総務省における過労自殺と公務災害の申請
1 総務省における過労自殺事件
総務省のキャリア官僚が自殺したのは,
長時間労働でうつ病を発症したのが原因であるとして,
ご遺族が総務省に対して,公務災害の申請をしました。
https://mainichi.jp/articles/20191009/k00/00m/040/238000c
自殺したキャリア官僚の方は,
他の省庁との折衝や予算要求のための調整を担う部署に配属され,
その後,消費税増税に関わる仕事も兼務し,
不慣れな業務に忙殺されて,うつ病を発症したようです。
2 国家公務員の公務災害申請と認定基準
国家公務員が仕事が原因でうつ病などの精神疾患を発症した場合,
民間企業の労災申請とは異なる,
公務災害の申請をしていくことになります。
国家公務員の公務災害の申請手続は,被災公務員やご遺族が,
各省庁の中に置かれている補償事務主任者に対して,
公務災害があったことを申し出ることにより行います。
国家公務員が仕事が原因でうつ病などの精神疾患を発症した場合,
「精神疾患等の公務上の災害の認定について」という認定基準に基づいて,
公務災害か否かが判断されます。
https://www.jinji.go.jp/kenkyukai/seishinnkenkyuukai/115ninteisisin.pdf
この認定基準によりますと,
国家公務員の精神疾患の発症前おおむね6ヶ月の間に,
強度の精神的又は肉体的負荷を業務により受けたことが要件となります。
長時間労働が強度の精神的又は肉体的負荷に該当するかについては,
超過勤務の時間数に加えて,超過勤務の必要性,
勤務の密度及び内容,時間帯,不規則性,
実質的な睡眠時間の確保などの事情が総合的に検討されます。
この認定基準の別表「公務に関連する負荷の分析表」には,
過重な負荷となる可能性のある業務例として,
下記の場合が記載されています。
法案作成,体外折衝等の対応が長丁場となり,
密度の濃い時間外勤務,深夜勤務,休日出勤が続き,
長期にわたり,蓄積した疲労の回復ができなかった場合
補正予算の成立に伴う事業執行計画の急な変更に伴い,
作業工程の変更,必要なデータ収集その他の膨大な作業が
一時期に集中した場合
総務省の事件にあてはめると,他の省庁との折衝や予算要求,
消費税増税の対応という密度の濃い仕事をし,
1ヶ月の残業時間が135時間に達していたことから,
睡眠時間が十分に確保できず,疲労が蓄積していたと考えられます。
そのため,強度の精神的又は肉体的負荷を業務により受けたこと
という要件に該当し,公務災害と認定される可能性があると思います。
3 自殺の因果関係
なお,精神疾患にかかって自殺した場合,
因果関係が問題になりますが,この認定基準では,
仕事以外の私的な要因で精神疾患が発症して
自殺に大きな影響を及ぼしたという例外的な場合でない限り,
自殺の因果関係が認められることになっています。
要するに,私的な領域で何も問題がない場合には,
仕事が原因で精神疾患を発症し,
自殺したという因果関係が認められるということです。
過労自殺が公務災害と認定されれば,ご遺族に対して,
年金や一時金の支払いがされる遺族補償や葬儀費用の補償が支給され,
残されたご遺族の生活の不安が幾分か軽減されます。
国家公務員が仕事が原因でうつ病などの精神疾患を発症した場合や
自殺した場合には,公務災害の申請をすることをおすすめします。
本日もお読みいただきありがとうございます。
返信を残す
Want to join the discussion?Feel free to contribute!