パワハラを理由とする解雇の対処法3選【弁護士が解説】

1 パワハラとは

 

 

会社から、あなたは部下に対して、

パワハラをしていたので、解雇しますと告げられました。

 

 

 

私は、パワハラをしていませんし、事前に会社から注意を受けたことはなく、

パワハラを理由とする解雇に納得できません。

 

 

このようなパワハラを理由とする解雇を争いたい場合、

どうすればいいのでしょうか。

 

 

結論から先に言いますと、会社から一度も注意されずに、

いきなり、パワハラを理由に解雇された場合、

解雇が無効になる可能性があります。

 

 

今回の記事では、パワハラを理由とする解雇の対処法について、

わかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。

 

 

まずは、パワハラについて解説します。

 

 

パワハラとは、①優越的な関係を背景とした言動であって、

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

③労働者の就業環境が害されることです。

 

 

この①~③の要件を満たすと、パワハラに該当するのです。

 

 

ここからは、①~③の要件を詳しく見ていきましょう。

 

 

①優越的な関係とは、

抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係をいいます。

 

 

具体的には、職務上の地位が上位の者による言動がこれにあたり、

典型的には、上司と部下の関係です。

 

 

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものという要件が、

実務では一番問題となります。

 

 

この要件で、違法なパワハラと適法な業務指導とを線引しますが、

この判断が難しいのです。

 

 

厚生労働省は、パワハラ指針というものを策定しました。

 

 

このパワハラ指針において、②の要件の

「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」

がどのようなものかが記されています。

 

 

パワハラ指針では、②の要件について、

社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、

または、その態様が相当でないもの、と規定されています。

 

 

そして、パワハラ指針では、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動の例として、

次のものが挙げられています。

 

 

①業務上明らかに必要性のない言動

 

 

②業務の目的を大きく逸脱した言動

 

 

③業務を遂行するための手段として不適当な言動

 

 

④当該行為の回数、行為者の数等、

その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

 

 

これでもまだ抽象的です。

 

 

結局のところ、言動の目的、被害者の落ち度、

言動の回数や継続性、被害者と加害者の関係等を総合考慮して、

違法なパワハラか否かを判断するので、ケースバイケースとなります。

 

 

ちなみに、言葉の暴力で、裁判例で違法と認められたものとしては、

「殺すぞ」、「あほ」、「バカかお前は」、「能力がないから仕事ができない」

といったものがあります。

 

 

このように、労働者の人格や尊厳を否定する言動は、

違法なパワハラと認定されます。

 

 

他にも、必要以上に長時間にわたる厳しい叱責、

他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責も、

違法なパワハラと評価されます。

 

 

 

③労働者の就業環境が害されることとは、

労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生じることをいいます。

 

 

すなわち、パワハラを受けて、労働者の就業環境が不快なものとなり、

能力の発揮に悪影響が生じたことをいいます。

 

 

具体的には、パワハラのストレスによって、

体調を崩して、会社を休むことがこれにあたります。

 

 

③の要件については、平均的な労働者の感じ方を基準とします。

 

 

同じ状況で、当該言動を受けた場合に、

社会一般の労働者が、働く上で看過できなき程度の支障が生じたと、

感じるような言動かという基準で判断します。

 

 

2 パワハラを理由とする解雇

 

 

次に、パワハラを理由とする解雇について、解説します。

 

 

労働契約法16条において、解雇は、客観的に

合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、

無効とすると規定されています。

 

 

すなわち、解雇が有効になるためには、

①客観的合理的な理由があること、

②社会通念上相当であること、

の2つが要件を満たす必要があります。

 

 

ここからは、解雇の2つの要件について解説します。

 

 

 

①客観的に合理的な理由とは、要するに、労働者に、

解雇に値する落ち度があるのかとういことです。

 

 

まずは、労働者に、労働契約における債務不履行と

評価される理由があるかを検討します。

 

 

すなわち、会社との労働契約関係を終了させても、

しかたがないくらいの落ち度が、労働者にあるのかということです。

 

 

具体的には、労働者の能力が不足しているのか、

ハラスメントや横領など、懲戒処分されることをしたか、

うつ病によって、長期間休職して、復帰の見込みがないか、

などの解雇理由があるのかを検討します。

 

 

ようするに、労働者に、就業規則に規定されている

解雇理由があるのかを検討します。

 

 

パワハラを理由とする解雇の場合、

就業規則のパワハラをした場合の処分の内容を確認します。

 

 

次に、将来予測の原則です。

 

 

これは、労働契約における債務不履行と評価される理由が、

将来にわたって反復継続すると予測されるかを検討します。

 

 

例えば、パワハラが将来にわたって、

繰り返されるおそれがあったのかを検討します。

 

 

そして、最後手段の原則です。

 

 

これは、警告・指導、教育訓練、配置転換、休職など、

解雇を回避するための措置を講じても、

なお債務不履行状態が解消されない場合に、

解雇が許容されることをいいます。

 

 

例えば、解雇の前にパワハラに対する注意があり、

パワハラを改善する機会があったのかを検討します。

 

 

以上の3つの事情を総合考慮して、労働者の債務不履行の状態が、

労働契約を終了させてもやむを得ない程度に達している必要があり、

この程度に達していないで行われた解雇は無効になります。

 

 

②社会通念上の相当性とは、解雇という手段を選択することが、

労働者にとって過酷すぎないか、ということです。

 

 

例えば、本人の情状、他の労働者に対する処分との均衡、

反省の有無、弁明の機会の付与などを総合考慮して判断されます。

 

 

