,精神疾患を発症させてしまう

危険性もあります。

 

 

労働基準法を守れと監督する労働基準監督署内で,

サービス残業が蔓延して過労死などが発生する悲劇が起こりかねません。

 

 

企業を監督指導する監督業務と,

労災事案を調査して認定する労災業務は

車の両輪ですので,労災担当官を増員することを切に願います。

 

 

夫婦脳3~不倫を脳科学的に分析すると~

黒川伊保子先生の

夫婦脳~夫心と妻心は,なぜこうも相容れないのか~

の本のうち,本日は,不倫の脳科学的分析

についてアウトプットします。

 

 

 

不倫をすると,家族は崩壊し,

100~200万円ほどの慰謝料を支払う

リスクを負うのですが,それでも,人は不倫をしてしいます。

 

 

不倫をすれば,とんでもない損失を被ることは知っていても,

どうして,人は不倫をするのでしょうか。

 

 

 

黒川先生は,女性と男性とでは,

脳科学的に不倫に至る経過が異なると分析しています。

 

 

まず,動物は,すべからく,他個体の体臭(フェロモン)から,

その個体の遺伝子情報を感知しており,

生殖相性のいい遺伝子を持つ異性」を嗅ぎ当てることで発情します。

 

 

これが恋です。

 

 

フェロモンを嗅ぎ分けるセンサーは,

生殖リスクの高い種ほど感度が高く,

生殖リスクに著しく性差のある哺乳類の場合,

雌のほうが圧倒的に感度が高く,生殖相手を厳選します。

 

 

その結果,女性は,男性のフェロモンから遺伝子の情報を嗅ぎ取り,

何百人・何千人に一人の相手を見つけ出して,深く執着します。

 

 

もっとも,この女性の執着は永遠に続きません。

 

 

残せる遺伝子セットの数が限られてしまい,

万が一生殖に至れない事情があったときには,

生涯の生殖機会そのものを失うからなのです。

 

 

そのため,女性の恋は,

ほとほと嫌気がさして終わる」ことになっているのです。

 

 

 

女性の恋には,不倫は案外少なく,

「深い確信」→「嫌気」→「次の深い確信」

というサイクルを描いていくのです。

 

 

そうなると,女性が不倫をするのは,

夫や交際相手の男性に「ほとほと嫌気がさした」ため,

次の生殖相手を見つけて,自分の遺伝子を残すためということになります。

 

 

妻が浮気を避けるためには,「ほとほと嫌気がさした

夫を親友として受け入れ,頼り合い,

支え合う生活共同体を構築していくしかないのです。

 

 

夫としては,生活共同体を構築していくために,

子育てに疲れた妻のフォロー,家事の手伝い,

とりとめのない話しの聞き役をすることが重要になります。

 

 

他方,男性の不倫は,女性の不倫と異なります。

 

 

哺乳類の雄は,長い妊娠授乳期を余儀なくされる雌に比べて,

生殖リスクが著しく低いです。

 

 

そのため,「生涯に出来るだけ多くの遺伝子バリエーションを残したい

という生物の本能を実現するためには,男性は,

相手を厳選するよりは,やってきたチャンスを逃さない

のが最も合理的な手段となります。

 

 

男性は,女性ほど積極的に異性を嫌わず,

この人しかいないという確信も起こりにくく,

もともと不倫しやすいのです。

 

 

 

 

男性は,恋の確信ではなく,責任感で結婚し,

無邪気な責任遂行感で結婚をキープしています。

 

 

そして,男性は,この責任を積み重ねた相手に

強い愛着を抱く癖があります。

 

 

男性は,結婚期間が短い間は,この愛着が弱くて,

不倫しやすいのですが,結婚期間が長くなると,

妻への愛着が強くなり,不倫しにくくなるのです。

 

 

夫に不倫された妻が,結婚を続けるのであれば,

妻は,夫を穏やかに,頼りにし続ければ,やがて,

不倫相手の女性が夫に対して

「ほとほと嫌になり」,不倫関係が解消されて,

夫は妻のもとへ戻ってくることになりそうです。

 

 

このように,脳科学上,女性は,「ほとほと嫌気がさして」不倫し,

男性は,「魔が差して」不倫する傾向がありますので,

夫婦は,この特性を理解した上で,

互いに不倫しないように対処するといいと思います。

 

 

夫婦脳2~妻を新妻に変える方法~

昨日に引き続き,黒川伊保子先生の

夫婦脳~夫心と妻心は,なぜこうも相容れないのか~

という本のアウトプットをします。

 

 

 

女性脳には,何十年分もの関連記憶

を一気に展開する力があります。

 

 

具体的には,夜中に子供が熱を出した場合,

母親は,これまでの発熱シーン,

上の子の似たようなシーン,

自分自身が幼かった時の記憶,

数年前に公園で立ち話をしたママ友の情報

などなどを総動員して,目の前の熱を出した子供

にどう対処すべきかをダイナミックに判断しています。

 

 

 

体系化された知識に,体験から絞り出してくる知恵を足して,

女性は,その都度,人生最良の判断をくだすのです。

 

 

子供を産み育てる女性だからこそ,

過去の類似記憶を総動員する」能力が備わっており,

この能力があるから,初めてであっても子育てができるのです。

 

 

しかし,この「過去の類似記憶を総動員する」能力

には副作用があります。

 

 

夫が何か無神経な発言をしたら,過去の無神経な発言を,

一気に脳裏に展開し,過去を蒸し返して,夫を批難します。

 

 

 

