忘年会への参加は残業になるのか?【弁護士が解説】

1 労働時間とは?

 

 

この記事を執筆している、2023年12月は、新型コロナウイルスが5類に移行して、初めての忘年会シーズンです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、たまたま、定食屋でランチをしていたところ、NHKのお昼の放送で、興味深いテーマについて報道されていました。

 

 

若手社員から、「忘年会に参加したら、残業代がでるのですか?」という質問に、上司が困惑しているというものです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231202/k10014273261000.html

 

 

なるほど、最近の若手社員の中には、会社の懇親会を業務、と捉えている方が一定数いることがわかり、とても興味深かったです。

 

 

そこで、忘年会に参加したら、残業代がでるのかという、若手社員の疑問について、労働弁護士の立場から、解説したいと思います。

 

 

結論から先にいいますと、原則として、忘年会への参加は、残業にはならず、例外的に、会社からの業務命令がある場合や不利益取扱いによる参加強制がある場合に、忘年会への参加は、残業になります。

 

 

今回は、①労働時間とは、②忘年会への参加が労働時間になる場合とは、③裁判例の紹介という、順番で解説していきます。

 

 

まず、①労働時間について解説します。

 

 

ある時間が、労働時間に該当すれば、労働者は、会社に対して、賃金を請求することができます。

 

 

そして、1日の労働時間が8時間を超えた場合に、1.25倍の残業代を会社に対して、請求することができます。

 

 

では、どのような場合に、労働時間に該当するのでしょうか?

 

 

労働時間とは、会社の指揮命令下に置かれている時間をいいます。

 

 

会社の指揮命令下に置かれているというためには、会社の明示または黙示の指示に基づいて、働いていることが必要です。

 

 

明示の指示とは、会社から、◯◯をしてくださいという業務命令のことです。

 

 

黙示の指示は、労働者が規定と異なる出退勤を行って時間外労働に従事し、そのことを認識している会社が異議を述べていない場合や、業務量が勤務時間内に処理できないほど多く、時間外労働が常態化している場合に、認められます。

 

 

2 忘年会への参加が労働時間になる場合とは?

 

 

次に、②忘年会への参加が労働時間になる場合について解説します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忘年会への参加が、会社の指揮命令下に置かれていると評価できれば、労働時間に該当します。

 

 

ようするに、忘年会への参加が、会社から義務付けられ、または、これを余儀なくされたときに、会社の指揮命令下に置かれていると評価できます。

 

 

そして、会社の業務命令があれば、明示の指示があったといえ、会社から忘年会への参加が義務付けられていたといえ、労働時間になります。

 

 

また、忘年会に参加しないと不利益な取扱を受けることになり、忘年会への参加を余儀なくされている場合、黙示の指示があったといえ、労働時間になります。

 

 

例えば、忘年会に参加しないと、欠勤や早退と取り扱い、賃金が減額されたり、人事考課においてマイナスに評価される場合、不利益な取扱を受けるとして、労働時間に該当すると考えられます。

 

 

もっとも、忘年会への参加について、業務命令をしたり、参加しない場合に、不利益に取り扱う会社は、それほど多くないと思いますので、実際に、忘年会への参加が労働時間に該当する場合は、少ないと考えます。

 

 

また、実際の裁判で、忘年会への参加について、業務命令があったり、参加しない場合に不利益に取り扱う実態があった、と証明するのが難しかったりします。

 

 

さらに、忘年会の参加だけで、残業代を請求しても、金額は少額なので、裁判をするメリットはありません。

 

 

そのため、忘年会への参加が労働時間であるとして、残業代請求をすることは、正直おすすめはできません。

 

 

3 懇親会への参加が労働時間に該当するかが争われた裁判例の紹介

 

 

最後に、③懇親会への参加が労働時間に該当するかが争われた裁判例を紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国・大阪中央労基署長(ノキア・ジャパン)事件の大阪地裁平成23年10月26日判決(労働判例1043号67頁)です。

 

 

この事件では、取引先との懇親会に参加していたところ、くも膜下出血を発症して死亡した労働者の遺族が、労災保険の不支給処分の取消を求めたものです。

 

 

裁判所は、「一般的には、接待について、業務との関連性が不明であることが多く、直ちに業務性を肯定することは困難である」と述べています。

 

 

もっとも、この事件では、会食が顧客を交えて技術的な問題点を議論する場や、社員らと意見交換する場として位置づけられていたこと、会社もその必要を認めて費用を負担していたことから、懇親会参加の時間は、労働時間と算入すると判断されました。

 

 

過労死の事件では、懇親会への参加が多く、懇親会への参加の時間を考慮することで、労働時間が長くなり、1ヶ月間の残業が、80時間から100時間になる場合には、懇親会の参加の時間を労働時間とすることについて、争う実益はあります。

 

 

他方、残業代請求の事件では、懇親会の参加の時間は、労働時間と認定されにくく、懇親会の参加の時間を労働時間とすることについて、争う実益はあまりないと考えます。

 

 

今回の記事をまとめると、忘年会への参加は、原則、労働時間に該当しませんが、会社からの業務命令があったり、不利益取扱を理由に参加を事実上強制される場合には、例外として、労働時間に該当します。

 

 

また、You Tubeでも、労働問題に関する役立つ動画を投稿しているので、ご参照ください。

 

 

https://www.youtube.com/@user-oe2oi7pt2p

 

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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