具体的には、これまで問題なく、優秀な成績をおさめていたのに、

今回たまたまミスをしてしまったという本人の情状、

同じミスをした労働者がいるのに、自分は、解雇で、

他の労働者は、減給だけで、処分が不平等である、

ミスを認めて真摯に反省している、

労働者の言い分を伝える適切な手続きがとられたか、

といったことを検討します。

 

 

ここまで説明した、2つの解雇の要件を満たすのは、

会社にとって、ハードルが高く、解雇が無効になることはあります。

 

 

3 パワハラを理由とする解雇の対処法3選

 

 

最後に、パワハラを理由とする解雇の対処法3選を解説します。

 

 

①パワハラ行為をしたのか否かを確認します。

 

 

 

ここでは、会社から解雇理由証明書の交付を受けて、

解雇理由証明書に記載されたパワハラ行為をしたのかを検討します。

 

 

そして、パワハラ行為についての証拠を

会社が持っているのかについても検討します。

 

 

例えば、会社が社内調査をしているのか、

被害者とされている人が録音をとっていたのか等について検討します。

 

 

もっとも、会社が持っている証拠なので、想像するしかありません。

 

 

その上で、パワハラ行為をしていない、

または、パワハラと評価できないと争えるかを検討します。

 

 

②過去にパワハラの注意や処分を受けたことがあるかを検討します。

 

 

これは、前述した、将来予測の原則と最後手段の原則から、

いきなりパワハラを理由に解雇する場合、

パワハラを反省させ、改善の機会を与えるべきだからです。

 

 

すなわち、事前の注意や処分がなく、いきなりパワハラで解雇した場合、

その解雇は、無効になる可能性があります。

 

 

③情状を考慮できるかを検討します。

 

 

被害者に落ち度があって、つい厳しく叱責してしまったという、

パワハラをした労働者の動機や目的、過去に懲戒処分歴がなく、

優秀な成績を修めていたなどの、情状があれば、

パワハラの程度によっては、解雇は重すぎる処分であるとして、

解雇が無効になることがありえます。

 

 

パワハラや解雇でお悩みの場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。

 

 

弁護士は、パワハラや解雇について、適切なアドバイスをしてくれます。

 

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

パワハラの損害賠償請求をして190万円の解決金を獲得した事例

1 上司からの酷いパワハラ

 

 

会社の上司から酷いことを言われて、精神的にしんどい。

 

 

上司のパワハラをなんとかしたいけど、どうすればいいのかわからない。

 

 

このようなパワハラの法律相談が増加しています。

 

 

労働問題についての法律相談で、現在、最も多いのが、パワハラです。

 

 

パワハラを受けたときに、最も効果的な対処法は、録音をすることです。

 

 

今回は、パワハラの録音があったおかげで、

会社から190万円の解決金を獲得した事例を紹介します。

 

 

クライアントは、40代男性で、

運送会社でドライバー兼事務の仕事をしていました。

 

 

クライアントは、営業所の所長から、

次のような言葉の暴力のパワハラを受けていました。

 

 

「アホ」、「バカ」、「やめろ」、「ハゲ」、「頭おかしいんちゃうか」、

「わしがおる限り、昇進はないと思っとけ。評価も低いからな」、

「給料どろぼう」、「みんな、お前をいらんと言うとるぞ」

 

 

 

クライアントは、酷いパワハラによって、精神に不調をきたし、

精神科を受診したところ、適応障害と診断され、主治医からは、

休職をすすめられ、しばらくの期間、休職しました。

 

 

主治医は、クライアントが職場に復帰することに反対していましたが、

クライアントは、年齢的に再就職が難しいこと、

家族を養っていかなければならないこと、

会社から、職場を戻りやすい環境にすると言われたことから、

主治医の反対意見を振り切り、休職から復職しました。

 

 

しかし、復職した途端、クライアントは、最悪の仕打ちを受けました。

 

 

なんと、クライアントの席が、

パワハラをした張本人である営業所長の前に移動させられていたのです。

 

 

クライアントは、パワハラをしていた営業所長の面前で、

仕事をせざるをえない状況に追い込まれ、多大な精神的苦痛を被りました。

 

 

しばらくの間、なんとか我慢して勤務していましたが、

やはり、適応障害の症状が悪化し、再び、休職することとなりました。

 

 

2 録音が決め手になった

 

 

このような一連の仕打ちを許せないと思ったクライアントは、

私のもとに法律相談にこられました。

 

 

クライアントの話しを聞くと、営業所長から、

パワハラを受けた時に、録音をとっているとのことでした。

 

 

録音の内容を聞いてみると、

確かに、クライアントの人格を否定する暴言が録音されていましたので、

パワハラの事実を証明できると判断しました。

 

 

 

また、クライアントと共に、主治医と面談し、

クライアントの適応障害の原因がパワハラにあるとの意見をもらいました。

 

 

そして、主治医が、クライアントが問診のときに話していた、

パワハラの具体的な内容をカルテに記載してくれていたことも明らかとなりました。

 

 

そこで、カルテの開示を受けて、

パワハラの事実を証明するための証拠を確保しました。

 

 

このように、パワハラの事実を証明でき、

パワハラが原因で適応障害を発症したことも証明できると考え、

会社に対して、損害賠償請求をすることにしました。

 

 

3 会社との損害賠償請求の交渉

 

 

会社に対して、損害として、クライアントの精神科での治療費、

休職期間中の休業損害、退職後に再就職するまでの期間の給料の補償分、

慰謝料を請求しました。

 

 