結婚して20年がたっているのに,

子供を妊娠してつわりがひどかったときに

夫から言われた無神経な一言を

今持ち出して,夫をせめるのです。

 

 

男性から見れば,とても恐ろしい能力です。

 

 

それでは,女性の「過去の類似記憶を総動員する」能力に,

男性はどう対処すればいいのでしょうか。

 

 

その方法の一つは,女性脳に負の記憶を紡がせないで,

正の記憶を紡いでもらうことにあります。

 

 

正の記憶を紡いでもらうためには,

妻が継続してやっていること」に言及するのです。

 

 

「きみの味噌汁を飲むのも,もう25年か。

おふくろの味噌汁より長くなったなぁ。」などと,

「ずっとしてくれている」ことを,

静かに言葉にすればいいのです。

 

 

 

 

些細なことでもいいので,妻がずっと継続して

心がけていることにちゃんと気付いて,言葉にするのです。

 

 

女性は,ほめてほしいわけではなく,わかってほしいので,

過去時間を言葉で労えば,ことのほか心に響くのです。

 

 

もう一つの方法は,負の記憶を想起させないために,

繰り返し未来を思わせることです。

 

 

例えば,「もう少し紅葉になったら京都にいこう」などと,

少し先の計画を言えば,女性は「何を着ていこうかしら」などと

近未来の楽しみを繰り返し想起するので,

過去の負の記憶を想起しにくくなります。

 

 

このように,女性の「過去の類似記憶を総動員する」能力

への対処法は,①過去時間を言葉で労うことと

②未来時間を紡ぐことなのです。

 

 

この2つを実践できれば,

妻を無邪気な新妻に変えることができるかもしれませんね。

 

 

いつも子育てをがんばっていることに労いの言葉をかけて,

近い将来においしい食事にいくことを伝えてみようと思います。

夫婦脳~夫婦7の倍数の法則~

8月3日に金沢市西倫理法人会で「男女問題と夫婦愛和

という演題で講話する機会をいただいたので,

その準備のために黒川伊保子先生

夫婦脳~夫心と妻心は,なぜこうも相容れないのか~

を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

黒川先生は,人工知能研究者として,

人間の脳を長年研究されてきたので,人間の脳の観点から,

夫婦問題が発生するメカニズムと対処法

を分かりやすく説明してくれています。

 

 

まずは,人の脳には,7年という生体サイクルがあるそうです。

 

 

人間の骨髄液は7年で入れ替わります。

 

 

(全国骨髄バンク推進連絡協議会のホームページより抜粋)

 

 

骨髄は,人の免疫の中枢を担っているので,

満7年で骨髄液が入れ替わるのに連動して,

生体の免疫システムも入れ替わります。

 

 

そして,生体は,外界からの刺激を受けると

免疫システムが反応するのですが,

同じ刺激が繰り返されていくうちに,この刺激は

「環境の一部であって受け入れていかなくてはならない事象」

であると,免疫システムが受け入れていくのです。

 

 

このように免疫システムが刺激を環境の一部

と受け入れるのに7年かかるのです。

 

 

これを夫婦にあてはめれば,結婚から6年までは,

愚痴を言い,ケンカしながらも,

ドキドキする半分恋人のような夫婦でいられるのですが,

結婚7年目になると,夫婦の免疫システムは,

互いを環境の一部だと納得して,ドキドキしなくなるのです。

 

 

そのため,結婚7年目は,ドキドキがなくなるので,

外の異性にちょっと心を揺らしたりして,

7年目の浮気が発生する危険が生じやすいのです

 

 

結婚7年目,14年目,21年目,28年目という7の倍数で

夫婦の危機がやってくるという法則があるので,

これはよく理解しておく必要があると思います。

 

 

そして,結婚28年目が夫婦にとって最も危険な時期なのです。

 

 

これは,28年の周期で,人間は,

正反対の感性へ向かうというからです。

 

 

以前は,シャープな車や辛い食べ物が流行していましたが,

28年経つと,丸くてかわいい車や甘い食べ物が流行しました。

 

 

28年で流行が変化するように,

結婚28年目に夫婦は,新婚当時とは正反対の感性状態に陥ります

 

 

かつて「優しくて,おおらか」と思っていた夫が

「優柔不断で,だらしない」夫に変わり,

「男らしくて,頼もしい」と思っていた夫が

「無神経なオレサマ」に変わります。

 

 

これは,妻の脳の感性が変わるから,そう感じるのです。

 

 

その結果,「夫が台所に入ってきただけで,いらっとする

という妻の自覚が生じるように,

結婚28年目に,激しい拒否反応が出るのです。

 

 

 

 

この妻の拒絶反応は結婚26年目ころから顕著に現れるので,

夫は,銀婚式で点数を稼ぐ必要があります。

 

 

他方,結婚30年をこえると,妻は,

見るのも嫌だった夫に対して,徐々に愛しさが戻ってきます。

 

 

夫婦は35年寄り添ってみないと,その真価はわからないので,

相手に「むかっと」したら,「これも,かつて激しく愛し合った証拠」

と思って目をつぶるのが夫婦円満の秘訣のようです。

 

 

脳科学上,恋は永遠ではないのですが,

夫婦は,「恋を超えて,うんざりを超えて,なんぼのもん」なのです。

 

 

脳科学を勉強すれば,夫婦問題が激化する前に

予防することができますので,

夫婦問題で悩まれている方は,

ぜひ男女の脳の仕組みを勉強してみてください。

 

 

アウトプットしたい情報がまだあるのですが,

長くなりましたので,続きは明日以降記載します。