降格の対処法
会社から降格処分を根拠に給料を減額された場合,
労働者としてはどのように対処すればいいのでしょうか。
降格については,種類が分かれており,
降格の類型に応じて争い方が異なってくるので,
降格の種類ごとの争い方について説明します。
まず,降格には,懲戒処分として行われる降格と,
会社の人事権の行使としてなされる降格の2つがあります。
懲戒処分として行われる降格については,
懲戒処分の有効要件を満たす必要があります。
具体的には,①降格処分の根拠となる就業規則の条項があり,
かつその条項に合理性があって周知されていること(労働契約法7条),
②降格処分の根拠となる就業規則の条項に該当する事実があること,
③懲戒権の濫用でないこと(労働契約法15条)
の要件を満たさなければ,降格処分は無効となり,
降格処分に伴う賃金切り下げも無効となります。
懲戒処分として行われる降格については,
③懲戒権の濫用となるか否かにおいて,
労働者の違反行為に対して,降格処分が重すぎないか,
他の事案と比較して不平等になっていないか,
降格処分をするにあたり,労働者の言い分を聞くなどの
適正な手続がなされているかが検討されることになるので,
労働者としては,比較的争いやすくなります。
会社の人事権の行使としてなされる降格は,
①職位・役職を引き下げる場合,
②職能資格等級を引き下げる場合,
③職務等級を引き下げる場合
の3つに分かれます。
①職位・役職を引き下げる場合とは,
営業所長を営業所の成績不振を理由に営業社員に降格する場合や,
勤務成績不良を理由として部長を一般職へ降格する場合のことをいいます。
職位・役職を引き下げる降格の場合,会社は,
労働契約条当然に,組織内における労働者の具体的配置を
決定・変更する広範な人事権を有していることから,
就業規則などの具体的な根拠規定がなくても,
人事権の行使として職位・役職を変更することができ,
それが違法になるのは,権利の濫用となる場合です(労働契約法3条5項)。
職位・役職を引き下げる降格が権利の濫用となる場合とは,
労働者の人格権を侵害するなどの
違法・不当な目的・態様をもってなされた場合,または,
会社における人事権行使の業務上・組織上の必要性の有無・程度,
労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を有するかどうか,
労働者の受ける不利益の性質・程度などから,
会社に委ねられた裁量権に逸脱がある場合です。
もっとも,労働契約上,職位・役職が特定されている場合には,
労働者の同意なくして降格させることはできません。
人事上の措置として職位・役職が引き下げられ,
それに連動して役職や職位に基づいて
支給される手当(役職手当・職務手当)が減額または不支給となった場合,
賃金の減額については,職位・役職の引き下げの効力を判断する際に,
労働者の受ける不利益の性質・程度として考慮されます。
職位・役職の引き下げと賃金の減額が連動しない制度と
なっていた場合には,賃金減額が独立して行われたことになるので,
職位・役職の引き下げの効力とは別に,
賃金減額の効力を判断する必要があります。
賃金減額が,職位・役職の引き下げと独立して行われている場合,
賃金減額が有効になるには,
賃金減額だけの独立した契約上の根拠が必要になります。
具体的には,賃金減額について,
労働者の同意を得るなどです。
しかし,職位・役職の引き下げと賃金の減額が連動していない場合に,
会社が降格を賃金減額の理由として主張していれば,
上記の賃金減額だけの独立した契約上の根拠がないことがほとんどです。
長くなりましたので,続きは明日以降に記載します。
本日もお読みいただきありがとうございます。