パワハラの被害者が、パワハラが原因で精神疾患を発症した場合、

慰謝料の金額が増額される傾向にあります。

 

 

パワハラの証拠を確保できていたので、

会社との損害賠償請求の交渉はスムーズにすすみました。

 

 

1ヶ月ほど交渉をした結果、

会社から合計190万円の解決金を支払ってもらうことで、

示談が成立しました。

 

 

 

この示談において、クライアントが相手方会社を退職することを確認し、

退職の理由として、離職票に、

職場の上司からパワハラを受け、就業環境が著しく悪化し、

退職せざるをえなくなったため」と記載してもらうことになりました。

 

 

離職票に退職理由として、パワハラが原因と記載してらうことで、

会社都合退職となり、失業給付を受給する際に、

給付制限がかからず、すぐに失業給付を受給できるようになります。

 

 

パワハラを受けて、絶望していたクライアントでしたが、

会社から190万円の解決金を勝ち取ることができ、

新しい希望を見出し、次の一歩を踏み出すことができるようになりました。

 

 

この事例のように、パワハラでは、録音があれば、会社に対して、

損害賠償請求することが可能になります。

 

 

逆に、パワハラをされても、録音がなければ、

パワハラの事実を証明することができずに、

損害賠償請求をすることが困難になります。

 

 

そのため、パワハラを受けた場合は、必ず、録音するようにしてください。

 

 

パワハラは突然されますので、出社したら録音ボタンをオンにし、

退社するときに録音ボタンをオフにして、就業時間中、

常時録音しておけば、パワハラの文言を録音できます。

 

 

相手の許可なく録音しても問題ありません。

 

 

そして、パワハラで悩んでいる場合には、誰かに相談してください。

 

 

一人で悩んでいても、解決できません。

 

 

弁護士にパワハラの法律相談をすれば、

対処法について、適切なアドバイスをしてくれます。

 

 

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

パワハラ社長からの暴力行為に対して、損害賠償請求と未払残業代請求で対抗し、600万円の解決金を勝ち取った事例

1 社長からのひどいパワハラ

 

 

会社の社長から暴力を振るわれて、会社に行くのが怖くなって、

会社を退職しました。

 

 

でも、社長の暴力は許せないので、社長を訴えてやりたいです。

 

 

パワハラの法律相談では、言葉の暴力がほとんどですが、

たまに、身体的な暴力によるパワハラの法律相談を受けることがあります。

 

 

身体的な暴力のパワハラの場合、身体に直接的な痛みが伴う分、

暴力を振るった相手を許せないと思ってしまいます。

 

 

 

このような身体的な暴力のパワハラを受けた場合、

どのように対処するのが効果的なのでしょうか。

 

 

結論から先にいいますと、暴力を受けた時の傷を写真に撮影していたり、

診断書等の証拠がある場合には、暴力をふるった人物に対して、

損害賠償請求をすることを検討します。

 

 

また、そのようなパワハラが発生するような職場では、

残業代が支払われていないことがほとんどですので、

あわせて未払残業代を請求することも効果的です。

 

 

ここで、私が担当した事件を紹介します。

 

 

クライアントは、40代の男性で、運送会社で事務作業全般、

機械の運搬と設置、運行管理の仕事をしていました。

 

 

クライアントは、相手方の会社の社長から、度々、暴力を受けていました。

 

 

例えば、クライアントは、社長から、鼻を頭突きされる、

顔を殴られる、髪の毛をハサミで切られる、

腕に火の付いたタバコを押し付けられる、背中を蹴られる、

額にマジックで✕を書かれる、といった酷い暴力を受けていました。

 

 

今どき、こんな酷いことをする社長がいるのかと、

クライアントの話しをお聞きして、少し疑いましたが、

クライアントは、暴力を受ける度に、自身の傷を写真にとり、

病院へ通院していたので、証拠を確保していたので、

社長からひどい暴力を受けていたことが真実であることがわかりました。

 

 

そして、クライアントは、社長からの暴力に耐えきれず、

会社を退職し、私のもとへ法律相談に来られました。

 

 

クライアントは、社長から受けた理不尽な仕打ちについて、

このまま泣き寝入りはしたくないとおっしゃっていました。

 

 

クライアントの話しを聞き、社長からの暴力を証明できる証拠があり、

長時間労働をしているにもかかわらず、

残業代が1円も支払われていないとのことでしたので、

パワハラによる損害賠償請求と未払残業代請求をすることにしました。

 

 

2 パワハラの損害賠償請求と未払残業代請求の裁判を提起しました

 

 

未払残業代請求をするために、会社に対して、

タイムカードを開示するように請求したところ、

無事にタイムカードが開示され、未払残業代の金額を計算し、

未払残業代請求とパワハラの損害賠償請求をしました。

 

 

しかし、会社からは、クライアントが勝手に残業をしていたので、

残業代を支払わない、タイムカードには、手書きの記載があるので、信用できない、

クライアントのけがは、従業員同士のけんかの時にできたものであり、

社長は暴力を振るっていないと反論してきました。

 

 

会社からは、誠意ある回答が得られなかったことから、

会社と社長に対して、パワハラの損害賠償請求を、

会社に対して、未払残業代請求をする、裁判を提起しました。

 

 

 

なお、社長がパワハラをした場合、会社も損害賠償責任を負うことになります。

 

 

まず、会社は、社長は暴力を振るっていないと反論してきたので、

ハローワークの資料を証拠にして、クライアントは、

社長から暴力を受けたと主張しました。

 

 

すなわち、クライアントは、社長からの暴力が辛くて退職したことを、

ハローワークに伝えており、ハローワークは、相手方の会社の従業員から、

聞き取り調査をして、社長からの暴力があったと認定していました。

 

