会社が倒産して給料が支払われない時の対処法
1 会社が倒産して給料が支払われない
会社が倒産したので,給料が支払われなくて困っています,
という法律相談を受けることがあります。
会社の社長が行方をくらまして連絡がとれない,
社長と連絡はとれるけれども未払の給料を支払うと言っているのに
全然支払ってくれない,といった問題があります。
労働者は,働けば,当然に,会社に対して,
給料の支払を請求できるのですが,会社に,
労働者に給料を支払うだけの資力がなければ,
無い袖は振れないということで,
会社から給料の回収をするのは困難です。
会社の社長に給料の請求ができないのかも考えるのですが,
会社と社長は別人格であり,労働者に対して
給料の支払義務を負っているのは,
労働契約を締結している会社であって,社長ではないのです。
社長に対して,取締役の責任追及として,
未払給料分の損害賠償請求をすることも考えられますが,
未払給料の金額が小さいと,弁護士に依頼しても
費用倒れになってしまうリスクがあります。
2 未払賃金の立替払制度
そこで,このようなときには,
未払賃金の立替払制度を利用できないかを検討します。
未払賃金の立替払制度とは,会社が倒産して
賃金や退職金の未払が生じたときに,
国(独立行政法人労働者健康福祉機構)が
会社に代わって立替払をする制度です。
立替払の対象となる未払賃金は,
退職日の6ヶ月前の日から立替払請求日の前日までの間に
支払期日が到来している定期賃金
(毎月1回以上一定の期日を定めて支払われる賃金)及び退職手当です。
賞与,解雇予告手当,遅延損害金,旅費などは
立替払の対象にはなりません。
未払賃金が2万円以上あることが必要で,
立替払の対象となる賃金額は,
未払賃金総額の8割とされています。
もっとも,未払賃金総額には,
退職日の年齢に応じた限度額が設定されています。
退職日における年齢 | 未払賃金総額の限度額 | 立替払の総額 |
30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
立替払制度を利用するには,
倒産した事業主(会社,個人を含みます)が
労災保険の適用事業を1年以上行ってることが必要です。
労災保険は,一人でも労働者を雇用すれば強制的に適用されるので,
ほとんど全ての事業が対象となります。
事業主が労災保険の保険料を支払っていなくても,
この要件を満たします。
対象となる倒産ですが,破産,民事再生,会社更生,特別清算
といった法的手続をとった倒産は全て適用されます。
法的な倒産手続の場合,裁判所や破産管財人などから,
破産などの事由と未払賃金額などについて証明書をもらい,
これを添付して労働者健康福祉機構に
未払賃金の立替払請求書を提出します。
また,中小企業の場合,法的な倒産手続をとっていなくても,
事実上の倒産として労働基準監督署が認定すれば,
立替払制度を利用できます。
事実上の倒産とは,事業活動が停止し,再開する見込みがなく,
賃金の支払能力がない状態をいいます。
事実上の倒産の場合は,労働基準監督署に
事実上の倒産の認定申請書を提出し,認定をうけてから,
労働者健康福祉機構に未払賃金の立替払請求書を提出します。
立替払制度の対象者となる労働者は,
破産などの申立日または労働基準監督署に対する認定申請日の
6ヶ月前から2年の間に退職した方です。
立替払請求は,破産手続開始の決定があった日の翌日から2年以内に,
労働基準監督署から事実上の倒産の認定があった日の翌日から2年以内に
する必要があります。
法的な倒産手続の場合は,申立代理人や管財人が対応してくれますが,
全ての事業主が法的な倒産手続をとるわけでなく,
何もしないまま放置されていることもあるので,
そのようなときは,労働基準監督署へいって,
未払賃金の立替払制度を利用できないか相談してみてください。
立替払制度を利用して,8割でもいいので未払賃金を回収した方が,
費用対効果を考えればいいと思います。
なお,未払賃金の立替払制度については,
こちらのUELにあるパンフレットに詳しい説明が記載されていますので,
ご参照ください。
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/kinrosyashien/pdf/tatekae_seido_Pamphlet.pdf
本日もお読みいただきありがとうございます。
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