新型コロナウイルスを理由に会社から休業を命じられたら

1 新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が増えています

 

 

新型コロナウイルスの感染が拡大していることを受けて,大企業では,

在宅勤務に切り替えているところが増えているようです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200227/k10012303861000.html

 

 

通勤電車の密閉された空間などで労働者が

新型コロナウイルスに感染するのを防ぐためなのでしょう。

 

 

本日は,新型コロナウイルスの影響で在宅勤務をしたり,

会社から休業を命令された場合の賃金について,解説します。

 

 

 

2 会社から在宅勤務を命令されたら

 

 

まず,会社から在宅勤務を命じられた場合,

就労場所が会社から自宅に変わるだけで,

働いていることには変わりないので,

労働者は,会社に対して,満額の賃金を請求できます。

 

 

在宅勤務の場合,何時から何時まで働いたのかという,

労働時間管理が難しくなります。

 

 

会社に出勤すれば,残業時間は別として,

労働契約で定められた勤務時間働いたか否かは,

他の労働者の目もあるので,会社にいればだいたいわかるものです。

 

 

在宅勤務の場合,労働者としては,自宅でしっかりと

働いていたことを明らかにするために,

ノートパソコンのログデータを保存するか,

労働時間を管理するアプリなどを利用して,

何時から何時まで自宅で労働したことを記録しておくといいでしょう。

 

3 会社から休業を命令されたら

 

 

次に,会社から,新型コロナウイルスの影響で,

会社を休むように命じられた場合について,検討します。

 

 

会社から休業を命じられて,労働者に年次有給休暇が残っており,

労働者が,せっかくの機会なので,年次有給休暇を取得しようと

考えたのであれば,年次有給休暇を取得するのがいいでしょう。

 

 

年次有給休暇は,取得しないと,2年の時効で消滅してしまうので,

使えるときに使った方がいいと考えます。

 

 

年次有給休暇を取得すれば,就業規則の定めに従い,

①所定労働時間に労働した場合に支払われるべき通常の賃金,

または,②3ヶ月間の平均賃金のいずれかが支払われます。

 

 

ようするに,休んでも,給料が補償されるのです。

 

 

また,2019年4月1日から,会社は,

年次有給休暇を10日以上付与される労働者に対して,

1年間に5日の年次有給休暇を取得させなければならないので,

会社としても,労働者に,年次有給休暇を使って

休んでもらったほうが助かります。

 

 

そのため,新型コロナウイルスの影響で会社を休むときには,

まずは,年次有給休暇を取得することを検討しましょう。

 

 

では,年次有給休暇もすでに全部取得してしまっていて,

会社から休業を命じられた場合,賃金はどうなるのでしょうか。

 

 

 

この場合,労働者は,会社に対して,労働基準法26条を根拠に,

平均賃金の6割を請求できると考えます。

 

 

労働基準法26条には,「使用者の責めに帰すべき事由」

による休業の場合,会社は,労働者に対して,休業手当として,

平均賃金の6割を支払わなければならないと規定されています。

 

 

この「使用者の責めに帰すべき事由」には,

経営者として不可抗力を主張し得ない一切の場合が含まれます。

 

 

そのため,不可抗力による休業の場合以外,会社は,

労働者に休業を命じる場合,労働者に対して,

平均賃金の6割を支払わなければならないのです。

 

 

不可抗力とは,事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても

避けることのできない事故のことをいいます。

 

 

例えば,東日本大震災のような災害が発生して,

会社が被災した場合には,不可抗力といえ,

会社が労働者に休業を命じても,

平均賃金の6割を支払わなくても問題はないでしょう。

 

 

他方,今回の新型コロナウイルスについては,

2020年3月2日の時点において,

外部からの交通が遮断されるほどには感染が拡大しているわけではなく,

現時点において,会社が労働者に休業を命じた場合には,

不可抗力とはいえず,会社は,平均賃金の6割を,

休業を命じた労働者に支払わなければならないと考えます。

 

 

中国武漢のように,外部からの交通が遮断されて,

企業の経済活動が停止してしまった場合には,

不可抗力に該当するとして,会社は,労働者に休業を命じても,

平均賃金の6割を支払わなくてもよいことになると考えます。

 

 

なにはともあれ,早く,新型コロナウイルスの問題が

収束することを祈っています。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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