 

クライアントは、自分から会社を退職しているので、通常ですと、

自己都合退職に該当し、雇用保険の失業給付を受給する際に、

2ヶ月間の給付制限がかかるなどの不利益を被ります。

 

 

しかし、ハローワークで、パワハラを受けて退職したことを証明できれば、

会社都合退職に該当し、雇用保険の失業給付を受給する際に、優遇されます。

 

 

クライアントは、ハローワークで、会社都合退職と認定されていたことから、

ハローワークから、個人情報開示手続きで入手した、

相手方会社の従業員の証言をもとに、

社長から暴力を受けたことについて立証しました。

 

 

次に、クライアントが勝手に残業していたという主張に対して、

社長がクライアントに対して、

営業時間内には終わらない業務量の仕事をさせていて、

それを黙認していたことから、

黙示的に、業務指示をしていたと主張しました。

 

 

また、会社は、タイムカードは信用できないと反論していましたが、

会社は、労働者の労働時間を正確に把握する義務を負っていますし、

裁判所は、タイムカードで労働時間が管理されている場合、

よほどの事情がない限りは、タイムカードをもとに、労働時間を認定します。

 

 

そのため、裁判所から、和解の提案があり、

クライアントに有利な和解案が提示されました。

 

 

3 解決金600万円を勝ち取りました

 

 

判決に至った場合、会社から、全額を回収することができるのかについて、

一抹の不安があったこともあり、和解であれば、

回収のリスクを低減できることから、和解に応じることにしました。

 

 

 

結果として、会社から、600万円の解決金を支払ってもらうことで、

無事に解決できました。

 

 

酷い仕打ちを受けた会社から、600万円を回収することができて、

クライアントの溜飲が下がり、クライアントは、満足されて、

新しい一歩を踏み出すことができました。

 

 

このように、パワハラを受けた場合、

損害賠償請求と未払残業代請求を一緒にすることで、

高額な金銭請求ができる可能性があります。

 

 

そのためには、パワハラの事実を証明するための証拠である、

録音、写真、診断書などを確保し、

残業代請求をするためのタイムカードなどを確保する必要があります。

 

 

パワハラや残業代の未払でお悩みの場合には、弁護士にご相談ください。

 

 

弁護士は、パワハラや残業代の未払について、適切なアドバイスをしてくれます。

 

 

本日もお読みいただき、ありがとうございます。

身体的暴力のパワハラ事件で損害賠償請求と未払残業代請求をして勝訴的和解が成立した事例

1 ひどい暴力のパワハラ事件

 

 

会社の社長から、あまりにもひどいパワハラを受けた事件で、

損害賠償請求と未払残業代請求をして、無事に和解で解決した事件を紹介します。

 

 

クライアントは、運送会社で働いていたところ、

社長から、次のような、暴力を受けました。

 

 

 

①鼻を頭突きされて鼻血がでた。

 

 

②顔を殴られて唇が切れた。

 

 

③髪の毛をハサミで切られる。

 

 

④腕にタバコの火を押し付けられてやけどする。

 

 

⑤マジックで額にバツを書かれる。

 

 

⑥顔面を蹴られて歯が折れる。

 

 

クライアントは、このような社長からの度重なる暴力に耐えられず、

会社を退職し、法律相談にこられました。

 

 

私は、労働弁護士として、多くのパワハラの法律相談を受けてきましたが、

本件の事案のように、ここまでひどい暴力を受けたパワハラは初めてでした。

 

 

最初は本当にそんなにひどいパワハラが起きていたのか信じられませんでしたが、

クライアントが、怪我をしたときの写真を撮っていたので、

その写真を見て、実際にひどいパワハラがされていたことを知りました。

 

 

クライアントの怪我の写真で、社長の暴力の事実を証明できると判断して、

会社と社長に対して、損害賠償請求をしました。

 

 

2 パワハラの損害賠償請求では未払残業代請求を一緒にする

 

 

また、クライアントの話を聞いていると、長時間労働をしているに、

残業代が全く支払われていないことがわかりましたので、

パワハラの損害賠償請求と共に、未払残業代請求をしました。

 

 

 

ひどいパワハラをしているブラック企業では、

残業代が未払のことが多いので、パワハラの損害賠償請求と共に、

未払残業代請求をすることで、

会社から多くの金銭の支払いを受けることが可能になります。

 

 

交渉では合意に至らず、裁判を提起しました。

 

 

相手方からは、残業の業務命令をしていない、

タイムカードの記載は信用できないので、

残業代は認められないなどの主張がされました。

 

 

しかし、会社から残業の業務命令がなくても、

会社は、労働者が残業していることを認識しており、

何も異議を述べていない場合には、

黙示の指示が認められて、残業代請求が認められます。

 

 

また、裁判例では、タイムカードには、

特段の事情がない限り、労働時間を事実上推定する力があるとして、

タイムカードの記載の時間は、労働していたと認定される傾向にあります。

 

 

本件事件でも、社長よる暴力のパワハラと残業が認められて、

当方の損害賠償請求と未払残業代請求が認められました。

 

 

結果として、会社から、クライアントに納得していただける

金銭を支払ってもらい、和解が成立しました。

 

 

パワハラの損害賠償請求事件では、未払残業代請求を一緒にすることで、

クライアントが納得できる解決にいたることができます。

追い出し部屋に異動させられたときの対処法

1 追い出し部屋とは

 

 

先日、追い出し部屋に関する法律相談を受けました。

 

 

