未払残業代請求においてメールの最終送信時刻やパソコンのログオフの時刻が終業時刻とされた事例

1 未払残業代請求では労働時間の立証が重要になります

 

 

未払残業代を請求する事件では,残業代を計算するうえで,

原告の労働者が1日に何時間働いたのかを証拠に基づいて,

証明しなければなりません。

 

 

タイムカードで労働時間の管理がされている会社であれば,

タイムカードをもとに労働時間を認定するのですが,

タイムカードなどで労働時間をしっかりと管理している会社は,

まだまだ少ないのが現状です。

 

 

会社が適切に労働時間を管理していない場合には,

様々な証拠をもとに労働時間を認定できるように,

弁護士は知恵を絞ります。

 

 

2 ウエディングプランナーの未払残業代請求事件

 

 

本日は,様々な証拠をもとに労働時間を認定した

結婚式場運営会社A事件の東京高裁平成31年3月28日判決

を紹介します(労働判例1204号31頁)。

 

 

この事件では,ウエディングプランナーが

結婚式場を運営する会社に対して,未払残業代を請求しました。

 

 

 

被告会社では,シフト表で労働時間を管理していましたが,

原告のウエディングプランナーは,

パソコンのログインやログオフの時刻,

メールの送信時刻,原告のメモの時刻などをもとに,

労働時間を主張しました。

 

 

まず,始業時刻について,裁判所は,

原告の担当する結婚式がない日は,

シフト表に記載された始業時刻,

担当する結婚式がある日は,

新郎新婦が到着する予定時刻の1時間前と認定しました。

 

 

原告は,パソコンのログインの時刻を始業時刻と主張していましたが,

原告の仕事の性質上,パソコンの起動と仕事が直結しているといえず,

業務関連性が明白ではないと判断されたのです。

 

 

本件事件のウエディングプランナーの場合,

パソコンの電源をいれてすぐにデスクワーク

にとりかかるような仕事ではなかったため,

このような判断になったのだと思います。

 

 

デスクワークの多い事務職であれば,

出社してすぐにパソコンの電源をいれて,

パソコンが立ち上がったら,すぐに仕事に取り掛かるのであれば,

パソコンのログインの時刻が始業時刻になると考えます。

 

 

パソコンのログイン時刻を始業時刻と主張するときには,

パソコンの起動と業務関連性を意識する必要があります。

 

 

3 最終送信メール時刻やパソコンのログオフ時刻が終業時刻と認定される

 

 

次に,裁判所は,終業時刻については,

最終送信メールの時刻やパソコンのログオフ時刻があれば,

その時刻を終業時刻としました。

 

 

 

被告会社では,原告のアカウントで他の社員が

ログインすることができるのですが,

他の社員が原告のアカウントで終業時刻まで

仕事をすることは考えがたいので,

原告のアカウントでログオフした時刻まで

業務の必要性があったと認定されました。

 

 

また,最終の送信メール時刻も業務上のものであると認められて,

終業時刻とされました。

 

 

ただ,原告のメモについては,事後的に作成されたものとして,

信用性がないと判断されました。

 

 

労働者の作成したメモについては,

労働したその日にその都度作成しないと,

証拠としては弱いです。

 

 

未払残業代を請求するためには,

労働時間を立証するためにどのような証拠があるか,

その証拠はどの程度証明力があるのかを吟味する必要があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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