医師や看護師の宿直勤務では残業代を請求できないのか?【弁護士が解説】

Q 医師や看護師の宿直勤務では、残業代を請求することはできないのですか?

 

 

A 労働基準監督署長の宿日直についての許可基準を満たしていない、宿直勤務の場合には、残業代を請求することができます。

 

 

1 宿直とは

 

 

私は、病院で医師として勤務しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月に8回くらい、宿直勤務を担当しています。

 

 

宿直勤務の時には、夜間に救急車で搬送されてきた患者の手術をすることもあり、日中の業務と同じことをしています。

 

 

それなのに、病院から支給される宿直手当の金額が少ないことに納得がいきません。

 

 

病院からは、宿直手当を支払っているので、残業代を支払う必要はないと言われています。

 

 

宿直勤務の場合には、適正な残業代を請求することはできないのでしょうか。

 

 

結論から先に言いますと、病院が、労働基準監督署長の宿日直についての許可基準を満たしていない場合には、宿直勤務の時間について、残業代を請求できます。

 

 

今回の記事では、①宿直とは、②宿直と断続的労働、③宿直勤務における残業代請求が認められた裁判例の紹介、という順番で、わかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。

 

 

まず、①宿直の言葉の意味について解説します。

 

 

宿直とは、夜間に職場で待機することです。

 

 

すなわち、宿直は、待機であって、通常の業務とは異なる軽微な業務を、宿泊を伴ってすることです。

 

 

宿直と似た言葉に、当直と夜勤があります。

 

 

当直とは、当番を決めて、交替制で働くことです。

 

 

当直には、日中におこなう日直と、夜間におこなう宿直があります。

 

 

夜勤とは、夜の時間帯に働くことです。

 

 

夜勤は、宿直と異なり、待機ではなく、夜の時間帯に、通常の業務を行います。

 

 

そのため、夜勤では、1日の労働時間が8時間を超えた場合には、残業代を請求できます。

 

 

2 宿直と断続的労働

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿直の言葉の整理をした上で、②宿直と断続的労働について説明します。

 

 

労働基準法41条において、「断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」は、労働基準法の労働時間の規制の適用が除外されると規定されています。

 

 

すなわち、「断続的労働」に該当すれば、労働者は、会社に対して、残業代を請求できなくなるのです。

 

 

そして、断続的労働とは、作業自体が間をおいて行われるもので、作業時間が長く継続することなく中断し、しばらくして再び同じような態様の作業が行われ、また中断するというように繰り返される労働のことをいいます。

 

 

この断続的労働の一態様として、宿直勤務が挙げられています。

 

 

もっとも、断続的労働に該当すると、労働基準法の労働時間の規制の適用がなくなり、会社は、労働者に残業代を支払わなくてよくなります。

 

 

そうなると、会社は、残業代の支払いを気にする必要がなくなるので、労働者を長時間労働させてしまい、労働者の健康が害されるリスクが生じます。

 

 

そこで、本当に、断続的労働に該当するかについて、労働基準監督署長が許可をしたものだけが、断続的労働と認められるのです。

 

 

それでは、労働基準監督署長の宿日直についての許可基準について、解説します。

 

 

①勤務の態様

 

 

常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、原則として、通常の労働の継続は許可されません。

 

 

医師の場合、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診などによる診察や、看護師に対する指示や確認を行うこと。

 

 

看護師の場合、病室の定時巡回、患者の状態を医師に報告すること、少数の要注意患者の定時検脈や検温を行うこと。

 

 

夜間に充分睡眠がとりうること。

 

 

②宿直手当

 

 

宿直勤務1回の宿直手当の最低額は、事業場において宿直の勤務に就くことの予定されている同種の労働者に対して支払われる賃金の、1人1日平均額の3分の1を下回らないものであること。

 

 

③宿直の回数

 

 

宿直勤務については、週1回を限度とする。

 

 

上記①~③の基準を満たして、労働基準監督署長の許可を得られた場合に限り、宿直勤務について、宿直手当以外の残業代を支払わなくてよくなるのです。

 

 

3 宿直勤務における残業代請求が認められた裁判例の紹介

 

 

ここで、③宿直勤務における残業代請求が認められた裁判例を紹介します。

 

 

奈良県(医師・割増賃金)事件の奈良地裁平成21年4月22日判決・労働判例986号38頁です。

 

 

この事件では、県立病院の産婦人科医である原告が、宿直勤務は時間外労働にあたるとして、未払残業代を請求しました。

 

 

裁判所は、以下の事実関係から、原告の宿直業務は、断続的労働ではないと判断しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

①宿直勤務の時間に分娩対応という通常業務を行っており、その回数も少なくないこと

 

 

②1名の宿直医師が救急医療等の業務を行っていたこと

 

 

③宿直勤務時間の約4分の1の時間は、外来緊急患者への処置や入院患者の緊急手術に従事していたこと

 

 

これらの事実関係から、原告の宿直業務は、常態としてほとんど労働する必要がない勤務であったとはいえないとして、労働基準法41条3号の断続的労働には当たらないと判断されました。

 

 

その結果、医師の宿直業務について、未払残業代請求が認められました。

 

 

このように、医師や看護師の宿直業務の実態を検討すれば、宿直時間に通常の業務を行っていて、断続的労働といえないケースは多いのではないでしょうか。

 

 

断続的労働といえない場合には、未払残業代を請求できますので、弁護士にご相談ください。

 

 

また、You Tubeでも、労働問題に関する役立つ動画を投稿しているので、ご参照ください。

 

 

https://www.youtube.com/@user-oe2oi7pt2p

 

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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