会社からの退職勧奨を断ったところ、

ある日、会社から、倉庫で働くように指示を受けたものの、

倉庫での仕事はほとんどなく、

精神的に辛いという、法律相談でした。

 

 

このように、もともとの仕事よりもずっと程度の低い仕事を与え、

労働者の自尊心を傷つけて、退職に追い込むやり方を追い出し部屋といいます。

 

 

 

特定の労働者を窓際に追いやり、干すという手口です。

 

 

追い出し部屋については、パワハラの6類型である、

人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、

過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い

仕事を命じることや仕事を与えないこと)に該当するため、

最近ではあまり聞かれなくなっていました。

 

 

そのため、このように、露骨に、

労働者を退職に追い込むためのパワハラが行われている実態を知り、

驚きました。

 

 

本日は、追い出し部屋の対処法について検討してみます。

 

 

2 追い出し部屋への配転命令が争われた裁判例

 

 

追い出し部屋について、参考になる裁判例を紹介します。

 

 

新和産業事件の大阪高裁平成25年4月25日判決

(労働判例1076号19頁)です。

 

 

この事件では、営業課長をしていた原告の労働者が、

倉庫への配転命令を受け、課長職を解く降格命令を受けて、

給料が半額に減額されたことから、

配転命令の無効確認や損害賠償請求をしました。

 

 

倉庫への配転命令が実施される前に、会社は、原告に対して、

退職勧奨が繰り返されていましたが、原告は、

退職に応じなかったという事情がありました。

 

 

倉庫での仕事については、もともと1人の従業員か担当していたところ、

原告を追加して2人の従業員を配置するほどの業務量はなく、

実際に、原告の仕事はほとんどありませんでした。

 

 

そのため、裁判所は、原告に対する倉庫への配転命令について、

原告が退職勧奨を拒否したことの報復として、退職に追い込むために、

または、合理性に乏しい大幅な賃金の減額を

正当化するために実施したものであり、業務上の必要性はなく、

不当な動機・目的によるもので、原告の不利益が大きいので、

権利の濫用に該当するとして、無効と判断されました。

 

 

そして、原告に対して、50万円の慰謝料が認められました。

 

 

この裁判例のように、追い出し部屋への配転命令が

権利の濫用であるとして、争う方法があります。

 

 

3 追い出し部屋はパワハラに該当する

 

 

もう一つは、追い出し部屋への配転命令が、前述した、

人間関係からの切り離しや過小な要求に該当する

パワハラであると主張して、会社に対して、

損害賠償請求をする方法があります。

 

 

 

パワハラを防止することが法律で明記され、

パワハラ防止指針が整備された今であれば、

パワハラの損害賠償請求が認められやすくなるかもしれません。

 

 

もっとも、追い出し部屋の事案では、

他の従業員から隔離されていたり、

仕事が与えられていないことを、

どのようにして立証するのかという難しい問題があります。

 

 

この点、倉庫などで一人でいて仕事がない状況を動画で撮影して、

立証するのがいいと思います。

 

 

スマートフォンなどで、一日中、

自分の倉庫での仕事の状況を撮影すれば、

仕事がないことを立証できます。

 

 

そして、従前の自分の仕事の状況を、

日報やメールなどで証明できれば、

いかに倉庫での仕事がなにもないかが明確になります。

 

 

仕事がないことの動画を確保できれば、会社に対して、

倉庫で仕事をさせないことがパワハラに該当するとして、

弁護士が交渉し、場合によっては、裁判手続をすれば、

損害賠償請求できる可能性があります。

 

 

追い出し部屋に異動させられた場合には、

労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

追い出し部屋は、労働者の尊厳を傷つけるものでするで、

早急になくす必要があると考えられます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

三菱電機のパワハラ防止対策を検討する

1 三菱電機のパワハラ防止対策

 

 

三菱電機が、2020年11月25日、

「労務問題の再発防止に向けた新たな取り組みについて」

という文書を公表しました。

 

 

https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2020/1125.pdf

 

 

三菱電機では、ここ最近、長時間労働によって

メンタル疾患を発症したり、過労自殺した労働者の

労災認定が5件ほどあったようです。

 

 

また、上司や先輩社員による新入社員へのいじめがあり、

新入社員が自殺した事件が2件ほどあったようです。

 

 

 

これらの問題については、私も過去のブログで記載しましたし、

マスコミでも報道されていましたので、

三菱電機の労働者からのイメージは悪化していたように思います。

 

 

このような問題を受けて、三菱電機は今回、

「労使共同宣言5か条」の採択と360度評価の導入など

新たな施策を導入したようです。

 

 

本日は、三菱電機のパワハラ対策について検討してみます。

 

 

2 会社のパワハラ防止措置義務とは

 

 

改正労働施策総合推進法によって、

パワハラの定義が法律に明記され、

会社は、パワハラ防止のための措置を

講じなければならないことになりました。

 

 

パワハラ防止のための措置の具体的内容については、

今年1月15日にパワハラ防止の指針が厚生労働省から公表されました。

 

 

このパワハラ防止指針では、会社がパワハラを防止するために、

雇用管理上次の措置を講じなければならないと規定されています。

 

 

①会社の方針等の明確化及びその周知・啓発

 

 

②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

 

 

③職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応

 

 

 

①の内容として、就業規則にパワハラに関する規定を整備する、

社内報などでパワハラの内容・原因などを労働者に周知する、

研修や講習を実施する、ことが挙げられます。

 

 

3 三菱電機のパワハラ対策で注目すべき点とは

 

 

今回、三菱電機が公表した労使共同宣言5か条は、

上記の①の具体的施策として注目できます。

 

 

 

注目すべき点は、会社が一方的に決めるのではなく、

労働者と共同してパワハラ対策を決める点です。

 

 

パワハラは、適切な業務指導との線引が難しく、

業務上不可避的に発生するものなので、

現場のひとりひとりの労働者の意識が変わらなければ、

パワハラの防止は困難だと考えます。

 

 

そのため、会社から一方的に決めるのではなく、

当事者である労働者も共同で決めることで、

労働者のパワハラに対する抑制の意識が芽生えることが期待できそうです。

 

 

次に注目すべき点は、全従業員が、

ハラスメントをしないことの宣言書を提出することです。

 

 

労働者が、自分でハラスメントをしないことを文書にすることで、

ハラスメントをしないという一貫した行動をさせることが期待できます。

 

 

人は、自分がコミットメントしたことについて、

一貫した行動をとる習性があるので、

ハラスメント防止の効果が期待できそうです。

 

 

そして、もう一つの注目すべき点は、

管理職に対する360度評価の導入です。

 

 

おそらく、管理職に対して、

部下からの評価も加わるということだと思います。

 

 

通常ですと、人事の評価をするのは、

上司なので、上司に強い影響力が生じて、

部下に対するパワハラが生じやすい土壌が生まれるのですが、

上司の評価を部下もできるようになれば、上司の影響力が低下し、

上司の部下に対するパワハラを抑止する効果が期待できそうです。

 

 

三菱電機から、厚生労働省のパワハラ防止指針よりも進化した

パワハラ防止対策が公表されましたので、

これが誠実に実行されて、パワハラを撲滅し、

これまでのマイナスの印象を払拭してもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラの労働相談の増加とあっせん手続

1 パワハラの労働相談が増加しています

 

 

7月1日に厚生労働省から,

「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000643973.pdf

 

 

都道府県労働局には,総合労働相談コーナーという

労働相談の窓口があり,そこに寄せられた

労働相談の統計情報が毎年公表されます。

 

 

これを見れば,世の中でどのような労働問題が増えているのかが

よくわかるので,私は,毎年参考にしています。

 

 

さて,令和元年度の統計情報では,

総合労働相談コーナーに寄せられた相談のうち,

会社と労働者との間における個別労働紛争相談件数は

342,966件で,そのうち87,570件が

「いじめ・嫌がらせ」というパワハラに関する相談です。

 

 

 

個別労働紛争相談のうちの25.5%が

パワハラに関する相談ということになります。

 

 

このパワハラに関する相談は,年々右肩上がりに上昇しており,

今年は前年比5.8%で増加しました。

 

 

以前は,解雇の相談が最も多かったのですが,

平成24年度を境にパワハラが解雇を上回り,

以後パワハラが増加し続けています。

 

 

それだけ,パワハラの被害が蔓延しており,

深刻化していることが明らかとなっています。

 

 

そのような状況を受けて,今年の6月から

改正労働施策総合推進法が施行され,大企業に対して,

パワハラ防止措置義務が課されるようになりました。

 

 

今後は,パワハラ防止措置義務によって,

パワハラの相談件数が減少に転じるのかが注目されます。

 

 

2 あっせん手続

 

 

さて,この統計情報には,もう一つ興味深い情報が掲載されていました。

 

 

それは,都道府県労働局でのあっせん手続の処理件数です。

 

 

都道府県労働局では,労働紛争の当事者が話合いをして,

労働紛争を解決するためのあっせん手続が利用できます。

 

 

このあっせん手続の最大のメリットは,お金がかからないことです。

 

 

労働審判などの裁判手続を利用するときには,

基本的には弁護士を依頼することがほとんどですが,

弁護士に依頼するとどうしても費用がかかってしまいます。

 

 

これに対して,あっせん手続を申し立てる際に弁護士は不要で,

ほとんど個人で申立てをしていることが多く,

弁護士に依頼するための費用を節約できます。

 

 

ただ,あっせん手続には,大きなデメリットがあり,

相手方があっせん手続に応じなければ,終了してしまうのです。

 

 

裁判手続では,被告が裁判に応じなければ,

原告の主張が認められる判決がでるので,

被告は,裁判に応じることが多いです。

 

 

あっせん手続では,相手方があっせん手続に応じないと返事をすれば,

あっせん手続は打ち切られてしまいます。

 

 

また,あっせん手続では,最終的な和解が設立する

見通しがたてにくいというデメリットもあります。

 

 

今回の統計情報によりますと,和解が成立したのは36%で,

打ち切りになったのは59%で,和解が成立するよりも,

打ち切られる可能性の方が高いのです。

 

 

 

そのため,あっせん手続では,労働紛争は解決せず,

結局,裁判手続になるのであれば,

最初から裁判手続を選択した方がいいことになります。

 

 

このような事情があるため,私は,

これまであっせん手続を利用したことはありません。

 

 

3 パワハラの事案ではあっせん手続が活用できる余地がある

 

 

もっとも,今回の統計情報には,

あっせん手続がうまくいった事例が紹介されており,

パワハラの事案では,あっせん手続が

活用できるかもしれないと思いました。

 

 

紹介された事例では,45万円の慰謝料を求めて

パワハラ被害者の労働者があっせんを申請し,

会社が35万円の慰謝料を支払うことで和解が成立したようです。

 

 

言葉の暴力によるパワハラの場合は,

慰謝料の金額があまり大きくならない傾向にあり,

弁護士に依頼すると費用対効果が悪いので,

あっせん手続であれば,費用がかからないので,

多少低い金額の慰謝料でもなっとくできるのであれば,

あっせん手続を利用する価値はあると思いました。

 

 

弁護士に依頼する費用がもったいないけど,

会社に対して一矢報いたい場合に,

あっせん手続の利用を検討してみるといいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラの被害実態とは

1 パワハラ・コロナ・過労死110番に寄せられた相談

 

 

6月20日に実施された「パワハラ・コロナ・過労死110番」では,

全国で次のようなパワハラの相談がありました。

 

 

上司に話しかけても返事をしてもらえなかったり,

あいさつをしても無視されたりして困っている。

 

 

上司から人前で「バカヤロー」などと怒鳴られる。

 

 

上司が必要な情報を教えてくれなかったり,

こちらのプライベートを執拗に詮索してきて,

「あなたの仕事はなくなるからね」と言われる。

 

 

 

このようなパワハラ被害が後を絶たないのが現実です。

 

 

今年の6月1日から改正労働施策総合推進法が施行され,

大企業に対して,パワハラ防止措置が義務付けられましたので,

今後はますます,企業におけるパワハラ対策が重要になってきます。

 

 

2 パワハラの被害実態

 

 

さて,パワハラ被害について興味深い論稿を読みましたので,

アウトプットします。

 

 

ジュリストという法律家の専門誌の1546号で

パワハラに関する特集があり,その特集の中にあった

神奈川県立保健福祉大学講師の津野香奈美先生の

メンタルヘルスとハラスメント予防」という論稿です。

 

 

この論稿には,全国におけるパワハラの実態調査

の結果が記載されています。

 

 

この論稿に記載されている調査の結果によりますと,

雇用者の6.1%(17人に1人)が

過去30日間に職場でパワハラを受けており,

14.8%(7人に1人)が職場でパワハラがあると

認識しているようです。

 

 

日本の雇用者数は約6000万人であるため,

その6.1%とすると,全国で約360万人が

パワハラにあっているという計算になるようです。

 

 

パワハラの被害が拡大しており,

パワハラの被害にあう確率も高いことがわかります。

 

 

では,パワハラにあう人はどのような人なのでしょうか。

 

 

この論稿に記載されている調査によると,

若年者(29歳以下),高卒未満,

世帯収入250万円未満,主観的社会階層

(自分自身が日本社会の中でどの階層に属しているかどうかの認識)

が低い労働者が,よりパワハラを受けていることが

明らかになったようです。

 

 

立場の弱い方がパワハラを受けやすい可能性があるのです。

 

 

パワハラは弱い者いじめという側面があるので,

立場の弱い方がターゲットになりやすいわけです。

 

 

3 パワハラの健康被害

 

 

また,職場のパワハラによる健康被害についても,

興味深い記載がありました。

 

 

デンマークの研究では,時々パワハラを受けていた場合,

受けていない場合に比べて,2年後にうつ病を

新規発症するリスクが約2.2倍であるのに加えて,

より頻繁にパワハラを受けていた場合は,

受けていない場合に比べて,2年後の新規うつ病発症リスクが

約9.6倍であったようです。

 

 

 

ノルウェーの研究では,パワハラを受けていると,

受けていない人に比べて,2年~3年後に希死念慮を持つリスクが

約2.1倍であったようです。

 

 

津野先生の研究では,パワハラを受けていると,

受けていない場合と比べて約12倍もPTSD症状

(精神的不安定による不安,不眠などの過覚醒など)

を持つリスクが高い結果になったようです。

 

 

このように,パワハラを受けると,

被害者は直接,精神的な苦痛を受けて,

メンタルヘルスが害されるのです。

 

 

さらに,パワハラの被害がやっかいなのは,

周囲にも影響を及ぼすという点です。

 

 

パワハラの直接の被害者だけでなく,

パワハラ行為を目撃した人もメンタルヘルスの不調になるようです。

 

 

自分が直接パワハラの被害をこうむっていなくても,

「次は自分がターゲットになるのではないか」と怖くなったり,

「見ていて辛い。被害者がかわいそうだ」と思いながらも

うまく助けることができずに罪責感を感じ,

働きにくくなるのが原因と考えられています。

 

 

パワハラの被害は,間接的に広範囲に拡大することがわかります。

 

 

メンタルヘルスが害されると回復に時間がかかりますので,

被害者本人にとっても,社会全体にとっても大きなマイナスとなります。

 

 

このようなパワハラの被害実態からしても,

早急にパワハラを撲滅する必要があるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

2020年6月1日から大企業にパワハラ防止対策が義務付けられました

1 パワハラ防止対策の義務付け

 

 

今年の6月1日から,改正労働施策総合推進法が施行されて,

大企業に対して,パワハラ防止対策が義務付けられました。

 

 

このパワハラ防止対策の義務付けは,

2022年4月から,中小企業にも適用されます。

 

 

まずは,大企業からパワハラの防止対策を始めて,

その後に中小企業にも広めていくことになります。

 

 

パワハラの被害が後を絶たない現状において,

今回のパワハラ防止対策の義務付けが

どこまで効果を発揮するのか注目していきたいです。

 

 

 

本日は,パワハラ防止対策の義務付けについて解説します。

 

 

2 パワハラの定義

 

 

まずは,改正労働施策総合推進法において,

パワハラの定義が明文化されました。

 

 

すなわち,パワハラとは,職場において行われる

優越的な関係を背景とした言動であって,

業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

その雇用する労働者の就業環境が害されること,

と定義されました。

 

 

実務で問題になるのは,違法なパワハラと適正な業務指導の線引です。

 

 

パワハラの被害者がうったえる,

パワハラの加害者の言動が,

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」

と評価できるかが問題となるのです。

 

 

この「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」

言動に該当するかの判断にあたっては,

事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する

問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」において,

以下の要素を総合考慮するとされました。

 

 

①当該言動の目的

 

 

②当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や

内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況

 

 

③業種・業態

 

 

④業務の内容・性質

 

 

⑤当該言動の態様・頻度・継続性

 

 

⑥労働者の属性や心身の状況

 

 

⑦行為者との関係性

 

 

指針においては,パワハラの該当例と非該当例が記載されていますが,

それはパワハラだよね,それは適正な指導だよね,

と一般の方が読めば判断できるケースしかありません。

 

 

実際の実務では,上記の要素を総合考慮する必要があるので,

違法なパワハラと適正な業務指導の線引が難しいことがほとんどなのです。

 

 

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動に該当するかの

勘所を磨くには,実際のパワハラの裁判例を

検討するのが最もよいと考えます。

 

 

3 パワハラ防止措置義務

 

 

さて,今回の改正の目玉は,企業に対して,

パワハラ防止対策を義務付けたことです。

 

 

 

企業は,パワハラ防止対策として,

以下のことを実施する必要があります。

 

 

①職場におけるパワハラの内容,

パワハラを行ってはならないこと,

パワハラを行った者に対して厳正に対処する

旨の方針を就業規則などに明確化し,

労働者に周知すること

 

 

②パワハラの相談窓口を設立して,労働者に周知すること

 

 

③パワハラの相談があった場合には,

事実関係を迅速かつ正確に確認し,

パワハラの事実が確認できた場合には,

被害者に対する配慮のための措置を行い,

加害者に対する適正な措置を行い,

再発防止に向けた措置を講ずること

 

 

④パワハラの相談をした場合には,

プライバシーは保護され,

解雇やその他の不利益な取扱いをされないことを

労働者に周知すること

 

 

そして,厚生労働大臣は,必要があると認めるときには,

企業に対して,助言,指導,勧告をすることができ,

勧告に従わない場合には,そのことを公表できます。

 

 

そのため,企業は,労働者に対して,

パワハラ対策の研修をしたり,

パワハラの相談窓口を設置したりといった

対策をしなければならないのです。

 

 

これらの企業の取り組みを通じて

パワハラが撲滅されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラの労災認定基準が変わります

1 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書

 

 

今年の6月から大企業では,パワハラを防止するために

必要な措置をとらなければならないことが義務付けられます。

 

 

パワハラを法律で定義した

改正労働施策総合推進法が施行されるのです。

 

 

この法律では,パワハラは,

①優越的な関係を背景とした言動であって,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,

③就業環境が害されるもの,

と定義されました。

 

 

 

このパワハラの定義をふまえて,

仕事が原因でうつ病などの精神疾患を発症した場合の

労災認定基準が見直されることになります。

 

 

5月15日に,「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書

が発表されましたので,本日は,この報告書について説明します。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11305.html

 

 

2 新しくパワハラの類型が追加されます

 

 

これまでの精神障害の労災認定基準において,パワハラは,

「(ひどい)嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた」

という出来事で評価されていました。

 

 

今回の報告書では,パワハラを独立した出来事の類型として,

上司等から,身体的攻撃,精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた

として追加することになりました。

 

 

精神障害の労災認定基準では,労働者が仕事中の出来事から受けた

心理的負荷が「強」といえれば,労災と認定されることになり,

具体的な出来事ごとに,どのような場合に,

心理的負荷が「強」と評価されるかの具体例が記載されています。

 

 

3 心理的負荷が「強」になるパワハラの具体例

 

 

今回の報告書では,次のような場合に,

心理的負荷が「強」と評価されるとしました。

 

 

①上司等から,治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合

 

 

②上司等から,暴行等の身体的攻撃が執拗に行われた場合

 

 

③上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合

 

 

・人格や人間性を否定するような,業務上明らかに必要性がない

又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃

 

 

・必要以上に長時間にわたる厳しい叱責,

他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など,

態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える精神的攻撃

 

 

 

これらの具体例で私が気になったことを指摘します。

 

 

①については,「治療を要する程度」としていますが,

暴行を受けても,そこまで大きなけがではなく,

病院で治療をしないこともありますが,そのような暴行でも,

心理的負荷は大きいと思います。

 

 

職場で暴行が行われることが,そもそも異常事態なので,

労働者が受ける心理的負荷は強いと考えます。

 

 

そのため,暴行を受けた労働者が,

病院を受診していなくても,労災と認定する必要があります。

 

 

②と③については,「執拗に」という文言が抽象的なので,

恣意的な解釈がされるリスクがあるので,

「継続して」に変更すべきと考えます。

 

 

特に,暴行等の身体的攻撃については,一回であっても,

労働者が受ける心理的負荷が強いことがありまし,

言葉の暴力である精神的攻撃についても,

「殺してやろうか」などのように一回言われただけでも,

心理的負荷が強いものもあります。

 

 

そのため,「執拗に」という表現ではなく,

せめて「継続して」という表現に改善すべきと考えます。

 

 

その他に,パワハラの被害を会社に相談したけれども,

適切に対応してくれなくて,改善されなかった場合には,

心理的負荷が「強」と評価されることになります。

 

 

この点は,会社にパワハラを予防させる方向につながりますので,

よい改訂だと思います。

 

 

報告書の内容に不満な点もありますが,

パワハラの労災認定基準が変わりますので,

しっかりと対応していきたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。